システム管理基準の構成と情報戦略
“システム管理基準”の段階(情報戦略・企画・開発・運用・保守)と、各段階で作る計画を見分けられるようになる。「この計画・作業はどの段階か」を問う過去問を、キーワードから自力で解けるようになる。
システム管理基準の問題は、毎回「この計画・作業はどの段階のものか」の当てはめで出ます。見分けの軸は「組織全体の話か、1つのシステムの話か」の1本だけなので、覚えれば確実に取れる得点源です。
このレッスンで稽古する(用語チェック・過去問)結論:「組織全体の話」なら情報戦略
システム管理基準は、経済産業省がまとめた「情報システムを正しく管理するためのチェック項目集」です。システム監査人が、監査の“ものさし”として使います。
試験で問われるのは、ほぼ**「その計画・作業はどの段階に属するか」**だけです。見分け方は次の3つです。
- 組織全体・経営戦略とつながる話 → 情報戦略
- 1つのシステムの費用・日程・体制の話 → 企画〜開発
- 完成したシステムを毎日動かす話 → 運用
全体の構成:情報戦略+ライフサイクル4段階
過去問は主に、情報戦略と、その下の 企画・開発・運用・保守 という区分で出題されています。この下の4つをまとめてシステムライフサイクル(1つのシステムが生まれてから使われなくなるまでの一生)と呼びます。
| 段階 | 何をするか | 試験に出るキーワード |
|---|---|---|
| 情報戦略 | 経営戦略に沿って、組織全体の情報システムのあるべき姿と方針を決める | 全体最適化計画、情報化投資計画、組織・業務の変更方針、情報システム基盤の整備計画 |
| 企画業務 | 個別のシステムを作る前に、何をどれだけの費用で作るかを固める | 開発計画、費用の算出基礎、リスク、システムライフ(使い続ける期間)の条件 |
| 開発業務 | 計画に沿って設計・プログラミング・テストをする | 開発手順(組織で標準化した開発方法に基づく) |
| 運用業務 | 完成したシステムを日々安定して動かす | 年間運用計画、運用手順、障害などの異常処理 |
| 保守業務 | 動いているシステムを直す・変える | 不具合の修正、変更要求への対応 |
flowchart TD
A["情報戦略(組織全体の方針・全体最適化計画)"] --> B["企画業務(開発計画)"]
subgraph L["システムライフサイクル"]
B --> C["開発業務(開発手順)"]
C --> D["運用業務(年間運用計画・運用手順)"]
D --> E["保守業務(修正・変更)"]
end
情報戦略:経営戦略と情報化をそろえる(最頻出)
情報戦略は、経営戦略に合わせて、組織全体で情報化の方向をそろえる段階です。部署ごとにばらばらにシステムを作ると、重複投資やデータの分断が起きます。それを防ぐために、最初に全社の設計図を作ります。
たとえるなら、情報戦略は街全体の都市計画で、開発計画は1軒の家の設計図です。道路や上下水道(=全社共通の基盤)は都市計画で決め、家ごとの工期や大工さんの手配は各家の設計図で決めます。
情報戦略で決めること・作るものは次のとおりです。
- 全体最適化計画:組織全体の情報システムのあるべき姿を明確にする計画。方針と目標に基づいて作る、情報戦略段階の成果物
- 情報化投資計画:情報化にどれだけ投資するかの計画
- システム化に伴う組織・業務の変更方針:システムを入れることで組織や仕事のやり方をどう変えるか
- 情報システム基盤の整備計画:全社で共通に使うネットワークやサーバなど、土台の計画
逆に、個別システムの開発体制・開発スケジュール・ハードウェアの導入スケジュールは全社の話ではないので、情報戦略(全体最適化)には含まれません。
段階ごとの「計画」の比較
選択肢に「〇〇計画」が4つ並ぶ問題が繰り返し出ています。対応をそのまま覚えましょう。
| 計画・成果物 | 何を明確にするか | 段階 |
|---|---|---|
| 全体最適化計画 | 組織全体の情報システムのあるべき姿 | 情報戦略 |
| 情報化投資計画 | 情報化への投資 | 情報戦略 |
| 開発計画 | 個別システムの費用・スケジュール・開発体制・投資効果 | 企画業務(個別システムの計画) |
| 開発手順 | 標準化された開発方法に基づく作業の進め方 | 開発業務 |
| 年間運用計画 | 1年間の運用の予定 | 運用業務 |
| 運用手順 | 運用設計・運用管理ルールに基づく日々の作業の進め方 | 運用業務 |
| 事業継続計画(BCP) | 災害や事故のときに業務を止めない・早く戻すための対策 | 上の段階の区分とは別の、災害対策の計画(この単元ではダミー選択肢として出る) |
「あるべき姿」なら全体最適化計画、「費用・スケジュール・体制・投資効果」なら開発計画です。この2つの言い換えが一番よく出ます。
システムライフサイクルの並びを見抜く
システム管理基準でいうライフサイクルは**「企画・開発・運用・保守」**です。似た4語の並びがダミー選択肢として出ます。
| 4語の並び | 正体 |
|---|---|
| 企画・開発・運用・保守 | システム管理基準のシステムライフサイクル(正解) |
| 計画・実行・点検・改善 | PDCAサイクル(管理を回し続ける考え方) |
| 構築・運用・評価・監査 | 基準の段階名ではない |
| 設計・開発・製造・試験 | ものづくりの工程の並びで、基準の段階名ではない |
運用業務の要員スキル(調達の要求事項)
調達とは、外部から人・物・サービスを買うことです。システム管理基準では、運用業務を担う要員に「情報処理全体の体系を理解し、障害などの異常処理を判断できる」スキルを求めます。設計・変更要求の分析・プログラムの修正は、別の業務のスキルです。
試験での問われ方
- 「〇〇を策定する段階はどれか」:情報化投資・全社の方針なら情報戦略。「企画業務」「開発業務」をダミーに混ぜてくる
- 「〇〇を明確にする計画はどれか」:同じ4択(開発計画/事業継続計画/全体最適化計画/年間運用計画)が年度を変えて何度も出る。「あるべき姿」→全体最適化計画、「費用・スケジュール・体制・投資効果」→開発計画
- 「情報戦略で明確化するもの」:組織・業務の変更方針が正解。費用の算出基礎・リスク・システムライフの条件は個別システム側の話
- 「全体最適化に含まれる作業」:全社の基盤の整備計画が正解。「開発体制」「開発スケジュール」「個別システムのハードウェア」は外れ
- 成果物を問う問題:選択肢は長文でも、文末の名詞(開発計画/全体最適化計画/運用手順/開発手順)だけ見れば段階が決まる
要点(試験直前に読む)
- システム管理基準の区分は「情報戦略」と、ライフサイクル4段階の「企画・開発・運用・保守」。
- 組織全体・経営戦略・情報化投資・組織と業務の変更方針・全社基盤の話は、すべて情報戦略の段階。
- 「あるべき姿」なら全体最適化計画(情報戦略の成果物)。「費用・スケジュール・開発体制・投資効果」なら開発計画。
- 年間運用計画・運用手順は運用、開発手順は開発の段階。BCPは災害対策のダミー選択肢として出る。
- 運用要員に求めるスキルは「情報処理全体の体系の理解」と「障害などの異常処理の判断」。
ひっかけ
- 「企画業務」を選ばせるひっかけ:情報化投資計画や全社方針は、企画より上の「情報戦略」。個別システムの話かどうかで判定する。
- 4語の並びのひっかけ:「計画・実行・点検・改善」はPDCA。ライフサイクルは「企画・開発・運用・保守」と、「企画」で始まるかで見破る。
- 全体最適化の作業に「開発体制」「開発スケジュール」「個別システムのハードウェア」を混ぜてくる。「個別」「開発」の語が入っていれば外れ。
- 成果物の選択肢が長文で紛らわしい:文末の名詞(全体最適化計画/開発計画/運用手順/開発手順)だけ読めば段階が決まる。
- 要員スキルの問題で、設計・変更要求の分析・プログラム修正を混ぜてくる。運用は「異常時に判断する人」と覚える。
用語(16)
経済産業省がまとめた、情報システムを適切に管理するための項目集で、システム監査のものさしになるもの。
⚠ システム監査基準は「監査人がどう監査するか」の基準。システム管理基準は「監査される側がどう管理すべきか」の基準。
経営戦略に沿って、組織全体の情報化の方針・あるべき姿・投資を決める段階。
⚠ 企画業務は個別システムの話。「組織全体」「経営戦略」が出たら情報戦略。
組織全体の情報システムのあるべき姿を明確にする計画で、情報戦略段階の成果物。
⚠ 開発計画は個別システムの費用・日程・体制の計画。「あるべき姿」なら全体最適化計画。
部分ごとではなく組織全体として最も効果が出るよう情報システムを整えることで、情報システム基盤の整備計画などを含む。
⚠ 個別システムの開発体制・スケジュール・ハードウェア導入スケジュールは含まない。
情報化にどれだけ投資するかを定める計画で、情報戦略の段階で策定する。
⚠ 開発計画の「投資効果」は個別システムの効果。全社の投資計画は情報戦略。
ネットワークやサーバなど、組織全体で共通に使う情報システムの土台。
システムの一生のことで、システム管理基準では企画・開発・運用・保守の4段階。
⚠ PDCAサイクル(計画・実行・点検・改善)と取り違えやすい。「企画」で始まるのがライフサイクル。
個別システムを作る前に、内容・費用・リスク・使い続ける期間などを固める段階。
⚠ 情報戦略は組織全体の方針。企画は1つのシステムの計画。
個別システムの費用・スケジュール・開発体制・投資効果などを明確にする計画。
⚠ 全体最適化計画(組織全体のあるべき姿)と区別する。
計画に沿って、標準化された開発方法に基づき設計・プログラミング・テストを行う段階。
完成したシステムを運用手順や年間運用計画に沿って日々動かし、異常に対処する段階。
⚠ 保守業務はシステム自体を直す・変える段階。運用は動かし続ける段階。
1年間の運用の予定を定める、運用業務の計画。
稼働中のシステムの不具合修正や変更要求への対応を行う段階。
⚠ 運用業務と混同しやすい。プログラムやデータに手を入れるのが保守。
災害や事故が起きても業務を続ける、または早く再開するための対策の計画。
⚠ この単元では「〇〇を明確にする計画」の問題でダミー選択肢として出る。「あるべき姿」「費用・スケジュール」とは無関係。
計画・実行・点検・改善を繰り返して管理の質を上げる考え方。
⚠ システムライフサイクル(企画・開発・運用・保守)とは別物。
システムに必要な人・物・サービスを外部から買い入れること。
このレッスンの過去問
- システム管理基準の構成(情報戦略・企画・開発・運用)平成22年度 秋期 基本情報技術者試験 午前 問62
- システムライフサイクルの工程(企画・開発・運用・保守)平成23年度 特別試験 基本情報技術者試験 午前 問58
- 情報戦略と経営戦略の整合平成28年度 春期 基本情報技術者試験 午前 問63
- システム管理基準の開発計画平成26年度 春期 基本情報技術者試験 午前 問65
- システム管理基準の調達要求事項(運用要員スキル)基本情報技術者試験 科目A免除 修了試験 20130623 実施分 問66