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システム監査・1/11・9分

システム監査とは何か:目的・基準と監査人の立場

ゴール

システム監査の目的・対象・2つの基準(監査基準と管理基準)の違い・監査人の立場(独立性・できること/できないこと)を区別し、科目Aの「システム監査人として適切なものはどれか」型の問題を自力で解けるようになる。

システム監査はこの分野で毎回のように出題され、特に「監査人の独立性」と「監査人がやってよいこと・いけないこと」は選択肢のパターンがほぼ決まっています。考え方を一つ押さえれば、何問もまとめて取れる得点源です。

このレッスンで稽古する(用語チェック・過去問)

結論:監査人は「外から見て、確かめて、指摘する人」

システム監査とは、情報システムのリスクに対して社内の仕組み(コントロール)が整っていて、実際に動いているかを、第三者の目で確かめて改善につなげる活動です。

監査人の立場はこの3語で覚えます。

  • 独立:監査される部門に属さない
  • 確認:文書を閲覧し、状況を確かめる(自分で作らない・決めない・運用しない)
  • 指摘・勧告:改善を勧める(命令はしない)

たとえるなら健康診断の医師です。検査して「血圧が高いので塩分を控えましょう」と勧めますが、患者の献立を作ったり、食事を命令したりはしません。直すかどうかは本人(経営者・被監査部門)が決めます。

監査人は外から見て、確かめて、指摘する被監査部門管理規程・台帳日々の運用改善するのは本人側監査人独立・外の立場閲覧・確認確認・評価指摘・勧告命令・作成はしない
監査人は被監査部門の外にいて、閲覧・確認して指摘・勧告するだけで、命令や作成はしない。

目的と対象:何のために、何を見るか

目的は、情報システムのリスクに対するコントロールの整備・運用状況を評価し、改善につなげることでITガバナンスの実現に寄与することです。ITガバナンスとは「経営者がITを経営目標に沿って統制すること」。

対象はITに係る内部統制です。内部統制とは、業務を正しく・不正なく進めるために組織が設ける仕組みのこと。例えば「データベースへの入力・更新の正確性をどう確保しているか」はシステム監査の対象ですが、「経営計画の策定経緯」「人事考課の結果」「生産設備の見直し」はITの統制ではないので対象外です。

選択肢の内容 システム監査の目的?
コントロールを評価し、ITガバナンスの実現に寄与 ○ 正解の型
強み・弱み・機会・脅威を整理して戦略を作る × SWOT分析(経営戦略)
運用部門のテストで脆弱性を知る × 脆弱性診断(監査ではない)
開発の生産性レベルを上げる × 能力成熟度の評価

2つの基準:「監査基準」は監査人の、「管理基準」は会社のもの

経済産業省が定める基準が2つあり、名前が似ているので試験で取り違えを狙われます。

システム監査基準 システム管理基準
誰のためのもの 監査人 組織(経営者・管理する側)
役割 監査人の行為規範(どう監査すべきか) 監査の判断尺度(何ができていれば良いか)
中身のイメージ 独立性・専門能力・監査の進め方・報告 情報戦略の立案、IT投資、リスク低減のコントロールの整備・運用

覚え方:「監査」基準は監査人を縛る、「管理」基準は会社の管理を測る物差し。

システム管理基準では、情報システム全体の最適化目標を立てるときの着眼点は経営戦略への貢献を明確にすることです。教育訓練・保守手順・人材調達といった個別の管理項目と取り違えないようにしましょう。また、ウイルス対策基準・不正アクセス対策基準・ソフトウェア管理ガイドラインは別の基準です。

2つの基準は、それぞれ誰に向くか監査人会社(経営者)監査するシステム監査基準監査人の行為規範縛るシステム管理基準監査の判断尺度測る監査人は管理基準を物差しに会社を評価
システム監査基準は監査人を縛り、システム管理基準は会社の管理を測る物差しになる。

最頻出:監査人の独立性

監査人は監査対象から独立していなければなりません。自分の部署を自分で監査すれば、甘くなる(少なくとも周りからそう見える)からです。

独立性には2種類あります。

種類 意味 担保する手段の例
外観上の独立性 組織・立場として対象と利害関係がない 監査人を内部監査部門に所属させる、対象部門の長の直属にしない
精神上の独立性 心の中で公正・客観的な態度を保つ 客観的な姿勢を保つ

専門能力(継続学習・研修・必要な知識の明示)は独立性とは別の要件です。「外観上の独立性を担保する措置は?」に研修制度を選ぶと誤答になります。

判定の手順:

  1. 監査人の今の所属を見る
  2. 監査対象の部門を見る
  3. 一致していたら(自分の部門を監査していたら)独立性違反
  • 総務部の人が総務部を監査 → NG
  • 情報システム部が開発し経理部が運用するシステムの監査人 → どちらにも属さない人にする
  • 監査部の人が外部委託先を監査 → OK
  • 5年前まで情報システム部にいた人が、マーケティング部を監査 → OK(監査対象は元の部署ではない)
  • 情報システム部長の直属・経理部長の直属にする → NG(対象部門の指揮下になる)
  • 公認会計士だから適任 → 資格の話で、独立性の答えにはならない
自分の部門を監査したら独立性違反経営者内部監査部門情報システム部総務部総務部の人が総務部を監査 → NG監査部の人が総務部を監査 → OK情報システム部長の直属にする → NG
監査人の所属と監査対象の部門が一致したり、対象部門の長の直属だったりすると独立性違反になる。

監査人の役割:「確認・指摘」はOK、「作成・制定・実施・命令」はNG

監査人の役割は、監査対象から独立した専門的な立場で、コントロールの整備・運用について保証または助言を行うことです。保証とは「適切です」とお墨付きを与えること、助言とは改善のアドバイスのことです。

できる(監査人の行為) できない(被監査側・経営者の仕事)
管理規程を閲覧する 管理台帳・管理表を作成する
管理状況を確認・評価する 管理方針を制定する
問題点を指摘・改善を勧告する 運用手続・運用管理を実施する
改善の緊急性を判断して報告書に書く 改善を命令する
システム管理者に監査への協力を要請する 情報セキュリティ方針を決定する
テストをしてリリースを承認する
法定の会計監査を代替する

監査人が自分で台帳を作ったり方針を決めたりすると、自分が作ったものを自分で監査することになり、独立性が崩れます。

手続きの面でも注意点があります。監査意見は十分な証拠に基づいて出します。調査が不十分なのに経験で意見を書く、期限が来たからと調査途中で報告書に移る、はどちらも不適切です。

監査規程の承認者は経営者

システム監査規程(監査の目的・権限・責任などを定めたルール)の最終承認者は経営者です。情報システム部門の長・利用部門の長・被監査部門の長が承認すると、監査される側が監査のルールを決めることになり、独立性に反します。

監査は経営者の指示で行い、結果も経営者に報告する、という流れで一貫しています。

全体の流れ

flowchart LR
  A["経営者"] -->|"監査規程を承認・監査を依頼"| B["システム監査人(独立した部門)"]
  B -->|"閲覧・確認(協力を要請)"| C["被監査部門"]
  B -->|"監査報告書(指摘・勧告)"| A
  A -->|"改善を指示"| C

ポイントは、改善を指示するのは経営者であり、監査人から被監査部門へ「命令」の矢印は存在しないことです。

例題 1

独立性の観点で最も避けるべき体制を選ぶ

システム監査実施体制のうち,システム監査人の独立性の観点から最も避けるべきものはどれか。

ア 監査チームメンバに任命された総務部の A さんが,他のメンバと一緒に,総務部の入退室管理の状況を監査する。
イ 監査部の B さんが,個人情報を取り扱う業務を委託している外部企業の個人情報管理状況を監査する。
ウ 情報システム部の開発管理者から 5 年前に監査部に異動した C さんが,マーケティング部におけるインターネットの利用状況を監査する。
エ 法務部の D さんが,監査部からの依頼によって,外部委託契約の妥当性の監査において,監査人に協力する。

出典:平成30年度 春期 基本情報技術者試験 午前 問59

解き方と答えを見る
  1. 各選択肢について「監査人の現在の所属部門」と「監査対象部門」を書き出す。
  2. ア:所属=総務部、対象=総務部の入退室管理 → 一致。
  3. イ:所属=監査部、対象=外部委託先 → 不一致。
  4. ウ:所属=監査部(5年前は情報システム部)、対象=マーケティング部 → 現在の所属でも元の所属でも不一致。
  5. エ:法務部のDさんは監査人に協力しているだけで、対象は外部委託契約 → 自部門の監査ではない。
  6. 所属と対象が一致するのはアだけなので、アが独立性を損なう。

答え:ア(総務部の人が総務部を監査するのは自己監査で、独立性を損なう)

例題 2

アクセス制御を監査する監査人の適切な行為を選ぶ

アクセス制御を監査するシステム監査人の行為のうち,適切なものはどれか。

ア ソフトウェアに関するアクセス制御の管理台帳を作成し,保管した。
イ データに関するアクセス制御の管理規程を閲覧した。
ウ ネットワークに関するアクセス制御の管理方針を制定した。
エ ハードウェアに関するアクセス制御の運用手続を実施した。

出典:令和元年度 秋期 基本情報技術者試験 午前 問60

解き方と答えを見る
  1. 選択肢の動詞だけを抜き出す:ア「作成し保管」、イ「閲覧」、ウ「制定」、エ「実施」。
  2. 作成・制定・実施は管理する側(被監査側)の仕事なので除外する。
  3. 閲覧は、監査証拠を集めるための監査人の行為。

答え:イ(管理規程を閲覧した)

要点(試験直前に読む)

  • 目的は「コントロールの整備・運用状況を評価し、改善につなげて、ITガバナンスの実現に寄与する」。
  • 対象はITに係る内部統制(例:DB入力・更新の正確性の確保)。経営計画や人事考課は対象外。
  • 監査基準=監査人の行為規範、管理基準=組織側の判断尺度(全体最適化の着眼点は経営戦略への貢献)。
  • 独立性:監査人は監査対象部門に属さない。外観上の独立性は内部監査部門への所属で担保する。
  • 監査人は閲覧・確認・指摘・勧告・協力要請まで。作成・制定・実施・命令・方針決定はしない。
  • 監査規程の最終承認者は経営者。

ひっかけ

  • 「改善を命令する」「改善を指示する」→ 監査人の権限外。指摘・勧告・緊急性の判断はOK。
  • 「管理表を作成」「方針を制定」「運用を実施」→ 被監査側の仕事。動詞が「閲覧・確認」の選択肢を選ぶ。
  • 「外観上の独立性」の問題で研修・継続学習・知識要件を選ばせる → それは専門能力。所属部門の話が正解。
  • 「判断尺度」と「行為規範」を入れ替える → 監査基準は行為規範、管理基準は判断尺度。
  • 監査人を対象部門の長の直属にする、承認者を情報システム部門長にする → 対象側の指揮下になるので独立性違反。正解は経営者・内部監査部門。

用語(17)

システム監査 しすてむかんさ
情報システムのリスクに対するコントロールが整い動いているかを独立した立場で評価し、改善につなげる活動。
⚠ 脆弱性診断・テストは運用部門などが自分で行う作業で、監査ではない。
ITガバナンス あいてぃーがばなんす
経営者がITを経営戦略・目標に沿うように統制する仕組みと活動。
⚠ ITマネジメントは日々の管理・運用で、ガバナンスは経営者による方向づけ。
内部統制 ないぶとうせい
業務を正確・効率的に、不正なく進めるために組織内に設ける仕組み。
コントロール こんとろーる
リスクを抑えるために組織が設ける具体的な管理策(ルール・手続・チェックなど)。
システム監査基準 しすてむかんさきじゅん
システム監査人が監査を行うときに守るべき行為規範。
⚠ システム管理基準は監査の判断尺度。「監査」基準は監査人、「管理」基準は組織のためのもの。
システム管理基準 しすてむかんりきじゅん
情報戦略の立案からIT投資、リスク低減のコントロールの整備・運用までの実践事項をまとめ、監査の判断尺度にもなる基準。
⚠ システム監査基準(監査人の行為規範)と逆にしやすい。
行為規範 こういきはん
ある立場の人がどう行動すべきかを定めた決まり。
⚠ 判断尺度(何ができていれば合格かの物差し)とは別。
判断尺度 はんだんしゃくど
監査で対象が適切かどうかを判定するための物差し。
⚠ システム監査ではシステム管理基準がこの役割を担う。
外観上の独立性 がいかんじょうのどくりつせい
監査人が組織上・立場上、監査対象と利害関係がない状態。
⚠ 精神上の独立性は心の中の公正さ。研修や能力要件は「専門能力」で、どちらの独立性でもない。
精神上の独立性 せいしんじょうのどくりつせい
監査人が公正で客観的な態度を保ち、判断を曲げないこと。
⚠ 外観上の独立性は所属などの組織上の独立。
保証 ほしょう
監査の結果として、コントロールが適切であることを第三者として表明すること。
⚠ 助言は改善のアドバイス。どちらも監査人の役割。
助言 じょげん
コントロールの改善に役立つ意見を監査人が提供すること。
⚠ 命令とは違い、実施するかどうかは相手が決める。
指摘・勧告 してき・かんこく
監査で見つけた問題点を示し、改善を勧めること。
⚠ 改善命令は監査人の権限外。
システム監査規程 しすてむかんさきてい
監査の目的・権限・責任などを定めた組織内のルールで、経営者が最終承認する。
⚠ 情報システム部門長や被監査部門長が承認するのは誤り。
被監査部門 ひかんさぶもん
監査を受ける側の部門。
内部監査部門 ないぶかんさぶもん
業務部門から独立し、社内の監査を担当する部門。
監査証拠 かんさしょうこ
監査意見の根拠となる、閲覧・確認などで集めた事実や資料。

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