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ハードウェア・6/7・14分

組込みシステム:チップ・クロック・センサとアクチュエータ・制御

ゴール

組込みシステムの部品と制御の用語(SoC・RTC・チャタリング・センサ・アクチュエータ・PWM・フィードバック制御)を見分けられるようになる。D/A 変換の出力電圧とクロックの分周比を計算で求められるようになる。

炊飯器、エアコン、車など、身の回りの家電は小さなコンピュータ(組込みシステム)で動いています。用語の定義を問う問題は選択肢の使い回しが多く、覚えておけばほぼ確実に1点取れます。

このレッスンで稽古する(用語チェック・過去問)

全体像:測る→考える→動かす

組込みシステムは、センサで測り、マイコンで考え、アクチュエータで動かすという流れでできています。人間に置きかえると、センサが目や皮膚、マイコンが脳、アクチュエータが筋肉です。測った結果をもう一度入力に戻して目標に合わせ続けるやり方をフィードバック制御といいます。

flowchart LR
  A["目標値(例:25℃)"] --> B["制御器(マイコン)"]
  B --> C["アクチュエータ(モータ・ヒータ)"]
  C --> D["制御対象(部屋)"]
  D --> E["センサ(温度を測る)"]
  E -->|"測った値を戻す"| B

本試験で2回出ているのがフィードバック制御です。制御方式は次の4つを区別できるようにしておきます。

制御方式 何をするか 見分けるキーワード
フィードバック制御 出力結果を目標値と比べ、ずれを小さくするように制御する 「出力結果と目標値を比較」
フィードフォワード制御 外乱(外からの乱れ)が出力に現れる前に先回りして補正する 「影響が出力に現れる前に」
シーケンス制御 決められた順番どおりに動かす(全自動洗濯機など) 「あらかじめ定められた順序」
オープンループ制御 出力結果を見ないで制御する 「出力結果を使用せず」

入力側:センサとチャタリング

センサは、温度・ひずみ・角速度などの物理量を電気信号に変える部品です。試験では「何を測るセンサか」を選ばせる問題が出ます。

センサ 測るもの 典型的な用途
ひずみゲージ 変形(ひずみ)を抵抗の変化として測る 橋や高架道路の監視、はかり
サーミスタ 温度 体温計、エアコン
ジャイロ 角速度(どれだけ速く回っているか) スマホの傾き検知、ドローン
ホール素子 磁界 モータの回転検出、開閉センサ

「変形を感知」と書かれていたらひずみゲージです。

チャタリングは、機械式のスイッチを1回押しただけなのに、接点がはねて数ミリ秒の間にON/OFFが何度も繰り返される現象です。マイコンはこれを「何回も押された」と誤認識するので、少し待ってから読み直すなどの対策(チャタリング除去)をします。本試験と免除試験で計8回出ており、選択肢はほぼ毎回同じです。

用語 意味
チャタリング 接点がばたついてON/OFFが何度も起こる現象
サンプリング アナログ信号を一定の間隔で読み取ること
バッファリング データを一時的に溜めておき、速度差を吸収すること
シェアリング 資源を共有すること
スイッチを1回押しただけなのにONOFF数ミリ秒でON/OFFが何度も繰り返す少し待ってから読む時間そのまま読むと何回も押されたと誤認識待ってから読み直す→ 1回だけと判断
機械式スイッチを1回押しただけで、数ミリ秒の間に接点がはねてON/OFFが何度も繰り返されるため、少し待ってから読み直して1回と判断する。

出力側:アクチュエータ・D/A変換・PWM

アクチュエータは、コンピュータが出した電気信号(制御信号)をもとに、回転や直線移動などの動きを生み出す部品です。モータ、電磁弁、ソレノイドなどがこれにあたります。センサと向きが逆なので、入れ替えたひっかけがよく出ます。

部品 役割 信号の向き
アクチュエータ 電気信号を動き(力学的な運動)に変える 電気 → 動き
センサ 物理量を検出して電気信号に変える 物理量 → 電気
A/D変換器 アナログ信号をディジタル値に変える アナログ → ディジタル
D/A変換器 ディジタル値をアナログ電圧に変える ディジタル → アナログ
制御器 目標量と制御量を比べて操作量を出す 判断する役
増幅器 微小な電気信号を大きくする 電気 → 電気

D/A変換器の計算は「1ビットあたりの電圧 × 入力値」で解けます。分解能は、出力を何段階に分けられるか(8ビットなら256段階)を表します。最下位の1ビット分の電圧は、問題文の「この値ならこの電圧」という組から割り算で求めます。

**PWM(パルス幅変調)**は、電圧の高さは変えずに、**ONにしている時間の割合(デューティ比)**を変えて平均の電力を調整する方式です。水道の蛇口にたとえると、ひねる量(電圧)は変えずに、開けている時間と閉めている時間の割合だけでコップに入る水の量を調整するイメージです。波形の問題では「高さが一定で幅だけが変わる矩形波」を選びます。高さが変わる波形はPAM(パルス振幅変調)なので間違いです。

PWM(正しい):高さ一定・幅だけ変わるON短い→弱いON中くらいON長い→強いPAM(誤り):高さが変わる幅は同じで高さが変わる
PWMは電圧の高さを変えずにONの時間の割合(デューティ比)だけを変える矩形波で、高さが変わる波形はPAMなので間違い。

チップとクロック:SoC・RTC・PLL

SoC(System on a Chip)は、CPU・メモリ・周辺回路などシステムに必要な機能をすべて1つのチップに集積したLSI(大規模集積回路)です。免除試験も含めて計6回出ている頻出の用語です。似た用語との違いは「チップが1つか複数か」「チップか基板か」で見分けます。

用語 正体 見分けるポイント
SoC 全機能を1つのチップに同一プロセスで集積 「1つのチップで実現」「同一プロセスで集積」
SiP(System in a Package) 複数のチップを1つのパッケージに封入して配線 「複数のチップ」「パッケージ上で配線」
チップセット CPU・メモリ・周辺装置の間のデータのやり取りを管理する回路群 「データの受渡しを管理」
マザーボード CPUやメモリなどを載せる電子回路基板 「基板」

クロック(回路を動かすリズム信号)に関する用語も、次の表で区別します。

用語 役割
RTC(リアルタイムクロック) 日付と時刻を保持し、時刻管理に使う時計
ウォッチドッグタイマ 決められた時間内にリスタートされないとシステムをリセットする見張り役
PLL(位相同期回路) 入力の周波数に同期し、何倍かに逓倍(周波数を整数倍に上げること)する
分周器 周波数を 1/n に下げる
リアルタイム処理 要求された処理を決められた時間内に終える方式(部品ではない)

クロックの計算は「掛け算(PLL)と割り算(分周器)を順番に追う」だけで解けます。例題で手順を確認しましょう。

SoC1つのチップに全部CPUメモリ周辺回路チップは1つ同一プロセスで集積SiP複数のチップを1パッケージにCPUメモリ周辺回路チップは複数パッケージ上で配線
SoCはCPU・メモリ・周辺回路を1つのチップに集積し、SiPは複数のチップを1つのパッケージに封入して配線する。
例題 1

D/A変換器:1ビットあたりの電圧を求める

分解能が 8 ビットの D/A 変換器に,ディジタル値 0 を入力したときの出力電圧が 0V となり,ディジタル値 128 を入力したときの出力電圧が 2.5V となる場合,最下位の 1 ビットの変化による当該 D/A 変換器の出力電圧の変化は何 V か。

ア 2.5/128
イ 2.5/255
ウ 2.5/256
エ 2.5/512

出典:平成29年度 春期 基本情報技術者試験 午前 問20

解き方と答えを見る
  1. 分かっていること:ディジタル値 0 で 0V、ディジタル値 128 で 2.5V
  2. 0 から 128 までの 128 段階で、電圧が 2.5V − 0V = 2.5V 上がっている
  3. 1段階(最下位の1ビット)あたりの電圧 = 2.5V ÷ 128 = 2.5/128 V
  4. 「8ビットなので256段階」と考えて 256 や 255 で割るのは誤り。問題文の『128で2.5V』という組をそのまま使う

答え:ア(2.5/128 V)

例題 2

D/A変換器:16進数の入力から出力電圧を求める

8 ビット D/A 変換器を使って負でない電圧を発生させる。使用する D/A 変換器は,最下位の 1 ビットの変化で出力が 10 ミリ V 変化する。データに 0 を与えたときの出力は 0 ミリ V である。データに 16 進数で 82 を与えたときの出力は何ミリ V か。

ア 820
イ 1,024
ウ 1,300
エ 1,312

出典:基本情報技術者試験 科目A免除 修了試験 20211212 実施分 問20

解き方と答えを見る
  1. 分かっていること:1ビットあたり 10mV、入力 0 で 0mV、入力は16進数の 82
  2. 16進数 82 を10進数に直す:8 × 16 + 2 × 1 = 128 + 2 = 130
  3. 出力電圧 = 130 × 10mV = 1,300mV
  4. 16進数を直さずに 82 × 10 = 820 とするのがひっかけ(選択肢ア)

答え:ウ(1,300 ミリV)

例題 3

PLL逓倍と分周比:SIOに供給するクロックを求める

ワンチップマイコンにおける内部クロック発生器のブロック図を示す。15 MHz の発振器と,内部の PLL1,PLL2 及び分周器の組合せで CPU に 240 MHz,シリアル通信 (SIO) に 115 kHz のクロック信号を供給する場合の分周器の値は幾らか。ここで,シリアル通信のクロック精度は±5%以内とする。
ブロック図: 発振器 →(15 MHz)→ PLL1(8 逓倍)→ 分岐点。分岐点から PLL2(2 逓倍)→(240 MHz)→ CPU,および 分岐点から 分周器 →(115 kHz (±5%))→ SIO。発振器・PLL1・PLL2・分周器は大枠(マイコン内部)の中。

ア 1/2^4
イ 1/2^6
ウ 1/2^8
エ 1/2^10

出典:基本情報技術者試験 科目A免除 修了試験 20250608 実施分 問16

解き方と答えを見る
  1. 発振器の出力は 15MHz
  2. PLL1 で8倍に逓倍する:15MHz × 8 = 120MHz(この地点から CPU 側と SIO 側に分かれる)
  3. CPU 側の確認:120MHz × 2(PLL2)= 240MHz で、問題文と一致する
  4. SIO 側は分岐点の 120MHz を分周する。分周元は 240MHz ではない
  5. 目標は 115kHz ±5%。許される範囲は 115 × 0.95 = 109.25kHz から 115 × 1.05 = 120.75kHz まで
  6. 選択肢を順に試す:2^8 = 256 で割ると 120,000kHz ÷ 256 ≒ 468.8kHz で、範囲外
  7. 2^10 = 1,024 で割ると 120,000kHz ÷ 1,024 ≒ 117.2kHz で、範囲内に入る

答え:エ(1/2^10)

要点(試験直前に読む)

  • SoCは全機能を「1つのチップ」に集積したもの。複数のチップを1つのパッケージに入れたものはSiP。
  • センサは「物理量→電気信号」、アクチュエータは「電気信号→動き」。変形を測るのはひずみゲージ。
  • チャタリングは、機械式スイッチの接点が数ミリ秒の間にON/OFFを繰り返す現象。
  • D/A変換は「1ビットあたりの電圧 × 入力値」で計算する。16進数で与えられた値は必ず10進数に直してから掛ける。
  • PWMは高さ一定でパルスの幅(デューティ比)を変える波形。RTCは日付と時刻を保持する時計。
  • フィードバック制御は出力結果を目標値と比較して一致させる制御。クロックの計算はPLLで掛け、分周器で割る順に追う。

ひっかけ

  • SoCの問題:「パッケージ上でそれぞれのチップを配線」はSiP、「電子回路基板」はマザーボード、「データの受渡しを管理」はチップセット。1チップでないものは選ばない。
  • アクチュエータの問題:「物理量を検出して電気信号に変える」はセンサ、「目標量と制御量を比較」は制御器の説明。「動き・運動に変える」がアクチュエータ。
  • D/A変換の問題:16進数の82を10進数に直さずに82×10=820としたり、8ビットだからと256や255で割ったりするのは誤り。問題文の数値の組をそのまま使う。
  • RTCの問題:「時間内にリスタートされないとリセット」はウォッチドッグタイマ、「周波数を一致させる」はPLL、「規定時間内に完了」はリアルタイム処理。
  • 制御方式の問題:「影響が出力に現れる前に」はフィードフォワード、「定められた順序」はシーケンス、「出力結果を使用せず」はオープンループ。「出力結果と目標値を比較」だけがフィードバック。

用語(16)

SoC System on a Chip
システムに必要な機能をすべて1つのチップに同一プロセスで集積したLSI。
⚠ SiPは複数のチップを1つのパッケージに入れたもの。チップが1つならSoC、複数ならSiP。
SiP System in a Package
別々に製造した複数のチップを1つのパッケージに封入して配線したデバイス。
⚠ SoCとの違いはチップの数。「パッケージ上で配線」と書かれていればSiP。
チップセット ちっぷせっと
CPU・メモリ・周辺装置の間のデータのやり取りを管理する回路群。
⚠ SoCのひっかけ選択肢として出る。「データの受渡しを管理」と書かれていればチップセット。
RTC Real-Time Clock
日付と時刻のカレンダ情報を保持し、システムの時刻管理に使われる時計回路。
⚠ ウォッチドッグタイマ(時間内にリスタートされないとリセット)やリアルタイム処理(時間内に処理を完了)と区別する。
ウォッチドッグタイマ Watchdog Timer
決められた時間内にリスタートされないとシステムをリセットし、暴走から復帰させるタイマ。
⚠ RTCは時刻を数える時計で、システムの見張りはしない。
PLL Phase Locked Loop(位相同期回路)
入力信号に周波数を同期させ、クロックを整数倍に逓倍して作る回路。
⚠ 分周器は逆に周波数を1/nに下げる。逓倍は掛け算、分周は割り算。
分周器 ぶんしゅうき
入力されたクロックの周波数を1/nに下げる回路。
チャタリング chattering
機械式スイッチを1回操作しただけで、接点がはねて数ミリ秒の間にON/OFFが何度も起こる現象。
⚠ サンプリング(一定間隔で読み取る)やバッファリング(一時的に溜める)とは無関係。
D/A変換器 Digital to Analog converter
ディジタル値をそれに比例したアナログ電圧に変換する回路。
⚠ A/D変換器は逆向き(アナログからディジタル)。
分解能 ぶんかいのう
変換器が値を何段階に分けて表せるかを示す細かさ。nビットなら2^n段階。
⚠ 1ビットあたりの電圧は、問題文の値と電圧の組から割り算で求める。
PWM Pulse Width Modulation(パルス幅変調)
電圧の高さは一定のまま、ONにしている時間の割合を変えて平均電力を調整する方式。
⚠ PAM(パルス振幅変調)はパルスの高さが変わる。PWMは高さ一定で幅が変わる。
デューティ比 duty ratio
1周期のうち信号がONになっている時間の割合。
ひずみゲージ strain gauge
物体の変形(ひずみ)を電気抵抗の変化として検出するセンサ。
⚠ サーミスタは温度、ジャイロは角速度、ホール素子は磁界を測る。「変形」と書かれていればひずみゲージ。
アクチュエータ actuator
制御信号に基づいて、エネルギーを回転や直線移動などの動きに変える駆動装置。
⚠ センサは物理量を電気信号に変える逆向きの部品。「動きに変える」ならアクチュエータ。
フィードバック制御 feedback control
出力結果を測って目標値と比べ、一致するように操作を調整し続ける制御。
⚠ フィードフォワード制御は外乱の影響が出る前に補正する。シーケンス制御は決められた順序で動かす。
フィードフォワード制御 feedforward control
外乱を事前に検知し、その影響が出力に現れる前に補正する制御。
⚠ 出力結果を見て直すのがフィードバック、出力に影響が出る前に先回りするのがフィードフォワード。

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