法務・1/7・12分

著作権が守るものと守る期間

ゴール

著作権で守られるもの・守られないもの、著作者人格権と著作権(財産権)の違い、保護期間、許可なしで使ってよい例外を見分け、法務分野の著作権の4択を自力で解けるようになる。

著作権は法務分野でいちばん出題が多いテーマで、特に「プログラムの何が守られるか」は毎年のように形を変えて出ます。仕様書の作成を外注したり、Web サイトに素材を載せたりするときにも、そのまま役に立つ知識です。

このレッスンで稽古する(用語チェック・過去問)

結論:守られるのは「書いたもの(表現)」、「考え方(アイデア)」は守られない

著作権は、考えや気持ちを工夫して表現したもの(著作物)を守る権利です。プログラムなら、書かれたコードは守られます。一方で、その裏にある解き方(アルゴリズム)や、コードを書くためのルール(プログラム言語・規約)は守られません。

たとえるなら料理のレシピ本です。本の文章や写真は著作物ですが、「肉じゃがの作り方」そのものは誰が作ってもかまいません。

守られる(表現) 守られない(アイデア・ルール)
ソースプログラム(人が書いたコード) アルゴリズム(問題の解き方の手順)
オブジェクトプログラム(機械語に変換したもの) プログラム言語(C、Java など)
OS などの基本ソフト、コンパイラ、フリーソフト 規約(プロトコルなどの通信や接続の取り決め)
操作マニュアル、データベース(情報の選び方や並べ方に工夫があるもの)
  • ソースをコンパイルしたオブジェクトも、同じ著作物の別の形なので両方とも守られます。
  • 無料のフリーソフトも著作物です。無料だからといって権利を手放したわけではありません。
  • OS も守られます。「ハードウェアの代金に含まれているから守られない」という理屈は誤りです。
  • 著作権は届け出なしで、作った瞬間に生まれます(無方式主義)。なお、アルゴリズムは条件を満たせば特許で守られることはありますが、著作権の対象ではありません。
考え(アイデア)→ 書いたもの(表現)アルゴリズム守られないプログラム言語・規約守られない使って書くソースプログラム守られる(人が書いたコード)コンパイルオブジェクトプログラム守られる(同じ著作物の別の形)
考え方やルールは守られず、それを使って書いたソースプログラムと、コンパイルしたオブジェクトプログラムは両方とも守られる。

著作者の権利は2つ:人格権(気持ち)と著作権(お金)

著作者の権利は、作者の名誉や気持ちを守る著作者人格権と、作品の利用でお金を得る**著作権(財産権)**に分かれます。試験でいちばん差がつくのは、人格権は他人に譲れないという点です。

著作者人格権 著作権(財産権)
守るもの 作者の名誉・気持ち 作品から得られる利益
譲渡・相続 できない(作者本人だけのもの) できる(契約で売り買いできる)
中身 公表権・氏名表示権・同一性保持権 複製権・公衆送信権・貸与権 など

著作者人格権の3つ

権利 中身 覚え方
公表権 公表するかどうか、いつどう公表するかを決める 出すか出さないか
氏名表示権 作者名を出すかどうか、どの名前で出すかを決める 誰の作品か
同一性保持権 意思に反して内容を変更・切除されない 勝手にいじらせない

著作権(財産権)の例:コピーする複製権、サーバから送る公衆送信権(利用者の求めに応じて自動で送る場合も含む)、公衆に貸し出す貸与権など。「〜する権利」と並ぶ選択肢では、変更・切除・名前・公表の話かどうかで人格権を見分けます。

「著作権を全部譲渡」でも人格権は作者に残る

外注先に作ってもらった成果物について、契約で「著作権はすべて発注者に譲渡」と決めても、著作者人格権は作者(外注先)に残ります。そのため実務の契約書には、「著作者人格権を行使しない」という条項を別に入れるのが一般的です。

発注者(著作権を譲り受けた側)の行為 可否 理由
社内で印刷して配る ○ 複製権は発注者のもの
バックアップとしてコピーする ○ 複製権は発注者のもの
別の委託先に電子データを渡す ○ 複製権・公衆送信権は発注者のもの
作成者名を自社名に書き換える × 作者に残る氏名表示権の侵害
作者の意思に反して中身を大きく作り変える × 同一性保持権の侵害

逆に、社員が仕事として作ったプログラムは、契約や就業規則に別の定めがなければ会社が著作者になります(職務著作)。なので、会社が作成者の社員に断らずにコピーして販売しても、著作権の侵害にはなりません。

作者(外注先)発注者著作権(財産権)譲渡済み譲渡著作権(財産権)複製権・公衆送信権著作者人格権氏名表示権同一性保持権自社名に書き換え ×意思に反した改変 ×人格権は譲れず作者に残る
著作権(財産権)は契約で発注者へ移るが、著作者人格権は作者に残るので、発注者は名前の書き換えや勝手な作り変えができない。

許可なしで使ってよい例外と、ダメな例

著作物は原則として権利者の許可(使用許諾)がないと使えませんが、法律で決まった例外があります。許諾は「誰が・どこで・何に使えるか」の約束なので、範囲の外は許諾なしと同じです。

行為 可否 ポイント
買ったプログラムのバックアップ用コピー ○ 複製物の持ち主に認められた例外
自社のコンピュータで使うための一部改変 ○ 自分で使うために必要な改変は可
白書・統計など国の広報資料を、出所を明示して説明の材料に転載 ○ 転載禁止の表示がなければ可
公表された作品の引用(本文が主で引用が従、かぎ括弧などで区別、出所を明示) ○ 条件をすべて満たすこと
買った素材集を使用許諾の範囲内で自社 Web に使う ○ 許諾の範囲内なら問題なし
「自社で使ってよい」許諾のソフトを子会社にコピーして渡す × 許諾の範囲外(子会社は別の会社)
新聞の写真や雑誌のグラビアをスキャンして資料や Web に載せる × 複製・公衆送信の無断利用
雑誌記事をコピーして、限られた人に配る × 「対象が限られている」は理由にならない
撮影者に断らず、写真を別の製品のパンフレットに使う × 許諾された用途の外

Web ページは、閲覧の求めがあってから送る場合でも公衆送信にあたり、守られます。他人の作品を集めたページから1つを抜き出して使うときは、そのページの作成者ではなく、元の作品の著作者の許可が必要です。

使用許諾の範囲自社で使う ○素材集を自社Webに ○子会社にコピー×範囲の外は許諾なしと同じ
使用許諾は「どこで何に使えるか」の枠で、枠の中なら使えるが、枠の外(子会社へのコピー)は許諾なしと同じ。

保護期間:原則は作者の死後70年(昔の過去問は50年)

個人の著作物は、作者の死後70年まで守られます。会社などの団体名義の著作物は公表後70年です。

2018年12月の法改正前は死後50年でした。2012年の過去問の正解が「50」なのはそのためです。いまの試験で聞かれたら70年と答えます。

自動で発生作った時作者の死死後50年死後70年0年:ここから数える現行:死後70年まで守られる改正前:死後50年団体名義は公表後70年
著作権は作った時に自動で生まれ、年数は「作者の死」から数え始めて、個人の作品は死後70年まで守られる(改正前は死後50年)。

クリエイティブコモンズ:「この条件なら使ってよい」を先に示す仕組み

クリエイティブコモンズは、作者が作品の再利用の条件(作者名を表示すれば可、営利目的は不可、改変は不可など)を、あらかじめマークで示せるようにする枠組みです。それを広める活動や団体の名前でもあります。著作権を手放すのではなく、条件つきで使わせるための仕組みです。

ひっかけの選択肢には、図書館での複製の例外、著作物の定義、保護期間の説明が並びます。「再利用の条件を作者があらかじめ示す」と書いてある選択肢が正解です。

試験での問われ方

問い方 見るところ
「保護されるもの・されないものはどれか」 書いたもの(プログラム・マニュアル)か、考え方・ルール(アルゴリズム・言語・プロトコル)か
「著作者人格権に該当するものはどれか」 変更・切除・名前・公表の話が人格権。複製・送信・貸与は財産権
委託や契約の事例問題 著作権が譲渡されていても、人格権(名前・同一性)は作者に残る
「適法な行為・抵触するおそれがある行為」 法律の例外(バックアップ・自分で使うための改変・出所を明示した白書の転載)か、許諾の範囲内か
保護期間の年数 現行は死後70年。古い問題は50年
例題 1

著作権を譲渡されたA社に残る制約を見抜く

A 社は,自社の業務可視化を B 社に委託しその成果物として納品された業務フロー図を C 社に提示することによって,業務システムの開発を C 社に委託することを検討している。A 社がこの業務フロー図を使用する上で生じる制約として,適切なものはどれか。なお,B 社への委託に当たって締結された契約には,著作権は全て A 社に譲渡する旨の記述があり,著作者人格権については特段の記述はない。

ア C 社と守秘義務契約を締結したとしても,C 社に対して,納品された業務フロー図の電子データを提供することはできない。
イ 納品された業務フロー図の各ページに作成者名として記されている B 社の企業名を A 社の企業名に変更し,C 社に提示することはできない。
ウ 納品された業務フロー図を印刷し,社内資料として A 社の社員に配布することはできない。
エ バックアップの目的で,納品された業務フロー図の電子データを複製し,A 社だけがアクセス可能なクラウドストレージに保管することはできない。

出典:令和8年度 基本情報技術者試験 科目A 公開問題 問20

解き方と答えを見る
  1. 契約の中身を整理する:著作権(財産権)は全部 A社に移った。著作者人格権については何も書かれていない。
  2. 人格権は譲渡できないので、作成者の B社に残る。A社は複製・提供はできるが、名前の表示や中身の同一性には手を出せない。
  3. ア:C社に電子データを渡すのは複製・送信なので、著作権を持つ A社にできる。制約ではないので×。
  4. ウ:社内で印刷して配るのは複製なので、A社にできる。×。
  5. エ:バックアップとしてクラウドにコピーするのも複製なので、A社にできる。×。
  6. イ:作成者名の B社を A社に書き換えるのは、B社に残る氏名表示権の侵害になりうる。これが制約なので○。

答え:イ(作成者名の変更はできない)。著作権を譲渡されても著作者人格権は作者に残るので、氏名表示権がネックになる。

要点(試験直前に読む)

  • 守られるのは表現(ソース・オブジェクト・OS・マニュアル・データベース)。アルゴリズム・プログラム言語・規約(プロトコル)は守られない。
  • 著作者人格権は公表権・氏名表示権・同一性保持権の3つで、譲渡できない。複製・公衆送信・貸与は財産権。
  • 著作権を全部譲渡されても、作成者名の書き換えや意思に反する改変はできない。
  • バックアップ複製・自分で使うための改変・出所を明示した白書の転載・許諾範囲内の素材利用は適法。許諾範囲外のコピーは侵害。
  • 保護期間は現行法で死後70年(2018年の改正前の過去問は50年)。
  • クリエイティブコモンズ=作者が再利用の条件をあらかじめ示す仕組み。

ひっかけ

  • 「アルゴリズムやプログラム言語は保護される」→ 考え方やルールは守られない。守られるのは書かれたプログラムだけ。
  • 「OS は保護されない」「フリーソフトは保護されない」→ どちらも著作物。無料でも権利は残る。
  • 「複製する権利」「サーバから送信する権利」「貸し出す権利」を人格権として選ばせる → これらは財産権。人格権は名前・変更・公表の話。
  • 「著作権を譲渡されたので作成者名も変えられる」→ 人格権は作者に残るので、名前の書き換えはできない。
  • 「自社使用の許諾があるので子会社にも配れる」「限られた人への配布ならコピーしてよい」→ どちらも許諾の範囲外で侵害のおそれ。

用語(16)

著作物 ちょさくぶつ
考えや気持ちを工夫して表現したもので、文芸・学術・美術・音楽の範囲に入るもの。プログラムも含まれる。
⚠ アイデアや解き方そのものは著作物ではない。「表現されているか」で見分ける。
著作権(財産権) ちょさくけん
著作物をコピーしたり送ったり貸したりして利益を得る権利のまとまりで、譲渡や相続ができる。
⚠ 著作者人格権は譲渡できない。お金の話なら財産権、名誉や気持ちの話なら人格権。
著作者人格権 ちょさくしゃじんかくけん
作者の名誉や気持ちを守る権利で、公表権・氏名表示権・同一性保持権からなり、作者本人から切り離せない。
⚠ 著作権(財産権)は契約で移せるが、人格権は移せない。
公表権 こうひょうけん
まだ公表していない作品を、公表するかどうか、いつどう公表するかを作者が決める権利。
⚠ 公衆送信権(財産権)と名前が似ている。「出すかどうかを決める」なら公表権。
氏名表示権 しめいひょうじけん
作品に作者名を出すかどうか、どの名前で出すかを作者が決める権利。
⚠ 作成者名を書き換える選択肢はこの権利の侵害。著作権を譲渡されていても書き換えられない。
同一性保持権 どういつせいほじけん
作者の意思に反して、作品の内容や題名を変えられたり削られたりしない権利。
⚠ 複製権(財産権)と混同しやすい。「変更・切除されない」なら同一性保持権。
複製権 ふくせいけん
印刷・撮影・コピーなどで作品を複製する権利で、著作権(財産権)の一つ。
⚠ 人格権ではない。選択肢に「複製する権利」とあれば財産権。
公衆送信権 こうしゅうそうしんけん
放送やインターネットで作品を公衆に送る権利で、求めに応じてサーバから自動で送る場合も含む。
⚠ 「閲覧の求めがあってから送るので対象外」は誤り。
貸与権 たいよけん
作品の複製物を公衆に貸し出す権利で、著作権(財産権)の一つ。
⚠ 人格権ではない。
アルゴリズム あるごりずむ
問題を解くための処理の手順や考え方。
⚠ それを書いたプログラムは著作権で守られるが、アルゴリズム自体は守られない。
プロトコル(規約) ぷろとこる
機器やソフトがやり取りするときの取り決め。
⚠ プログラム言語と並んで、著作権で守られないものの代表。
ソースプログラム/オブジェクトプログラム そーすぷろぐらむ/おぶじぇくとぷろぐらむ
人がプログラム言語で書いたコードと、それを機械が実行できる形に変換したもの。
⚠ どちらか片方だけが守られるという選択肢は誤りで、両方とも著作物として守られる。
職務著作(法人著作) しょくむちょさく
社員が会社の仕事として作った作品は、契約や就業規則に別の定めがなければ会社が著作者になるという決まり。
⚠ 外注先が作った成果物には当てはまらない。外注では、契約で譲渡しない限り外注先が著作者。
使用許諾(ライセンス) しようきょだく
権利者が、誰が・どこで・どう使ってよいかを約束して利用を認めること。
⚠ 許諾があっても範囲の外(別の会社・別の用途)での利用は侵害になりうる。
引用 いんよう
公表された作品の一部を、自分の文章の中で区別して出所を明示し、従の扱いで使うこと。条件を満たせば許可は要らない。
⚠ 転載(丸ごと載せる)は原則として許可が要る。ただし国の白書などは、出所を明示すれば説明の材料として転載できる。
クリエイティブコモンズ Creative Commons
作品の再利用の条件を作者があらかじめ示せるようにする枠組みと、それを広める団体。
⚠ 図書館での複製の例外、著作物の定義、保護期間とは別物。著作権を放棄する仕組みでもない。

このレッスンの過去問

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