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サービスマネジメント・7/8・13分

バックアップの方式・運用・復旧

ゴール

フル・差分・増分バックアップの違い(何を基準に保存するか、更新の印を消すか、復旧に何が要るか)と、運用の鉄則(業務処理と重ねない・別の媒体に置く・整合性を保つ)を説明でき、磁気テープの必要本数を計算できるようになる。

バックアップは「障害が起きても業務を止めない・データを失わない」ための最後の砦で、サービスマネジメント分野の定番です。3方式の違いは、選択肢の言い回しを少し変えるだけで何度も出題されています。

このレッスンで稽古する(用語チェック・過去問)

結論:3方式は「どこから数えるか」と「印を消すか」で見分ける

バックアップ方式はフル・差分・増分の3つです。見分けるポイントは2つだけで、①どの時点からの変更を保存するか(基準)、②保存したあとにファイルの「更新の印」を消すか(リセット)です。この印はアーカイブ属性といい、OS がファイルを更新したときに付ける「前回から変わったよ」という目印です。

方式 何を保存するか(基準) 更新の印 バックアップ時間 復旧に必要なもの 復旧時間
フル 全ファイル リセットする 最も長い フル1つだけ 最も短い
差分 最後のフル以降に変わったファイル リセットしない 中(日がたつほど増える) フル+最新の差分1つ 中
増分 直前のバックアップ(フルでも増分でも)以降に変わったファイル リセットする 最も短い フル+全部の増分を順番に 最も長い

たとえるなら、**差分は「月初からの累計メモ」**で、毎回月初からの変化を全部書き直します。**増分は「前回からの日記」**で、毎日その日の分だけ書き足します。累計メモは最新の1枚を見れば済みますが、日記は全部のページを読まないと今の状態が分かりません。

試験での問われ方:「増分はどれか」と聞いて、差分の説明(「最初のバックアップの後」「印は変更しないで残す」)を混ぜてきます。「直前」+「リセットする」=増分、「最初(フル)の後」+「残しておく」=差分と覚えれば一瞬で選べます。

日曜にフル、そのあと毎日バックアップ日月火水フル全ファイル差分月月〜火月〜水増分月火水差分:印を残す→毎回フル以降を全部保存増分:印を消す→毎回直前以降だけ保存
日曜にフルを取ったあと、差分は毎回フル以降の変更を全部保存し、増分はその日の分だけを保存する。

復旧の手順:まずフル、次に差分または増分

どの方式でも、復旧(リストア=バックアップからデータを戻すこと)は必ずフルバックアップの復元から始めます。差分や増分は「フルからの変化」しか持っていないので、それだけでは元に戻せません。

flowchart LR
  A["障害発生"] --> B["フルバックアップで復元"]
  B --> C{"併用している方式は?"}
  C -->|"差分"| D["最新の差分を1つ反映"]
  C -->|"増分"| E["増分を古い順に全部反映"]
  D --> F["復旧完了"]
  E --> F

バックアップ時間と復旧時間はトレードオフ(片方を良くすると片方が悪くなる関係)です。毎回の保存が軽い方式ほど、復旧は手間がかかります。

試験での問われ方:

  • 「差分だけ処理すればよいのでフルより復旧が速い」→ ×。フルの復元が先に必要なので、フルだけの方式より遅くなります。
  • 「差分はフルよりバックアップ時間が長い」→ ×。逆です。差分は変わったファイルだけなので短くなります。
  • 「復旧時間を最短にするため差分を採用」→ ×。復旧が最短なのはフルです。
  • 「フルと差分は併用できない」→ ×。差分はフルと組み合わせる前提の方式です。

運用の鉄則:業務処理と重ねない・別の媒体に置く

一番よく出るのは「業務処理とバックアップ処理が重ならないようにスケジュールを立てる」です。重なると、ディスクの読み書きを取り合って応答時間が遅くなるうえ、保存中にデータが書き換わって整合性が崩れるからです。この2つの理由は、どちらの言い方でも正解として出題されています。

間違いの選択肢はパターンが決まっています。

選択肢の言い方 正誤 理由
業務処理と重ならないようスケジュールする ○ 応答の悪化と整合性の崩れを防げる
時間短縮のため、元データと同じ記憶媒体に置く × その媒体が壊れると元データとバックアップを両方失う
復旧を速くするため差分を採用する × 復旧が最短なのはフル
長期保存のためランダムアクセスできる媒体にする × 長期保存に要るのは容量あたりの安さや保存性。読む位置を自由に選べるかは関係ない
取り違えないよう、同じ媒体に上書きする × 上書きすると過去の状態(世代)が残らない

ランダムアクセスは読みたい場所に直接飛べる読み方(ディスクなど)、順次アクセスは先頭から順に読む読み方(磁気テープなど)です。「磁気テープでランダムアクセスを可能にする」という選択肢も×です。

整合性:一連の更新が終わった時点で取る

整合性とは、関連するデータどうしの内容に矛盾がない状態です。たとえば「受注ファイル」と「在庫ファイル」の両方を更新する処理の途中でバックアップを取ると、片方だけ更新済みの食い違ったデータが保存されてしまいます。

そのため、複数のファイルに分かれているデータは、それぞれへの一連の更新処理が終わった時点でバックアップします。ほかに「本稼働日に全部取ったら、あとは更新が多いデータだけ」(全体の整合が取れない)や、「利用の少ないデータを消すときにバックアップも消す」(必要になったとき戻せない)は×です。

一連の更新処理まず次に①受注ファイル更新②在庫ファイル更新①の後で取る②の後で取る途中で取る ×受注:更新済み在庫:更新前(食い違い)終わった時点 ○受注:更新済み在庫:更新済み
①受注の更新だけ終わった時点で取ると食い違ったまま保存され、②在庫の更新まで終わった時点で取れば矛盾がない。

マスタファイル:取る時期と置き場所

マスタファイルは顧客や商品の台帳のように、業務の基礎になるデータのファイルです。サービス終了時に取るだけでなく、システムの特性(更新の頻度や重要度)に合わせた時期にもバックアップを取ります。また、バックアップは元のファイルとは別の場所に保管します。同じ場所に置くと、火災などで両方失うからです。

同じ問題では、復旧の用語も混ぜて出されます。ロールバックは、異常終了したトランザクション(ひとまとまりの処理)を開始直前の状態に戻すことです。ロールフォワードは、バックアップにジャーナル(更新の記録)を順に当てて、障害直前の状態まで進めることです。「開始直前に戻すためにロールフォワード」は×です。

フルバックアップの間隔とジャーナルの量

フルバックアップの間隔を2倍にすると、前回のフルから障害までにたまるジャーナルが平均して約2倍になります。復旧は「フルを戻す→ジャーナルを当てる」の順なので、ジャーナルによる復旧の処理時間が約2倍になります。一方でデータベースの大きさは変わらないので、フル1回あたりのテープ使用量や実行時間は変わりません。

フルの間隔を2倍にすると今までフルジャーナル障害間隔2倍フルジャーナル(約2倍)障害フル1回のテープ量・時間は変わらないジャーナルで戻す処理時間が約2倍
フルの間隔を2倍にしてもフル1回の量は同じだが、障害までにたまるジャーナルが約2倍になり復旧の処理時間も約2倍になる。

磁気テープの本数:何か月分を残すかを数える

「6か月前の同じ日まで、どの日の状態にも戻せるようにする」という条件で、テープの本数を聞く計算問題です。数え方のポイントは、6か月前の月そのものも含めることです。

考え方は「ある日に戻すには、その月のフル1本と、その月の差分1本のペアが要る」です。今月から6か月前の月までは 6+1=7か月 あるので、7ペア=14本です。6か月分(12本)で計算してしまうのが定番のひっかけです。手順は下の例題を見てください。

6か月前の月も含めて7か月分残す今月フル差分1か月前フル差分2か月前フル差分3か月前フル差分4か月前フル差分5か月前フル差分6か月前フル差分←忘れがち7か月×(フル1本+差分1本)=14本6か月分(12本)はひっかけ
今月から6か月前の月までの7か月それぞれにフル1本と差分1本のペアが要るので、合計14本になる。
例題 1

6か月前の同じ日まで戻すのに必要な磁気テープの本数

解き方と答えを見る
  1. 条件を整理する:毎月1日にフル(1回で1本)、2日〜月末は差分を別テープに追記(1か月で1本)。つまり1か月につき「フル1本+差分1本=2本」使う。
  2. 保証範囲を具体的にする:今日を10月15日とすると、4月15日〜今日のどの日にも戻せなければならない。
  3. 一番古い日に戻すために何が要るか考える:4月15日に戻すには、4月1日のフル(4月のフルテープ)で復元し、4月の差分テープから4月15日時点の差分を反映する。つまり4月のフル1本と差分1本が要る。
  4. テープを残す月を数える:4月・5月・6月・7月・8月・9月・10月で、10 − 4 + 1 = 7か月。
  5. 本数を計算する:7か月 × 2本 = 14本。
  6. 15本目が要らないことを確かめる:11月1日には保証範囲が5月1日以降に移るので、4月のフルテープを11月のフルに、4月の差分テープを11月の差分に使い回せる。よって常に14本で回る。
  7. ひっかけを確認する:6か月前の月(4月)を数え忘れると 6 × 2 = 12本(ア)になる。

答え:ウ:14本

例題 2

フルバックアップの間隔を2倍にしたら何が変わるか

データの追加・変更・削除が,少ないながらも一定の頻度で行われるデータベースがある。このデータベースのフルバックアップを磁気テープに取得する時間間隔を今までの 2 倍にした。このとき,データベースのバックアップ又は復旧に関する記述のうち,適切なものはどれか。

ア ジャーナル情報によって復旧するときの処理時間が平均して約 2 倍になる。
イ フルバックアップ 1 回当たりの磁気テープ使用量が約 2 倍になる。
ウ フルバックアップ 1 回当たりの磁気テープ使用量が約半分になる。
エ フルバックアップ取得の平均実行時間が約 2 倍になる。

出典:平成24年度 秋期 基本情報技術者試験 午前 問54

解き方と答えを見る
  1. 復旧の手順を思い出す:フルバックアップを戻す → 前回のフル以降のジャーナルを当てて最新状態にする。
  2. 間隔が2倍になると、前回のフルから障害までの期間も平均して2倍になる。
  3. 更新は一定の頻度で起きるので、当てるジャーナルの量も約2倍になり、復旧の処理時間も約2倍になる。
  4. フル1回で保存するのはデータベース全体なので、テープの使用量(イ・ウ)や実行時間(エ)は間隔を変えても変わらない。

答え:ア:ジャーナルによる復旧の処理時間が平均して約2倍になる

要点(試験直前に読む)

  • 増分=「直前のバックアップ以降」を保存し印をリセット。差分=「最後のフル以降」を保存し印は残す。
  • 復旧は必ずフルから。差分ならフル+最新の差分1つ、増分ならフル+全部の増分を順番に。
  • バックアップ時間はフル>差分>増分、復旧時間はその逆で増分>差分>フル。復旧が最短なのはフル。
  • 業務処理と重ならないようスケジュールする(応答の悪化と整合性の崩れを防ぐ)。保存先は元とは別の媒体・別の場所。
  • 複数ファイルにまたがるデータは、一連の更新が終わってから取る。フルの間隔を2倍にすると、ジャーナルによる復旧時間が約2倍になる。
  • テープ本数は「6か月前の月も含めて7か月 × フルと差分の2本 = 14本」。

ひっかけ

  • 「最初のバックアップの後」「更新の印はそのまま残す」は差分の説明。増分を選ぶ問題で引っかからないよう、「直前」「リセット」を探す。
  • 「差分なら差分だけ処理すればよいので復旧が速い」は×。フルを戻すのが先なので、フルだけの方式より遅い。バックアップ時間を「差分の方が長い」と逆にした選択肢も×。
  • 「同じ記憶媒体に置く」「同じ媒体に上書きする」「元と同じ場所に保管する」は全部×。壊れると一緒に失う、または世代が残らない。
  • 「長期保存のためランダムアクセス可能な媒体に」「磁気テープでランダムアクセスを可能に」は×。テープは順次アクセスで、長期保存にランダムアクセスは関係ない。
  • テープ本数で6か月分だけ数えて12本にするのは×。6か月前の月そのものも残す必要があるので7か月分。

用語(14)

フルバックアップ ふるばっくあっぷ
毎回すべてのファイルを保存する方式で、保存に一番時間がかかるが、復旧はそれ1つで済み一番速い。
⚠ 差分・増分はフルを土台に「変わった分」だけを保存する。全部保存するのはフルだけ。
差分バックアップ さぶんばっくあっぷ
最後のフルバックアップ以降に変わったファイルを毎回まとめて保存し、更新の印は消さない方式。
⚠ 増分と混同しやすい。基準が「最後のフル」で印を残すのが差分、基準が「直前のバックアップ」で印を消すのが増分。復旧は差分ならフル+最新の差分1つ。
増分バックアップ ぞうぶんばっくあっぷ
直前のバックアップ以降に変わったファイルだけを保存し、更新の印を消す方式で、保存は最速だが復旧はフル+全部の増分が要る。
⚠ 差分と混同しやすい。「直前」「リセットする」が増分の目印。
アーカイブ属性 あーかいぶぞくせい
ファイルが更新されたときに OS が付ける「前回から変わった」という目印で、試験では「ファイル更新を示す情報」と書かれる。
⚠ この目印をバックアップ後に消す(リセット)のがフルと増分、消さずに残すのが差分。
リストア Restore(りすとあ)
バックアップからデータを元の場所に戻して復旧すること。
⚠ どの方式でも最初にフルを戻す。差分や増分だけでは戻せない。
ジャーナル じゃーなる(ログファイル)
データベースに対する更新の内容を時刻順に記録したもので、復旧時にバックアップへ当てて最新状態にする。
⚠ バックアップ(ある時点のデータ全体の写し)とは別物。ジャーナルは「変更の履歴」。
ロールフォワード ろーるふぉわーど
バックアップを戻した後、ジャーナルの更新後の内容を順に反映して、障害直前の状態まで進めること。
⚠ ロールバックは逆に「戻す」処理。フォワード=前へ進める、バック=後ろへ戻す。
ロールバック ろーるばっく
正常に終わらなかったトランザクションの更新を取り消し、そのトランザクションの開始直前の状態に戻すこと。
⚠ 「開始直前に戻す」はロールバック。「ロールフォワードで開始直前に戻す」は×。
整合性 せいごうせい
関連するデータどうしの内容に矛盾がない状態のこと。
⚠ バックアップでは、更新処理の途中で取ると崩れるので、一連の更新が終わってから取る。
マスタファイル ますたふぁいる
顧客台帳や商品台帳のように、業務の基礎になるデータを持つファイル。
⚠ トランザクションファイルは日々の取引記録で、マスタファイルを更新する材料になる。
トランザクションファイル とらんざくしょんふぁいる
受注や入金など日々発生する取引データを記録したファイルで、マスタファイルの更新に使う。
⚠ マスタファイル(台帳そのもの)と区別する。
磁気テープ じきてーぷ
容量あたりが安く長期保存に向くが、先頭から順に読む順次アクセスの記録媒体。
⚠ 「磁気テープでランダムアクセスを可能にする」は×。テープは順次アクセス。
ランダムアクセス らんだむあくせす
読みたい位置に直接移動して読み書きできるアクセス方法で、磁気ディスクや SSD が該当する。
⚠ 順次アクセス(先頭から順番に読む・磁気テープ)と対になる。長期保存にランダムアクセスは不要。
世代管理 せだいかんり
バックアップを上書きせず、複数の時点のもの(世代)を一定期間残しておく運用。
⚠ 「同じ媒体に上書き」は世代が残らないので×。必要な世代数がテープ本数の計算になる。

このレッスンの過去問

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