クラウド・仮想化・エッジと性能の増やし方
クラウド(IaaS/PaaS/SaaS)、エッジコンピューティング、ライブマイグレーション、スケールアウトとスケールアップの違いを区別して、説明文を選ぶ問題を正解できるようになる。
この分野の問題は、似た用語の説明を入れ替えた選択肢から正しいものを選ばせる形がほとんどです。用語ごとに『誰が何を用意するか』『どこで処理するか』『どうやって性能を増やすか』を押さえれば、迷わず選べます。
このレッスンで稽古する(用語チェック・過去問)結論:3つの軸で整理する
このレッスンの用語は、次の3つの軸で整理できます。
- どう増やすか:スケールアウト(台数を増やす)/スケールアップ(1台を強くする)
- 誰が何を用意するか:IaaS/PaaS/SaaS
- どこで処理するか・どう動かすか:クラウド(ネットワークの向こう)/エッジ(データが生まれる場所の近く)/ライブマイグレーション(動かしたまま引っ越す)
出題が最も多いのはスケールアウトです(本試験と免除試験で合わせて5回)。ここから読みます。
スケールアウトとスケールアップ(最頻出)
スケールアウト=サーバの台数を増やす、スケールアップ=1台のサーバを高性能にするです。英語の「out(外へ広げる)」と「up(上へ伸ばす)」で覚えます。
たとえるとスーパーのレジです。お客が増えたとき、レジを増設して店員を増やすのがスケールアウト、今の店員をベテランに替えて1台あたりを速くするのがスケールアップです。
| スケールアウト | スケールアップ | |
|---|---|---|
| やること | サーバの台数を増やす | CPU を上位品に替える、メモリを増設する、上位機種に入れ替える |
| 向いている処理 | 分割して並行できる処理(参照系=データを読むだけの処理が多いもの) | 分割しにくい一括処理、整合性が重要な更新処理 |
| 弱点 | 台数が増えるほど、サーバ間でデータをそろえる手間(オーバヘッド)が増える | 1台の性能には上限があり、高価になる |
スケールアウトが向くかどうかの判断がよく問われます。読むだけの処理は、どのサーバが答えても結果が同じなので、台数を増やすほど速くなります。データを書き換える処理は、全サーバのデータをそろえる手間がかかるため、台数を増やしても速くなりにくいです。
※トランザクション=ひとまとまりの処理(例:1件の注文登録)。オーバヘッド=本来の処理以外にかかる余分な手間。
IaaS / PaaS / SaaS:クラウド事業者がどこまで用意するか
3つの違いは、クラウド事業者(プロバイダ)がどの層まで用意して管理するかです。I → P → S の順に、事業者が受け持つ範囲が広がります。
料理でたとえると、IaaS は厨房設備だけを借りる(食材も調理も自分)、PaaS は下ごしらえ済みの材料と道具がそろったキッチンを借りる(調理は自分)、SaaS は完成した料理が出てくるイメージです。
| 事業者が用意する範囲 | 利用者が用意・管理するもの | 利用者ができること | |
|---|---|---|---|
| IaaS(Infrastructure) | CPU・メモリ・ストレージ・ネットワークなどの基盤 | OS・ミドルウェア・アプリ | OS などへの設定・制御をある程度できる。自由度が最も高い |
| PaaS(Platform) | 基盤+OS+ミドルウェアなどの開発・運用環境 | 自分で作るアプリ | 用意された環境の上でアプリを開発・運用できる。プラットフォームは変更できない |
| SaaS(Software) | アプリまで全部 | 何も用意しない(設定程度) | アプリをそのまま、またはカスタマイズして使う。プラットフォームは変更できない |
※ミドルウェア=OS とアプリの中間で働くソフト(DBMS や Web サーバソフトなど)。
移行するときのメリット・注意点も問われます。
- PaaS や SaaS では、OS のアップデートやプラットフォームの管理を事業者が行うので、運用の負担が減る(正しい記述)。
- 社内独自の機能を持つシステムを SaaS へ移すのは難しい。SaaS は用意されたアプリを使う方式なので、独自機能が入るとは限らない。
- 開発環境の自由度が高いのは IaaS で、SaaS ではない。
- どの事業者も高い可用性を保証しているわけではない。契約内容(SLA)の確認が必要。
仮想化とライブマイグレーション
仮想化は、1台の物理サーバの中にソフトウェアで複数の『仮想サーバ』を作る技術です。クラウドの土台になっています。
ライブマイグレーションは、動いている仮想サーバを止めずに別の物理サーバへ移す技術です。物理サーバの保守や負荷の分散をするときに、利用者を止めずに済みます。免除試験で4回出ています。
ひっかけでは、仮想化・クラウドの周辺用語の説明が並びます。
| 用語 | 説明 |
|---|---|
| ライブマイグレーション | 稼働中の仮想サーバを、停止せずに別の物理サーバへ移す |
| マルチテナント | 1つのサーバや DB を複数の利用者で共有しつつ、利用者ごとのデータは分離する |
| プロビジョニング | 利用者の要求に応じて資源を動的に割り当て、不要になったら回収する |
| 階層型ストレージ管理 | データの使用頻度などに応じて、適したストレージへ自動配置する |
キーワードは『停止せず・移す』です。
クラウドとエッジ、その他の紛らわしい用語
クラウドコンピューティングは、コンピュータの資源をネットワーク経由で提供し、利用者がスケーラビリティ(規模を増減しやすいこと)やアベイラビリティ(止まらず使えること=可用性)の高いサービスを手軽に使える形態です。
エッジコンピューティングは、センサなどデータが生まれる場所の近くにあるサーバでデータを一次処理し、リアルタイム性を高める方式です。遠くのクラウドまで送る時間を省けます。
選択肢には、次の用語の説明が混ぜられます。
| 用語 | キーワード |
|---|---|
| クラウドコンピューティング | 資源をネットワーク経由で提供、スケーラビリティ・可用性 |
| エッジコンピューティング | データ発生源の近くで一次処理、リアルタイム性 |
| IoT | 電化製品などをネットワークに接続して監視・操作する |
| グリッドコンピューティング | 多数の PC を束ねて、スーパコンピュータ並みの計算能力を出す |
| P2P | サーバを介さず、PC 同士が対等に通信する |
| サーバレス | 要求が来たときだけ処理環境を起動し、終われば解放する |
| リッチクライアント | 画面生成などをクライアント側で行い、操作性を高める |
要点(試験直前に読む)
- スケールアウト=台数を増やす。スケールアップ=1台を強くする(CPU・メモリ・上位機種)。
- スケールアウトが向くのは、参照系が多く分散しやすい処理。分割しにくい一括処理や、整合性を保つ手間が大きい更新処理には向かない。
- IaaS は基盤だけ、PaaS はミドルウェアまで(アプリは自分で作る)、SaaS はアプリまで提供される。
- ライブマイグレーション=稼働中の仮想サーバを止めずに別の物理サーバへ移す。
- エッジ=データ発生源の近くで一次処理してリアルタイム性を高める。クラウド=資源をネットワーク経由で提供する。
ひっかけ
- 『上位機種に置き換える』『メモリを増設する』はスケールアウトではなく、スケールアップ。『台数』という言葉があるかで見分ける。
- PaaS の問題では、IaaS(OS への設定・制御ができる)と SaaS(アプリをそのまま使う)の説明が並ぶ。『アプリを開発して運用できる』が PaaS。
- クラウド移行のメリット問題では、『SaaS で自由度の高い開発環境』『SaaS なら独自機能の移行も容易』『どのプロバイダも高可用性を保証』は誤り。正しいのは『プラットフォーム管理を事業者が行うので負担が減る』。
- ライブマイグレーションの問題では、マルチテナント(共有しつつ分離)、プロビジョニング(割り当てと回収)、階層型ストレージ管理(データの自動配置)が混ざる。『停止せずに移す』を探す。
- エッジやクラウドの定義の問題では、サーバレス(必要なときだけ起動)、グリッド(多数の PC を束ねる)、IoT(機器をネットワークにつなぐ)、P2P(PC 同士が対等に通信)の説明がひっかけとして並ぶ。
用語(15)
サーバやストレージなどの資源をネットワーク経由で提供し、必要な分だけ手軽に使えるようにする形態。
⚠ グリッドコンピューティングは多数の PC の計算力を束ねるもの。資源を『提供』するのがクラウド。
負荷に合わせて、システムの規模や能力を増やしたり減らしたりしやすい性質。
⚠ アベイラビリティは止まらずに使える性質。スケーラビリティは『増減のしやすさ』。
システムが止まらずに、使いたいときに使える度合い。
⚠ スケーラビリティと混同しない。可用性は『止まらないこと』。
CPU・ストレージ・ネットワークなどの基盤だけを提供し、OS から上は利用者が用意するサービス。
⚠ PaaS はミドルウェアまで提供される。OS への設定・制御ができる自由度の高さが IaaS の特徴。
アプリの開発・運用に必要な OS やミドルウェアまでを提供し、利用者はその上でアプリを作って動かすサービス。
⚠ SaaS はアプリまで提供される。『自分でアプリを開発する』とあれば PaaS。
完成したアプリまで提供し、利用者はそれをそのまま、またはカスタマイズして使うサービス。
⚠ 自由度は最も低いので、社内独自の機能の移行や自由な開発環境には向かない。
サーバなどの機器を自社で保有し、自社の施設で運用する形態。
⚠ クラウドと対になる言葉。
OS とアプリの間で、共通の機能を提供するソフトウェア(DBMS など)。
1台の物理機器の中に、ソフトウェアで複数の仮想的なサーバなどを作る技術。
⚠ グリッドコンピューティングは逆に、複数の機器を1つの計算資源のように束ねる。
稼働中の仮想サーバを、OS やソフトを止めずに別の物理サーバへ移す技術。
⚠ プロビジョニングは資源の割り当てと回収。『停止せずに移す』ならライブマイグレーション。
1つのサーバや DB を複数の利用者で共有しながら、利用者ごとのデータを分けて扱う方式。
⚠ ライブマイグレーションの問題でひっかけとして出る。キーワードは『共有しつつ分離』。
利用者の要求に応じて資源を動的に割り当て、不要になったら回収する仕組み。
⚠ ライブマイグレーションは稼働中のサーバの移動。プロビジョニングは資源の割り当て。
データが生まれる場所の近くにあるサーバでデータを一次処理し、リアルタイム性を高める方式。
⚠ サーバレスは必要なときだけ起動する方式。リッチクライアントは画面処理をクライアント側で行う方式。『データ発生源の近く』がエッジ。
サーバの台数を増やして、システム全体の処理能力を上げる方法。
⚠ CPU 交換・メモリ増設・上位機種への入れ替えはすべてスケールアップ。『台数』が出てきたらスケールアウト。
CPU の交換、メモリの増設、上位機種への入れ替えなどで、1台のサーバを高性能にする方法。
⚠ 台数を増やすのはスケールアウト。
このレッスンの過去問
- クラウドコンピューティングの定義平成24年度 春期 基本情報技術者試験 午前 問15
- クラウドサービスモデルの分類(IaaS/PaaS/SaaS)令和8年度 基本情報技術者試験 科目A 公開問題 問4
- エッジコンピューティングの定義令和5年度 基本情報技術者試験 科目A 公開問題 問4
- ライブマイグレーションの定義(仮想サーバの無停止移動)基本情報技術者試験 科目A免除 修了試験 20250608 実施分 問11
- スケールアウトとスケールアップの違い平成30年度 春期 基本情報技術者試験 午前 問15