電力と電源の計算
電圧・電流・運転時間から消費電力量や電気料金を計算できるようになる。電源の効率から必要な入力電力を求め、直流給電の利点と二次電池の種類を選べるようになる。
電力の計算は掛け算と割り算だけで解けるので、科目Aで確実に取れる1問になる。データセンタの電気代や、スマホ・ノートPCのバッテリを考えるときの基礎にもなる。
このレッスンで稽古する(用語チェック・過去問)結論:電力は「速度」、電力量は「走った距離」
電力(W)=電圧(V)×電流(A)、電力量(Wh)=電力(W)×時間(h)。計算問題の大半はこの2本の式で解ける。電力は車の「速度」、電力量は「走った距離」にあたり、速度×時間=距離と同じ形をしている。
| 用語 | 単位 | 意味 | 求め方 |
|---|---|---|---|
| 電圧 | V(ボルト) | 電気を押し出す力 | 問題文に書いてある |
| 電流 | A(アンペア) | 流れる電気の量 | 問題文に書いてある |
| 電力 | W(ワット) | その瞬間に使っている電気の勢い | V × A |
| 電力量 | Wh(ワット時) | ある時間に使った電気の合計 | W × 時間(h) |
電気料金は電力量に比例する。家の電気代の明細にある「kWh」は電力量の単位である。
計算で失点しないための3つのチェック
- 時間は「動いていた時間」だけ数える:停止中は電流が流れないので含めない。グラフの問題では、運転している区間の長さを足す。
- 分は時間(h)に直す:90分=1.5h、30分=0.5h。Whは「W×時間」なので、分のまま掛けてはいけない。
- 単位をそろえる:1kW=1,000W、1kWh=1,000Wh。料金が「1kWh当たり○円」なら、Wを1,000で割ってkWにしてから掛ける。
家庭用の電源は交流(向きが周期的に変わる電気)である。それでも問題文に「電圧・電流は実効値」「力率は1」と両方書かれていれば、V×Aでそのまま電力を出してよい。
複数の機器を一緒に使う問題では、先に電力を合計してから時間を掛けると計算が短くなる。
電源ユニットの効率:入力=出力÷効率
効率=出力電力÷入力電力なので、必要な入力電力は出力÷効率で求める。効率80%の電源は、コンセントから受け取った電気の80%しか機器に渡せない。残りの20%は熱になって捨てられ、これを電力損失という。
出力500W・効率80%なら、入力=500÷0.8=625W。損失は入力−出力=625−500=125Wになる。
| 選択肢の数字 | どう計算した数字か | 判定 |
|---|---|---|
| 625 | 500÷0.8(出力÷効率) | 正解 |
| 400 | 500×0.8(割るところを掛けてしまった) | 誤り |
| 100 | 500×(1−0.8)。損失率を出力に掛けた値。実際の損失は 625−500=125W なので、損失ですらない | 誤り |
| 900 | 出力より大きいが、500÷0.8 の結果ではない | 誤り |
検算のコツ:入力は必ず出力より大きい。出力より小さい数字(400、100)はその時点で候補から外せる。
データセンタの直流給電:変換を減らして損失を減らす
結論:交流と直流の間の変換回数が減るので、変換のたびに出る電力損失を減らせる。 サーバやネットワーク機器の中のCPUやメモリは直流で動く。ところが電力会社から届くのは交流なので、従来の給電方式では途中で何度も変換していた。
| 用語 | 正式名称 | 特徴 |
|---|---|---|
| 交流(AC) | Alternating Current | 向きと大きさが周期的に変わる。トランスで電圧を簡単に上げ下げできるので、送電に向く |
| 直流(DC) | Direct Current | 向きが一定。CPUなどの電子回路は直流で動く |
flowchart LR
A["電力会社(交流)"] --> B["UPS 交流→直流→交流"]
B --> C["サーバの電源 交流→直流"]
C --> D["CPUなど(直流)"]
A --> E["整流装置 交流→直流(1回だけ)"]
E --> F["サーバ 直流で受け取る"]
F --> D
上の経路が従来の交流給電、下の経路が直流給電。UPS(無停電電源装置:停電したときにバッテリから給電する装置)の中でも変換が起きているので、変換の回数が減るほど熱として捨てる電気が減る。
誤りの選択肢はこう見破る。
- 「CPUまで同じ電圧のまま給電できる」→ 誤り。直流でも、CPUが使う低い電圧まで下げる変換は必要になる。
- 「停電しないのでバッテリが不要」→ 誤り。停電は給電方式と関係なく起こるので、バックアップ用のバッテリは要る。
- 「トランスで簡単に昇圧・降圧できる」→ これは交流の利点。直流にはトランスが使えない。
二次電池と一次電池:充電できるかどうか
二次電池=充電して繰り返し使える電池、一次電池=使い切りで充電できない電池。試験ではこの区別のほか、燃料電池がどちらにも入らないことが問われる。
| 分類 | 充電 | 代表例 |
|---|---|---|
| 一次電池 | できない(使い切り) | アルカリマンガン乾電池、マンガン乾電池、酸化銀電池(腕時計のボタン電池)、リチウム電池(コイン形) |
| 二次電池 | できる(充電式) | リチウムイオン電池(スマホ・ノートPC)、ニッケル水素電池、鉛蓄電池(車のバッテリ) |
| 燃料電池 | 電気をためる電池ではなく発電装置 | 水素と酸素の化学反応で電気を作り続ける。充電ではなく燃料を補給して使う |
名前ではなく種類で覚える。特に「リチウム電池(一次)」と「リチウムイオン電池(二次)」は1語しか違わないので注意する。
運転と停止をくり返す機器の電力量
ア 1,000
イ 1,200
ウ 1,500
エ 2,000
解き方と答えを見る
- 電力を求める:100V × 10A = 1,000W(実効値で、かつ力率1と書かれているので、そのまま掛けてよい)
- 運転していた区間を拾う:0〜60分で60分、90〜120分で30分。60〜90分は停止なので数えない
- 運転時間を合計して時間に直す:60+30=90分、90÷60=1.5h
- 電力量=電力×時間:1,000W × 1.5h = 1,500Wh
- 選択肢を見直す:2,000は停止時間も含めて120分(2h)で計算した値なので誤り
答え:ウ:1,500Wh
複数機器の1か月の電気料金
ア 525
イ 765
ウ 1,575
エ 2,100
出典:基本情報技術者試験 科目A免除 修了試験 20120122 実施分 問59
解き方と答えを見る
- 4台の電力を合計する:200+140+355+5=700W
- 単価が1kWh当たりなのでkWに直す:700W÷1,000=0.7kW
- 1日の電力量:0.7kW × 3h = 2.1kWh
- 1か月の電力量:2.1kWh × 30日 = 63kWh
- 電気料金:63kWh × 25円 = 1,575円
- 選択肢を見直す:アの525は1日3時間を掛け忘れた値(0.7×30×25)
答え:ウ:1,575円
効率80%の電源に必要な入力電力
ア 100
イ 400
ウ 625
エ 900
解き方と答えを見る
- 式を思い出す:効率=出力÷入力
- 入力について解き直す:入力=出力÷効率
- %を小数にする:80%=0.8
- 代入する:500W ÷ 0.8 = 625W
- 検算する:625W × 0.8 = 500W で出力と一致する。損失は 625−500=125W
- 選択肢を見直す:400(500×0.8)と100(500×0.2)は出力より小さいので、入力にはなりえない
答え:ウ:625W
要点(試験直前に読む)
- 電力W=V×A、電力量Wh=W×時間(h)。時間は運転していた分だけ数え、分は60で割ってhにする。
- 料金がkWh単価なら、Wを1,000で割ってkWにしてから掛ける。複数の機器は電力を先に合計する。
- 電源に必要な入力=出力÷効率。入力は必ず出力より大きい。損失=入力−出力。
- 直流給電の利点は、交流と直流の変換回数が減って損失が減ること。トランスで変圧しやすいのは交流の利点。
- 二次電池(充電できる)はリチウムイオン・ニッケル水素・鉛蓄電池。アルカリマンガン・酸化銀は一次電池、燃料電池は発電装置。
ひっかけ
- グラフの停止時間まで含めて計算させる(2,000Whなど)→ 運転している区間だけを足す。
- 時間や日数の掛け忘れ、W→kWの換算忘れを狙う(525円など)→ 単位を書きながら計算する。
- 効率を掛けて入力を小さく出させる(400W)→ 入力は出力より大きいはずなので即座に外す。100Wは損失率を出力に掛けた値で、本当の損失(125W)でもない。
- 直流給電の選択肢に「同じ電圧のまま」「バッテリ不要」「トランスで変圧」を並べる → 正しいのは変換損失の低減だけ。トランスの話は交流の利点。
- 燃料電池や乾電池を二次電池のように見せる → 名前ではなく種類で覚える。リチウム電池(一次)とリチウムイオン電池(二次)を区別する。
用語(16)
電気を回路に押し出す力で、単位はV(ボルト)。
⚠ 電流と取り違えやすい。電圧は「押す力」、電流は「流れる量」で、2つを掛けると電力になる。
回路を流れる電気の量で、単位はA(アンペア)。
⚠ 電圧と対になる。単位がAなら電流、Vなら電圧。
その瞬間に使っている電気の勢いで、電圧×電流で求め、単位はW(ワット)。
⚠ 電力量と取り違えやすい。単位にh(時)が付いていれば電力量、付いていなければ電力。
ある時間に使った電気の合計で、電力×時間で求め、単位はWhやkWh。
⚠ 電力との違いは時間を掛けているかどうか。電気料金に比例するのは電力量のほう。
向きや大きさが変わる交流の電圧・電流を、同じ働きをする直流の値に置き換えたもの。
⚠ 実効値は交流を直流相当に置き換えた値。電力を V×A で出してよいのは、実効値で与えられ、かつ力率 1 と書かれているとき。
交流で、電圧×電流(見かけの電力)のうち実際に消費される電力の割合(0〜1)。
⚠ 電源の効率と取り違えやすい。力率は交流の電圧と電流のタイミングのずれによる割合、効率は入力のうち出力に回る割合。
入力電力のうち出力として取り出せる割合で、出力÷入力で求める。
⚠ 入力を求めるときは効率で割る。掛けると出力より小さい数字(誤答)になる。
変換や送電の途中で、熱などになって失われる電力。
⚠ 入力電力−出力電力が損失(この問題では 625−500=125W)。選択肢の 100 は 500×0.2 と誤って計算した値で、本当の損失ではない。
向きと大きさが周期的に変わる電気で、コンセントから来る電気はこれ。
⚠ 直流と対になる。トランスで簡単に変圧できるのは交流の特徴。
向きが一定の電気で、CPUなどの電子回路はこれで動く。
⚠ 交流と対になる。直流はトランスで変圧できない。
交流を一度だけ直流に変え、そのまま直流でサーバなどの機器に電気を送る方式。
⚠ 利点は変換回数が減って損失が減ること。電圧を変えずに済む・停電対策のバッテリが要らない、というのは誤り。
電磁誘導を使って交流の電圧を上げ下げする装置。
⚠ 直流には使えない。「トランスで容易に昇圧・降圧できる」は交流の利点で、直流給電の利点ではない。
使い切りで充電できない電池。
⚠ 名前では判断せず種類で覚える。アルカリマンガン乾電池・マンガン乾電池・酸化銀電池は一次電池(充電不可)。充電式と明記されたものや、リチウムイオン・ニッケル水素・鉛蓄電池は二次電池。
充電して繰り返し使える電池で、蓄電池とも呼ぶ。
⚠ 一次電池と対になる。リチウム電池(コイン形・一次)とリチウムイオン電池(二次)は1語違いなので注意。
スマホやノートPCに使われる、小型で容量の大きい二次電池。
⚠ 「リチウム電池」(コイン形など)は充電できない一次電池。「イオン」が付くかで区別する。
水素と酸素の化学反応で電気を作り続ける発電装置。
⚠ 二次電池と取り違えやすい。電気をためるのではなく、燃料(水素)を補給して発電する。
このレッスンの過去問
- 消費電力量の計算(電力×時間)平成26年度 秋期 基本情報技術者試験 午前 問23
- 電源ユニットの効率と入力電力の計算平成25年度 秋期 基本情報技術者試験 午前 問24
- データセンタの直流給電の利点(変換損失低減)平成31年度 春期 基本情報技術者試験 午前 問23
- 二次電池(充電式電池)の種類平成30年度 秋期 基本情報技術者試験 午前 問23