法務・4/7・11分

特許などの産業財産権と営業秘密

ゴール

産業財産権の4つの権利(特許・実用新案・意匠・商標)とそれぞれが守るもの、特許ライセンスの考え方(一部抵触・クロスライセンス・パテントプール・職務発明)、営業秘密の3要件、独占禁止法の目的を区別して、選択肢から正しいものを選べるようになる。

知的財産の問題は、用語の定義と保護対象が区別できれば1問1分以内で解ける得点源です。業務でも「このノウハウは特許にするか社外秘にするか」「他社特許に触れていないか」の判断で同じ知識を使います。

このレッスンで稽古する(用語チェック・過去問)

結論:知的財産は「登録して守る」か「秘密にして守る」か

知的財産(アイデアや表現など、形の無い財産)を守る方法は大きく2つです。1つは特許庁に出願・登録して独占権を得る産業財産権、もう1つは社内で隠して守る営業秘密(不正競争防止法で保護)です。前回の著作権は、登録しなくても創作した時点で自動的に発生する3つ目の系統です。

系統 権利が生まれるタイミング 根拠となる法律
産業財産権 出願して登録されたとき 特許法・実用新案法・意匠法・商標法
著作権 創作した瞬間(登録不要) 著作権法
営業秘密 3要件を満たす状態で管理しているあいだ 不正競争防止法

たとえるなら、産業財産権は土地の登記です。役所に登録して初めて「ここは自分のもの」と他人に主張できます。

産業財産権は4つ:特許・実用新案・意匠・商標(最頻出)

産業財産権=特許権・実用新案権・意匠権・商標権の4つです。著作権は含まれません。過去問では、4つのうち1つを著作権に差し替えた選択肢が並び、著作権を含まない組合せが正解でした。

権利 守るもの 定義のキーワード 存続期間の目安
特許権 発明 自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度なもの 出願から20年
実用新案権 考案(小発明) 物品の形状・構造・組合せに関するもの 出願から10年
意匠権 デザイン 物品の形状・模様・色彩などで、視覚を通じて美感を起こさせるもの 出願から25年
商標権 ブランドの目印 商品・サービスを他者と区別する文字・図形・記号など(識別標識) 登録から10年(更新できる)
(参考)著作権 表現 思想又は感情を創作的に表現したもの 原則、著作者の死後70年

見分け方は定義の末尾の言葉です。「高度なもの」なら特許、「形状・構造・組合せ」なら実用新案、「美感」なら意匠、「区別」「識別」なら商標、「思想又は感情」「表現」なら著作権です。プログラムも、技術的なアイデアであれば特許の対象になりえます(プログラムの書き方そのものは著作権)。

特許権高度な技術(発明)実用新案権形状・構造・組合せ1つの製品4つの権利が別々に守る意匠権視覚を通じた美感商標権他者と区別する目印著作権は産業財産権に入らない
1つの製品でも、高度な技術・形状や構造・見た目の美感・区別するための目印を、4つの権利が別々に守る。

特許の使わせ方:ライセンス・クロスライセンス・パテントプール

特許権者は、他社に使用を許可(ライセンス=実施許諾)してお金を受け取れます。製品の一部でも他社特許に抵触すれば、その部分のライセンスが要ります。ハードウェア部分だけ抵触していても、その部分の許諾が無ければ権利侵害です。

用語 何をするか 取り違えやすい説明
ライセンス 特許の使用を他者に許諾する ―
クロスライセンス 2社が分野を特定して、互いの特許の使用を相互に許諾し合う 費用分担の取決め、ソースコードの無償公開
パテントプール 複数企業が特許をもち寄り、一括して管理・ライセンスする(MPEG などの規格で使われる) デファクトスタンダード、OSS のライセンス、無償の特許

クロスライセンスは2社間の「物々交換」、パテントプールは多数社の「共同窓口」と覚えます。製品化は「必要なライセンスを全部取れば可能」です。特許の持ち主が複数社に分かれていても、それぞれから許諾を得れば製品化できます。

クロスライセンス(2社で交換)A社の特許B社の特許分野を特定して相互に許諾パテントプール(多数社の共同窓口)A社B社C社パテントプール特許をもち寄り一括管理一括してライセンス製品を作る企業
クロスライセンスは2社が特許を交換し合い、パテントプールは複数企業の特許を1か所にまとめて一括でライセンスする。

職務発明:会社は少なくとも「通常実施権」を持つ

職務発明とは、従業者が会社の業務として行った発明です。社内規程などで定めていなければ、特許を受ける権利は発明した従業者にあり、会社は通常実施権(独占ではないが、無償でその発明を使える権利)を持ちます。規程などであらかじめ定めておけば、会社が権利を取得することもできます。その場合、従業者は相当の利益(金銭など)を受け取ります。

選択肢の言い回し 正誤 理由
企業は通常実施権を有する ○ 特許法の定め
無条件に企業が取得する × 規程などで定めることが必要
自動的に共有特許になる × 自動的に共有にはならない
特許庁が定めた対価を払う × 対価(相当の利益)は会社と従業者が規程などで決める
実施権 中身
通常実施権 使える権利。他の人にも同じ権利を与えられる(独占ではない)
専用実施権 設定した範囲を独占的に使える権利。登録が必要で、その範囲は特許権者自身も使えない
職務発明:規程の有無で行き先が変わる従業者が業務で発明規程なし権利:発明した従業者会社:通常実施権(無償で使える)規程あり権利:会社が取得従業者:相当の利益(金銭など)誤り:無条件に企業が取得する誤り:自動的に共有特許になる
職務発明は、社内規程などがあるかどうかで、特許を受ける権利の行き先と会社・従業者が得るものが変わる。

営業秘密の3要件:秘密管理性・有用性・非公知性(最頻出)

不正競争防止法が守る営業秘密は、3つの要件をすべて満たす情報です。1つでも欠ければ保護されません。たとえば料理店の秘伝のタレのレシピは、金庫に入れて(管理)、売上に効いていて(有用)、世間に知られていない(非公知)からこそ営業秘密になります。

要件 意味 監査のチェック例
秘密管理性 秘密として管理されている 媒体に「社外秘」などの秘密表示がある、アクセス制限がある
有用性 事業活動に役立つ技術上・営業上の情報 経営や業務の改善に役立っているか
非公知性 公然と知られていない 刊行物やWebに掲載されていないか

「3要件のうち2つを示して、残り1つを問う」問題と、「秘密管理性のチェックポイントはどれか」と1つを選ばせる問題が出ます。特許出願は要件ではありません。出願すると内容が公開され、非公知性をかえって失います。存続期間の制限も要件ではありません。

比較 特許で守る 営業秘密で守る
公開 出願すると公開される 隠したまま
期間 出願から20年で終わる 秘密を保てる限り続く
手続 出願・審査・登録が必要 登録不要。管理の努力が必要
3つ全部そろって営業秘密秘密管理性社外秘の表示アクセス制限有用性事業活動に役立つ情報非公知性公然と知られていない営業秘密として保護特許出願すると…特許出願内容が公開非公知性を失う1つでも欠ければ保護されない
秘密管理性・有用性・非公知性の3つがそろって初めて営業秘密になり、特許出願すると公開されて非公知性を失う。

独占禁止法と紛らわしい法律

独占禁止法の目的は「公正かつ自由な競争を促進する」ことです。名前が似た不正競争防止法(営業秘密や他社商品の模倣など、ずるい手口を禁じる法律)と混同しないようにします。

法律 目的・対象
独占禁止法 私的独占やカルテルを禁じ、公正かつ自由な競争を促進する
不正競争防止法 営業秘密の不正取得、他社商品の形態の模倣などを禁じる
製造物責任法(PL法) 製品の欠陥で損害が出たときの製造業者の責任
特許法 発明を保護し、特許権者に実施する権利を与える
外為法 国際的な平和・安全を損なう取引(輸出など)を規制する

試験での問われ方

  • 4権利の組合せ:著作権を混ぜた選択肢が並ぶ。「著作権が入っていたら誤り」で即決する
  • 保護対象の定義:特許・実用新案・意匠・著作権の定義文を並べる。「高度」「形状・構造」「美感」「思想・感情の表現」で振り分ける
  • 営業秘密:特許出願、存続期間、営業譲渡など、もっともらしい「要件ではないもの」が混ざる。有用性・非公知性の確認作業を、秘密管理性のチェックとして並べる問題もある
  • ライセンス:「一部を許諾されれば残りは模倣してよい」「複数社に分かれていると製品化できない」は誤り
  • 用語の取り違え:クロスライセンス、パテントプール、OSS、デファクトスタンダードの説明を入れ替える

要点(試験直前に読む)

  • 産業財産権=特許・実用新案・意匠・商標の4つ。著作権は含まない(登録不要で発生する別系統)
  • 定義のキーワード:特許は「高度」、実用新案は「形状・構造・組合せ」、意匠は「美感」、商標は「区別(識別標識)」、著作権は「思想又は感情の表現」
  • 営業秘密の3要件=秘密管理性・有用性・非公知性。秘密表示は秘密管理性。特許出願は要件ではない
  • クロスライセンスは2社間の相互許諾、パテントプールは複数社の特許の一括管理
  • 職務発明では、会社は少なくとも通常実施権を持つ。「無条件に企業が取得」「特許庁が対価を定める」は誤り
  • 独占禁止法の目的は「公正かつ自由な競争の促進」

ひっかけ

  • 4権利の選択肢に著作権が紛れ込む → 著作権が入っていたら誤り
  • 営業秘密の3つ目の要件に「特許出願していること」「期間10年以内」が出る → 出願すると公開されるので逆。正解は「公然と知られていない」
  • 秘密管理性のチェックに「経営に役立つか」(有用性)や「刊行物に載っていないか」(非公知性)が混ざる → 「秘密表示」「アクセス制限」が秘密管理性
  • ライセンスで「一部を許諾されれば残りは模倣してよい」「複数社に分かれると製品化不可」 → 抵触する部分ごとに許諾を取れば製品化できる。取らなければ侵害
  • 独占禁止法の目的に製造物責任法・特許法・外為法の目的が並ぶ → 「競争」の語があるものを選ぶ

用語(17)

産業財産権 さんぎょうざいさんけん
特許権・実用新案権・意匠権・商標権の4つの総称で、特許庁に出願・登録して発生する独占権。
⚠ 著作権は登録不要で、産業財産権に含まれない。
特許権 とっきょけん
自然法則を利用した技術的思想の創作のうち、高度なもの(発明)を独占的に実施できる権利。
⚠ 実用新案権は「高度」を求めない小発明(物品の形状・構造・組合せ)が対象。
実用新案権 じつようしんあんけん
物品の形状・構造・組合せに関する考案(小発明)を保護する権利。
⚠ 特許は「高度な」発明。意匠は見た目の美しさ。
意匠権 いしょうけん
物品の形状・模様・色彩など、視覚を通じて美感を起こさせるデザインを保護する権利。
⚠ 実用新案は形状を「機能・構造」として守り、意匠は「見た目」として守る。
商標権 しょうひょうけん
商品やサービスを他者のものと区別するための文字・図形・記号など(識別標識)を保護する権利。
⚠ 意匠(デザイン)と混同しやすい。「区別」「識別」なら商標。
著作権 ちょさくけん
思想又は感情を創作的に表現したものを、創作と同時に登録なしで保護する権利。
⚠ 産業財産権の4つには含まれない。
ライセンス license(実施許諾)
特許などの権利者が、他者に権利の使用を許可すること。
⚠ 製品の一部でも他社特許に抵触すれば、その部分のライセンスが必要。
クロスライセンス cross license
2社が技術・製品分野を特定して、互いの特許の使用を相互に許諾し合う契約。
⚠ パテントプールは多数社が特許をもち寄って一括管理するもの。
パテントプール patent pool
複数の企業が特許をもち寄り、一括して管理・ライセンスする仕組み。
⚠ デファクトスタンダード(市場で事実上の標準になった規格)や無償の特許とは別。
職務発明 しょくむはつめい
従業者が会社の業務として行った発明で、会社は少なくとも通常実施権を持つ。
⚠ 会社が「無条件に」「自動的に」権利を取るわけではない。取得には規程などの定めが必要。
通常実施権 つうじょうじっしけん
特許発明を使える権利で、独占ではないため他者にも同じ権利を与えられる。
⚠ 専用実施権は独占的で登録が必要。その範囲は特許権者自身も使えない。
専用実施権 せんようじっしけん
設定した範囲で特許発明を独占的に使える権利。
⚠ 通常実施権は独占ではない。
営業秘密 えいぎょうひみつ
秘密管理性・有用性・非公知性の3要件をすべて満たし、不正競争防止法で保護される情報。
⚠ 特許出願や存続期間は要件ではない。
秘密管理性 ひみつかんりせい
秘密表示やアクセス制限などで、秘密として管理されていること。
⚠ 「役立っているか」は有用性、「刊行物に載っていないか」は非公知性のチェック。
非公知性 ひこうちせい
その情報が公然と知られていないこと。
⚠ 特許出願すると内容が公開され、非公知性を失う。
不正競争防止法 ふせいきょうそうぼうしほう
営業秘密の不正取得や他社商品の模倣など、不正な競争行為を禁じる法律。
⚠ 独占禁止法は、独占やカルテルを禁じて公正かつ自由な競争を促進する法律。
独占禁止法 どくせんきんしほう
私的独占や不当な取引制限(カルテル)などを禁じ、公正かつ自由な競争を促進する法律。
⚠ 製造物責任法は製品欠陥の責任、特許法は発明の保護、外為法は安全保障上の取引規制。

このレッスンの過去問

このレッスンで稽古する