特許などの産業財産権と営業秘密
産業財産権の4つの権利(特許・実用新案・意匠・商標)とそれぞれが守るもの、特許ライセンスの考え方(一部抵触・クロスライセンス・パテントプール・職務発明)、営業秘密の3要件、独占禁止法の目的を区別して、選択肢から正しいものを選べるようになる。
知的財産の問題は、用語の定義と保護対象が区別できれば1問1分以内で解ける得点源です。業務でも「このノウハウは特許にするか社外秘にするか」「他社特許に触れていないか」の判断で同じ知識を使います。
このレッスンで稽古する(用語チェック・過去問)結論:知的財産は「登録して守る」か「秘密にして守る」か
知的財産(アイデアや表現など、形の無い財産)を守る方法は大きく2つです。1つは特許庁に出願・登録して独占権を得る産業財産権、もう1つは社内で隠して守る営業秘密(不正競争防止法で保護)です。前回の著作権は、登録しなくても創作した時点で自動的に発生する3つ目の系統です。
| 系統 | 権利が生まれるタイミング | 根拠となる法律 |
|---|---|---|
| 産業財産権 | 出願して登録されたとき | 特許法・実用新案法・意匠法・商標法 |
| 著作権 | 創作した瞬間(登録不要) | 著作権法 |
| 営業秘密 | 3要件を満たす状態で管理しているあいだ | 不正競争防止法 |
たとえるなら、産業財産権は土地の登記です。役所に登録して初めて「ここは自分のもの」と他人に主張できます。
産業財産権は4つ:特許・実用新案・意匠・商標(最頻出)
産業財産権=特許権・実用新案権・意匠権・商標権の4つです。著作権は含まれません。過去問では、4つのうち1つを著作権に差し替えた選択肢が並び、著作権を含まない組合せが正解でした。
| 権利 | 守るもの | 定義のキーワード | 存続期間の目安 |
|---|---|---|---|
| 特許権 | 発明 | 自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度なもの | 出願から20年 |
| 実用新案権 | 考案(小発明) | 物品の形状・構造・組合せに関するもの | 出願から10年 |
| 意匠権 | デザイン | 物品の形状・模様・色彩などで、視覚を通じて美感を起こさせるもの | 出願から25年 |
| 商標権 | ブランドの目印 | 商品・サービスを他者と区別する文字・図形・記号など(識別標識) | 登録から10年(更新できる) |
| (参考)著作権 | 表現 | 思想又は感情を創作的に表現したもの | 原則、著作者の死後70年 |
見分け方は定義の末尾の言葉です。「高度なもの」なら特許、「形状・構造・組合せ」なら実用新案、「美感」なら意匠、「区別」「識別」なら商標、「思想又は感情」「表現」なら著作権です。プログラムも、技術的なアイデアであれば特許の対象になりえます(プログラムの書き方そのものは著作権)。
特許の使わせ方:ライセンス・クロスライセンス・パテントプール
特許権者は、他社に使用を許可(ライセンス=実施許諾)してお金を受け取れます。製品の一部でも他社特許に抵触すれば、その部分のライセンスが要ります。ハードウェア部分だけ抵触していても、その部分の許諾が無ければ権利侵害です。
| 用語 | 何をするか | 取り違えやすい説明 |
|---|---|---|
| ライセンス | 特許の使用を他者に許諾する | ― |
| クロスライセンス | 2社が分野を特定して、互いの特許の使用を相互に許諾し合う | 費用分担の取決め、ソースコードの無償公開 |
| パテントプール | 複数企業が特許をもち寄り、一括して管理・ライセンスする(MPEG などの規格で使われる) | デファクトスタンダード、OSS のライセンス、無償の特許 |
クロスライセンスは2社間の「物々交換」、パテントプールは多数社の「共同窓口」と覚えます。製品化は「必要なライセンスを全部取れば可能」です。特許の持ち主が複数社に分かれていても、それぞれから許諾を得れば製品化できます。
職務発明:会社は少なくとも「通常実施権」を持つ
職務発明とは、従業者が会社の業務として行った発明です。社内規程などで定めていなければ、特許を受ける権利は発明した従業者にあり、会社は通常実施権(独占ではないが、無償でその発明を使える権利)を持ちます。規程などであらかじめ定めておけば、会社が権利を取得することもできます。その場合、従業者は相当の利益(金銭など)を受け取ります。
| 選択肢の言い回し | 正誤 | 理由 |
|---|---|---|
| 企業は通常実施権を有する | ○ | 特許法の定め |
| 無条件に企業が取得する | × | 規程などで定めることが必要 |
| 自動的に共有特許になる | × | 自動的に共有にはならない |
| 特許庁が定めた対価を払う | × | 対価(相当の利益)は会社と従業者が規程などで決める |
| 実施権 | 中身 |
|---|---|
| 通常実施権 | 使える権利。他の人にも同じ権利を与えられる(独占ではない) |
| 専用実施権 | 設定した範囲を独占的に使える権利。登録が必要で、その範囲は特許権者自身も使えない |
営業秘密の3要件:秘密管理性・有用性・非公知性(最頻出)
不正競争防止法が守る営業秘密は、3つの要件をすべて満たす情報です。1つでも欠ければ保護されません。たとえば料理店の秘伝のタレのレシピは、金庫に入れて(管理)、売上に効いていて(有用)、世間に知られていない(非公知)からこそ営業秘密になります。
| 要件 | 意味 | 監査のチェック例 |
|---|---|---|
| 秘密管理性 | 秘密として管理されている | 媒体に「社外秘」などの秘密表示がある、アクセス制限がある |
| 有用性 | 事業活動に役立つ技術上・営業上の情報 | 経営や業務の改善に役立っているか |
| 非公知性 | 公然と知られていない | 刊行物やWebに掲載されていないか |
「3要件のうち2つを示して、残り1つを問う」問題と、「秘密管理性のチェックポイントはどれか」と1つを選ばせる問題が出ます。特許出願は要件ではありません。出願すると内容が公開され、非公知性をかえって失います。存続期間の制限も要件ではありません。
| 比較 | 特許で守る | 営業秘密で守る |
|---|---|---|
| 公開 | 出願すると公開される | 隠したまま |
| 期間 | 出願から20年で終わる | 秘密を保てる限り続く |
| 手続 | 出願・審査・登録が必要 | 登録不要。管理の努力が必要 |
独占禁止法と紛らわしい法律
独占禁止法の目的は「公正かつ自由な競争を促進する」ことです。名前が似た不正競争防止法(営業秘密や他社商品の模倣など、ずるい手口を禁じる法律)と混同しないようにします。
| 法律 | 目的・対象 |
|---|---|
| 独占禁止法 | 私的独占やカルテルを禁じ、公正かつ自由な競争を促進する |
| 不正競争防止法 | 営業秘密の不正取得、他社商品の形態の模倣などを禁じる |
| 製造物責任法(PL法) | 製品の欠陥で損害が出たときの製造業者の責任 |
| 特許法 | 発明を保護し、特許権者に実施する権利を与える |
| 外為法 | 国際的な平和・安全を損なう取引(輸出など)を規制する |
試験での問われ方
- 4権利の組合せ:著作権を混ぜた選択肢が並ぶ。「著作権が入っていたら誤り」で即決する
- 保護対象の定義:特許・実用新案・意匠・著作権の定義文を並べる。「高度」「形状・構造」「美感」「思想・感情の表現」で振り分ける
- 営業秘密:特許出願、存続期間、営業譲渡など、もっともらしい「要件ではないもの」が混ざる。有用性・非公知性の確認作業を、秘密管理性のチェックとして並べる問題もある
- ライセンス:「一部を許諾されれば残りは模倣してよい」「複数社に分かれていると製品化できない」は誤り
- 用語の取り違え:クロスライセンス、パテントプール、OSS、デファクトスタンダードの説明を入れ替える
要点(試験直前に読む)
- 産業財産権=特許・実用新案・意匠・商標の4つ。著作権は含まない(登録不要で発生する別系統)
- 定義のキーワード:特許は「高度」、実用新案は「形状・構造・組合せ」、意匠は「美感」、商標は「区別(識別標識)」、著作権は「思想又は感情の表現」
- 営業秘密の3要件=秘密管理性・有用性・非公知性。秘密表示は秘密管理性。特許出願は要件ではない
- クロスライセンスは2社間の相互許諾、パテントプールは複数社の特許の一括管理
- 職務発明では、会社は少なくとも通常実施権を持つ。「無条件に企業が取得」「特許庁が対価を定める」は誤り
- 独占禁止法の目的は「公正かつ自由な競争の促進」
ひっかけ
- 4権利の選択肢に著作権が紛れ込む → 著作権が入っていたら誤り
- 営業秘密の3つ目の要件に「特許出願していること」「期間10年以内」が出る → 出願すると公開されるので逆。正解は「公然と知られていない」
- 秘密管理性のチェックに「経営に役立つか」(有用性)や「刊行物に載っていないか」(非公知性)が混ざる → 「秘密表示」「アクセス制限」が秘密管理性
- ライセンスで「一部を許諾されれば残りは模倣してよい」「複数社に分かれると製品化不可」 → 抵触する部分ごとに許諾を取れば製品化できる。取らなければ侵害
- 独占禁止法の目的に製造物責任法・特許法・外為法の目的が並ぶ → 「競争」の語があるものを選ぶ
用語(17)
特許権・実用新案権・意匠権・商標権の4つの総称で、特許庁に出願・登録して発生する独占権。
⚠ 著作権は登録不要で、産業財産権に含まれない。
自然法則を利用した技術的思想の創作のうち、高度なもの(発明)を独占的に実施できる権利。
⚠ 実用新案権は「高度」を求めない小発明(物品の形状・構造・組合せ)が対象。
物品の形状・構造・組合せに関する考案(小発明)を保護する権利。
⚠ 特許は「高度な」発明。意匠は見た目の美しさ。
物品の形状・模様・色彩など、視覚を通じて美感を起こさせるデザインを保護する権利。
⚠ 実用新案は形状を「機能・構造」として守り、意匠は「見た目」として守る。
商品やサービスを他者のものと区別するための文字・図形・記号など(識別標識)を保護する権利。
⚠ 意匠(デザイン)と混同しやすい。「区別」「識別」なら商標。
思想又は感情を創作的に表現したものを、創作と同時に登録なしで保護する権利。
⚠ 産業財産権の4つには含まれない。
特許などの権利者が、他者に権利の使用を許可すること。
⚠ 製品の一部でも他社特許に抵触すれば、その部分のライセンスが必要。
2社が技術・製品分野を特定して、互いの特許の使用を相互に許諾し合う契約。
⚠ パテントプールは多数社が特許をもち寄って一括管理するもの。
複数の企業が特許をもち寄り、一括して管理・ライセンスする仕組み。
⚠ デファクトスタンダード(市場で事実上の標準になった規格)や無償の特許とは別。
従業者が会社の業務として行った発明で、会社は少なくとも通常実施権を持つ。
⚠ 会社が「無条件に」「自動的に」権利を取るわけではない。取得には規程などの定めが必要。
特許発明を使える権利で、独占ではないため他者にも同じ権利を与えられる。
⚠ 専用実施権は独占的で登録が必要。その範囲は特許権者自身も使えない。
設定した範囲で特許発明を独占的に使える権利。
⚠ 通常実施権は独占ではない。
秘密管理性・有用性・非公知性の3要件をすべて満たし、不正競争防止法で保護される情報。
⚠ 特許出願や存続期間は要件ではない。
秘密表示やアクセス制限などで、秘密として管理されていること。
⚠ 「役立っているか」は有用性、「刊行物に載っていないか」は非公知性のチェック。
その情報が公然と知られていないこと。
⚠ 特許出願すると内容が公開され、非公知性を失う。
営業秘密の不正取得や他社商品の模倣など、不正な競争行為を禁じる法律。
⚠ 独占禁止法は、独占やカルテルを禁じて公正かつ自由な競争を促進する法律。
私的独占や不当な取引制限(カルテル)などを禁じ、公正かつ自由な競争を促進する法律。
⚠ 製造物責任法は製品欠陥の責任、特許法は発明の保護、外為法は安全保障上の取引規制。
このレッスンの過去問
- 産業財産権の種類(四権利)令和6年度 基本情報技術者試験 科目A 公開問題 問20
- 特許権侵害とライセンス取得の範囲平成22年度 秋期 基本情報技術者試験 午前 問50
- 特許クロスライセンスの定義平成25年度 春期 基本情報技術者試験 午前 問49
- パテントプールの定義基本情報技術者試験 科目A免除 修了試験 20220123 実施分 問69
- 職務発明における特許権の取扱い(通常実施権)基本情報技術者試験 科目A免除 修了試験 20250727 実施分 問60
- 営業秘密の3要件(非公知性)平成29年度 春期 基本情報技術者試験 午前 問80
- 独占禁止法の目的平成27年度 秋期 基本情報技術者試験 午前 問80