法務・7/7・9分

製造物責任・標準化・技術者倫理

ゴール

製造物責任法(PL法)で「どの不具合が」「誰の責任になるか」を判定でき、JISC・IETF・IEEE・ANSI・ISO・ITU-T など標準化団体の役割と、品質マネジメント・技術者倫理の定番問題を選べるようになる。

法務分野の最後の問題(問80前後)の定番です。「ソフト単体は対象外、組込み機器は対象」「人がけがをしたら対象」の2点だけで、PL法の問題はほぼ解けます。実務でも、組込みソフトの不具合が会社の賠償責任につながる場面の判断に役立ちます。

このレッスンで稽古する(用語チェック・過去問)

結論:PL法は「形のある製品の欠陥」と「拡大損害」がそろったときの法律

製造物責任法(PL法)は、製品の欠陥(通常備えているべき安全性が欠けていること)で人の生命・身体・財産に損害が出たとき、被害者が製造業者の過失を証明しなくても賠償を求められるようにする法律です。

試験で見るポイントは次の3つです。

  1. 対象になる物:製造・加工された動産(形のある物=有体物)。ソフトウェア単体やデータは対象外です。
  2. 対象になる損害:欠陥のせいで製品の外側に広がった被害(拡大損害)。人身事故などがこれにあたります。
  3. 責任を負う人:製造業者・輸入業者、それと自社製品として名前を表示した業者です。

① 適用対象:ソフト単体はダメ、組み込んだ機器ならOK(最頻出)

PL法の「製造物」は形のある物です。ソフトウェアは情報なので、単体ではPL法の対象になりません。ただし、ROMなどに書き込んで機器に組み込んだソフトは、その機器(形のある物)の一部として扱われます。ソフトの不具合は機器の欠陥とみなされ、PL法の対象になります。

たとえるなら、レシピ(ソフト)そのものを訴えることはできないが、そのレシピで作った弁当(組込み機器)で食中毒が出たら弁当屋が責任を負う、という関係です。

選択肢に出るもの PL法の対象? 理由
ROM化したソフトを内蔵した組込み機器 ○ ソフトが機器という有体物の一部になっている
アプリケーションソフトウェアパッケージ × ソフト単体(箱やDVDに入っていても中身は情報)
利用者がPCにインストールしたOS × ソフト単体
ネットワークからダウンロードしたデータ × データは有体物ではない

問われ方:「ソフトウェアやデータに瑕疵(かし=欠陥)がある場合に対象となるものは?」と聞かれます。答えは**「組込み機器」と書いてある選択肢**です。パッケージ・OS・ダウンロードデータは、どれも形のない情報なので外します。

○ PL法の対象× PL法の対象外組込み機器(形のある物)ROMに書き込んだソフト機器の一部として扱う形のない情報だけソフトのパッケージインストールしたOSダウンロードしたデータ
ROMに書き込んで機器に組み込んだソフトは、形のある機器の一部としてPL法の対象になる。パッケージ・OS・ダウンロードしたデータは形のない情報なので対象外になる。

② 賠償対象:「人がけがをした」が答え

PL法で賠償の対象になるのは、欠陥によって生命・身体・製品以外の財産に生じた損害です。製品が壊れた・性能が悪いといった製品自体だけの不具合はPL法ではなく、契約上の責任(契約不適合責任など)の話になります。

エレベータの制御ソフトの問題は、毎回同じ構造で出題されます。

不具合の結果 PL法の対象?
人的被害が出た事故の原因 ○
待ち時間が長くなる × 性能の不満で、被害がない
可動部分の交換が早まる × 製品自体の消耗で、外への被害がない
出荷前に見つかった動作不良 × まだ誰にも被害が出ていない
出荷作業が遅れた × 製品の欠陥ではない(業務上の遅れ)

見分け方:選択肢に「人的被害」「事故」があれば、それが正解です。

不具合が外に広がったらPL法製品の不具合製品の中にとどまる待ち時間が長くなる可動部分の交換が早まる× PL法ではない契約上の責任の話製品の外に広がる(拡大損害)被害が出たもの生命身体(けが)製品以外の財産○ PL法の対象
不具合が製品の中にとどまれば契約上の責任の話になる。生命・身体・製品以外の財産へ広がったとき(拡大損害)だけPL法の対象になる。

③ 責任主体:「自社製品として出した会社」が負う

PL法で責任を負うのは、製造業者・加工業者・輸入業者と、製品に自分の名前やブランドを付けて製造業者のように見せた表示製造業者です。販売しただけの会社は、原則としてPL法の責任主体になりません。

部品メーカーやソフト会社が関わっていても、試験では**「最終製品を作り、自社製品として世に出した会社」**を選びます。ソフト会社が単体で売ったソフトは、そもそも製造物ではありません(①を参照)。

flowchart TD
  A["不具合が起きた"] --> B{"形のある製品?<br>(組込み機器など)"}
  B -- "ソフト単体・データ" --> X["PL法の対象外"]
  B -- "はい" --> C{"生命・身体・他の財産に<br>被害が出た?"}
  C -- "性能不満・製品自体の故障だけ" --> X
  C -- "はい" --> D["PL法の対象<br>責任は製造業者・輸入業者・表示製造業者"]
部品メーカー・ソフト会社単体では責任主体にならない(最終製品の会社が負う)製品が流れる最終製品を作った製造業者輸入業者・表示製造業者★ PL法の責任を負う製品販売店売っただけ=原則負わない製品責任を負う被害者(消費者)
製品は部品メーカーから製造業者、販売店を通って消費者に届く。被害者に対して責任を負うのは、最終製品を出した製造業者(輸入業者・表示製造業者も)だけで、販売店はその経路の外にある。

④ 標準化団体:名前と役割の対応を覚える

JISC(Japanese Industrial Standards Committee)は、経済産業省に置かれた審議会で、JIS(日本の国家規格)の制定・改正を審議します。2019年の法改正で、名称は「日本工業標準調査会/日本工業規格」から「日本産業標準調査会/日本産業規格」に変わりました。過去問には旧名称のまま出てきますが、指している組織は同じです。

JISCの問題は、「経済産業省」「審議会」「JISの制定・改正」の3語がそろった選択肢を選べば正解できます。

団体 正式名称(日本語) 役割・キーワード
JISC 日本産業(旧:工業)標準調査会 経産省の審議会。JISを制定・改正
ISO 国際標準化機構 工業・技術全般の国際規格(ISO 9001 など)
IEC 国際電気標準会議 電気・電子分野の国際規格
ITU-T 国際電気通信連合 電気通信標準化部門 国連配下。電気通信の標準を勧告する
IEEE 米国電気電子学会 米国に本部がある学会。LAN(IEEE 802 系)などの規格
IETF Internet Engineering Task Force インターネット技術の標準化。仕様をRFCとして公開
ANSI 米国規格協会 米国の民間標準化団体。米国代表としてISOに参加
NIST 米国国立標準技術研究所 米国商務省の研究機関(暗号標準・セキュリティ指針など)
JEITA 電子情報技術産業協会 日本の業界団体(JEITA規格)
JIPDEC 日本情報経済社会推進協会 プライバシーマーク制度などの運用機関

問われ方:「RFC」と出たらIETF、「LAN規格・学会」ならIEEE、「米国代表としてISOに参加」ならANSI、「国連」ならITU-Tです。JISCの問題では、IEEE・JEITA・JIPDEC・日本規格協会の説明が誤りの選択肢に並びます。

⑤ 品質マネジメントシステム:不都合があれば正規の手続で直す

品質マネジメントシステム(QMS)は、製品やサービスの品質を組織として管理する仕組みで、規格はJIS Q 9001(ISO 9001)です。考え方の基本はPDCAによる継続的改善です。運用中に不都合が見つかったら、勝手に変えたり放置したりせず、正規の手続を経て変更します。

誤りの選択肢には、「守られないマニュアルをそのまま使い続ける」「国際規格に沿って作ったので見直さない」「部門ごとに活動が違っても品質目標は全社で一律にする」などが並びます。

⑥ 技術者倫理:最優先は公衆の安全

技術者倫理では、仕事をするときに公衆の安全・健康・福利を最優先します。会社の利益、個人の名誉、コスト削減は、いずれもこれより下です。

倫理を守れなくなる原因として、**集団思考(グループシンク)**が出題されます。これは、結束の強いチームが批判的に考えなくなり、不合理な結論で合意してしまう現象です。「みんな同じ意見だから大丈夫」と誰も反対しなくなる会議が典型例です。

倫理を守れなくなる原因 中身
集団思考 連帯感の強いチームが批判的に考えず、不合理な合意に至る
権威への服従 組織内の上の人の言うことに無批判に従う
自己中心的な視野(視野の狭さ) 自分と違う視点で事態を見られず、客観性を欠く
意志の弱さ 正しいことは分かっているのに、実行する勇気や決断力がない

見分け方:集団思考は「チーム・集団」と「合意」の2語がそろった選択肢です。

例題 1

登場人物が多いPL法の問題で「誰が責任を負うか」を判定する

A 社は,B 社に委託して開発したハードウェアに,C 社が開発し市販していたソフトウェアを購入して実装し,自社製品とした。D 社は,この製品を仕入れて A 社の製品として販売した。ソフトウェアに含まれていた欠陥が原因でこの製品が誤動作し利用者が損害を受けたとき,製造物責任法上の責任を負うのは誰か。ここで,A 社,B 社,C 社,D 社及び損害を受けた利用者は全て日本国内の法人又は個人とする。

ア A 社
イ B 社
ウ C 社
エ D 社

出典:基本情報技術者試験 科目A免除 修了試験 20131215 実施分 問79

解き方と答えを見る
  1. 登場人物を整理する:B社=ハードの製造を受託、C社=市販ソフトの開発・販売、A社=ハードとソフトを組み合わせて自社製品にした、D社=仕入れて販売しただけ。
  2. 欠陥の場所を確認する:欠陥があったのはソフトウェアで、B社が作ったハードではない。
  3. C社を外す:C社が売ったのはソフト単体で、PL法の製造物(有体物)ではない。
  4. D社を外す:販売しただけの業者は、原則としてPL法の責任主体ではない。D社は『A社の製品として』売っており、自社名を表示してもいない。
  5. A社が残る:ソフトをハードに組み込んで製造物を完成させ、自社製品として出したのはA社なので、製造業者(表示製造業者でもある)として責任を負う。

答え:ア(A社)。最終製品を製造して自社製品として出した会社が責任を負う。

要点(試験直前に読む)

  • PL法の対象は形のある製品。ソフト単体・OS・データは対象外で、ROM化して組み込んだ機器は対象。
  • PL法で賠償されるのは生命・身体・他の財産への被害(拡大損害)。エレベータの問題は『人的被害の事故』を選ぶ。
  • 責任を負うのは製造業者・輸入業者・自社名を表示した業者。販売だけの会社や、ソフト単体を売った会社ではない。
  • JISC=経産省の審議会でJISを制定・改正(現在の名称は『産業』)。RFC=IETF、LAN=IEEE、ISOに参加する米国団体=ANSI、国連=ITU-T。
  • QMS(ISO 9001)は、不都合があれば正規の手続で変更して継続的に改善する。
  • 技術者倫理の最優先は公衆の安全。集団思考=結束の強いチームが不合理な合意に至ること。

ひっかけ

  • 『アプリケーションパッケージ』『インストールしたOS』のように、ソフトが製品っぽく書かれた選択肢。中身が情報だけならPL法の対象外。
  • エレベータの問題で『待ち時間』『部品交換が早まる』『出荷前の不良』を選ばせる。被害がなく、製品自体だけの問題ならPL法の対象外。
  • 登場人物が多い責任主体の問題で、欠陥ソフトを作った会社や販売した会社を選ばせる。答えは自社製品として世に出した会社。
  • JISCの説明に、日本規格協会(普及・啓発)、JEITA(業界団体)、JIPDEC(Pマーク)、IEEEの説明を混ぜる。『経産省・審議会・JIS制定』がそろった選択肢を選ぶ。
  • 集団思考の問題で『権威への服従』『勇気の欠如』を選ばせる。『チーム』と『不合理な合意』があるものが集団思考。

用語(18)

製造物責任法 せいぞうぶつせきにんほう(PL法:Product Liability)
製品の欠陥で人の生命・身体・財産に損害が出たとき、製造業者が過失の有無にかかわらず賠償責任を負うと定めた法律。
⚠ 契約不適合責任(製品自体の不具合を契約相手に対して直させる責任)と混同しやすい。PL法は製品の外に広がった被害(拡大損害)が対象。
製造物 せいぞうぶつ
製造または加工された動産(形のある物)のことで、ソフトウェア単体やデータは含まない。
⚠ ソフトウェアパッケージは箱に入っていても中身は情報なので対象外。ROM化して機器に組み込めば対象になる。
組込みシステム くみこみしすてむ
家電やエレベータなどの機器に組み込まれ、その機器を制御するコンピュータとソフトウェアのこと。
⚠ PCにインストールしたOSやアプリは組込みではないので、PL法の対象外。
欠陥 けっかん
製品が通常備えているべき安全性を欠いていること。
⚠ 性能が低い・待ち時間が長いといった不満は、安全性の問題ではないので欠陥にあたらない。
拡大損害 かくだいそんがい
製品の欠陥によって、製品自体の外側(人の生命・身体や他の財産)に広がった損害。
⚠ 製品自体の故障や部品の摩耗だけの場合は拡大損害ではない。
表示製造業者 ひょうじせいぞうぎょうしゃ
自分の氏名や商標を製品に表示して、製造業者のように見せた業者で、PL法の責任を負う。
⚠ 販売業者は名前を表示しない限り責任主体にならない。部品・ソフトの提供者と取り違えない。
JISC Japanese Industrial Standards Committee(日本産業標準調査会・旧:日本工業標準調査会)
経済産業省に置かれ、JISの制定や改正を審議する審議会。
⚠ 日本規格協会(JISの普及・啓発をする団体)、JEITA(業界団体)、JIPDEC(Pマーク運用機関)と混同させる選択肢が出る。
JIS Japanese Industrial Standards(日本産業規格・旧:日本工業規格)
産業標準化法(旧:工業標準化法)に基づいて定められる日本の国家規格。
ISO International Organization for Standardization(国際標準化機構)
工業や技術の国際規格を作り、国の間の調整をする国際機関。
⚠ 電気・電子分野の国際規格はIEC、電気通信はITU-Tが担当する。
ITU-T International Telecommunication Union Telecommunication Standardization Sector(国際電気通信連合 電気通信標準化部門)
国際連合の配下にあり、電気通信の標準化について勧告を出す機関。
⚠ 選択肢に『国連』とあればITU-T。IEEEは米国の学会。
IEEE Institute of Electrical and Electronics Engineers(米国電気電子学会)
米国に本部を置く電気・電子工学の学会で、LANなどのインタフェース規格を作っている。
⚠ インターネット技術(RFC)を担当するのはIETF。
IETF Internet Engineering Task Force
インターネットで使う技術の標準化を進め、技術仕様をRFCとして公開する組織。
⚠ 『RFC』とあればIETF。LAN規格はIEEE。
RFC Request for Comments
IETFが公開する、インターネット技術の仕様をまとめた文書。
ANSI American National Standards Institute(米国規格協会)
米国の工業規格を作る民間の標準化団体で、米国代表としてISOに参加している。
⚠ NISTは米国商務省の研究機関で、民間団体ではない。
NIST National Institute of Standards and Technology(米国国立標準技術研究所)
米国商務省に属し、計測や暗号・セキュリティなどの標準を作る研究機関。
⚠ ANSIは米国の民間規格団体。
品質マネジメントシステム ひんしつまねじめんとしすてむ(QMS:Quality Management System・JIS Q 9001/ISO 9001)
組織が品質を管理し、PDCAで継続的に改善していく仕組み。
⚠ ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム:ISO/IEC 27001)と混同しない。
技術者倫理 ぎじゅつしゃりんり
技術者が仕事をするうえで守るべき行動の規範で、公衆の安全・健康・福利を最優先とする。
⚠ 会社の利益やコスト削減を優先する選択肢は誤り。
集団思考 しゅうだんしこう(グループシンク:groupthink)
結束の強い集団が批判的に考えなくなり、不合理な結論で合意してしまう現象。
⚠ 権威への服従(上の人に従う)、意志の弱さ(分かっていても実行できない)、視野の狭さ(客観性を欠く)とは別物。キーワードは『集団』と『合意』。

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