個人情報と消費者・電子取引を守る法律
ある情報が「個人情報」に当たるかどうかを、生存・識別・匿名加工の3点から判断できるようになる。あわせて、クーリングオフ、プリペイド・電子マネー、電子署名について、問題文のキーワードから正しい法律を選べるようになる。
個人情報の扱いは、Webサービスの要件定義で必ず出てくる論点です。試験では「どれが個人情報か」「この場面はどの法律か」を4択で区別させる問題が繰り返し出ます。
このレッスンで稽古する(用語チェック・過去問)結論:このレッスンで覚える法律の地図
このレッスンの柱は 個人情報保護法 です。残りの法律は「問題文のキーワード → 法律名」の対応を覚えれば解けます。
| 法律・規格 | 守るもの | 問題文のキーワード |
|---|---|---|
| 個人情報保護法 | 生きている個人の情報 | 個人情報、利用目的、第三者提供、匿名加工情報 |
| JIS Q 15001 | 事業者の個人情報管理の仕組み | プライバシーマーク、通知・同意 |
| 特定商取引法 | 消費者(訪問販売などで) | 訪問販売、通信販売、電話勧誘販売、クーリングオフ |
| 資金決済法 | 前払いのお金の利用者 | プリペイドカード、電子マネー、前払式支払手段 |
| 電子署名法 | 電子文書の信頼性 | 電子署名、押印と同様の効力、認証業務 |
個人情報とは何か(最重要)
個人情報=「生存する個人」に関する情報で、「特定の個人を識別できる」ものです。指紋や顔のデータ、マイナンバーのように、それ単体で本人を特定できる 個人識別符号 を含むものも個人情報です。秘密かどうか、公表済みかどうか、国籍、顧客かどうかは関係ありません。
たとえるなら「名札テスト」です。その情報を見て「あの人だ」と分かれば個人情報です。手元の別の名簿と照らし合わせれば簡単に分かる場合も、個人情報に含まれます。
| 情報 | 個人情報? | 理由 |
|---|---|---|
| 本人が分かる監視カメラ映像 | 該当 | 顔で本人を識別できる |
| 指紋データ(バックアップも) | 該当 | 個人識別符号 |
| 氏名入りの源泉徴収票(マイナンバーなし) | 該当 | 氏名で識別できる |
| 個人を特定できるメールアドレス(例:氏名+会社ドメイン) | 該当 | 文字列から本人が分かる |
| 個人に対する業績評価 | 該当 | 本人と結びついた情報 |
| 新聞などで公表済みの氏名・生年月日 | 該当 | 公表済みでも保護対象 |
| 亡くなった人の情報 | 該当しない | 生存する個人に限られる |
| 法人の住所・代表電話・従業員数 | 該当しない | 個人ではなく会社の情報 |
| 匿名加工情報 | 該当しない | 識別も復元もできない |
flowchart TD
A["生きている個人の情報?"] -->|"いいえ"| X["個人情報ではない(死者・法人)"]
A -->|"はい"| B["個人識別符号(指紋・顔・マイナンバー等)を含む?"]
B -->|"はい"| Y["個人情報"]
B -->|"いいえ"| C["単体または手元の情報と簡単に照合して、特定の個人が分かる?"]
C -->|"はい"| Y
C -->|"いいえ"| Z["個人情報ではない(匿名加工情報・統計情報など)"]
匿名加工情報:個人情報から外れる加工
匿名加工情報 は、特定の個人を識別できず、元にも戻せないように加工した情報です。個人情報には当たりません。果物をミキサーにかけたジュースから元のリンゴを取り出せないのと同じで、「元に戻せない」ことが条件です。
| 用語 | 加工の程度 | 個人情報? |
|---|---|---|
| 匿名加工情報 | 誰か分からず、復元もできない | 該当しない |
| 仮名加工情報 | 氏名を記号に置き換える等。他の情報と照合すれば誰か分かる | 元データを持つ事業者では通常、個人情報に当たる |
| 統計情報 | 件数・平均など集計済み | 該当しない |
利用目的の範囲内で使う・勝手に渡さない
事業者は、個人情報を取得するときに 利用目的 を特定し、本人に通知または公表します。その目的の外で使うには本人の同意が必要です。他人に渡す 第三者提供 も、原則として本人の同意が必要です。
| 行為 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| DM送付に「可」と答えた人をDM名簿に登録 | 適法 | 同意した目的どおり |
| 商品企画アンケートの住所を販促DMに流用 | 違法 | 目的外利用 |
| 自社勉強会の参加者リストを子会社のメルマガに登録 | 違法 | 子会社も別会社なので第三者提供 |
| 同窓会名簿を自社の営業電話リストに登録 | 違法 | 本来の目的外の流用 |
**子会社・グループ会社も「第三者」**です。一方、業務の委託先(例:DMの発送代行)に渡すことは、第三者提供に当たらない扱いです。
JIS Q 15001:公開情報でも「通知+同意」
JIS Q 15001 は、事業者が個人情報を管理する仕組みの規格で、プライバシーマーク の審査基準になっています。法律より厳しめで、一般に公開されている個人情報を使って継続的にDMを送る場合でも、通知事項を本人に知らせて 同意を得る ことを求めます。「公開情報だから何もしなくてよい」「ホームページで公表すれば足りる」は誤りです。
オプトインとオプトアウト(生成AIの設定)
生成AIサービスでオプトアウトを設定すると、自分が入力した情報を、AIの学習に使わせない ことができます。著作権の主張や回答の正確さとは関係ありません。
| 用語 | 意味 | 例 |
|---|---|---|
| オプトイン | 本人が「使ってよい」と事前に許可したら使える | メルマガ購読にチェックを入れる |
| オプトアウト | 原則は使われるが、本人が**「やめて」と申し出ると停止**できる | 生成AIの「学習に使わない」設定 |
消費者・電子取引の法律の見分け方
選択肢には、名前の似た法律が並びます。何を対象にした法律か で切り分けてください。
| 法律 | 対象・中身 |
|---|---|
| 特定商取引法 | 訪問販売・通信販売・電話勧誘販売など。クーリングオフ、広告表示のルール |
| 消費者契約法 | 事業者の不当な勧誘(うそ・押し売り)で結んだ契約の取消し、不当な契約条項の無効 |
| 電子消費者契約法 | ネットでの**操作ミス(錯誤)**による申込みの救済、確認画面の義務 |
| 資金決済法 | プリペイドカード・電子マネーなどの前払式支払手段、送金サービス、暗号資産。発行者に情報の安全管理を求める |
| 電子帳簿保存法 | 帳簿・領収書などを電子データで保存するときのルール |
| 電子署名法 | 本人の電子署名がある電子文書を、押印と同様に真正なものと推定 |
| 不正競争防止法 | 事業者どうしの公正な競争(営業秘密の保護など) |
クーリングオフは、契約後でも一定期間なら無条件で解約できる制度です。訪問販売・電話勧誘販売では書面を受け取ってから8日間です。通信販売にはクーリングオフはなく、返品の可否と条件を広告に表示するルールがあります。
電子署名法:押印と同じ扱い
本人による電子署名が付いた電子文書は、本人の意思で作られた(真正に成立した)と推定 されます。紙の押印と同様の効力です。認証業務は民間の事業者も行えます。署名の方式も共通鍵暗号などに限定されていません。
試験での問われ方
- 個人情報に当たらないのはどれか:映像・指紋・源泉徴収票などの「当たるもの」を並べ、正解は 匿名加工情報 や法人情報
- 個人情報の範囲を限定する選択肢:「顧客に限る」「秘密に限る」「日本国籍に限る」は誤り。正しい限定は 「生存する個人」だけ
- 適法な行為はどれか:目的外の流用・子会社への提供・名簿の流用を並べ、正解は 本人が同意した目的どおりの利用
- 法律名を選ぶ:キーワードで一発判定する(クーリングオフ→特商法、前払式支払手段→資金決済法、押印と同様→電子署名法)
個人情報に「該当しない」ものを選ぶ
ア 受付に設置した監視カメラに録画された,本人が判別できる映像データ
イ 個人番号の記載がない,社員に交付する源泉徴収票
ウ 指紋認証のための指紋データのバックアップデータ
エ 匿名加工情報に加工された利用者アンケート情報
解き方と答えを見る
- 各選択肢を「生存する個人か」「特定の個人を識別できるか」「元に戻せるか」の3点でチェックする
- ア:本人を判別できる映像は、顔で識別できるので個人情報に該当する
- イ:マイナンバーが無くても、源泉徴収票には氏名があり識別できるので該当する
- ウ:指紋データは個人識別符号なので、バックアップでも該当する
- エ:匿名加工情報は、識別できず復元もできないよう加工済みなので該当しない
答え:エ(匿名加工情報に加工された利用者アンケート情報)
適法な個人情報の使い方を選ぶ
ア 開催したセミナで回収した,商品企画立案を目的としたアンケートに記載された参加者の氏名及び住所を,自社の販売促進セミナ案内用ダイレクトメール発送先住所録に登録した。
イ 開設しているWebサイトの問合せページで自社製品販売促進ダイレクトメール送付可否欄に可と記入した依頼者の氏名及び住所を,自社の製品販売促進用ダイレクトメール発送先住所録に登録した。
ウ 自社が主催した市場動向に関する勉強会の参加者リストの内容を,自社の子会社の製品販売促進用メールマガジン発送先アドレスリストに登録した。
エ 従業員が参加した同窓会で配布された同窓生名簿に記載されている,同窓生の氏名及び電話番号を,自社製品販売促進用コールセンタのアウトバウンド用電話番号リストに登録した。
出典:基本情報技術者試験 科目A免除 修了試験 20260614 実施分 問60
解き方と答えを見る
- 各選択肢で「取得したときの目的」と「実際の使い方」を比べる
- ア:取得目的は商品企画のアンケート、使い方は販促DM → 目的外利用
- イ:取得時に本人がDM送付に「可」と答え、DMに使った → 目的の範囲内
- ウ:自社で集めた情報を子会社のメルマガに使った → 子会社は別会社なので第三者提供
- エ:同窓会名簿を会社の営業電話に使った → 本来の目的外の流用
答え:イ(DM送付に同意した依頼者をDM発送先に登録)
要点(試験直前に読む)
- 個人情報=「生存する」個人で「特定の個人を識別できる」情報。公表済み・評価・映像・指紋・特定できるメールアドレスも含む
- 匿名加工情報(識別も復元もできない)と法人の情報は、個人情報ではない
- 個人情報は取得時の利用目的の範囲内で使う。子会社に渡すことも第三者提供になる
- JIS Q 15001では、公開情報を使う場合でも本人への通知と同意が必要
- 生成AIのオプトアウト=入力した情報を学習に使わせない設定
- クーリングオフ→特定商取引法/前払式支払手段→資金決済法/押印と同様の効力→電子署名法
ひっかけ
- 「公表済みの情報は個人情報ではない」は誤り。公表済みでも、識別できれば個人情報
- 「顧客に限る」「秘密に限る」「日本国籍に限る」は誤った限定。唯一正しい限定は「生存する個人」
- 子会社は身内に見えても別会社なので、渡せば第三者提供。同意なしの提供は違法
- クーリングオフの法律を電子消費者契約法や消費者契約法と取り違えない。「訪問販売・通信販売・電話勧誘販売」とあれば特定商取引法
- 電子署名法で「政府の認証局に限る」「共通鍵暗号に限る」は誤り。正解は「押印と同様の効力」
用語(17)
生存する個人に関する情報のうち、単体または他の情報と簡単に照合して特定の個人を識別できるもの、または個人識別符号を含むもの。
⚠ 法人の情報や死者の情報は対象外。公表済み・評価情報でも、本人を識別できれば個人情報。
指紋・顔の特徴データ、マイナンバー、旅券番号など、それ単体で本人を特定できる符号。
特定の個人を識別できず、元にも戻せないように加工した情報で、個人情報には当たらない。
⚠ 仮名加工情報は、他の情報と照合すれば識別できる。見分けるキーワードは「復元できない」なら匿名加工。
氏名を記号に置き換えるなどして、他の情報と照合しない限り個人を識別できないようにした情報。
⚠ 匿名加工情報との違いは、照合すれば戻せる点。元データを持つ事業者では、通常は個人情報として扱う。
個人情報を取得するときに特定し、本人に通知または公表する使い道で、その範囲を超えて使うには本人の同意が要る。
個人情報を自社以外に渡すことで、原則として本人の同意が必要になる。
⚠ 子会社・グループ会社も第三者。業務の委託先に渡すことは、第三者提供に当たらない扱い。
本人が事前に許可した場合だけ、情報の利用や送信を行う方式。
⚠ オプトアウトは逆で、原則は利用し、本人の申し出で止める方式。
本人が拒否を申し出ると、情報の利用や送信が止まる方式。生成AIでは、入力情報を学習に使わせない設定を指す。
⚠ 著作権の主張や回答の正確さとは無関係。
事業者が個人情報を適切に管理する仕組みの日本産業規格で、プライバシーマーク審査の基準になっている。
⚠ 個人情報保護法(法律)より厳しめ。公開情報の利用でも、本人への通知と同意を求める。
JIS Q 15001に沿って個人情報を適切に管理している事業者に付与されるマーク。
⚠ ISMS認証は、情報セキュリティ全般の管理(ISO/IEC 27001)の認証。
訪問販売・通信販売・電話勧誘販売などで消費者を守るため、クーリングオフや広告表示のルールを定めた法律。
⚠ 消費者契約法は不当な勧誘による契約の取消し、電子消費者契約法はネットでの操作ミスの救済。
契約後でも一定期間内なら、理由を問わず無条件で解約できる制度。訪問販売では書面を受け取ってから8日間。
⚠ 通信販売にはクーリングオフはなく、返品の条件を表示するルールがある。
プリペイドカードや電子マネーなどの前払式支払手段、送金サービス、暗号資産のルールを定め、発行者に情報の安全管理を求める法律。
⚠ 電子帳簿保存法は、帳簿・書類の電子保存のルール。
先にお金を払って価値を受け取り、後で支払いに使うもの。紙型・ICカード型・サーバ型がある。
本人による電子署名が付いた電子文書を真正に成立したものと推定し、押印と同様の効力を認める法律。
⚠ 認証業務は民間でも行え、暗号方式も限定されない。「政府の認証局に限る」「共通鍵に限る」は誤り。
事業者のうそや押し売りなど不当な勧誘で結んだ契約の取消しと、消費者に不当な契約条項の無効を定めた法律。
⚠ クーリングオフは特定商取引法。
ネット取引で消費者が操作を誤って申し込んだ場合の救済と、事業者の確認画面の設置を定めた法律。
⚠ クーリングオフの法律ではない。
このレッスンの過去問
- 個人情報保護法の個人情報該当性判断平成30年度 秋期 基本情報技術者試験 午前 問79
- 個人情報の利用目的の範囲内利用と第三者提供基本情報技術者試験 科目A免除 修了試験 20260614 実施分 問60
- JIS Q 15001の個人情報取得時の通知・同意基本情報技術者試験 科目A免除 修了試験 200907 実施分 問80
- 生成AI利用時のオプトアウト設定の意味令和7年度 基本情報技術者試験 科目A 公開問題 問17
- 特定商取引法の対象(クーリングオフ)平成29年度 秋期 基本情報技術者試験 午前 問80
- 資金決済法の対象(前払式支払手段)基本情報技術者試験 科目A免除 修了試験 20250126 実施分 問60
- 電子署名法の効力基本情報技術者試験 科目A免除 修了試験 20230122 実施分 問80