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システム監査・2/11・11分

内部統制とコントロールの基本

ゴール

内部統制の4つの目的と、経営者・監査役・内部監査人の役割の違いを説明できる。あわせて、コントロールを予防・発見(検知)・復旧に分類でき、職務分離の不備、可監査性、監査証跡を問う過去問を自力で解ける。

内部統制は「不正やミスを仕組みで防ぐ」という会社の基本で、上場企業には法律で整備が求められています。試験では「誰が責任を持つか」「この対策はどの分類か」という用語の区別が繰り返し出題されます。

このレッスンで稽古する(用語チェック・過去問)

結論:内部統制は「ちゃんと回るための社内の仕組み」

内部統制とは、会社が目的どおりに健全に動くように、社内に組み込むルール・手続・チェックの仕組みのことです。仕組みを作って動かす最終責任は経営者にあります。IT システムに組み込んだ統制は IT 統制と呼び、内部統制の一部です。

金融庁の基準では、内部統制の目的は次の4つです。

目的 ねらい もたらす効果の例
業務の有効性及び効率性 仕事をムダなく目標どおりに進める 業務プロセスが効率的になる
財務報告の信頼性 決算書などの数字を正しく出す 株主や取引先からの信頼が高まる
事業活動に関わる法令等の遵守 法律や社内規程を守る 法令違反のリスクが下がる
資産の保全 お金・モノ・情報を守る 資産の不正使用や紛失を防ぐ

「財務報告の信頼性」の効果を問われたら、数字を見て判断する外部の人(株主・取引先)からの信頼を選びます。「業務の効率化」は別の目的の効果です。

誰が何をするか:最終責任は経営者

試験で最もよく問われるのは「内部統制の整備と運用に最終的な責任を負うのは誰か」です。答えは毎回経営者です。

立場 役割 ひっかけ方
経営者 内部統制を整備・運用する最終責任者 「監視する役」として出てきたら誤り
取締役会 内部統制の基本方針を決め、経営者を監督する 「監査役が基本方針を決定」は誤り
監査役 取締役の職務執行の監査の一環として、独立した立場から内部統制を監視・検証する 「最終責任者」として出てきたら誤り
内部監査人 モニタリングの一環として整備・運用状況を検討・評価し、改善を促す 正しい記述として出やすい
業務担当者(組織内のその他の者) 自分の業務の範囲で統制を実行する 最終責任者ではない
外部監査人(監査法人など) 経営者が行った内部統制の評価が適正かを監査する 評価する立場であり、責任者ではない
株主 会社の所有者だが、内部統制の責任者ではない 「最終的な責任を有する」は誤り

モニタリングとは、内部統制がきちんと働いているかを継続的に見張り、評価することです。

レストランにたとえると、衛生管理の仕組みを作って守らせる責任は**店長(経営者)**にあります。店内の点検係(内部監査人)は、日々の運用をチェックして改善を提案します。店が依頼した外部の検査会社(外部監査人)は、店長がまとめた衛生点検の報告が適正かどうかを確かめます。

会社の中取締役会基本方針を決める監督経営者整備・運用の最終責任実行させる業務担当者自分の業務で実行監査役独立して監視・検証内部監査人評価して改善を促す外部監査人(会社の外)経営者の評価が適正か監査
内部統制を整備・運用する最終責任は経営者にある。監査役と内部監査人は会社の中から見張り、外部監査人は外から経営者の評価を監査する。

コントロールの3分類:予防・発見(検知)・復旧

コントロール(統制)とは、リスクを抑えるための個々の対策です。問題が起きる前・起きた直後・起きた後のどの段階に効くかで分類します。この分野で最も出題が多いテーマです。

分類 いつ効くか 過去問に出た例
予防統制 起きる前に防ぐ ミスしにくい入力画面の設計、担当者を限定してアクセス権を付与、入力マニュアルの作成と教育、パスワード、職務分離
発見統制(検知統制) 起きた誤りや不正を事後に見つける 入力結果の出力リストと入力伝票の照合、メッセージ認証(改ざんの検知)
復旧統制 起きた後に立て直す コンティンジェンシープラン(緊急時対応計画)、バックアップからの復元
flowchart LR
  A["予防統制:起きる前に防ぐ"] --> B["誤り・事故の発生"]
  B --> C["発見統制:事後に見つける"]
  C --> D["復旧統制:元の状態に立て直す"]

見分けるコツ

  • 「照合する」「突き合わせる」「検知する」「ログを点検する」→ 発見(検知)統制
  • 事故や障害の後に業務を立て直すための計画(コンティンジェンシープラン)や、バックアップからの復元 → 復旧統制
  • 運用計画や手順書など通常業務のルール、画面設計、権限の付与、教育 → 予防統制

「計画」という言葉が入っているだけで復旧統制とは限りません。事故の後に使う計画かどうかで判断します。

職務分離:決める人と承認する人を分ける

職務分離(職務分掌)とは、一つの仕事を複数の人に分担させ、お互いにチェックし合う状態(相互牽制)を作ることです。一人で「決めて・承認して・実行する」と、ミスや不正があっても誰も気づけません。

監査の過去問では、オペレータが日次の運用計画を自分で決め、自分で承認している状態が、監査報告書に記載すべき指摘事項でした。一方、責任者が記録を確認する、記録を一定期間保管する、例外処理を記録する、の3つはいずれも適切な管理です。

選択肢で「自ら承認」「一人で〜から〜まで行う」と書かれていたら、職務分離の不備を疑ってください。

× オペレータ1人で完結(不備)計画を決める承認する実行する3つとも同じオペレータミスや不正に誰も気づけない○ 決める人と承認する人を分ける計画を決める承認する実行するオペレータ責任者オペレータ相互牽制:別の人がチェックするので気づける
オペレータが計画を決めて自分で承認すると誰も気づけない。承認を責任者に分けると相互牽制が働く。

可監査性と監査証跡:監査できる状態にしておく

可監査性(監査可能性、Auditability)とは、コントロールが有効に働いているかを監査できるように、情報システムが設計・運用されていることです。監査人の能力の話ではなく、システム側の性質を指します。

そのために欠かせないのが監査証跡(audit trail)です。入力から出力に至る処理の過程を後から追跡できる仕組みと記録のことで、ログが代表例です。宅配便の追跡番号で「いつ・どこを通ったか」をたどれるのと同じイメージです。

名前が似た用語との区別が問われます。

用語 中身 誰のものか
監査証跡 入力から出力までを追跡できる仕組みと記録 監査対象のシステム側
監査調書 監査人が監査の全過程で収集・作成した資料 監査人側(作業記録)
監査証拠 監査手続を実施して入手し、監査人が評価した資料(結論の根拠) 監査人側(判断の根拠)
可監査性 監査できるようにシステムが設計・運用されている性質 監査対象のシステム側
監査対象のシステム側入力処理出力いつ・誰が何を入力いつ・何をどう処理いつ・何を出力監査証跡=入力から出力までの記録後から出力→入力へ逆にたどれる監査人追跡して統制を確かめる
監査証跡は入力・処理・出力の各段階に残る記録で、監査人は出力から入力へ逆にたどって統制を確かめられる。

試験での問われ方

  • 最終責任者:選択肢に株主・監査役・監査人・業務担当者・経営者が並び、正解は経営者です。監視・評価する立場の人をおとりに使います。
  • 役割の記述問題:主語を入れ替えてきます。「経営者が独立した立場から監視・検証」「監査役が基本方針を決定」はどちらも誤りです。内部監査人=モニタリングで評価し改善を促すが正しい記述です。
  • 3分類:入力ミスの対策が4つ並び、「発見統制はどれか」と聞かれます。正解は照合で、残りの3つは予防統制です。
  • 可監査性:3回とも選択肢が同じでした。正解は「コントロールの有効性を監査できるように設計・運用」で、監査人の能力・証拠の十分性・部門の協力はおとりです。
例題 1

コントロールの分類:復旧に該当するものを選ぶ

情報システムのセキュリティコントロールを予防,検知,復旧の三つに分けた場合,復旧に該当するものはどれか。

ア オペレータとプログラマの職務分離
イ コンティンジェンシープラン
ウ パスワードの利用
エ メッセージ認証

出典:平成21年度 秋期 基本情報技術者試験 午前 問59

解き方と答えを見る
  1. 分類の軸を決める。予防=起きる前に防ぐ、検知=起きたことを見つける、復旧=起きた後に立て直す。
  2. ア「オペレータとプログラマの職務分離」:一人に権限を集めず、不正やミスを事前に防ぐので予防。
  3. ウ「パスワードの利用」:なりすましや不正アクセスを事前に防ぐので予防。
  4. エ「メッセージ認証」:データが改ざんされていないかを確かめ、改ざんを見つけるので検知。
  5. イ「コンティンジェンシープラン」:災害や障害が起きた後に業務を立て直すための緊急時対応計画なので復旧。

答え:イ(コンティンジェンシープラン)

例題 2

IT統制の分類:発見統制に該当するものを選ぶ

IT 統制を予防統制と発見統制に分類した場合,発見統制に該当するものはどれか。

ア データ入力画面を,操作ミスを起こしにくいように設計する。
イ データ入力結果の出力リストと入力伝票とを照合する。
ウ データ入力担当者を限定し,アクセス権限を付与する。
エ データ入力マニュアルを作成し,入力担当者に教育する。

出典:平成23年度 秋期 基本情報技術者試験 午前 問60

解き方と答えを見る
  1. 発見統制は「誤りが起きた後に見つける」統制。キーワードは照合・突き合わせ・点検。
  2. ア「ミスを起こしにくい画面設計」:入力ミスが起きる前に防ぐので予防統制。
  3. ウ「担当者を限定してアクセス権を付与」:不正な入力を事前に防ぐので予防統制。
  4. エ「マニュアル作成と教育」:正しい入力方法を事前に教えるので予防統制。
  5. イ「出力リストと入力伝票の照合」:入力した後に結果と元の伝票を突き合わせて誤りを見つけるので発見統制。

答え:イ(出力リストと入力伝票の照合)

要点(試験直前に読む)

  • 内部統制の目的は4つ:業務の有効性及び効率性・財務報告の信頼性・法令等の遵守・資産の保全。財務報告の信頼性の効果は「株主や取引先からの信頼向上」。
  • 内部統制の整備と運用の最終責任は経営者。監査役・監査人は監視・評価する側。
  • 内部監査人はモニタリングの一環として、整備・運用状況を評価して改善を促す。
  • 予防=事前に防ぐ(権限付与・画面設計・教育・パスワード・職務分離)、発見(検知)=事後に見つける(照合・メッセージ認証)、復旧=事故後に立て直す(コンティンジェンシープラン・バックアップからの復元)。
  • 「自分で決めて自分で承認」は職務分離の不備なので監査の指摘事項になる。
  • 可監査性=監査できるようにシステムが設計・運用されていること。監査証跡=入力から出力までを追跡できる仕組みと記録。

ひっかけ

  • 最終責任者の問題で監査役・監査人を選ばせる → 監視・評価する人は責任者ではない。答えは経営者。
  • 役割の記述で主語を入れ替える(「経営者が独立した立場から監視・検証」「監査役が基本方針を決定」)→ 監視・検証は監査役、基本方針の決定は取締役会。
  • 「計画」という語につられて運用計画や入力マニュアルを復旧統制にする → 通常業務のルールは予防統制。事故後に業務を立て直す計画だけが復旧統制。
  • 可監査性を「監査人の能力」や「監査証拠の十分性」と取り違える → 可監査性はシステム側の性質。
  • 監査証跡を監査調書・監査証拠と混同する → 監査証跡はシステムの処理を追跡する記録、監査調書と監査証拠は監査人側の資料。

用語(15)

内部統制 ないぶとうせい
会社が業務の効率化・正しい財務報告・法令遵守・資産保全を達成するために社内に組み込む仕組みと手続。
⚠ システム監査と混同しやすい。内部統制は会社が作って運用する仕組みで、監査はそれを評価する活動。
財務報告の信頼性 ざいむほうこくのしんらいせい
決算書などの財務情報を正しく作成・報告することで、内部統制の4つの目的の一つ。
⚠ 効果は「株主や取引先からの信頼向上」。「業務プロセスの効率化」は業務の有効性及び効率性の効果。
経営者 けいえいしゃ
内部統制を整備・運用する最終的な責任を負う者。
⚠ 監査役や監査人は監視・評価する立場で、責任者ではない。
監査役 かんさやく
取締役の職務執行の監査の一環として、独立した立場から内部統制の整備・運用状況を監視・検証する者。
⚠ 基本方針を決めるのは取締役会。最終責任を負うのは経営者。
内部監査人 ないぶかんさにん
モニタリングの一環として、内部統制の整備・運用状況を検討・評価し、必要に応じて改善を促す社内の担当者。
⚠ 外部監査人(監査法人など)は社外から、経営者による内部統制の評価が適正かを監査する。
モニタリング monitoring
内部統制が有効に機能しているかを継続的に監視・評価する活動。
IT統制 あいてぃーとうせい
情報システムに関わる内部統制で、システムによる処理の正確性や不正防止を確保するための仕組み。
予防統制 よぼうとうせい
誤りや不正が起きる前にそれを防ぐ統制。
⚠ 発見統制は起きた後に見つける。アクセス権の付与・画面設計・教育・運用手順書は予防統制。
発見統制(検知統制) はっけんとうせい(けんちとうせい)
起きてしまった誤りや不正を事後に見つける統制。
⚠ 「照合」「突き合わせ」「検知」が目印。立て直しまで行うのは復旧統制。
復旧統制 ふっきゅうとうせい
事故や障害が起きた後に、業務やデータを元の状態に立て直す統制。
⚠ 運用計画や手順書は通常業務のルールなので予防統制。事故後に使う計画や復元だけが復旧統制。
コンティンジェンシープラン contingency plan
災害や障害などの緊急事態が起きたときに、業務を継続・復旧するための対応をあらかじめ決めた計画。
⚠ 事前に作る計画だが、事故後の立て直しに使うため分類は復旧統制。
職務分離(職務分掌) しょくむぶんり(しょくむぶんしょう)
一つの業務の決定・承認・実行などを別々の人に分担させ、互いにチェックし合える(相互牽制)ようにすること。
⚠ 「自ら決定し自ら承認」は職務分離ができていない状態で、監査の指摘事項になる。
可監査性 かかんさせい(Auditability:監査可能性)
コントロールの有効性を監査できるように、情報システムが設計・運用されていること。
⚠ 監査人の能力や監査証拠の十分性ではなく、システム側の性質を指す。
監査証跡 かんさしょうせき(audit trail)
監査対象システムの入力から出力に至る処理過程を、後から追跡できる仕組みと記録。
⚠ 監査調書は監査人が作業中に集めた・作った資料。監査証拠は監査手続で入手して評価した資料。
監査調書 かんさちょうしょ
監査人が監査業務の全過程で収集・作成した資料をまとめた記録。
⚠ 監査証跡はシステム側の追跡記録で、監査調書は監査人側の作業記録。

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