法務・3/7・9分

著作権は誰のものか:職務著作・請負とソフトウェアの使用許諾

ゴール

取決めがないときのプログラムの著作権の帰属先(従業員・請負・派遣・再委託)を判定でき、ライセンスの契約形態(ボリューム/サイト/シュリンクラップなど)とソフトウェアの流通形態(シェアウェアなど)を名前と説明で結び付けられるようになる。

外注や派遣が多いIT業界では「作ったプログラムは誰のものか」で揉めやすく、発注側で契約書を読むときにも直接役立ちます。試験でも、著作権の帰属先とライセンスの名前当ては法務分野で繰り返し出ています。

このレッスンで稽古する(用語チェック・過去問)

結論:著作権は「作業者に指揮命令していた会社」のもの

取決めがなければ、プログラムの著作権は手を動かした個人ではなく、その人に指揮命令していた会社のものになります。お金を出した発注者や、仕事を流した元請のものではありません。迷ったら「この作業者に『これを作れ』と指示していたのは誰か」を探せば、この分野の帰属問題はほぼ解けます。

誰が作ったか 取決めがないときの著作権 理由
自社の従業員 勤め先の会社 職務著作
請負で外注先の社員 受託会社(作った側) 受託会社が自社の社員に指揮命令している
派遣社員 派遣先企業 派遣先が指揮命令している
(発注者・元請) 帰属しない 欲しければ契約で譲渡を受ける

職務著作:従業員が仕事で作ったものは会社が著作者

職務著作(法人著作)とは、会社の仕事として従業員が作った著作物について、従業員ではなく会社を著作者とする著作権法のルールです。条件は、①会社の発意(会社が「作れ」と言い出した)、②会社の業務に従事する人が、③職務として作った、④会社名義で公表する、⑤作った時点の契約や就業規則に別段の定めがない、の5つです。社内専用で公表しないプログラムが多いため、プログラムには④の名義の条件が要りません。

たとえるなら、レストランの料理人が店のメニューとして考えたレシピは、料理人個人ではなく店のもの、という感覚です。

試験では特許の職務発明と混ぜてきます。仕組みが違うので表で区別します。

職務著作(著作権法) 職務発明(特許法)
対象 プログラム・文書など 発明
最初の権利者 会社が著作者になる 従業者が発明者。会社は勤務規則などで権利を取得できる
従業員への対価 規定なし 従業者は相当の利益を受ける権利がある

「従業員に帰属し会社に譲渡できる」「会社は従業員に対価を払う必要がある」は職務発明側の発想で、職務著作の正解にはなりません。

請負・再委託:作った受託会社のもの(最頻出)

請負で外注したプログラムは、取決めがなければ作った受託会社のものです。発注者が仕様を出し、代金を払っていても変わりません。発注者が著作権を持ちたいなら、契約書に「著作権を発注者に譲渡する」と書く必要があります。

理屈は職務著作と同じです。請負では受託会社が自社の社員に指揮命令して作るので、受託会社が著作者になります。再委託が何段重なっても、答えは実際に作った社員の勤め先です。

flowchart LR
  A["A社(発注元)"] -->|"委託"| B["B社(要件定義まで)"]
  B -->|"再委託"| C["C社(設計〜テスト)"]
  C -->|"指揮命令"| D["D社員(実際に作成)"]
  C -.->|"著作権はここ"| X["C社に帰属"]

「外注先に関する記述で適切なもの」を選ぶ問題では、契約形態ごとの違いも一緒に問われます。

契約 完成責任 作業者に指揮命令するのは 著作権(取決めなし)
請負 あり 受託会社 受託会社
準委任 なし 受託会社 受託会社
派遣 なし 派遣先(発注側) 派遣先

瑕疵担保責任(今の民法では契約不適合責任)は、請負の受託者が成果物の欠陥について負う責任です。派遣では派遣元が成果物の欠陥の責任を負うわけではありません。

請負:代金を払っても著作権は来ない発注者著作権なし仕様・代金受託会社指揮命令社員(作る人)著作権はここ契約で譲渡すれば移る
請負では、仕様と代金を出した発注者ではなく、社員に指揮命令して作らせた受託会社に著作権が残る。発注者に移るのは譲渡の契約を結んだときだけ。

派遣:雇用主ではなく派遣先のもの

派遣社員の雇用主は派遣元ですが、仕事の指示を出すのは派遣先です。試験では、取決めがなければ著作権は派遣先企業に帰属するとします。「指揮命令していた会社のもの」というルールは請負と同じで、派遣では指揮命令する会社が派遣先になる、という立場の違いだけです。

「派遣先の直接の指揮命令者(上司個人)」は会社ではなく個人なので、選んではいけません。

派遣:指示を出す派遣先のもの派遣元(雇用主)派遣先企業派遣契約派遣社員雇用指揮命令著作権はここ派遣元でも上司個人でもなく派遣先の会社
派遣社員を雇うのは派遣元だが、仕事の指示を出すのは派遣先なので、著作権は派遣先企業に帰属する。

ソフトウェアの使用許諾とライセンスの形

使用許諾(ライセンス)とは、著作権者が「この条件なら使ってよい」と認めることです。ソフトを買っても手に入るのは「使う権利」で、著作権そのものではありません。

使用許諾の根拠は著作権なので、特許を取っていないソフトでも、自社製品に搭載して販売済みのソフトでも、単体で他社に許諾できます。ソースコードを無償で許諾しただけでは、自動的にオープンソースソフトウェアにはなりません。

何を単位に使わせるかで名前が変わります。

名称 単位 見分けるキーワード
ボリュームライセンス 台数(大量購入) 大量購入者向け・インストールできる台数を事前に取り決め・マスタを提供
サイトライセンス 場所(組織) 特定の企業・施設の中なら台数や人数に制限なく一括で使える
マシン(CPU)ライセンス コンピュータ 特定のコンピュータ、または一定台数で使える
ユーザライセンス 人 特定のユーザ、または一定人数で使える
サーバライセンス サーバ 特定のサーバに入れ、そのクライアントから使う

いつ契約が成立するかで区別する形もあります。

名称 契約が成立する時点
シュリンクラップ契約 パッケージの包装(フィルム)を解いた時点
クリックラップ契約 ダウンロード時などに画面で**「同意する」を選んだ**時点

シュリンクは、箱を包む「縮むフィルム」のことです。名前に包装が入っているので「包装を解いた時点」と結び付けて覚えます。代金を払った時点、受け取った時点、インストールした時点はどれも誤りです。

契約が成立するのはどの時点かシュリンクラップ成立×××代金を払う受け取る包装を解くインストールクリックラップ成立××ダウンロード「同意する」を選ぶインストール
シュリンクラップ契約は包装を解いた時点、クリックラップ契約は画面で「同意する」を選んだ時点で成立し、代金を払った・受け取った・インストールした時点ではない。

ソフトウェアの流通形態:お金と著作権で区別

出題は少なめですが、選択肢の並びはいつも同じです。

名称 料金 著作権
シェアウェア 試用は無償、使い続けるなら有料 作者が持つ
フリーウェア 無償 作者が持つ(放棄していない)
パブリックドメインソフトウェア(PDS) 無償 放棄されている
オープンソースソフトウェア(OSS) 多くは無償 作者が持ち、ライセンス条件の範囲で改変・再配布を認める

グループウェアは流通形態ではなく、スケジュール共有など、チームの共同作業を助けるソフトの種類です。

試験での問われ方

  • 帰属先を選ぶ問題:発注元・元請・作成した会社・社員個人が並びます。「作業者に指揮命令していた会社」を1つだけ選びます。
  • 契約の記述を選ぶ問題:著作権の帰属と、完成責任・指揮命令・瑕疵担保責任の誤った組合せが並びます。完成責任は請負だけ、指揮命令は派遣だけが発注側、と押さえます。
  • ライセンスの説明を選ぶ問題:ボリューム・サイト・クリックラップ・シュリンクラップの説明が4つ並ぶ形がほぼ決まっています。キーワード(台数/場所/同意クリック/包装)で選びます。
例題 1

再委託が重なったときの著作権の帰属先を判定する

A社は顧客管理システムの開発を,情報システム子会社であるB社に委託し,B社は要件定義を行った上で,設計・プログラミング・テストまでを協力会社であるC社に委託した。C社では優秀なD社員にその作業を担当させた。このとき,開発したプログラムの著作権はどこに帰属するか。ここで,関係者の間には,著作権の帰属に関する特段の取決めはないものとする。

ア A社
イ B社
ウ C社
エ D社員

出典:平成22年度 春期 基本情報技術者試験 午前 問78

解き方と答えを見る
  1. 取決めの有無を確認する:問題文に「特段の取決めはない」とあるので、原則のルール(作業者に指揮命令していた会社のもの)で判定する。
  2. プログラムを実際に作った人を特定する:設計・プログラミング・テストを担当したのはC社のD社員。
  3. D社員に指揮命令していたのは誰かを考える:D社員はC社の従業員で、C社の業務としてC社の指示で作っている。
  4. 職務著作のルールを当てはめる:会社の仕事として従業員が作ったので、著作者はD社員個人ではなくC社になる。
  5. 他の選択肢を消す:A社は発注しただけ、B社は要件定義をしてC社に委託しただけで、プログラムは作っていない。取決めがないので、A社にもB社にも著作権は移らない。

答え:ウ(C社)。実際に作ったD社員に指揮命令していた勤め先に帰属する。

要点(試験直前に読む)

  • 取決めがなければ、プログラムの著作権は「作業者に指揮命令していた会社」のもの。
  • 自社の従業員が仕事で作った→会社(職務著作)。請負・再委託→実際に作った受託会社。派遣→派遣先企業。
  • 発注者は代金を払っても著作権を持たない。欲しければ譲渡契約が必要。
  • ボリューム=大量購入で台数を事前に取り決め、サイト=場所の中なら台数無制限、シュリンクラップ=包装を解いた時点で成立、クリックラップ=「同意する」を選んだ時点で成立。
  • シェアウェア=試用後は有料、フリーウェア=無償だが著作権あり、PDS=著作権放棄。
  • 使用許諾は著作権に基づくので、特許の有無や製品への搭載済みかどうかに関係なく行える。

ひっかけ

  • 「発注者(お金を出した側)に帰属する」:取決めがなければ発注者は著作権を持たない。仕様を出していても同じ。
  • 「担当した社員個人に帰属する」「会社は社員に対価を払う必要がある」:職務発明との混同。職務著作では最初から会社が著作者。
  • 再委託の問題で元請(要件定義をした会社)を選ぶ:要件定義をしただけではプログラムの著作者にならない。実際に作った社員の勤め先を選ぶ。
  • 派遣で「派遣元」や「派遣先の指揮命令者(個人)」を選ぶ:指揮命令している会社=派遣先企業が正解。
  • ライセンスの説明問題:台数の取決め→ボリューム、施設内なら無制限→サイト、同意クリック→クリックラップ、包装を解く→シュリンクラップ、とキーワードで見分ける。

用語(17)

著作権 ちょさくけん
プログラムや文章などの創作物を、作った側が複製・改変・配布などについて独占的に決められる権利。
⚠ 特許権は発明(アイデア)を守り、出願・登録が必要。著作権は表現を守り、作った時点で自動的に発生する。
職務著作 しょくむちょさく(法人著作)
会社の発意で従業員が仕事として作った著作物について、別段の定めがなければ会社を著作者とするルール。
⚠ 職務発明(特許法)は従業者が発明者で、相当の利益を受ける権利がある。職務著作は最初から会社が著作者で、対価の規定はない。
職務発明 しょくむはつめい
従業者が仕事として行った発明で、会社は勤務規則などで権利を取得でき、従業者は相当の利益を受ける権利を持つ。
⚠ プログラムの著作権の問題に「対価支払いが必要」と出たら、職務発明との混同を狙ったひっかけ。
請負契約 うけおいけいやく
受託者が仕事の完成を約束し、成果物に対して報酬を受け取る契約。取決めがなければ、作ったプログラムの著作権は受託会社に帰属する。
⚠ 派遣は雇用主(派遣元)ではなく指揮命令する派遣先に帰属し、請負は受託会社に帰属する。どちらも指揮命令する会社が権利者でルールは同じ。完成責任があるのは請負だけ。
準委任契約 じゅんいにんけいやく
受託者が専門家として作業を誠実に行うことを約束する契約で、成果物の完成責任はない。
⚠ 完成責任がなくても、作業者への指揮命令は受託会社が行う。発注者が直接指揮命令できるのは派遣だけ。
労働者派遣契約 ろうどうしゃはけんけいやく
派遣元が雇用する労働者を派遣先で働かせ、派遣先が仕事の指揮命令をする契約。取決めがなければ著作権は派遣先企業に帰属する。
⚠ 雇用主の派遣元や、派遣先の上司個人ではない。指揮命令している会社(派遣先)を選ぶ。
譲渡契約 じょうとけいやく
著作権を持っている側から別の者へ権利を移す契約。発注者が外注したプログラムの著作権を持ちたいときに必要。
⚠ 使用許諾は「使ってよい」と認めるだけで、著作権は元の持ち主に残る。
使用許諾 しようきょだく(ライセンス)
著作権者が条件を決めてソフトウェアを使うことを認めること。特許の有無や既存製品への搭載に関係なく行える。
⚠ 無償でソースを許諾しただけでは、自動的にオープンソースソフトウェアにはならない。
ボリュームライセンス ぼりゅーむらいせんす
大量購入者向けに、インストールできる台数(許諾数)を事前に取り決めて使用を認める契約。
⚠ サイトライセンスは台数ではなく場所(施設・組織)が単位で、その中なら台数無制限。
サイトライセンス さいとらいせんす
特定の企業・施設の中であれば、複数のコンピュータでの使用を一括して認める契約。
⚠ 一定台数ならマシン(CPU)ライセンス、一定人数ならユーザライセンス、サーバに入れてクライアントから使うならサーバライセンス。
シュリンクラップ契約 しゅりんくらっぷけいやく
パッケージの包装を解いた時点で、使用許諾契約が成立したとみなす契約。
⚠ クリックラップ契約は画面で「同意する」を選んだ時点で成立する。代金支払い・受取り・インストールの時点ではない。
クリックラップ契約 くりっくらっぷけいやく
ダウンロード時などに表示される契約内容に「同意する」を選ぶことで、使用が許される契約。
⚠ 包装を解いて成立するのはシュリンクラップ契約。
シェアウェア しぇあうぇあ
無償で試用できるが、試用期間後も使い続けるなら使用料を払うソフトウェア。
⚠ フリーウェアはずっと無償。PDSは著作権が放棄されている。
フリーウェア ふりーうぇあ
無償で使えるが、著作権は作者が持ち続けているソフトウェア。
⚠ PDSは著作権そのものを放棄している。無償でも著作権があるのがフリーウェア。
パブリックドメインソフトウェア PDS(Public Domain Software)
作者が著作権を放棄し、誰でも自由に使えるソフトウェア。
⚠ フリーウェアは無償だが著作権は放棄していない。
オープンソースソフトウェア OSS(Open Source Software)
ソースコードを公開し、ライセンスの条件の範囲で誰でも利用・改変・再配布できるソフトウェア。
⚠ 著作権は放棄されていない(PDSとは違う)。無償で配っただけでOSSになるわけではない。
グループウェア ぐるーぷうぇあ
スケジュール共有や掲示板など、組織の共同作業を支援するソフトウェアの種類。
⚠ 流通形態(シェアウェア・フリーウェアなど)の選択肢に混ぜて出るが、料金や著作権の区分ではない。

このレッスンの過去問

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