冗長構成とバックアップ(デュアル・デュプレックス・RAID)
デュアル・デュプレックス(ホット/コールドスタンバイ)・バックアップサイト・RAID・NAS/SAN・コールドスタートを、選択肢の説明文から見分けられるようになる。増分バックアップの復元時間と RAID1 の必要台数を計算できるようになる。
冗長化の用語は説明文が似ていて、選択肢を入れ替えるだけで問題が作れるため、毎回のように出題されます。実務でも「止まらないシステム」の要件を決めるときに、どの方式でいくらかかるかを話すための共通語になります。
このレッスンで稽古する(用語チェック・過去問)結論:「2台で同時に同じ仕事」か「1台は控えで待つ」か
冗長構成(じょうちょう=わざと予備を持たせる作り)は、まず2種類に分かれます。デュアルシステムは2系統が同時に同じ処理をして結果を照合します。デュプレックスシステムは現用系(本番で動く側)と待機系(控え)に分かれ、現用系が壊れたら待機系に切り替えます。
たとえるなら、デュアルは「2人の経理が同じ伝票を別々に計算して答え合わせする」形です。デュプレックスは「正ゴールキーパーが試合に出て、控えはベンチで待つ」形です。
| 観点 | デュアルシステム | デュプレックスシステム |
|---|---|---|
| 平常時の2台目 | 同じ処理を同時に実行 | 待機(その間にバッチ処理などの別仕事をしてもよい) |
| キーワード | 照合・結果の正しさを確認 | 現用系/待機系・切替 |
| 1台が壊れたら | 壊れた系を切り離し、残り1系で縮退運転(性能や機能を落として続ける) | 待機系に切り替えて続行 |
| コスト感 | 高い(常に2台分動かす) | 比較的安い(待機系を別仕事に使える) |
flowchart LR
subgraph D["デュアル"]
A1["系1:処理A"] --> C["結果を照合"]
A2["系2:処理A"] --> C
end
subgraph P["デュプレックス"]
B1["現用系:オンライン処理"] -- "故障したら切替" --> B2["待機系:普段はバッチ処理"]
end
見分けのコツ:選択肢に「照合」「同時に同じ処理」があればデュアル。「待機」「切り替え」があればデュプレックス(またはその一種のスタンバイ方式)です。
デュプレックスの中身:ホットスタンバイとコールドスタンバイ
デュプレックスは、控えの「準備の度合い」でさらに分かれます。ホットスタンバイは、待機系が現用系と同じプログラムをあらかじめ起動して現用系を監視し、ダウンを検知したらすぐ引き継ぐ方式です。コールドスタンバイは、待機系が普段は別の仕事(バッチ処理など)をしているか止まっていて、切り替えのときに業務プログラムを起動するので時間がかかります。
ゴールキーパーでいえば、ホットは「ベンチでアップを済ませて試合を見ている控え」、コールドは「着替えから始める控え」です。
| 方式 | 平常時の待機系 | 切替の速さ | 費用 |
|---|---|---|---|
| ホットスタンバイ | 同じプログラムを起動済み・現用系を監視 | 速い | 高い |
| コールドスタンバイ | 停止中、または別の仕事(バッチ等)をしている | 遅い(起動から始める) | 安い |
HA クラスタと負荷分散クラスタの違いも出ます。HA(High Availability:高可用性)クラスタはホットスタンバイで、待機系に同じ仕様のサーバが要ります。そのかわり、障害が起きても待機系が丸ごと引き継ぐのでスループット(単位時間あたりの処理量)を維持できます。負荷分散クラスタはロードバランサで処理を複数台に振り分ける方式です。台数を増やして拡張しやすい一方、1台が壊れると残りの台に負荷が寄って処理能力が下がります。
建物ごと備える:ホットサイト・ウォームサイト・コールドサイト
地震などでデータセンター自体が使えなくなる場合に備えて、**遠隔地に予備の拠点(バックアップサイト)**を用意します。準備の度合いで3段階に分かれ、考え方はスタンバイと同じく「ホット=すぐ動ける・コールド=場所だけ」です。
| 方式 | 予備拠点に用意してあるもの | 復旧の速さ |
|---|---|---|
| ホットサイト | 同じシステムを導入して稼働させ、ネットワーク経由で常時データを更新 | 速い |
| ウォームサイト | ハードウェアを用意し、定期的にバックアップ媒体を運んで保管 | 中くらい |
| コールドサイト | 場所(設備)だけ確保。被災後に機器とバックアップ媒体を運び込む | 遅い |
「媒体を搬入して復元」と書いてある選択肢は、ホットサイトではありません。「データを遠隔地に保管するだけ」や「代替処理を他社に委託する」も、ホットサイトの説明ではありません。
RAID:複数のディスクを1台に見せて、速さか安全を足す
RAID(Redundant Arrays of Inexpensive Disks)は、複数のディスクを組み合わせて1台のように使う技術です。レベルの番号ごとに「データをどう分けるか」と「壊れたときどう直すか」が違い、ここが最もよく出題されます。用語を2つ押さえます。ストライピング=データを細かく分けて複数のディスクに並べて書くこと(速くなる)。パリティ=データから計算した検査用の値で、ディスクが1台壊れても残りから元のデータを計算し直せるもの。
| レベル | データの分け方 | 冗長化の方法 | 1台壊れても大丈夫? | 使える容量(n台) |
|---|---|---|---|---|
| RAID0 | ブロック単位のストライピング | なし | ×(全データを失う) | n台分 |
| RAID1 | 分けない | ミラーリング(2台に同じ内容を書く) | ○ | 半分 |
| RAID2 | ビット単位 | ECC(誤り訂正符号)を複数台に | ○ | — |
| RAID3 | バイト単位 | パリティを専用の1台に | ○ | n−1台分 |
| RAID4 | ブロック単位 | パリティを専用の1台に | ○ | n−1台分 |
| RAID5 | ブロック単位 | パリティを全ディスクに分散 | ○ | n−1台分 |
| RAID6 | ブロック単位 | パリティを2種類、分散して書く | ○(2台まで) | n−2台分 |
RAID1 は「同じノートを2冊同時に書く」イメージです。片方をなくしてももう1冊が残りますが、紙は2倍要ります。
覚え方:2→3→4 は「ビット→バイト→ブロック」と単位が大きくなる。3と4はパリティ専用ディスクが1台、5はパリティを散らす、6はパリティが2つ。RAID1 と RAID0 を組み合わせた RAID1+0(RAID10)もあります。
容量計算:RAID1 は実効容量が半分なので、必要な台数は「欲しい容量 ÷ 1台の容量 × 2」。RAID5 は「1台分がパリティに使われる」ので「欲しい容量 ÷ 1台の容量 + 1台」です。
NAS と SAN:ファイルシステムがどちら側にあるか
NAS(Network Attached Storage)は、普通の LAN につなぐファイルサーバ専用機です。ストレージ側がファイルシステムを持ち、PC には「ファイル」の単位で貸し出します。SAN(Storage Area Network)は、サーバとストレージをストレージ専用のネットワーク(ファイバチャネルなど)で結びます。ファイルシステムは各サーバ側にあり、ストレージはブロック単位で読み書きされます。
| 観点 | NAS | SAN |
|---|---|---|
| つなぐ線 | 普通の LAN | ストレージ専用ネットワーク |
| ファイルシステムの場所 | ストレージ側 | サーバ(PC)側 |
| 貸し出す単位 | ファイル | ブロック |
構成図の問題では「楕円(ファイルシステム)がストレージ側にあり、LAN から1本線でつながる」図が NAS です。
バックアップの取り方と、復元に必要なもの
バックアップには3種類あり、復元のときに何本の媒体が要るかが違います。
| 方式 | 何を保存するか | 復元に必要なもの |
|---|---|---|
| フルバックアップ | 全データ | フル1本だけ |
| 差分バックアップ | 直前のフルからの変更分すべて | フル+最新の差分1本 |
| 増分バックアップ | 直前のバックアップ(フルでも増分でも)からの変更分だけ | フル+それ以降の増分すべて |
増分は毎日の保存が少なく速い反面、復元するときは本数が増えて時間がかかります。計算問題では「データ量 × リストア時間」と「テープの取替え回数 × 取替え時間」を別々に足すのがポイントです(下の例題)。
「コールド」が3つある:コールドスタート(IPL)
コールドスタートは、障害のあとシステムを初期状態から起動し直す方法です。IPL(Initial Program Load:イニシャルプログラムロード=最初のプログラムの読み込み)とも呼びます。更新前コピー・更新後コピー(ログ)を使った前処理はしません。対になるウォームスタートは、障害の直前の状態を引き継いで再開します。ロールバック(更新前コピーで変更を取り消す)とロールフォワード(更新後コピーで変更をやり直す)は、データベースの障害回復の手法です(詳しくは DB のレッスンで扱います)。
名前に「コールド」が付く用語を混同しないように並べます。
| 用語 | 何の話か |
|---|---|
| コールドスタンバイ | 待機系のサーバが停止中・別の仕事中 |
| コールドサイト | 予備の拠点が場所だけ |
| コールドスタート | システムの再開方法(初期状態から・IPL) |
増分バックアップからの復元時間を求める
| バックアップ媒体 | 磁気テープ(各曜日ごとの 7 本を使用) |
|---|---|
| フルバックアップを行う曜日 | 毎週日曜日 |
| 増分バックアップを行う曜日 | 月曜日〜土曜日の毎日 |
| フルバックアップのデータ量 | 100G バイト |
| 磁気テープからのリストア時間 | 10 秒/G バイト |
| 磁気テープの取替え時間 | 100 秒/本 |
| 変更されるデータ量 | 5G バイト/日 |
ア 1,250
イ 1,450
ウ 1,750
エ 1,850
解き方と答えを見る
- 必要なテープを決める:日曜にフル、月〜金に増分を取っているので、復元には「日曜フル+月・火・水・木・金の増分」の計6本が要る。
- リストアするデータ量を出す:フル 100GB + 増分 5GB/日 × 5日(月〜金)= 100 + 25 = 125GB。
- リストア時間を出す:125GB × 10秒/GB = 1,250秒。
- テープの取替え回数を数える:今ついているのは金曜のテープだが、最初に戻すのは日曜のフル。だから「金→日」で1回目、そのあと日→月・月→火・火→水・水→木で4回、最後に木→金(いったん外した金曜を付け直す)で1回、計6回。
- 取替え時間を出す:6回 × 100秒 = 600秒。
- 合計する:1,250 + 600 = 1,850秒。
答え:エ:1,850秒(取替えを5回と数えると 1,750秒のウを選んでしまう)
RAID1 で 4TB を確保するのに必要な台数
ア 4
イ 5
ウ 6
エ 8
解き方と答えを見る
- RAID1 はミラーリングなので、2台に同じ内容を書く。実際に使える容量は全体の半分になる。
- データを置く側に必要な台数:4TB ÷ 1TB = 4台。
- 同じ内容を書く写し側にも同じ4台が要る:4台 × 2 = 8台。
答え:エ:8台(RAID5 のつもりで「4+1=5台」とするとイを選んでしまう)
要点(試験直前に読む)
- デュアル=2系統で同時に同じ処理をして照合し、壊れたら縮退運転。デュプレックス=現用系+待機系で、壊れたら切替(待機系はバッチ処理をしていてもよい)。
- ホットスタンバイ=待機系が同じプログラムを起動済みで、すぐ引き継ぐ。コールドスタンバイ=切替時に起動する。HA クラスタは障害時もスループットを維持できる。
- ホットサイト=同じシステムが稼働中でデータも常時更新。コールドサイト=場所だけ確保。「媒体を搬入」はホットではない。
- RAID:0=ストライピングのみ、1=ミラーリング(容量半分)、2=ビット+ECC、3=バイト+専用パリティ、4=ブロック+専用パリティ、5=ブロック+分散パリティ(n−1台分)。
- NAS=LAN接続・ファイルシステムはストレージ側。SAN=専用ネットワーク・ファイルシステムはサーバ側。
- 増分バックアップの復元時間=(フル+増分の合計GB × 秒/GB)+(テープ取替え回数 × 秒)。今ついているテープを外す1回も数える。
ひっかけ
- デュアルの問題で、ホットスタンバイの説明(同じプログラムを起動して待機)やデュプレックスの説明(待機系がバッチ処理)を正解のように見せる。「照合」があるかどうかで判断する。
- ホットスタンバイの問題に「待機系も同時に同じ処理を実行」(=デュアル)や「過負荷分を引き受ける」(=負荷分散)を混ぜる。ホットスタンバイの待機系は監視して待つだけ。
- RAID5 の問題で「1台にパリティ」(RAID3・4)や「ビット単位+ECC」(RAID2)を並べる。RAID5 は「ブロック単位」と「パリティを分散」の両方がそろっているか確かめる。
- 容量計算で RAID1 なのに RAID5 の式(+1台)を使わせる。RAID1 は必ず2倍。
- 増分復元の計算で、金曜分だけ、またはテープ取替えを5回と数えさせる。今ついている金曜のテープを外して日曜のテープを付ける1回目を忘れない。
用語(18)
2系統で同じ処理を同時に独立して行い、結果を照合して正しさを確かめ、片方が壊れたら残りで縮退運転する構成。
⚠ デュプレックスと間違えやすい。「照合」「同時に同じ処理」ならデュアル、「待機」「切替」ならデュプレックス。
現用系と待機系の2系統を持ち、現用系が壊れたら待機系に切り替えて続ける構成。待機系は普段バッチ処理などをしていてもよい。
⚠ デュアルは両系が同じ処理を同時に行う。デュプレックスは片方が控え。
故障した部分を切り離し、性能や機能を落としてでも処理を続けること。
⚠ フォールバック(前のレッスン)とほぼ同じ意味。デュアルシステムの説明に出てくる。
待機系が現用系と同じプログラムを起動済みで監視し、障害を検知したらすぐ処理を引き継ぐ方式。
⚠ コールドスタンバイは待機系が停止中か別の仕事中で、切替時に起動する。「同時に同じ処理をする」はデュアル。
待機系が普段は停止しているかバッチ処理などをしていて、切替のときに業務プログラムを起動する方式。
⚠ ホットスタンバイより切替が遅い。コールドスタート(再開方法)とは別物。
同じ仕様の待機系サーバを用意し、障害時に処理を丸ごと引き継いで、スループットを落とさずに続ける構成。
⚠ 負荷分散クラスタは処理を複数台に振り分けるので拡張しやすいが、1台壊れると残りの負荷が上がり性能が下がる。
遠隔地に同じシステムを導入して稼働させ、データを常時更新しておき、被災時にすぐ業務を再開できる予備拠点。
⚠ コールドサイトは場所だけ確保し、被災後に機器と媒体を運び込む。「媒体を搬入」ならホットではない。
予備拠点の場所や設備だけを確保しておき、被災後に機器とバックアップを運び込んで復元する方式。
⚠ ウォームサイトはハードウェアまで用意しておく中間の段階。
複数のディスクを1台に見せ、ストライピングやミラーリング・パリティで速さと信頼性を高める技術。
2台のディスクに同じ内容を書き込み、片方が壊れても他方で続けられるようにすること(RAID1)。容量は半分になる。
⚠ ストライピングはデータを分けて並べて書くだけで、冗長性はない(RAID0)。
データを細かく分けて複数のディスクに並べて書き、読み書きを速くすること。
⚠ これだけでは冗長性がない。RAID0 はストライピングのみ。
データから計算した検査用の値で、ディスク1台分のデータが消えても残りから計算し直せるもの。
⚠ RAID3・4 は専用ディスク1台に、RAID5 は全ディスクに分散して書く。RAID2 はパリティではなく ECC。
ブロック単位でデータを分散し、パリティも全ディスクに分散して書く方式。使える容量は(台数−1)台分。
⚠ RAID3 はバイト単位+専用パリティディスク、RAID4 はブロック単位+専用パリティディスク。
LAN に直接つなぎ、ストレージ側がファイルシステムを持ってファイル単位で共有させる記憶装置。
⚠ SAN は専用ネットワークでつなぎ、ファイルシステムはサーバ側にある。
サーバとストレージをストレージ専用のネットワークで結び、ブロック単位で読み書きさせる構成。
⚠ NAS は普通の LAN につなぎ、ファイルシステムはストレージ側にある。
直前のバックアップ(フルでも増分でも)から変わった分だけを保存する方式。復元にはフルとそれ以降の増分がすべて要る。
⚠ 差分バックアップは直前のフルからの変更をすべて保存するので、復元はフル+最新の差分1本で済む。
障害のあと、ログによる前処理をせずにシステムを初期状態から起動し直すこと。IPL とも呼ぶ。
⚠ ウォームスタートは障害直前の状態を引き継いで再開する。ロールバック・ロールフォワードは DB の回復手法。
電源投入時などに最初のプログラムを読み込んで、システムを初期状態から立ち上げること。
⚠ コールドスタートの別名として問われる。
このレッスンの過去問
- デュアルシステムの定義平成31年度 春期 基本情報技術者試験 午前 問13
- デュプレックスシステムの定義基本情報技術者試験 科目A免除 修了試験 20260726 実施分 問11
- ホットスタンバイ方式の定義平成30年度 春期 基本情報技術者試験 午前 問14
- バックアップサイト方式の分類(ホット・コールド等)平成26年度 秋期 基本情報技術者試験 午前 問13
- RAIDレベルの特徴(ミラーリング等)令和元年度 秋期 基本情報技術者試験 午前 問15
- NASとSANの構成の違い平成22年度 秋期 基本情報技術者試験 午前 問15
- 増分バックアップからの復元時間の計算平成25年度 春期 基本情報技術者試験 午前 問21
- コールドスタート(IPL)の定義基本情報技術者試験 科目A免除 修了試験 20260125 実施分 問43