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セキュリティ・11/23・10分

端末・媒体・クラウドからの情報漏えい対策

ゴール

情報漏えいの原因(廃棄・紛失・盗難・抜き取り・端末へのマルウェア侵入・クラウド利用)ごとに、正しい対策を選べるようになる。SaaSを使うときに利用企業に何の責任が残るかを判断できるようになる。

情報漏えい対策の問題は、完全性(チェックサム)や可用性(バックアップ)の対策をわざと選択肢に混ぜてくる定番の出題です。実務でも、PCの廃棄・紛失やSaaS導入で「何をやれば漏れないか」を決めるときにそのまま使えます。

このレッスンで稽古する(用語チェック・過去問)

結論:漏えい対策=「データを読ませない」対策

情報漏えい対策は、情報セキュリティの3要素のうち機密性(許可された人だけが読める状態)を守る対策です。選択肢に完全性や可用性の対策が混ざっていたら、それは漏えい対策ではありません。まずこの表で、選択肢がどの要素の対策かを見分けます。

要素 守るもの 代表的な対策 漏えい対策か
機密性 他人に読まれない 暗号化・アクセス制御・上書き消去 ○
完全性 改ざん・破損していない チェックサム(データから計算した検査用の値)・ハッシュ値 ×
可用性 必要なときに使える ミラーリング(同じデータを2台に書く)・遠隔地バックアップ ×

バックアップを遠隔地に置くと、コピーが増えるぶん漏えいリスクはむしろ増えます。「データが無事か」と「他人に読まれないか」は別の問題だと覚えてください。

廃棄するディスク:全領域をランダムに上書き(最頻出)

廃棄する磁気ディスクは、ランダムなビット列で全領域を複数回上書きします。 ファイルを削除しても消えるのは「どこに何があるか」という管理情報だけで、データの中身はディスクに残っています。専用ツールを使えば中身を復元できます。

たとえるなら、本の目次を破っても本文のページは残っている状態です。本文のページを全部塗りつぶさないと、読まれてしまいます。

方法 中身のデータは 判定
ファイルを削除・初期化(フォーマット) 残る ×
MBR(マスタブートレコード:ディスク先頭の起動用の領域)の消去 残る(先頭部分しか消えない) ×
ファイル名を何度も変更 残る(名前しか変わらない) ×
ファイルを何度も圧縮 残る(形が変わるだけ) ×
全領域をランダムなビット列で複数回上書き 復元できない ○
物理的に破壊(穴あけ・粉砕) 復元できない ○

選択肢の中の「全領域」という言葉が正解の目印です。「MBRを複数回消去」のように、「複数回」で念入りそうに見せるひっかけがあります。消す範囲が一部なら、何回消しても×です。

ディスクの中(左端=先頭の管理情報)ファイル削除・初期化×残残残残残残残管理情報だけ消える→中身は残る ×MBRを複数回消去×残残残残残残残先頭しか消えない→中身は残る ×全領域をランダムなビット列で複数回上書き0110110010011100全部上書き→復元できない ○残=データの中身が残る ×=消えた部分
消す範囲が一部だけなら中身は残り、全領域を上書きして初めて復元できなくなる。

持ち出すPC:暗号化とHDDパスワード

ノートPCの紛失・盗難への対策は、ストレージ(データを保存する装置)の暗号化です。 拾った人がディスクを取り出しても、鍵がなければ中身は意味のない文字列にしか見えません。

もう一つ、ディスクを抜き取って攻撃者自身のPCにつなぐ攻撃があります。このとき、元のPCに設定した鍵の多くは役に立ちません。玄関に鍵をかけても、金庫ごと持ち去られたら玄関の鍵は無意味なのと同じです。

対策 どこにかかる鍵か 抜き取って別PCにつながれたら
OSのログインパスワード 元のPCのOS 回避される
ファイルの読取り権限 元のPCのOSが管理 回避される(別PCのOSは従わない)
BIOSパスワード 元のPCの本体(起動時) 回避される
HDDパスワード ディスク自体 有効
ストレージの暗号化 データ自体 有効

見分け方は「その鍵はディスクと一緒に持ち去られるか」です。ディスクやデータそのものにかかる鍵だけが、抜き取りに対抗できます。

鍵はディスクと一緒に持ち去られるか元のPCOSのログインパスワードファイルの読取り権限BIOSパスワードPCに残る鍵→回避されるディスク(抜き取られる)攻撃者のPCディスクHDDパスワードストレージの暗号化鍵が一緒→有効
ディスクを抜き取られると、元のPCに残る鍵は無意味になり、ディスク自体にかかる鍵だけが一緒に移動して効き続ける。

端末にデータを置かない:シンクライアントとVDI

シンクライアントは、端末にディスク(外部記憶装置)を持たせず、処理とデータをサーバ側に集める方式です。端末にデータが残らないので、紛失や盗難があっても漏えいしにくくなります。守る対象はサーバに集中するので、ウイルス対策もサーバを守ることが中心になります。

VDI(仮想デスクトップ基盤)は、PCのデスクトップ環境をサーバ上で動かし、手元の端末にはその画面の画像だけを送る仕組みです。DMZ(社内ネットワークとインターネットの間に置く緩衝区域)のVDIサーバでWebブラウザを動かせば、Webサイトから受け取ったデータはサーバ止まりになります。PCに届くのは画像だけなので、未知のマルウェアでもPCにはダウンロードされません。

flowchart LR
  W["Webサイト(マルウェアがあるかも)"] -->|"受信データ"| V["DMZのVDIサーバ(ブラウザはここで動く)"]
  V -->|"画面の画像データだけ"| P["社内のPC"]

「実行ファイルを削除して送る」「不正なコードが検知されなければ送る」は、データそのものをPCに送っています。これでは、まだ知られていない手口(パターン未登録)のマルウェアは防げません。

VDIの定義を問う問題では、似た言葉と取り違えさせてきます。

用語 何をするものか
VDI デスクトップ環境をサーバ上で仮想化し、どの端末からでも自分のPC環境として使う
VPN インターネット上に、特定の人だけが使える仮想の専用線を作る
文書の電子化ツール 紙の資料を電子化して遠隔地から見られるようにする
Web会議 ネットワーク越しに対面に近い会議をする

スマホの一元管理:MDM

MDM(モバイルデバイス管理)は、会社が従業員に貸すスマートフォンに、セキュリティ設定やアプリの配信を一括で行い、利用状況を管理する仕組みです。紛失したときに遠隔で端末をロックしたりデータを消したりするのにも使えます。

用語 正体
MDM 組織がモバイル端末を一元管理する仕組み
BYOD 私物の端末を業務に使うこと(管理の仕組みではない)
ECM 企業内の文書やコンテンツを管理する仕組み
LTE 携帯電話の通信規格

SaaS:不要になるのは「作ること」だけ(頻出)

SaaS(ソフトウェアをサービスとしてネット越しに使う形態)で利用企業が要らなくなるのは、システムの構築・開発に関わる検討だけです。アプリ開発のセキュリティ要件を定義したり、ログの保存容量を設計したりする作業は、提供事業者が担当します。

一方で、誰に使わせるか・止まったときにどう業務を回すか・社内のルールをどうするかは、引き続き利用企業の責任です。SaaSの導入は家具付きの賃貸に似ています。建物を建てる必要はありませんが、合鍵を誰に渡すかや、留守中の戸締まりは住む人が決めます。

項目 SaaS利用で不要になるか
システム構築・アプリ開発のセキュリティ要件定義、ログ保存容量の設計 不要(事業者側)
障害時の業務手順・バックアップの検討 必要
アクセス管理(パスワードの初期化手続、パスワードポリシ) 必要
情報セキュリティ管理規程の策定・管理担当者の設置 必要

この問題は、ほぼ同じ文面で何度も出ています。選択肢はどれも「〜を行わずに済み,〜が不要である」という形です。「構築を行わずに済み」で始まる選択肢が正解だと覚えておけば、すぐに選べます。

SaaSで不要になるのは「作ること」だけアクセス管理(誰に使わせるか)障害時の業務手順・バックアップ情報セキュリティ管理規程・担当者システム構築・アプリ開発セキュリティ要件定義・ログ容量設計利用企業に残る(必要)事業者側(不要になる)家具付き賃貸:建物は大家、戸締まりは住む人
SaaSでは土台の構築・開発だけが事業者側に移り、その上の使い方の責任は利用企業に残る。

試験での問われ方

  • 「情報漏えい対策はどれか」型:チェックサム(完全性)、ミラーリングや遠隔バックアップ(可用性)が並びます。暗号化だけが機密性の対策です。
  • 廃棄型:MBRの消去、ファイル名の変更、圧縮を「複数回」やって念入りに見せます。全領域の上書きを選びます。
  • 抜き取り型:OSログイン、BIOS、ファイル権限が並びます。ディスク自体にかかるHDDパスワードを選びます。
  • VDI型:「削除して送る」「検知して送る」が並びます。画像だけを送るものを選びます。
  • SaaS型:「〜が不要」の4択です。開発・構築に関するものだけが正解です。

要点(試験直前に読む)

  • 情報漏えい対策=機密性の対策。暗号化は○、チェックサム(完全性)・ミラーリングや遠隔バックアップ(可用性)は×。
  • 廃棄するディスクは、ランダムなビット列で「全領域」を複数回上書きする。削除・MBR消去・ファイル名変更・圧縮では中身が残る。
  • ディスクの抜き取りに有効なのは、ディスク自体にかかる鍵(HDDパスワード・暗号化)だけ。OSログイン・BIOS・ファイル権限は別PCで回避される。
  • VDIは、PCに画面の画像だけを送る。だから未知のマルウェアでもPCに届かない。
  • MDM=貸与したスマホの一元管理。BYOD=私物の業務利用。
  • SaaSで不要になるのは構築・開発の検討だけ。アクセス管理・障害時の手順・セキュリティ規程は利用企業に残る。

ひっかけ

  • 「チェックサム」「ミラーリング」「バックアップを遠隔地に保管」は漏えい対策に見えるが違う。3要素のどれを守る対策かを確かめる。
  • 「MBRを複数回消去」は、「複数回」で念入りに見せるひっかけ。消す範囲が一部なら何回消しても×。「全領域」かどうかで判断する。
  • 抜き取り攻撃でBIOSパスワードやOSログインを選ばせる。その鍵がディスクと一緒に持ち去られるかで見破る。
  • VDIの問題で「実行ファイルを削除」「不正コードを検知」を選ばせる。データそのものをPCに送る方式は、未知のマルウェアを防げない。
  • SaaSで「運用・アクセス管理・セキュリティ管理が不要」と言い切る選択肢は×。正解は「構築を行わずに済み」で始まる選択肢。

用語(15)

機密性 きみつせい
許可された人だけが情報を読める状態を保つこと。情報漏えい対策はこれを守る対策。
⚠ 完全性(改ざんされていないこと)・可用性(使いたいときに使えること)と区別する。暗号化は機密性、チェックサムは完全性、バックアップは可用性。
チェックサム checksum
データから計算した検査用の値で、送信や保存の途中で壊れていないかを確かめるもの。
⚠ 完全性の対策で、漏えい対策ではない。暗号化と違い、中身を隠す働きはない。
ミラーリング mirroring
同じデータを2台以上のディスクに同時に書き込み、1台が壊れても使い続けられるようにすること。
⚠ 可用性の対策。コピーが増えるだけで、漏えいは防げない。
全領域の上書き消去 ぜんりょういきのうわがきしょうきょ
ディスクの全領域をランダムなビット列などで上書きし、元のデータを復元できなくすること。
⚠ ファイル削除・フォーマット・MBR消去では、中身のデータが残る。「全領域」かどうかで見分ける。
MBR Master Boot Record
ディスクの先頭にある、起動やディスクの区切り方の情報を記録した小さな領域。
⚠ MBRを消しても、ファイルの中身は消えない。廃棄対策としては不十分。
ストレージの暗号化 すとれーじのあんごうか
ディスクに保存したデータを暗号化し、鍵がなければ読めないようにすること。紛失・盗難・抜き取りに有効。
⚠ バックアップやミラーリングは「データを失わない」ための対策で、「読ませない」ための対策ではない。
HDDパスワード はーどでぃすくぱすわーど
ハードディスク自体に設定するパスワードで、別のPCにつないでもパスワードなしでは読めない。
⚠ BIOSパスワードは元のPC本体にかかる鍵なので、ディスクを抜かれると無効になる。鍵がディスクと一緒に持ち去られるかで見分ける。
BIOSパスワード Basic Input/Output System パスワード
PC本体の起動時に入力を求めるパスワード。
⚠ ディスクを抜き取って別のPCにつながれると回避される。HDDパスワードとの違いに注意。
シンクライアント thin client
端末にディスクを持たせず、処理とデータ管理をサーバ側で行う方式。端末から情報が漏れにくい。
⚠ VDIはシンクライアントを実現する代表的な方式の一つ。GPSやUSBによる拡張性は、シンクライアントの特徴ではない。
VDI Virtual Desktop Infrastructure
デスクトップ環境をサーバ上で仮想化し、端末には画面の画像だけを送って操作させる仕組み。
⚠ VPNは仮想の専用線(通信路)を作るもので、デスクトップ環境の仮想化ではない。
DMZ DeMilitarized Zone
社内ネットワークとインターネットの間に置く緩衝区域で、外部に公開するサーバなどを設置する場所。
VPN Virtual Private Network
インターネットなどの共用の回線上に、特定の人だけが使える仮想の専用線を作る技術。
⚠ VDI(デスクトップの仮想化)と取り違えさせる選択肢として出る。
MDM Mobile Device Management
組織が貸与するスマートフォンなどに、設定やアプリ配信を一括で行い、利用状況を管理する仕組み。
⚠ BYODは私物端末を業務に使うことで、管理の仕組みではない。
BYOD Bring Your Own Device
従業員が私物のスマートフォンやPCを業務に使うこと。
⚠ MDMと混同させる。BYODは利用形態、MDMは管理の仕組み。
SaaS Software as a Service
事業者が用意したアプリケーションを、インターネット経由のサービスとして使う形態。
⚠ 利用企業が不要になるのは構築・開発だけ。アクセス管理・運用手順・セキュリティ規程は利用企業に残る。

このレッスンの過去問

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