止められないシステムを守る BCP と UPS
ミッションクリティカルシステム、UPS、BCP、ビジネスインパクト分析(BIA)の定義と役割を区別し、似た用語を並べた選択肢から正解を選べるようになる。
前のレッスンでは稼働率を数字で扱った。今回はその稼働率を下げないための「設備(UPS)」と「計画(BCP)」を学ぶ。用語の定義をそのまま問う問題が多く、紛らわしい選択肢との違いさえ押さえれば確実に取れる。
このレッスンで稽古する(用語チェック・過去問)結論:止まると困るシステムは「設備」と「計画」の両方で守る
止まると社会や会社に重大な影響が出るシステムをミッションクリティカルシステムと呼ぶ。こうしたシステムは、設備面ではUPS(無停電電源装置)で電源トラブルに備え、計画面ではBCP(事業継続計画)で「止まったときにどう動くか」を事前に決めておく。
| 守り方 | 代表例 | 何に備えるか |
|---|---|---|
| 設備で守る | UPS・自家発電装置・機器の二重化 | 瞬断、停電、機器の故障 |
| 計画で守る | BCP・BIA・訓練 | 災害、システム障害、マルウェア感染など事業が止まる事態全般 |
ミッションクリティカルシステム:止まると重大な影響が出るシステム
ミッションクリティカルは「任務(ミッション)の成否を左右する」という意味。銀行の勘定系、航空管制、電力の制御システムのように、障害が起きると企業活動や社会に重大な影響を及ぼすシステムを指す。
試験では、それっぽく聞こえる別の概念と取り違えさせる。
| 選択肢に出る説明 | 正体 | ミッションクリティカル? |
|---|---|---|
| 障害が起きると企業活動や社会に重大な影響を及ぼす | ミッションクリティカルシステム | ○ |
| OS のように業務システムを動かすのに必要不可欠 | 基盤ソフトウェアの説明 | × |
| 性能の限界に近い状態で稼働する | 高負荷で動いているだけ | × |
| 先に試験導入し、成功したら本格導入する | パイロット導入(試験導入) | × |
見分け方は1つ。「止まったら社会や会社が大変なことになる」と書いてあるかを見る。
UPS:瞬断と停電の「つなぎ」の電源(最頻出)
UPS(無停電電源装置)は、内蔵の電池に蓄えた電気を使い、瞬断(電気がほんの一瞬途切れること)や停電の瞬間から途切れずに電力を供給する装置。供給できるのは短い時間なので、主な目的は「瞬断を乗り切る」ことと「停電時にシステムを安全に終了させる時間を稼ぐ」ことの2つになる。
たとえるなら、UPS はモバイルバッテリーで、自家発電装置はエンジン式の発電機。モバイルバッテリーはすぐ使えるが容量が小さい。発電機は長く動かせるが、エンジンがかかるまで時間がかかる。
| 装置 | 正式名称 | 役割 | 停電したら? | 瞬断に効く? |
|---|---|---|---|---|
| UPS | Uninterruptible Power Supply(無停電電源装置) | 電池で短時間の電力を途切れずに供給する | 短時間だけ供給(その間に安全に終了) | ○ |
| AVR | Automatic Voltage Regulator(自動電圧調整器) | 電圧の変動を自動で一定に整える | 電池がないので供給できない | × |
| CVCF | Constant Voltage Constant Frequency(定電圧定周波数装置) | 電圧と周波数を一定に保つ | 単体では停電に備える装置ではない | × |
| 自家発電装置 | — | 燃料で発電し、長時間の電力を供給する | 長時間供給できる | ×(起動までに時間がかかる) |
実際の現場では、UPS が停電直後をつなぎ、その間に自家発電装置が起動して長時間の供給を引き継ぐ、という組み合わせがよく使われる。
試験での問われ方
- 「瞬断時に電力を供給」「停電時にシステムを終了させるのに必要な時間の電力」とあれば UPS。
- 「瞬断への対策」を選ぶ問題では、自家発電装置がひっかけになる。起動に時間がかかるので瞬断には間に合わない。
- 分電盤や変圧器の二重化は、機器の故障への対策。外からの給電そのものが途切れたときには役に立たない。
BCP:止まっても事業を続けるための計画
BCP(事業継続計画)は、事業が中断する原因とリスクを想定し、被害を未然に避けたり、被害を受けても速やかに回復したりするための方針と行動手順を決めた計画。家庭の防災計画(避難先、家族の連絡方法、持ち出す物の優先順位)を会社の業務に当てはめたものと考えればよい。
BCP の定義を問う問題では、「B」で始まる経営用語の説明が並ぶ。
| 略語 | 正式名称 | 中身 |
|---|---|---|
| BCP | Business Continuity Plan(事業継続計画) | 事業中断のリスクを想定し、回避と速やかな回復の方針・手順を決める |
| BSC | Balanced Scorecard(バランススコアカード) | 財務・顧客・内部ビジネスプロセス・学習と成長の4つの視点で戦略を検討する |
| BPM | Business Process Management(ビジネスプロセスマネジメント) | 業務の流れを可視化し、一定のサイクルで継続的に改善していく |
| BPR | Business Process Reengineering(ビジネスプロセスリエンジニアリング) | 業務プロセスを根本から見直して作り直す |
| BPO | Business Process Outsourcing(ビジネスプロセスアウトソーシング) | 業務プロセスをまとめて外部に委託する |
BPM と BPR は特に紛らわしい。「継続的に・サイクルで」なら BPM、「根本から作り直す」なら BPR と覚える。
策定と運用の留意点(○と×の見分けが出題される)
| 論点 | ○ 適切 | × 不適切(ひっかけ) |
|---|---|---|
| 想定する事態 | 自然災害に加えて、機器の故障やマルウェア感染も含める | 自然災害だけに限る |
| 復旧の優先順位 | 業務の重要度で決める | 技術的に復旧しやすい順に決める |
| 業務ごとの水準 | 優先順位を付け、重要な業務ほど手厚くする | 全業務を同じ水準で扱う |
| 周知の範囲 | 従業員全体に周知し、訓練する | 上級管理者だけ、平時は非公開 |
| 対象の範囲 | 取引先や委託先など社外との関係も含める | 自社組織だけに限る |
| 準備 | 緊急連絡先リストを最新に保つ、重要書類は複製して分散保管する | 重要書類を複製せず1か所に集中保管する |
迷ったら、「いざという時に本当に役に立つか」で判断する。知らされていない計画や、1か所にしかない書類は、災害時には役に立たない。
ビジネスインパクト分析(BIA):最初に「何が・どれだけ止まると困るか」を決める
BIA(ビジネスインパクト分析)は、BCP を作る最初の段階で行う分析。業務が止まったときの影響(売上の損失、顧客への影響など)を評価し、許容される最大停止時間や目標復旧時間(RTO)を決める。ここで決めた数字が、どの業務から復旧させるか、どれだけ設備にお金をかけるかの根拠になる。
flowchart LR
A["BIA:影響を評価し最大停止時間を決める"] --> B["対策と手順を決めてBCPを策定"]
B --> C["教育・訓練"]
C --> D["テストで有効性を検証"]
D --> E["環境の変化を踏まえて見直し"]
E --> B
| フェーズ | やること | BIA? |
|---|---|---|
| 分析 | 業務停止の影響を評価し、許容される最大停止時間を決める | ○ |
| 教育・訓練 | 代替手順や復旧手順を関係者に教える | × |
| テスト | BCP が有効かを検証する | × |
| 見直し | 内外の環境の変化を踏まえて内容を更新する | × |
選択肢には、BCP のほかのフェーズの作業が必ず並ぶ。「時間を決める」が BIA、それ以外の「教える・試す・直す」は BIA の後で行う作業。
試験での問われ方まとめ
- 用語の定義をそのまま問う:ミッションクリティカル、UPS、BCP は、正解の説明文のキーワード(重大な影響/瞬断・終了までの電力/事業中断のリスクと回復)で決まる。
- 似た装置・似た略語を並べる:AVR・CVCF・自家発電装置、BSC・BPM・BPO が定番のひっかけ。
- 運用の○×:BCP の留意点は「範囲を狭める」「一部の人だけで持つ」「一律に扱う」がすべて×。
- BIA の実施事項:「最大停止時間を決める」だけが BIA。テスト・教育・見直しは×。
要点(試験直前に読む)
- ミッションクリティカルシステムは「障害が起きると企業活動や社会に重大な影響を及ぼす」システム。
- UPS は瞬断と停電に備え、システムを安全に終了させるまでの短時間の電力を途切れずに供給する。瞬断対策は UPS で、自家発電装置ではない。
- BCP は、事業中断の原因とリスクを想定し、回避と速やかな回復の方針・手順を決めた計画。
- BIA で行うのは「業務停止の影響を評価し、許容される最大停止時間を決める」こと。
- BCP は、機器の故障やマルウェアも想定し、重要度で優先順位を付け、全員に周知し、連絡先リストを最新に保つ。
ひっかけ
- 瞬断への対策に「自家発電装置」を選ばせる → 起動が遅く瞬断には間に合わない。瞬断なら UPS。
- UPS の説明に AVR・CVCF を並べる → AVR は電圧、CVCF は電圧と周波数を整えるだけ。「停電時に終了までの電力」は UPS。
- BIA の実施事項にテスト・教育・見直しを混ぜる → 「最大停止時間を決める」だけが BIA。
- BCP の留意点で「技術的に容易な順」「上級管理者だけに周知」「自社に限定」「1か所で集中保管」「全業務を同一水準」を並べる → どれも×。重要度順、全員に周知、範囲は広く、書類は分散、優先順位を付ける。
- BCP の定義に BSC・BPM・BPO の説明を並べる → 4つの視点は BSC、可視化と継続的な改善は BPM、外部委託は BPO。事業中断と回復が BCP。
用語(15)
障害が起きると企業活動や社会に重大な影響を及ぼすシステム。
⚠ OS のような基盤ソフト、性能の限界近くで動くシステム、試験導入のシステムとは別物。「止まると社会や会社が大変」と書かれていれば正解。
電池の電力で、瞬断や停電の瞬間から途切れずに短時間の電力を供給し、システムを安全に終了させる時間を稼ぐ装置。
⚠ 自家発電装置は長時間供給できるが起動が遅く、瞬断には間に合わない。AVR と CVCF は電圧などを整える装置で、停電時の供給が目的ではない。
電気の供給がほんの一瞬途切れること。
⚠ 長時間の停電とは別。瞬断対策には UPS が効き、自家発電装置は起動が間に合わない。
電圧の変動を自動で調整し、一定に保つ装置。
⚠ 電池を持たないので停電時に電力を供給できない。停電や瞬断の対策なら UPS。
出力する電気の電圧と周波数を一定に保つ電源装置。
⚠ 電気の質を一定に保つのが目的。「停電時にシステムを終了させるための電力」という説明なら UPS。
燃料で自ら発電し、停電時に長時間の電力を供給する装置。
⚠ 起動までに時間がかかるので瞬断には対応できない。短時間のつなぎは UPS。
事業が中断する原因とリスクを想定し、被害の回避と速やかな回復のための方針・行動手順を決めた計画。
⚠ BSC(4つの視点の戦略)、BPM(継続的な業務改善)、BPO(業務の外部委託)の説明と並べて出る。「事業中断」「回復」が BCP のキーワード。
業務が止まったときの影響を評価し、許容される最大停止時間や目標復旧時間を決める分析。
⚠ BCP のテスト・教育・見直しは BIA ではない。「時間を決める」が BIA。
業務を止めてもよい限界の時間。これを超えると事業に致命的な影響が出る。
⚠ BIA で決める値。BCP のテストや見直しで決めるものではない。
障害が起きてから、業務をいつまでに復旧させるかという目標の時間。
⚠ RPO は「どの時点のデータまで戻すか」で、時刻の目標。RTO は「何時間で戻すか」で、時間の長さの目標。
障害時に、どの時点のデータまで復旧できればよいかという目標。
⚠ RTO(復旧までの時間)と取り違えやすい。Point=データの時点、Time=かかる時間。
財務・顧客・内部ビジネスプロセス・学習と成長の4つの視点から戦略を検討・評価する手法。
⚠ BCP の定義を問う問題のひっかけ。「4つの視点」が出たら BSC。
業務の流れを可視化し、一定のサイクルで継続的に改善していくマネジメント手法。
⚠ BPR は業務を根本から作り直す手法で、継続的な改善サイクルは含まない。「継続的・サイクル」なら BPM。
業務プロセスを根本から見直して作り直す手法。
⚠ BPM(可視化と継続的な改善)と混同しやすい。「根本から作り直す」なら BPR。
業務プロセスをまとめて外部の専門業者に委託すること。
⚠ BCP の定義を問う問題のひっかけ。「外部に委託」「アウトソース」が出たら BPO。
このレッスンの過去問
- ミッションクリティカルシステムの定義平成28年度 春期 基本情報技術者試験 午前 問55
- UPSの目的と機能基本情報技術者試験 科目A免除 修了試験 20250727 実施分 問44
- ビジネスインパクト分析の実施事項平成24年度 春期 基本情報技術者試験 午前 問42
- BCP(事業継続計画)策定運用の留意点令和元年度 秋期 基本情報技術者試験 午前 問74