MTBF・MTTR と稼働率の計算
MTBF・MTTRの意味を区別でき、稼働率=MTBF÷(MTBF+MTTR)を使って、改善後の稼働率・直列構成の稼働率・台数を増やしたときの故障間隔を計算できるようになる。予防保守・遠隔保守がどちらの指標に効くかと、バスタブ曲線の3つの期間も判断できるようになる。
科目Aでは「稼働率は何%か」という計算問題がほぼ毎回出ており、2024年・2025年の公開問題にも続けて出ている。式は1本だけで、覚えれば確実に取れる得点源。実務でも「SLA 99.9%」のような約束の裏側にある考え方そのもの。
このレッスンで稽古する(用語チェック・過去問)結論:覚える式は1本だけ
稼働率 = MTBF ÷ (MTBF + MTTR)。これで「全体の時間のうち、動いていた時間の割合」が出る。
- MTBF(平均故障間隔):動いている時間の平均。長いほど良い
- MTTR(平均修復時間):壊れてから直るまでの時間の平均。短いほど良い
たとえるなら、通勤電車の「普通に走っている時間」がMTBF、「運転を見合わせている時間」がMTTR。走っている時間が長く、止まってもすぐ動き出す路線ほど、稼働率が高い。
稼働モデル図からMTBF・MTTRを読む
システムは「稼働 → 故障 → 修理 → 稼働 …」を繰り返す。稼働していた時間を t、修理にかかった時間を r とすると、次のように読める。
flowchart LR
A["稼働 t1"] --> B["修理 r1"] --> C["稼働 t2"] --> D["修理 r2"] --> E["稼働 t3"] --> F["…"]
| 指標 | 何の平均か | 式(n回分) |
|---|---|---|
| MTBF | 稼働時間 t の平均 | (t1+t2+…+tn) ÷ n |
| MTTR | 修理時間 r の平均 | (r1+r2+…+rn) ÷ n |
t+r を足したものはMTBFではない。この足し算を選択肢に混ぜて引っかける問題がある(menjo_20110702#19)。
計算問題の3つの型
出題はほぼ次の3つの型に分けられる。
| 型 | 手順 | 過去問 |
|---|---|---|
| ① 改善後の稼働率 | 改善後のMTBF・MTTRを先に出し、式に入れる | 2024 科目A 問4 / 2025 科目A 問4 |
| ② 直列の稼働率 | 1台ずつ稼働率を出し、掛け算する | 平成25年春 問15 / 平成23年特別 問16 |
| ③ 台数を増やしたときの故障間隔 | 冗長化していないn台のMTBFは 1台のMTBF ÷ n | 平成25年秋 問14 |
直列とは「どれか1台でも止まれば全体が止まる」つなぎ方のこと。前のレッスンの並列(どれか1台が動いていればよい)は 1−(1−a)(1−b) で計算する。直列と取り違えないこと。
③は、部品が100個あれば、どれか1個が壊れるまでの時間は1/100になる、と考えればよい(故障率=1÷MTBF が台数分だけ足し合わさるため)。
予防保守・遠隔保守はどちらに効くか
「何をすると、どちらの指標が、どちら向きに動くか」が文章問題の中心。故障を減らす対策はMTBFに、早く直す対策はMTTRに効くと覚える。
| 対策・条件 | 効く指標 | 動く向き | 稼働率 |
|---|---|---|---|
| 予防保守(壊れる前に点検・交換) | MTBF | 長くなる | 上がる |
| 遠隔保守(離れた場所から保守する) | MTTR | 短くなる | 上がる |
| エラーログ・命令トレース(原因の手がかりを残す) | MTTR | 短くなる | 上がる |
| 構成する装置の種類・数が多い | MTBF | 短くなる | 下がる |
| 構成が複雑 | MTBF | 短くなる | 下がる |
式を見れば、MTBFを変えずにMTTRを短くすると分母が小さくなり、稼働率は上がる(2016年春 問15の正解)。「MTTRが同じならMTBFが違っても稼働率は同じ」「和が同じなら稼働率は同じ」は、どちらも誤り。
バスタブ曲線と3つの故障期間
故障率(一定時間に壊れる割合)を経過時間ごとに描くと、浴槽(バスタブ)のような形になる。
| 期間 | 故障率 | 主な原因 | 対策 |
|---|---|---|---|
| 初期故障期間 | 時間とともに下がる | 設計ミス・製造不良 | 設計審査・故障解析の強化、出荷前の試運転 |
| 偶発故障期間 | ほぼ一定 | 偶然の故障 | 監視と早い復旧 |
| 摩耗故障期間 | 時間とともに上がる | 老朽化・部品の劣化 | 予防保全(時間計画保全・状態監視保全)、部品の事前交換 |
- 信頼性を比べるために稼働率を測るのは、初期のトラブルが収まって安定した偶発故障期間(平成21年春 問56)。運用開始の直後や、老朽化が進んだ時期は適さない。
- 図から偶発故障期間の長さを読む問題では、終わりの点から始まりの点を引く(1年〜7年なら 7−1=6年)。終わりの点の「7」をそのまま選ばないこと。
改善後の稼働率(%で答える)
ア 69
イ 73
ウ 77
エ 80
出典:令和6年度 基本情報技術者試験 科目A 公開問題 問4
解き方と答えを見る
- 今年度:MTBF=3,000時間、MTTR=1,000時間
- MTBFを20%分改善する=長くする:3,000 × 1.2 = 3,600時間
- MTTRを10%分改善する=短くする:1,000 × 0.9 = 900時間
- 稼働率 = 3,600 ÷ (3,600 + 900) = 3,600 ÷ 4,500 = 0.8
- %に直すと 80%
答え:エ(80%)
毎年少しずつ改善したときの6年後の稼働率
ア 0.88
イ 0.90
ウ 0.92
エ 0.94
出典:令和7年度 基本情報技術者試験 科目A 公開問題 問4
解き方と答えを見る
- 今:MTBF=4,000時間、MTTR=1,000時間
- MTBFは毎年100時間ずつ長くなる:4,000 + 100 × 6 = 4,600時間
- MTTRは毎年100時間ずつ短くなる:1,000 − 100 × 6 = 400時間
- 稼働率 = 4,600 ÷ (4,600 + 400) = 4,600 ÷ 5,000 = 0.92
答え:ウ(0.92)
同じ装置2台を直列につないだ稼働率
ア 0.81
イ 0.90
ウ 0.95
エ 0.99
解き方と答えを見る
- 1台の稼働率 = 45 ÷ (45 + 5) = 45 ÷ 50 = 0.9
- 直列は「2台とも動いているとき」だけ全体が動くので掛け算:0.9 × 0.9 = 0.81
- 1台分の0.9で止めない。並列の式 1−(1−0.9)² = 0.99 も使わない
答え:ア(0.81)
冗長化していない100台のシステムは何週間に1回故障するか
ア 13
イ 15
ウ 105
エ 300
解き方と答えを見る
- 1台のMTBF = 210,000時間
- 冗長化していない100台は、どれか1台が壊れたら故障なので、システムのMTBF = 210,000 ÷ 100 = 2,100時間
- 1週間に140時間運転するので、2,100 ÷ 140 = 15週
- 台数で割らないと 210,000 ÷ 140 = 1,500週 という誤りになる
答え:イ(15週)
要点(試験直前に読む)
- 稼働率 = MTBF ÷ (MTBF + MTTR)。MTBFは稼働時間の平均、MTTRは修理時間の平均。
- 改善問題は、改善後のMTBF(長くする)とMTTR(短くする)を先に出してから式に入れる。
- 直列は稼働率の掛け算。冗長化していないn台のMTBFは 1台のMTBF ÷ n。
- 予防保守 → MTBFが長くなる。遠隔保守・エラーログ → MTTRが短くなる。装置の数・種類が多いほど、構成が複雑なほどMTBFは短くなる。
- バスタブ曲線:初期(故障率が下がる・設計審査で対策)→ 偶発(一定・稼働率を測る時期)→ 摩耗(上がる・予防保全)。
ひっかけ
- MTBFとMTTRの式を入れ替えたり、t+r(稼働+修理)の平均をMTBFとする選択肢 → MTBFはtだけの平均、MTTRはrだけの平均。
- 「遠隔保守でMTTRが長くなる」「ログ機能でMTTRが長くなる」「MTTRを長くすると稼働率が上がる」→ 保守の工夫はMTTRを短くする向きにしか働かない。
- 直列の問題で、1台分の稼働率(0.9など)や並列の式の値(0.99など)を並べる → 直列は掛け算なので必ず1台分より小さくなる。
- 台数の問題で、1台のMTBFのまま割り算させる → まず台数で割り、その後に週の運転時間で割る。
- バスタブ曲線の読み取りで、偶発故障期間の終わりの年(7)を選ばせる → 長さは終わり−始まり(7−1=6)。初期故障期間の対策に部品の事前交換を並べる → それは摩耗故障期間の対策。
用語(15)
故障してから次に故障するまでの間に、システムが動いていた時間の平均。
⚠ MTTRと取り違えやすい。MTBFは「動いていた時間」で長いほど良く、MTTRは「直していた時間」で短いほど良い。稼働時間と修理時間の合計はMTBFではない。
故障が起きてから修理が終わって再び動くまでにかかった時間の平均。
⚠ 「回復してから次の故障までの時間」と書かれていたら、それはMTBFの説明なので誤り。
全体の時間のうち、システムが正常に動いていた時間の割合で、MTBF÷(MTBF+MTTR)で求める。
⚠ MTBF−MTTRは稼働率でも正常な時間でもない。
一定の時間あたりに故障が起きる割合で、偶発故障期間では 1÷MTBF とみなせる。
⚠ 稼働率と名前が似ているが、故障率は「壊れやすさ」、稼働率は「動いている時間の割合」。
構成する装置が全部動いているときだけ全体が動くつなぎ方で、稼働率は各装置の稼働率の積になる。
⚠ 並列システムは1台でも動けばよく、1−(1−a)(1−b)で計算する。
故障が起きる前に点検や部品交換を行い、故障そのものを減らす保守で、MTBFを長くする。
⚠ 遠隔保守と混同しやすい。予防保守は「壊れにくくする(MTBF)」、遠隔保守は「早く直す(MTTR)」。
保守担当者が現地に行かずにネットワーク経由で診断や対処を行う保守で、MTTRを短くする。
⚠ 「遠隔保守でMTBFが短くなる」「MTTRが長くなる」は、どちらも誤り。
エラーの記録や実行した命令の履歴を残す機能で、故障の原因を早く見つけられるためMTTRが短くなる。
⚠ 「MTTRが長くなる」という選択肢は誤り。
故障率を時間の経過に沿って描いた、下がる→横ばい→上がる形の曲線。
使い始めの、設計ミスや製造不良による故障が多く、故障率が時間とともに下がっていく期間。
⚠ 対策は設計審査・故障解析の強化。部品の事前交換や経時保全は摩耗故障期間の対策。
初期の不具合が収まり、故障が偶然に起きるだけで故障率がほぼ一定になる期間。
⚠ 信頼性を比べるための稼働率はこの期間に測る。期間の長さは「終わりの点−始まりの点」で読む。
長く使って部品が劣化し、故障率が時間とともに上がっていく期間。
⚠ 初期故障期間と対策を入れ替える選択肢に注意。こちらは予防保全や部品交換が効く。
あらかじめ決めた時間で行う保全の総称で、暦の期間で行う定期保全と、累積動作時間で行う経時保全がある。
⚠ 状態監視保全は時間ではなく、装置の状態(振動・温度など)を見て必要なときに行う。どちらも摩耗故障期間向けの予防保全。
装置が動いた時間の累計があらかじめ決めた値に達したら行う保全で、時間計画保全の一種。
⚠ 定期保全は暦(毎月など)を基準にし、経時保全は累積動作時間を基準にする。どちらも時間計画保全に含まれる。
装置の状態を監視し、劣化の兆しが見えたときに保全を行う方式。
⚠ 時間計画保全は時間で行い、状態監視保全は状態を見て行う。
このレッスンの過去問
- MTBF・MTTRの定義と稼働モデルからの式基本情報技術者試験 科目A免除 修了試験 20220123 実施分 問16
- MTBF・MTTRから稼働率を計算令和7年度 基本情報技術者試験 科目A 公開問題 問4
- MTBF・MTTRと予防保守の関係平成27年度 秋期 基本情報技術者試験 午前 問14
- MTBF・MTTRの改善策の効果令和6年度 基本情報技術者試験 科目A 公開問題 問4
- 複数台構成システムのMTBF計算(直列)平成25年度 秋期 基本情報技術者試験 午前 問14
- 故障率曲線(バスタブカーブ)と稼働率測定時期平成26年度 秋期 基本情報技術者試験 午前 問15