法務・2/7・11分

請負・準委任・派遣の契約形態と指揮命令

ゴール

請負・準委任・派遣の違いを「誰が完成責任を負うか」「誰が作業を指示するか」の2点で区別できるようになる。派遣の三者関係と偽装請負の判定、売買契約が成立する時点を問う過去問を自力で解けるようになる。

システム開発の外注は、ほぼ必ず請負・準委任・派遣のどれかで契約するので、法務分野の定番テーマになっています。公開過去問で見ると、派遣と偽装請負だけで免除試験を含め40回以上出ていて、この分野でも特に点を取りやすいところです。

このレッスンで稽古する(用語チェック・過去問)

結論:見分けるのは「完成責任」と「指揮命令」の2点

3つの契約形態は、成果物の完成に責任を負うかと、現場で作業を指示するのは誰かの2点で区別できます。請負は完成に責任を負い、準委任は作業を誠実に行う責任だけを負い、派遣では作業の指示を**派遣先(人を受け入れる会社)**が出します。試験の選択肢は、ほとんどがこの表の行を入れ替えて作られています。

請負契約 準委任契約 労働者派遣契約
約束するもの 成果物の完成 作業(事務)の遂行 労働力の提供
報酬の対象 成果物 作業そのもの(時間など) 派遣された労働
完成させる義務 ある ない ない(作業を指示するのは派遣先)
主な責任 完成責任・瑕疵担保責任(現行民法では契約不適合責任) 善管注意義務 雇用主としての責任は派遣元が負う
作業を指示する人 受託者(請け負った会社)自身 受託者自身 派遣先
発注者が要員に直接指示できるか できない できない できる

たとえるなら、請負は「工務店に家を建ててもらう」契約です。施主(発注者)は工務店に、完成した家への責任(完成責任・契約不適合責任)を求められます。ただし、大工さんに直接「ここを直して」と指示できるのは工務店だけです。

請負準委任派遣発注者契約受託者指示要員発注者は直接指示×発注者契約受託者指示要員発注者は直接指示×派遣先派遣契約派遣元雇用派遣労働者派遣先が直接指示○
矢印は「作業の指示」を表す。請負・準委任では受託者が要員に指示し、派遣では派遣先が派遣労働者に直接指示する。

請負:完成させる義務と、納品後の不具合への責任

請負契約は、仕事を完成させることを約束し、その完成した結果に対して報酬を払う契約です。そのため、納品した後に不具合が見つかったら、受託者は無償で直すなどの責任を負います。この責任が瑕疵担保責任(瑕疵=本来あるべき品質が欠けていること)です。

2020年の民法改正で、この責任は契約不適合責任(契約の内容に合わないものを渡したときの責任)という名前に変わりました。古い過去問では「瑕疵担保責任」の名前で出るので、両方とも同じものとして覚えておきます。

  • 「納品後一定期間内の不具合を無償で直してもらう根拠」→ 瑕疵担保責任
  • 「受託側が瑕疵担保責任を負う契約」→ 請負契約(委任・派遣は負わない)
請負契約の流れ契約(完成を約束)作業・開発完成・納品→報酬不具合が見つかる受託者が無償で直す完成責任成果物を完成させる契約不適合責任旧名:瑕疵担保責任
請負では完成・納品までが完成責任、納品後に見つかった不具合を無償で直すのが契約不適合責任(旧名:瑕疵担保責任)。

準委任:完成は約束せず、プロとして誠実に作業する

準委任契約は、法律行為以外の作業(事務)を任せる契約です。たとえば運用保守や、要件定義の支援がこれにあたります。成果物を完成させる義務はありません。その代わり、善管注意義務(その道の専門家として当然払うべき注意を払って作業する義務)を負います。

弁護士への依頼のような委任契約は、法律行為を任せる契約です。法律行為以外を任せるのが準委任ですが、責任の中身はどちらも同じです。試験で問われるのは「準委任=善管注意義務を負って作業を受託」という定義で、選択肢のうち「成果物の対価」「完成義務」は請負、「発注者の指揮命令下」は派遣の説明です。

派遣の三者関係:雇うのは派遣元、指示するのは派遣先

派遣の問題で最も多く問われるのは、誰と誰の間にどんな関係があるかです。派遣元(労働者を雇って送り出す会社)は労働者と雇用関係を結びます。派遣先(労働者を受け入れて働かせる会社)は労働者と指揮命令関係だけを持ち、雇用関係はありません。派遣元と派遣先の間にあるのは労働者派遣契約です。

flowchart LR
  A["派遣元企業"] -->|"労働者派遣契約"| B["派遣先企業"]
  A -->|"雇用関係"| C["派遣労働者"]
  B -->|"指揮命令関係"| C

「派遣先と労働者を結ぶ太線は何か」と聞かれたら、答えは指揮命令関係です。選択肢の「雇用(契約)関係」は派遣元と労働者の線、「労働者派遣契約関係」は派遣元と派遣先の線なので、混同しないようにします。

派遣元と派遣先の役割分担

判断の軸はひとつです。雇い主として必要なことは派遣元が行い、日々の現場の運営は派遣先が行います。

項目 担当 理由
業務の指示・遂行状況の管理 派遣先 指揮命令権を持っているから
職場環境の整備 派遣先 実際に働く場所だから
日々の休憩・休日の取得の管理 派遣先 現場の勤務時間を管理しているから
時間外労働の届出(36協定) 派遣元 雇用主として結んで届け出る協定だから
有給休暇の付与・承認 派遣元 雇用主の義務だから
就業条件の決定・変更 派遣元(派遣契約で決める) 派遣先が勝手に変えられないから

派遣先は作業を直接指示できます。一方で、有給休暇の承認を勝手に行ったり、取決めのない残業を自社社員と同じように命じたりすることはできません。残業は、派遣元の36協定と派遣契約の範囲内でしか命じられないからです。また、派遣労働者が指示どおり作業して起きたミスについて、派遣元に製造物責任を問うのも誤りです。

偽装請負:契約書ではなく「誰が指示しているか」で判定する

偽装請負は、契約書の上では請負(または準委任)なのに、実際には発注者が受託者の要員を直接指揮命令している状態です。この場合、実態は派遣とみなされ、労働者派遣法に違反します。

判定のポイントは、指揮命令と労務管理(休暇・残業・規律など)を受託者が自分で行っているかです。作業場所が発注者の事務所であることは関係ありません。

行為 判定
発注者の責任者が、請負要員に業務を割り振って指示する 偽装請負
請負要員の休暇承認を、発注者の指示に従って行う 偽装請負(派遣とみなされる)
発注者の事務所で、受託者の責任者の指示で作業する 適法
発注者の要望を、受託者の責任者が窓口として受ける 適法
機材の調達、就業時間・残業の管理を受託者が行う 適法

契約が多段になっていても、考え方は同じです。A社とB社が請負、B社とC社が派遣という関係なら、C社の要員に指示できるのは派遣先であるB社だけです。発注元のA社は、B社の要員にもC社の要員にも直接指示できません。

適法偽装請負(違法)発注者要望受託者の責任者指示要員発注者の事務所発注者受託者の責任者要員発注者の事務所受託者が指示=請負発注者が直接指示=派遣扱い
作業場所はどちらも発注者の事務所。違いは要員に指示しているのが受託者の責任者か、発注者かだけ。

出向は派遣とどう違うか

出向(ここでは在籍出向)では、労働者は出向元に籍を置いたまま、出向先とも雇用関係を結び、出向先の指揮命令を受けます。派遣との違いは、受け入れ先とも雇用関係があるかどうかです。派遣先とは雇用関係がなく、出向先とはあるので、派遣を出向と呼ぶ選択肢は誤りです。

売買契約はいつ成立するか

契約は、申込みに対する承諾が相手に届いた時点で成立します(到達主義)。見積書は「この条件なら売れます」と案内するだけの申込みの誘引で、申込みそのものではありません。

見積り依頼から支払までの取引では、注文書が申込み、注文請書が承諾にあたります。そのため売買契約は、注文請書が購入側(S社)に届いた時点、つまり図の②の矢印が着く時点で成立します。納品・受領・支払は、成立した契約を実行している段階です。

ネット通販でも考え方は同じで、事業者の承諾通知が消費者に届いた時点で成立します。承諾を発信した時点や、商品が届いた時点ではありません。

S社(購入側)販売側見積依頼見積書(申込みの誘引)① 注文書(申込み)② 注文請書(承諾)S社に届いた時点で成立以降は契約の実行納品支払
注文書が申込み、注文請書が承諾。②の注文請書がS社に届いた時点で売買契約が成立し、納品・支払はその実行にあたる。
例題 1

取引の流れから売買契約の成立時点を選ぶ

S 社が備品を購入するとき,購入先の K 社と図の手順で取引を行っている。この取引手順の中で,売買契約が成立するのはどの時点か。ここで,取引の内容は見積書以降の取引手順を通じて変わらないものとする。
時間軸(左→右)の取引図。上段が S 社(購入元),下段が K 社(購入先)。S 社から K 社へ「見積り依頼」(下向き矢印),K 社から S 社へ「見積書」(上向き矢印),S 社から K 社へ「注文書」(①,下向き矢印),K 社から S 社へ「注文請書」(②,上向き矢印),K 社から S 社へ「納品/納品書」(③,上向き矢印),S 社から K 社へ「受領書」(④,下向き矢印),K 社から S 社へ「請求書」(上向き矢印),S 社から K 社へ「支払」(下向き矢印)。

ア ①
イ ②
ウ ③
エ ④

出典:平成25年度 春期 基本情報技術者試験 午前 問80

解き方と答えを見る
  1. 矢印を1本ずつ、申込み・承諾のどちらにあたるかに分類する。
  2. 見積り依頼と見積書は条件のすり合わせ。見積書は申込みの誘引であり、申込みではない。
  3. ①の注文書は、S社からK社への申込み。この時点では、まだK社が承諾していない。
  4. ②の注文請書は、K社からS社への承諾。承諾が相手に届いた時点で契約が成立する(到達主義)。
  5. したがって、注文請書がS社に届いた時点(②の矢印が着く時点)で成立する。
  6. ③の納品、④の受領、その後の請求・支払は、成立した契約を実行する段階なので成立時点ではない。

答え:イ(②の注文請書がS社に届いた時点で成立)

例題 2

多段契約で「誰が誰に指示できるか」を判定する

図のような契約の下で,A 社,B 社,C 社の開発要員がプロジェクトチームを組んでソフト開発業務を実施するとき,適法な行為はどれか。
3 つのボックスが横に並ぶ: 「A 社(発注元)」⇔(請負契約)⇔「B 社」⇔(派遣契約)⇔「C 社」

ア A 社の担当者が B 社の要員に直接作業指示を行う。
イ A 社のリーダがプロジェクトチーム全員の作業指示を行う。
ウ B 社の担当者が C 社の要員に業務の割り振りや作業スケジュールの指示を行う。
エ B 社の担当者が業務の進捗によって C 社の要員の就業条件の調整を行う。

出典:平成21年度 秋期 基本情報技術者試験 午前 問80

解き方と答えを見る
  1. 契約ごとに関係を書き出す。A社とB社は請負契約(A社が発注者、B社が受託者)、B社とC社は派遣契約(B社が派遣先、C社が派遣元)。
  2. 請負では、発注者は受託者の要員に直接指示できない。よって、A社がB社の要員に指示するアは誤り。
  3. A社のリーダがチーム全員(B社・C社の要員を含む)に指示するイも、同じ理由で誤り(偽装請負になる)。
  4. 派遣では、派遣先が派遣労働者に指揮命令できる。よって、B社がC社の要員に業務の割り振りやスケジュールを指示するウは適法。
  5. 就業条件は派遣元(C社)が雇用主として決め、派遣契約で取り決めるもの。派遣先のB社が調整するエは誤り。

答え:ウ

例題 3

作業実態から偽装請負を見つける

A 社は B 社に対して業務システムの開発を委託し,A 社と B 社は請負契約を結んでいる。作業の実態から,偽装請負とされる事象はどれか。

ア A 社の従業員が,B 社を作業場所として,A 社の責任者の指揮命令に従ってシステムの検証を行っている。
イ A 社の従業員が,B 社を作業場所として,B 社の責任者の指揮命令に従ってシステムの検証を行っている。
ウ B 社の従業員が,A 社を作業場所として,A 社の責任者の指揮命令に従って設計書を作成している。
エ B 社の従業員が,A 社を作業場所として,B 社の責任者の指揮命令に従って設計書を作成している。

出典:平成25年度 秋期 基本情報技術者試験 午前 問79

解き方と答えを見る
  1. 契約を確認する。A社が発注者、B社が受託者の請負契約なので、作業するのはB社の従業員。
  2. A社の従業員が作業しているア・イは、そもそも請負の受託作業の話ではないので外す。
  3. B社の従業員について、誰が指揮命令しているかを見る。作業場所(A社かどうか)は判定に関係しない。
  4. エはB社の責任者が指示しているので、請負として適法。
  5. ウは発注者であるA社の責任者が、B社の従業員を直接指揮命令しているので偽装請負。

答え:ウ

要点(試験直前に読む)

  • 請負=完成義務+瑕疵担保責任(契約不適合責任)。準委任=完成義務なし+善管注意義務。派遣=派遣先が指揮命令する。
  • 発注者が要員に直接指示できるのは派遣だけ。請負・準委任で発注者が直接指示すると偽装請負になる。
  • 派遣:雇用関係は派遣元と労働者、指揮命令関係は派遣先と労働者、労働者派遣契約は派遣元と派遣先。
  • 派遣元は雇い主の仕事(36協定の届出・有給休暇・就業条件)、派遣先は現場の仕事(業務指示・職場環境・休憩や休日の管理)。
  • 偽装請負かどうかは、作業場所ではなく「誰が指示と労務管理をしているか」で判定する。
  • 売買契約は、承諾(注文請書)が相手に届いた時点で成立する。見積書は申込みの誘引。ネット通販も、承諾通知が消費者に届いた時点で成立。

ひっかけ

  • 「派遣先と労働者の関係」に「雇用関係」を入れたひっかけ → 雇用関係は派遣元と労働者の間。派遣先との間は指揮命令関係。
  • 準委任の説明に「成果物の対価」「完成義務」を入れたひっかけ → これは請負。「発注者の指揮命令下」は派遣の説明。
  • 偽装請負の問題で「作業場所が発注者の事務所」を判定材料にさせるひっかけ → 場所は関係ない。指揮命令をしているのが発注者側の人かどうかで判定する。
  • 派遣先が有給休暇を承認する・取決めのない残業を命じる・派遣元に製造物責任を問う、という選択肢 → いずれも誤り。派遣先が正当にできるのは業務の直接指示。
  • 売買契約の成立を「注文書を出した時」「納品時」「承諾を発信した時」とするひっかけ → 承諾が相手に届いた時点で成立する。

用語(15)

請負契約 うけおいけいやく
仕事の完成を約束し、完成した成果物に対して報酬を受け取る契約。
⚠ 準委任は完成義務がなく、作業そのものに報酬が払われる。「完成」「成果物」が出たら請負。
準委任契約 じゅんいにんけいやく
法律行為以外の作業を、善管注意義務を負って引き受ける契約で、完成義務はない。
⚠ 委任契約は法律行為を任せる契約。違いは任せる作業の種類だけで、責任の中身は同じ。
労働者派遣 ろうどうしゃはけん
派遣元が雇った労働者を、派遣先の指揮命令の下で働かせる仕組み。
⚠ 出向は受け入れ先とも雇用関係がある。派遣先とは雇用関係がない。
派遣元 はけんもと
労働者と雇用契約を結び、派遣先に送り出す会社。
⚠ 派遣先と取り違えやすい。給料・有給休暇・36協定など、雇い主の仕事をするのが派遣元。
派遣先 はけんさき
派遣労働者を受け入れ、業務の指示を出す会社。
⚠ 作業指示・職場環境・休憩や休日の管理は派遣先。雇用関係はない。
指揮命令権 しきめいれいけん
作業の内容・手順・時間などを、労働者に直接指示できる権限。
⚠ 雇用関係とは別物。派遣では雇用は派遣元、指揮命令は派遣先と分かれる。
善管注意義務 ぜんかんちゅういぎむ(善良な管理者の注意義務)
その立場の専門家として通常求められる注意を払って、作業を行う義務。
⚠ 瑕疵担保責任は、完成品の不具合を直す責任(請負)。善管注意義務は、作業するときの注意の程度(準委任)。
瑕疵担保責任 かしたんぽせきにん
引き渡した成果物に欠陥があったとき、受託者が修補などに応じる責任。
⚠ 損害賠償責任は金銭で償う責任。「無償で修復してもらう根拠」なら瑕疵担保責任。
契約不適合責任 けいやくふてきごうせきにん
2020年の民法改正で瑕疵担保責任に代わった名前で、契約内容に合わないものを渡したときの責任。
⚠ 古い過去問の瑕疵担保責任と同じ位置づけだと覚える。
偽装請負 ぎそううけおい
契約は請負なのに、発注者が受託者の要員を直接指揮命令していて、実態が派遣になっている違法な状態。
⚠ 作業場所が発注者の事務所なだけなら適法。判断の基準は、誰が指示と労務管理をしているか。
出向 しゅっこう
元の会社に籍を残したまま別の会社とも雇用関係を結び、その会社の指揮命令で働くこと。
⚠ 派遣は派遣先と雇用関係がない。出向は出向先とも雇用関係がある。
申込みの誘引 もうしこみのゆういん
相手に申込みをしてもらうための案内で、それ自体は申込みではないもの(見積書など)。
⚠ 注文書が申込み。見積書に応じても、それだけでは契約は成立しない。
承諾 しょうだく
申込みを受け入れる意思表示で、相手に届いた時点で契約が成立する。
⚠ 取引図では注文請書が承諾。注文書(申込み)や納品と混同しない。
到達主義 とうたつしゅぎ
意思表示は、相手に届いた時点で効力を生じるという考え方。
⚠ 発信主義(送った時点)と取り違えやすい。現行民法では、契約の承諾も到達した時点。
36協定 さぶろくきょうてい(時間外・休日労働に関する協定)
時間外労働や休日労働をさせるために、使用者が労働者側と結んで労働基準監督署へ届け出る協定。
⚠ 派遣では、雇用主である派遣元が結んで届け出る。派遣先ではない。

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