可用性と稼働率の計算
サービス提供時間と停止時間から可用性(%)を計算し、逆に許容できる停止時間も求められるようになる。直列・並列を組み合わせたシステムの稼働率を式と数値で出し、縮退運転や可用性管理の指標(MTRS・中断回数)の用語問題も選べるようになる。
稼働率の直列・並列計算は、このコースで扱う知識のなかでも出題回数が特に多いテーマです(観測値: 本試験系17回/免除43回)。SLA(サービス品質の合意)で「可用性99.5%」と約束するとき、実際に何時間まで止まってよいかを数字で説明できるようになります。
このレッスンで稽古する(用語チェック・過去問)結論:可用性は「約束した時間のうち、動いていた割合」
可用性(%)=(サービス提供時間 − 停止時間)÷ サービス提供時間 × 100 です。分母は24時間ではなく、顧客と約束したサービス提供時間だけを使います。試験では「可用性」と「稼働率」はほぼ同じ意味で使われ、どちらも「使えた割合」を表します。
| 時間の種類 | 分母(サービス提供時間)に入れるか | 停止時間に入れるか |
|---|---|---|
| 約束したサービス時間帯の中で動いていた時間 | 入れる | 入れない |
| 約束したサービス時間帯の中で障害により止まった時間 | 入れる | 入れる |
| サービス時間帯の外(夜間など)の時間 | 入れない | 入れない(修理が続いていても数えない) |
| 計画停止(あらかじめ予定した保守) | 入れない(問題文で「除く」と書かれる) | 入れない |
たとえるなら、営業時間が9〜18時のお店で「開いているはずの時間のうち、実際に開いていた割合」を出すのと同じです。閉店後にシャッターの修理をしていても、営業成績には関係しません。
可用性を計算する(停止時間 → %)
手順は3つです。
- サービス提供時間を出す(1日の時間 × 日数。計画停止は除く)
- その時間帯の中の停止時間だけを数える(時間帯の外にはみ出した分は捨てる)
- (提供時間 − 停止時間)÷ 提供時間 を計算する
例:サービス時間が7:00〜19:00(12時間)で、16:00に止まって21:00に復旧した場合。停止として数えるのは16〜19時の3時間だけです。可用性は (12−3)/12 = 9/12 = 75% になります(menjo_20241208#44)。
週単位で考える問題もあります。営業日5日×10時間=50時間で、許容する停止が1時間なら、稼働率は (50−1)/50 = 98.0% です。「2回以下」のような回数の条件は計算には使いません(menjo_20210124#55)。
逆算する(可用性% → 許容できる停止時間)
許容できる停止時間 = サービス提供時間 ×(1 − 可用性) で求めます。99.5%なら、止まってよいのは残りの 0.5% です。
例:8:00〜22:00 は14時間で、営業日が30日なら 14 × 30 = 420時間。止まってよい時間は 420 × 0.005 = 2.1時間 です(2018h30a_am#57 などで、ほぼ同じ問題が繰り返し出ています)。選択肢が整数だけのときは、2.1時間を超えない整数として「2時間」を選びます(2011h23a_am#57)。
もし24時間×30日=720時間で計算すると 720 × 0.005 = 3.6時間 になります。この値はひっかけの選択肢として必ず並んでいます。
直列と並列:最頻出の稼働率計算
装置を組み合わせたシステムの稼働率は、つなぎ方で計算方法が変わります。直列(全部動かないとダメ)は掛け算、**並列(どれか1つ動けばOK)は「1 −(全部止まる確率)」**で計算します。
たとえば通勤を考えます。電車を乗り継ぐ経路は、どれか1本でも止まれば会社に着けないので直列です。2つの路線のどちらかが動けば着ける場合は並列です。
| 直列 | 並列 | |
|---|---|---|
| 条件 | すべての装置が動いて初めて稼働 | どれか1台でも動けば稼働 |
| 式(稼働率 a, b) | a × b | 1 − (1 − a)(1 − b) |
| 同じ稼働率 x の装置が n 台 | xⁿ | 1 − (1 − x)ⁿ |
| 0.9 の装置2台の場合 | 0.9 × 0.9 = 0.81 | 1 − 0.1 × 0.1 = 0.99 |
| 台数を増やすと | 下がる | 上がる |
**(1 − x) は「止まっている確率」**のことです。並列は「全部が同時に止まる確率」を1から引く、と覚えると式を取り違えません。0.9の装置2台なら、並列と直列の差は 0.99 − 0.81 = 0.18 です(2019r01a_am#16)。
組み合わせ問題:かたまりごとに1つの装置とみなす
複雑な構成は、並列のかたまりを先に1つの数値にまとめ、最後に直列で掛けると解けます。
2019h31h_am#14 では、サーバ1台(a)、クライアント3台の並列(b)、プリンタ2台の並列(c)が直列につながっています。
- クライアント部分:1 − (1 − b)³
- プリンタ部分:1 − (1 − c)²
- 全体:a × {1 − (1 − b)³} × {1 − (1 − c)²}
ひっかけの選択肢 (1 − b³) は「3台が全部動く確率を1から引いたもの」で、意味がまったく違います。正しくは「3台が全部止まる確率 (1 − b)³ を1から引く」です。
迂回回線の問題は、迂回ルートそのものが直列になっている点がポイントです。
flowchart LR
T["東京"] -->|"直接回線 0.9"| F["福岡"]
T -->|"0.9"| O["大阪"]
O -->|"0.9"| F
大阪経由のルートは直列で 0.9 × 0.9 = 0.81 です。直接回線(0.9)とは並列なので、全体は 1 − (1 − 0.9)(1 − 0.81) = 0.981 になります。
MTBF・MTTR と可用性管理の指標
稼働率は MTBF ÷(MTBF + MTTR) でも表せます。MTBFは「故障と故障のあいだの平均時間(長いほど壊れにくい)」、MTTRは「修理にかかる平均時間(短いほど直しやすい)」です。
| 性質 | 意味 | 代表的な指標 | 良くするには |
|---|---|---|---|
| 信頼性 | 壊れにくさ | MTBF(平均故障間隔)、MTBSI(平均サービスインシデント間隔) | 長くする |
| 保守性 | 直しやすさ | MTTR(平均修理時間)、MTRS(平均サービス回復時間) | 短くする |
| 可用性 | 使える割合 | 稼働率、サービスの中断回数 | 稼働率を上げ、中断回数を減らす |
ITIL(ITサービス管理のベストプラクティス集)では、**保守性のKPI(重要業績評価指標)は「平均サービス回復時間の短縮」**です(2016h28a_am#57)。可用性と信頼性を管理するKPIとしては「サービスの中断回数」が出題されています(menjo_20140126#58)。
縮退運転:壊れた部分を切り離して動き続ける
**縮退運転(縮退運用)**とは、障害が起きた箇所を切り離し、機能や性能が落ちても止めずに稼働を続けることです。片側の車線が工事中でも、残りの車線で通行を続ける道路のようなイメージです。
| 選択肢によく出る説明 | 正しい用語 |
|---|---|
| 障害箇所を切り離し、機能・性能を落として稼働を続ける | 縮退運転 |
| 回復のために、定期的に別の媒体へファイルを保存する | バックアップ(保存したものから戻す作業がリストア) |
| チェックポイントの記録を使って処理を途中から再開する | リスタート(リブートではない) |
| 回復のために、変更前後の状態を記録したもの | ジャーナル(ログ) |
| 一斉にではなく、手順に沿って段階的に止める | 段階的停止(縮退運転ではない) |
| 異常終了したジョブ以外の運用を続ける/ジョブの予定を変更する | どちらも縮退運転ではない |
移行前後の可用性の差(パーセントポイント)
ア 0.01
イ 0.19
ウ 1.40
エ 1.99
出典:令和8年度 基本情報技術者試験 科目A 公開問題 問14
解き方と答えを見る
- サービス提供時間(分母)は、移行前も移行後も 5,000時間(計画保守を除いた値)
- 移行前:停止は100時間 → (5,000 − 100) ÷ 5,000 = 4,900 ÷ 5,000 = 0.98 → 98.00%
- 移行後:停止は30分=0.5時間(30時間ではない)→ (5,000 − 0.5) ÷ 5,000 = 4,999.5 ÷ 5,000 = 0.9999 → 99.99%
- 小数第3位を切り捨てても、どちらの値も変わらない(98.00% と 99.99%)
- 差を引く:99.99 − 98.00 = 1.99 パーセントポイント
答え:エ:1.99
可用性99.5%から許容停止時間を逆算する
ア 0.3
イ 2.1
ウ 3.0
エ 3.6
解き方と答えを見る
- 1日のサービス時間:8:00〜22:00 → 14時間
- 1か月のサービス時間:14時間 × 30日 = 420時間
- 止まってよい割合:1 − 0.995 = 0.005(0.5%)
- 許容できる停止時間:420 × 0.005 = 2.1時間
- 24時間 × 30日 = 720時間で計算すると 3.6時間になる。これはひっかけの選択肢なので選ばない
答え:イ:2.1
迂回回線を追加したときの稼働率
ア 0.729
イ 0.810
ウ 0.981
エ 0.999
解き方と答えを見る
- 迂回ルート(東京→大阪→福岡)は2本の回線を両方使うので直列:0.9 × 0.9 = 0.81
- 直接回線(0.9)と迂回ルート(0.81)は、どちらかが使えればよいので並列
- 両方とも止まる確率:(1 − 0.9) × (1 − 0.81) = 0.1 × 0.19 = 0.019
- 全体の稼働率:1 − 0.019 = 0.981
答え:ウ:0.981
直列と並列を組み合わせた式を選ぶ
| 装置 | 稼働率 |
|---|---|
| サーバ | a |
| クライアント | b |
| プリンタ | c |
| LAN | 1 |
ア ab^3c^2
イ a(1 − b^3)(1 − c^2)
ウ a(1 − b)^3(1 − c)^2
エ a(1 − (1 − b)^3)(1 − (1 − c)^2)
解き方と答えを見る
- サーバは1台だけなので、そのまま a
- クライアント3台はどれか1台動けばよいので並列:1 − (1 − b)³
- プリンタ2台はどちらかが動けばよいので並列:1 − (1 − c)²
- LANの稼働率は1なので無視できる。3つの部分は全部必要なので直列で掛ける
- 全体:a × {1 − (1 − b)³} × {1 − (1 − c)²}
答え:エ:a(1 − (1 − b)^3)(1 − (1 − c)^2)
要点(試験直前に読む)
- 可用性=(サービス提供時間−停止時間)÷サービス提供時間。分母は約束した時間帯だけで、時間帯の外の停止や計画停止は数えない。
- 逆算は「提供時間×(1−可用性)」。8〜22時×30日で99.5%なら420×0.005=2.1時間。
- 直列は掛け算(0.9×0.9=0.81)、並列は1−(1−x)ⁿ(0.9が2台なら0.99)。
- 複雑な構成は、並列のかたまりを先に1つの数値にまとめてから直列で掛ける。迂回ルートの中身は直列。
- 保守性のKPI=平均サービス回復時間(MTRS)の短縮。可用性・信頼性のKPI=サービスの中断回数。
- 縮退運転=障害箇所を切り離し、性能が落ちても動かし続けること。
ひっかけ
- 24時間×日数で計算させるひっかけ。問題文の「○時から○時まで」を必ず使う(420時間なら2.1時間、720時間なら3.6時間になる)。
- サービス時間帯の外の修理時間を停止に含めさせるひっかけ。19時でサービスが終わるなら、21時までの修理は3時間分しか数えない。
- 単位の取り違え。「30分」を30時間と読まない(0.5時間)。差は割合ではなくパーセントポイントで答える。
- 並列の式を1−bⁿとする誤り。「全部が止まる確率(1−b)ⁿを1から引く」と言い直して確認する。
- 「2回以下」のような回数の条件や、信頼性の指標(MTBF・MTBSI)を混ぜて惑わせる。計算に使うのは時間だけで、保守性の指標は「回復時間」。
用語(15)
約束したサービス提供時間のうち、実際にサービスを使えた時間の割合。
⚠ 信頼性(壊れにくさ)・保守性(直しやすさ)とは別の性質。可用性は「結果として使えた割合」を表す。
システムや装置が正常に動いている時間の割合で、MTBF÷(MTBF+MTTR)でも表せる。
⚠ 試験では可用性とほぼ同じ意味で使われる。故障率(1−稼働率)と取り違えないこと。
顧客と合意した、サービスを提供する時間帯の合計で、可用性の分母になる。
⚠ 24時間・暦日とは違う。時間帯の外の停止や計画停止は含めない。
保守などのために、あらかじめ予定して行うサービスの停止。
⚠ 障害による停止とは別扱いで、問題文では「除く」「行わない」と書かれることが多い。
サービス提供者と顧客のあいだで、可用性などのサービスの水準を数値で合意した取り決め。
2つのパーセント値を単純に引き算した差を表す単位。
⚠ 「何%増えたか」(比率の変化)とは別物。98%→99.99%は1.99ポイント増だが、比率では約2.03%増になる。
すべての装置が動いて初めて全体が動く構成で、稼働率は各装置の稼働率を掛けたもの。
⚠ 並列と式を入れ替えやすい。直列は台数が増えるほど稼働率が下がる。
どれか1台が動けば全体が動く構成で、稼働率は「1 − 全部が止まる確率」で求める。
⚠ 1 − bⁿ ではなく 1 − (1 − b)ⁿ が正しい。(1 − b) は止まっている確率。
故障から次の故障までの平均時間で、長いほど信頼性が高い。
⚠ MTTRと逆向きに考える。MTBFは長いほど良く、MTTRは短いほど良い。
故障してから修理が終わるまでの平均時間で、短いほど保守性が高い。
⚠ MTBFと混同しやすい。修理・回復にかかる時間は保守性の指標。
サービスが中断してから利用者に再び提供されるまでの平均時間で、ITILでは保守性のKPIとされる。
⚠ MTBSI・MTBF(間隔=信頼性)とは違う。「回復」が付くものが保守性。
サービスの中断が起きてから次の中断が起きるまでの平均時間で、信頼性を表す。
⚠ 保守性の指標として出されたら誤り。保守性は回復時間(MTRS)。
目標の達成度を測るために継続して追いかける、重要な数値指標。
⚠ 可用性管理のKPIは中断回数や回復時間。SLA未達の項目数や性能インシデントの数は、別のプロセスの指標。
障害箇所を切り離し、機能や性能を落としてでもシステムの稼働を続けること。
⚠ 段階的停止、異常終了したジョブ以外の運用続行、ジョブのスケジュール変更とは別物。
チェックポイントに記録した状態から、処理を途中から再開すること。
⚠ リブート(OSなどの再起動)と取り違えさせる選択肢が出る。
このレッスンの過去問
- 可用性(%)の計算(サービス提供時間内停止時間)令和8年度 基本情報技術者試験 科目A 公開問題 問14
- 可用性(%)から許容停止時間を逆算する計算平成30年度 秋期 基本情報技術者試験 午前 問57
- 稼働率の直列・並列計算平成31年度 春期 基本情報技術者試験 午前 問14
- 可用性管理の指標(保守性=平均サービス回復時間)平成28年度 秋期 基本情報技術者試験 午前 問57
- 可用性管理のKPI(サービス中断回数)基本情報技術者試験 科目A免除 修了試験 20140126 実施分 問58
- システム運用用語の定義(縮退運転)平成26年度 秋期 基本情報技術者試験 午前 問57