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システム監査・3/11・10分

監査の進め方:計画から本調査まで

ゴール

システム監査を計画から本調査まで順番どおりに説明でき、「監査人は何を基準に・誰と・どの順で進めるか」を問う選択肢から正解を選べるようになる。予備調査と本調査の違いや、ウォークスルー法などの監査技法も見分けられるようになる。

システム監査は「独立した第三者が、ITが経営の役に立っているかを証拠で確かめる」仕事です。毎回出るのは、誰が監査チームに入れるか・何を優先して調べるか・どの順で進めるか、の3点です。要件定義のレビューを他チームにしてもらう感覚に近く、常識で判断できる問題が多い得点源です。

このレッスンで稽古する(用語チェック・過去問)

結論:監査は「独立した人が、リスクの高い所から、決まった順で、証拠を集める」

システム監査の問題は、ほとんどがこの一文で解けます。

  • 独立:監査される側(被監査部門)の人や、そのシステムを作った業者は監査人になれない
  • リスクの高い所から:問題が起きやすく、起きたときの影響が大きいシステムを優先する
  • 決まった順:目的を決める → 実態を知る → やることを決める → 証拠を集める → 評価する
  • 証拠:監査人の結論は、十分かつ適切な監査証拠(判断の裏付けとなる資料・記録・回答)に基づく

前のレッスンの「内部統制(コントロール)」は、今回の監査で評価される側です。監査人はコントロールがちゃんと働いているかを、証拠で確かめます。

監査の全体の流れ

監査は大きく 計画 → 予備調査 → 本調査 → 評価・結論 → 報告 → フォローアップ と進みます。このレッスンは前半の「計画から本調査まで」が範囲です。

flowchart LR
  A["監査目的の設定"] --> B["監査対象業務の把握(予備調査)"]
  B --> C["監査手続書の作成"]
  C --> D["証拠の収集(本調査)"]
  D --> E["コントロールの評価・結論"]
  E --> F["監査報告(監査依頼者へ)"]

覚え方は**「目的 → 把握 → 手続書 → 証拠 → 評価」**です。旅行にたとえると、目的地を決める → 現地の下調べ → 行程表を作る → 実際に行って確かめる → 感想をまとめる、の順です。行程表(手続書)を下調べより先に作ることはありません。

計画:目的と範囲は「依頼者のニーズ」から決める

監査人は、依頼者(多くは経営者)が何を知りたいかを把握した上で、監査の目的と対象範囲を決めます。目的が決まらないと、何を調べれば終わりなのかが決まらないからです。

対象の選び方はリスクアプローチです。リスクアセスメント(どこで・どれくらい問題が起きそうかを見積もる作業)を行い、問題発生の可能性と影響が大きいシステムを優先して監査対象にします。

対象の選び方 正誤 理由
問題発生の可能性と影響が大きいシステムから ◯ リスクに基づいている
運用開始時期の順に全部 ✕ リスクと無関係・非効率
監査体制で実施できるものだけ ✕ 監査側の都合で選んでいる
無作為に抽出 ✕ リスクを考えていない
リスクアセスメントで対象を選ぶ問題発生の可能性大小起きやすいが影響は小優先して監査対象に後回し影響は大だが起きにくい小大起きたときの影響の大きさ
リスクアプローチでは、問題が起きやすく影響も大きい右上のシステムを優先して監査対象にする。

実施体制:独立性と、報告先は「監査依頼者」

この分野で一番出るテーマです。判断基準は独立性の1つだけです。監査人は監査対象から独立していなければならず、自分で作ったものを自分で評価してはいけません。

選択肢によく出る行為 正誤 見分け方
監査結果を監査依頼者に報告し、依頼者が改善を指示する ◯ 改善を命じるのは依頼者(経営者)の役目
被監査部門(情報システム部門・利用部門)のメンバでチームを組む ✕ 「詳しいから」は罠。独立性がない
対象システムを開発・保守している外部業者に監査を委託する ✕ 自分の仕事を自分で評価することになる
監査人が改善計画を作り、自分で実行する ✕ 監査人は提案まで。実行すると次の監査で自分を評価することになる
他の専門家の支援を受け、結果の判断も専門家の責任にする ✕ 支援は受けてよいが、判断の責任は監査人に残る

たとえるなら、監査人はスポーツの審判です。審判は選手(被監査部門)から選ばず、反則を指摘はしても、代わりにプレーはしません。

監査依頼者(経営者)監査人被監査部門①報告②改善を指示評価監査人は提案まで。判断の責任も監査人に残る独立性がないので ✕✕ 被監査部門のメンバでチームを組む✕ 開発・保守している外部業者に委託する✕ 監査人が改善計画を作り自分で実行する
監査人は被監査部門から独立して評価し、結果を監査依頼者に報告する。改善を指示するのは依頼者で、監査人は自分では実行しない。

予備調査と本調査の違い

システム監査基準では、本調査の前に予備調査を行います。予備調査で業務の実態をつかみ、そこから何をどう調べるか(監査手続)を決めて、本調査で証拠を集めます。

予備調査 本調査
タイミング 本調査に先立って行う 予備調査と手続書の作成の後
目的 監査対象業務の実態を把握する 十分かつ適切な監査証拠を入手する
主な活動 資料を読む、担当者に聞く、業務の流れを見る 監査手続書に沿って技法を使い、証拠を集めて評価する

よく出る誤りの選択肢は「被監査部門と監査計画を調整するため」「個別計画書を作るため」「本調査を補うために並行して行う」です。予備調査の目的は実態の把握だけと覚えてください。

監査手続とは、監査項目について十分かつ適切な証拠を入手するための手順のことです。計画の立案、報告書の作成、チーム編成は監査の別の工程で、監査手続ではありません。

監査技法:どうやって証拠を集めるか

本調査では、次の技法を組み合わせて証拠を集めます。説明文を読んで技法名を当てる問題がよく出ます。

技法 何をするか キーワード
ウォークスルー法 データの生成→入力→処理→出力→活用の流れとコントロールを、書面上または実際に追跡する 流れを追う
インタビュー法 監査人が直接、関係者に口頭で質問して回答を得る 口頭で聞く
ドキュメントレビュー法(文書査閲法) 資料や文書を入手して内容を点検する 書類を読む
チェックリスト法 監査人が作ったチェックリストに関係者が回答する 作るのは監査人
現地調査法 監査人が現場に行って、自分で観察・調査する 時間外に限らない
テストデータ法 監査人が用意したテストデータをプログラムで処理し、期待した結果が出るかを確かめる 期待結果と比べる
監査モジュール法 監査用のプログラム(モジュール)を本番システムに組み込んでおき、データを集める 組み込む
CAAT(コンピュータ支援監査技法) コンピュータを使った監査技法の総称。汎用ソフトを使ってもよい 専用ソフトに限らない

ペネトレーションテスト法は、外部から実際に侵入を試してセキュリティの弱点を探す技法で、流れの追跡ではありません。

ウォークスルー法:データの流れを追う生成入力処理出力活用✓✓✓✓✓✓ = 各段階のコントロールを確かめる監査人が順に追跡する書面上でも、実際にたどってもよい
ウォークスルー法は、データの生成から活用までの流れと各段階のコントロールを、監査人が順番に追跡する技法。

サンプリング:全件は見ずに一部から判断する

取引が何万件もあると全件は確認できないので、一部(サンプル)を抜き出して全体を判断します。用語は1つ覚えれば足ります。

許容逸脱率は、内部統制からの逸脱(ルールどおりに処理されなかった割合)として受け入れられる上限です。監査人はサンプル件数を決めるときにこれを使います。誤りの選択肢には「サンプリングリスク=固有リスク×統制リスク」「母集団=リスクの高いデータの集合」「統計的サンプリング=特定の例外取引を全部抜き出す方法」があり、どれも定義の取り違えです。

例題 1

監査の実施手順を並べ替える問題

システム監査の実施手順のうち,適切なものはどれか。

ア 監査対象業務の把握 → 監査手続書の作成 → 監査目的の設定 → 証拠の収集 → コントロールの評価・結論
イ 監査対象業務の把握 → 証拠の収集 → 監査目的の設定 → 監査手続書の作成 → コントロールの評価・結論
ウ 監査手続書の作成 → 監査目的の設定 → 監査対象業務の把握 → 証拠の収集 → コントロールの評価・結論
エ 監査目的の設定 → 監査対象業務の把握 → 監査手続書の作成 → 証拠の収集 → コントロールの評価・結論

出典:基本情報技術者試験 科目A免除 修了試験 20110724 実施分 問60

解き方と答えを見る
  1. 最初に来るものを決める。何を確かめるか決めないと何も調べられないので、先頭は「監査目的の設定」。この時点でエだけが残る(ア・イは「業務の把握」、ウは「手続書の作成」で始まっている)
  2. 2番目を確認する。目的が決まったら、予備調査で対象業務の実態をつかむ=「監査対象業務の把握」
  3. 3番目を確認する。実態が分かって初めて、何をどう調べるかを書いた「監査手続書」が作れる
  4. 4番目を確認する。手続書に沿って本調査を行う=「証拠の収集」
  5. 最後に、集めた証拠で「コントロールの評価・結論」を出す。エの順番と一致する

答え:エ(監査目的の設定 → 監査対象業務の把握 → 監査手続書の作成 → 証拠の収集 → コントロールの評価・結論)

要点(試験直前に読む)

  • 監査人は経営者(依頼者)のニーズを把握してから、監査の目的と対象範囲を決める
  • 監査対象は「問題発生の可能性と影響が大きい」システムを優先する(リスクアプローチ)
  • 監査結果は監査依頼者に報告し、改善を指示するのは依頼者。監査人は改善の提案まで
  • 手順は「目的 → 業務把握(予備調査)→ 手続書 → 証拠収集(本調査)→ 評価・結論」
  • 予備調査は実態の把握、本調査は十分かつ適切な証拠の入手。監査手続は証拠を入手する手順
  • ウォークスルー法はデータの流れとコントロールを追跡する。許容逸脱率はサンプル件数を決めるときに使う

ひっかけ

  • 「開発内容を熟知した情報システム部門のメンバでチームを組む」→ 詳しくても被監査部門の人なので✕。独立性を最優先で判断する
  • 「改善計画を策定して実行する」「開発・保守業者に監査を委託する」→ 監査人が当事者になるので✕
  • 予備調査を「監査計画の調整」「個別計画書の作成」「本調査と並行した補完」と言い換えた選択肢 → 正解は「本調査に先立って実態を把握する」
  • 手順の並べ替えで手続書が先頭や2番目に来る → 実態を知らないと手続書は書けないので✕
  • 技法名の取り違え:口頭で聞く=インタビュー法、書類を読む=ドキュメントレビュー法、データで期待結果を確かめる=テストデータ法、流れを追う=ウォークスルー法

用語(15)

システム監査 しすてむかんさ
独立した監査人が、情報システムのリスクに対するコントロールが適切に整備・運用されているかを証拠に基づいて評価し、依頼者に報告すること。
監査依頼者 かんさいらいしゃ
監査を依頼し、監査報告を受けて改善を指示する人(多くは経営者)。
⚠ 被監査部門とは別。報告先は被監査部門ではなく依頼者
被監査部門 ひかんさぶもん
監査を受ける側の部門。
⚠ 監査チームのメンバにはなれない(独立性がないため)
独立性 どくりつせい
監査人が監査対象と利害関係や身分上の関係を持たず、公正に判断できる状態。
⚠ 「業務に詳しいから被監査部門の人を入れる」は独立性違反
リスクアセスメント りすくあせすめんと
問題が起きる可能性とその影響の大きさを見積もり、優先順位をつける作業。
⚠ 監査対象は体制・順序・無作為ではなく、リスクの大きさで選ぶ
監査計画 かんさけいかく
監査の目的・対象範囲・時期・体制などを、依頼者のニーズを踏まえて事前に決めたもの。
予備調査 よびちょうさ
本調査に先立ち、監査対象業務の実態を把握するために行う調査。
⚠ 本調査は証拠の入手が目的。計画の調整や本調査の補完ではない
本調査 ほんちょうさ
監査手続書に沿って、十分かつ適切な監査証拠を入手し評価する調査。
⚠ 予備調査は実態の把握が目的
監査手続 かんさてつづき
監査項目について、十分かつ適切な監査証拠を入手するための手順。
⚠ 計画立案・報告書作成・チーム編成は監査手続ではない
監査証拠 かんさしょうこ
監査人が結論を出すための裏付けになる資料・記録・回答など。
ウォークスルー法 うぉーくするーほう
データの生成から入力・処理・出力・活用までの流れと、そこに組み込まれたコントロールを、書面上または実際に追跡する技法。
⚠ テストデータ法は用意したデータで期待結果を確かめる。ウォークスルーは流れを追う
インタビュー法 いんたびゅーほう
監査人が直接、関係者に口頭で質問して回答を得る技法。
⚠ チェックリスト法は書面での回答。チェックリストを作るのは監査人
テストデータ法 てすとでーたほう
監査人が用意したテストデータを対象プログラムで処理し、期待した結果が出るかを確かめる技法。
⚠ 監査モジュール法は監査用プログラムを本番に組み込む
CAAT Computer Assisted Audit Techniques(コンピュータ支援監査技法)
コンピュータを利用して行う監査技法の総称。
⚠ 専用ソフトに限らない(汎用ソフトでもよい)
許容逸脱率 きょようついだつりつ
監査人が受け入れられる内部統制の逸脱率の上限で、サンプル件数を決めるときに使う。
⚠ サンプリングリスク(サンプルからの結論が全件を調べた場合と食い違うリスク)とは別物

このレッスンの過去問

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