キャパシティ管理と運用コスト
キャパシティ管理(容量・能力管理)の定義と「傾向分析」を他の予測手法と見分けられるようになる。TCO の計算、逓減課金のグラフの選択、運用費用の配賦計算を自力で解けるようになる。
システムは、作った後の「足りるか」「いくらかかり続けるか」で失敗しがちです。試験では、定義の言い換えと、表の数字を足すだけの計算問題として毎年のように出ます。TCO は免除試験で 13 回出ており、確実に取りたい得点源です。
このレッスンで稽古する(用語チェック・過去問)結論:このレッスンで覚えるのは5つ
このレッスンで覚えるのは次の5つです。
- キャパシティ管理 = 負荷の現状を分析し、将来を予測して、サービス水準を保てるように資源を管理すること
- 傾向分析 = 利用状況を時系列で見て、将来を予測すること
- TCO = 導入から運用・保守までを含めた総額
- 逓減課金 = たくさん使うほど単価が下がる料金方式。グラフは右上がりで、傾きが段々ゆるくなる(上に凸)
- 配賦 = 共通費用を決めた割合で各サービスに割り振ること
計算問題は、どれも「表の数字を漏れなく足す」だけで解けます。
キャパシティ管理とは何か
キャパシティ管理(JIS Q 20000 では「容量・能力管理」)は、CPU・メモリ・回線などの資源が、今もこれから先も足りるかを見張る活動です。目的は、約束したサービス水準(応答時間など)を守り続けることです。
たとえるなら、飲食店の店長が「最近ランチの客が毎月増えているから、来春までに席を増やそう」と考えるのと同じです。現状分析+将来予測+資源の手当ての3つがそろっていれば、キャパシティ管理の説明です。
試験では、別の管理活動の説明と並べて出題されます。
| 選択肢に出る説明 | 正体 |
|---|---|
| 負荷の現状分析と将来予測を行い、サービス水準維持のため資源を管理 | キャパシティ管理 |
| 重要データを遠隔地にも保管 | 災害対策(前レッスンの BCP 側) |
| 監視や操作を標準化し、日常運用を効率化 | 運用管理 |
| 開発要員を採用・訓練・配置 | 要員管理 |
監視のしかたも問われます。正しいのは、応答時間や CPU 使用率など複数の項目を定常的に監視することです。「オフライン時間帯だけ測る」「最大値だけ見る」は、見張りが偏るので誤りです。
将来を予想する4つの活動:傾向分析を見分ける
キャパシティ管理には、将来の性能を予想する活動が複数あります。試験は「傾向分析はどれか」と聞き、残りの3つを紛れ込ませます。キーワードで見分けます。
| 活動 | 何をするか | 見分けるキーワード |
|---|---|---|
| 傾向分析 | 特定の資源の利用状況を時系列で把握し、将来の変化を予測する | 時系列・推移 |
| 分析モデル化 | 待ち行列理論などの数学的技法で、応答時間やスループットを予測する | 数学的技法・待ち行列 |
| シミュレーションモデル化 | 模擬的にトランザクションを発生させて予測する | 模擬的・発生させる |
| ベースラインモデルの作成 | モデル化の第一段階として、現在の性能を正確に反映したモデルを作る | 第一段階・現在 |
傾向分析は、体重を毎日記録して「このペースだと来月は○kg」と読むのと同じで、過去の推移を延ばすだけです。数式やシミュレーションを使う説明が出てきたら、傾向分析ではありません。
TCO(総所有費用):入口から出口まで全部足す
TCO(Total Cost of Ownership)は、システムの導入から運用・維持管理までにかかる費用の総額です。家にたとえると、購入価格だけでなく、住んでいる間の光熱費や修繕費まで含めた「住み続けるのに払う総額」です。
| 選択肢の言い方 | TCO か |
|---|---|
| 導入から運用・維持管理までを含めた総額 | ○ |
| 開発に関わる費用の総額 | × 開発だけ |
| 導入時の費用の総額 | × 入口だけ |
| 通信・ネットワークの運用費用の総額 | × 一部の運用費だけ |
計算は次の1本の式で解けます。
TCO = 初期費用(1回だけ)+ 年間費用 × 使用年数
- 初期費用:ハードウェア導入、システム開発、導入教育など
- 年間費用:表で「/年」が付いているもの(通信費、保守費、運用費など)
「/年」が付いた行を年数倍し忘れないことが、ほぼ唯一の注意点です。
逓減課金のグラフ:右上がりで、傾きが段々ゆるくなる
逓減(ていげん)は「段々減る」という意味です。逓減課金では、使用量が増えるほど1単位あたりの単価が下がります。まとめ買いで割安になる業務用スーパーと同じです。
下がるのは単価だけで、支払総額は使うほど増え続けます。そのため、グラフは右上がりのまま、傾き(=単価)が段階的に小さくなります(上に凸の折れ線)。
| グラフの形(縦軸=利用料金の総額) | 意味 |
|---|---|
| 原点から右上がり、傾きが段々ゆるくなる(上に凸) | 逓減課金 ← 正解 |
| 原点から右上がり、傾きが段々急になる(下に凸) | 逓増課金(使うほど単価が上がる) |
| 原点から直線で上がり、途中から水平 | 上限付きの課金(ある額で頭打ち) |
| 高い位置から右下がり | 使うほど総額が減ることになり、総額のグラフとしてありえない |
右下がりのグラフは「単価が下がる」という言葉に引っ張られて選びやすい罠です。縦軸が**料金の総額(累計)**であることを確認してから選びます。
配賦:共通費用を割合で割り振る
配賦(はいふ)は、複数のサービスで共有している費用を、決めた基準(リソース配分の割合など)で各サービスに割り振ることです。シェアハウスの光熱費を部屋の広さに応じて分けるのと同じ考え方です。
解き方は次の3段階です。
- 共通費用(IaaS の利用料、兼任者の人件費)を、割合で按分する
- 専任者の人件費は、そのサービスにそのまま全額のせる
- サービスごとに合計して比べる
出題は免除試験で1回だけです。手順は下の例題で確認してください。
TCO を1案だけ計算する(3年間使用)
| 項目 | 費用 |
|---|---|
| ハードウェア導入費用 | 40,000 |
| システム開発費用 | 50,000 |
| 導入教育費用 | 5,000 |
| ネットワーク通信費用/年 | 1,500 |
| システム保守費用/年 | 7,000 |
| システム運営費用/年 | 5,000 |
ア 40,500
イ 90,000
ウ 95,000
エ 135,500
出典:基本情報技術者試験 科目A免除 修了試験 20240128 実施分 問44
解き方と答えを見る
- 表を「1回だけの費用」と「/年の費用」に分ける
- 初期費用 = ハードウェア導入 40,000 + システム開発 50,000 + 導入教育 5,000 = 95,000(千円)
- 年間費用 = ネットワーク通信 1,500 + システム保守 7,000 + システム運営 5,000 = 13,500(千円/年)
- 3年分の年間費用 = 13,500 × 3 = 40,500(千円)
- TCO = 95,000 + 40,500 = 135,500(千円)
- 選択肢を確認する。ア 40,500 は運用費の3年分だけ、イ 90,000 はハードウェアと開発だけ、ウ 95,000 は初期費用だけなので、いずれも不足している
答え:エ(135,500千円)
4案の TCO を比べる(3年間使用・単位:百万円)
| A案 | B案 | C案 | D案 | |
|---|---|---|---|---|
| ハードウェア導入費用 | 30 | 30 | 40 | 40 |
| システム開発費用 | 30 | 50 | 30 | 40 |
| 導入教育費用 | 5 | 5 | 5 | 5 |
| ネットワーク通信費用/年 | 20 | 20 | 15 | 15 |
| 保守費用/年 | 6 | 5 | 5 | 5 |
| システム運用費用/年 | 6 | 4 | 6 | 4 |
ア A案
イ B案
ウ C案
エ D案
出典:基本情報技術者試験 科目A免除 修了試験 20180722 実施分 問57
解き方と答えを見る
- 各案の初期費用(ハードウェア導入+システム開発+導入教育)を出す。A = 30+30+5 = 65、B = 30+50+5 = 85、C = 40+30+5 = 75、D = 40+40+5 = 85
- 各案の年間費用(通信+保守+運用)を出す。A = 20+6+6 = 32、B = 20+5+4 = 29、C = 15+5+6 = 26、D = 15+5+4 = 24
- 年間費用を3倍する。A = 96、B = 87、C = 78、D = 72
- 合計する。A = 65+96 = 161、B = 85+87 = 172、C = 75+78 = 153、D = 85+72 = 157
- 最小は C 案の 153。もし3倍し忘れると、A = 97、B = 114、C = 101、D = 109 となり、A 案が最小に見えてしまう
答え:ウ(C案・153百万円)
運用費用を配賦して最も高いサービスを探す(単位:千円)
| サービス | IaaS のリソース配分 (%) | 専任の運用要員数 (人) | 兼任の運用要員数 (人) |
|---|---|---|---|
| A | 40 | 1 | 4(A~D 共通・結合セル) |
| B | 30 | 2 | (同上) |
| C | 20 | 2 | (同上) |
| D | 10 | 3 | (同上) |
ア A
イ B
ウ C
エ D
出典:基本情報技術者試験 科目A免除 修了試験 20260726 実施分 問44
解き方と答えを見る
- IaaS 利用料 1,000 をリソース配分で按分する。A = 1,000×40% = 400、B = 300、C = 200、D = 100
- 兼任者の人件費は 4人 × 500 = 2,000。これもリソース配分で按分する。A = 2,000×40% = 800、B = 600、C = 400、D = 200
- 専任者の人件費(人数 × 500)をそのサービスに全額のせる。A = 1×500 = 500、B = 2×500 = 1,000、C = 1,000、D = 3×500 = 1,500
- 合計する。A = 400+800+500 = 1,700、B = 300+600+1,000 = 1,900、C = 200+400+1,000 = 1,600、D = 100+200+1,500 = 1,800
- 最大は B の 1,900。兼任者の配賦を忘れると、A = 900、B = 1,300、C = 1,200、D = 1,600 となり、D を選んでしまう
答え:イ(B・1,900千円)
要点(試験直前に読む)
- キャパシティ管理は、現状分析と将来予測で資源を手当てし、サービス水準を守る活動。監視は複数の項目を定常的に見る。
- 傾向分析は「時系列」。数学的技法なら分析モデル化、模擬トランザクションならシミュレーション、第一段階・現在の性能ならベースライン。
- TCO = 初期費用 + 年間費用 × 年数。導入から運用・維持管理までの総額。
- 逓減課金のグラフは右上がりで、傾きが段々ゆるくなる(上に凸)。下に凸は逓増、右下がりはありえない。
- 配賦は、共通費用(IaaS 料・兼任者)を割合で按分し、専任者の費用を全額のせて合計する。
ひっかけ
- 傾向分析を問う問題で、待ち行列理論(分析モデル化)、模擬トランザクション(シミュレーション)、現在の性能を反映したモデル(ベースライン)の説明を並べてくる。「時系列」の語がある選択肢を選ぶ。
- TCO の計算では、選択肢に初期費用だけ・運用費だけの値が並ぶことがある(例:menjo_20240128#44 の 95,000 や 40,500)。案を比べる問題では、年間費用を年数倍し忘れると別の案が最小に見える(menjo_20180722#57 では A 案)。どちらの形でも、合計を出してから選ぶ。
- 逓減課金のグラフで、「単価が下がる」に引っ張られて右下がりのグラフを選ばせる。縦軸は料金の総額なので、右上がりで上に凸のグラフが正解。
- キャパシティ管理の監視で、「オフライン時間帯だけ測る」「最大値だけに着目する」は偏った監視で誤り。
- 配賦の計算で兼任者の人件費の按分を忘れると、別のサービス(menjo_20260726#44 では D)が最大に見える。共通費用と専任費用を分けて全部足す。
用語(15)
負荷の現状分析と将来予測を行い、サービス水準を保てるように CPU や回線などの資源を手当てする活動。
⚠ 遠隔地バックアップ(災害対策)、日常操作の標準化(運用管理)、要員の採用・配置(要員管理)と並べて出る。「将来予測+資源+サービス水準」がそろうのがキャパシティ管理。
JIS Q 20000 でのキャパシティ管理の呼び名で、中身は同じ。
⚠ 問題文の呼び名が違うだけで、同じ問題が出る。
特定の資源の利用状況を時系列で把握し、その推移から将来の利用の変化を予測する手法。
⚠ 分析モデル化(待ち行列などの数式)やシミュレーションモデル化(模擬トランザクション)と混同させられる。「時系列」が目印。
待ち行列理論などの数学的技法を使って、応答時間やスループットを予測すること。
⚠ 傾向分析とは違い、過去の推移ではなく数式で計算する。
模擬的にトランザクションを発生させ、応答時間やスループットを予測すること。
⚠ 「模擬的に発生させる」とあればこれで、傾向分析ではない。
現在達成している性能を正確に反映した基準のモデルで、モデル化の第一段階として作る。
⚠ 「第一段階」「現在の性能を反映」はベースライン。将来を予測する傾向分析とは別物。
単位時間あたりに処理できる仕事の量。
⚠ 応答時間は1件にかかる時間、スループットは時間あたりの処理件数。
要求を出してから応答が返り始めるまでの時間。
システムの導入から運用・維持管理までにかかる費用の総額。
⚠ 「開発費だけ」「導入時だけ」「通信運用費だけ」の選択肢は範囲が狭いので誤り。
ハードウェア導入、システム開発、導入教育など、導入時に1回だけかかる費用。
⚠ 年数倍しない。年数倍するのは「/年」の費用だけ。
通信費、保守費、運用費など、使っている間に毎年かかる費用。
⚠ TCO の計算では使用年数を掛ける。掛け忘れが定番のミス。
使用量が増えるほど単価が下がる料金方式で、総額のグラフは右上がりのまま傾きが段々ゆるくなる(上に凸)。
⚠ 逓増課金(傾きが段々急になる・下に凸)と取り違えやすい。総額は減らないので、右下がりのグラフは誤り。
使用量が増えるほど単価が上がる料金方式で、総額のグラフは傾きが段々急になる(下に凸)。
⚠ 逓減は「減」で傾きがゆるくなり、逓増は「増」で傾きが急になる。
複数のサービスで共有する費用を、リソース配分などの基準で各サービスに割り振ること。
⚠ 専任者の費用は配賦せず、そのサービスに全額のせる。配賦するのは共通費用だけ。
サーバや記憶装置などの基盤を、事業者からサービスとして借りて使う形態。
このレッスンの過去問
- キャパシティ管理の定義基本情報技術者試験 科目A免除 修了試験 201001 実施分 問16
- キャパシティ管理の予測手法(傾向分析)平成30年度 秋期 基本情報技術者試験 午前 問55
- TCO(総所有費用)の定義平成27年度 春期 基本情報技術者試験 午前 問58
- 逓減課金方式のグラフ(課金体系)基本情報技術者試験 科目A免除 修了試験 20211212 実施分 問55
- 配賦計算による運用費用の比較基本情報技術者試験 科目A免除 修了試験 20260726 実施分 問44