可用性とバックアップの監査
監査項目の選択肢を「機密性・完全性・可用性」に振り分け、可用性に当たるもの(SLAの中断時間管理・サーバ二重化)を選べるようになる。バックアップの保管場所、障害対策の効果の確かめ方、監査人が使う手続についても、正しい選択肢を選べるようになる。
監査の問題は「この項目はどの観点か」「どう確かめるか」を4択で問う形がほとんどなので、見分け方を覚えれば確実に取れる。実務でも、SLAの合意やバックアップ設計の妥当性を判断する場面でそのまま使える。
このレッスンで稽古する(用語チェック・過去問)結論:可用性は「止まらない・止まってもすぐ戻る」
可用性は、使いたいときにシステムを使える性質です。可用性を確かめる監査項目には、中断時間・二重化・停止・復旧・バックアップの保管場所など、システムが止まる・壊れる・消える場面に関わる言葉が出てきます。選択肢を情報セキュリティの3要素に振り分けられれば、このレッスンの問題はほぼ解けます。
| 3要素 | 意味 | 監査項目の例 | 見分けキーワード |
|---|---|---|---|
| 機密性 | 許可された人だけが見られる | 媒体の無断持出し禁止、暗号化、特権アカウントだけに操作を許可 | 禁止・暗号化・権限 |
| 完全性 | データが正しく、欠けや改ざんがない | 入力時のエラーチェック、入力チェック機能 | チェック・正確・改ざん |
| 可用性 | 必要なときに使える | SLAの中断時間管理、サーバの二重化、遠隔地のバックアップ | 中断時間・二重化・停止・復旧 |
コンビニにたとえると、レジの金庫に鍵をかけるのが機密性、レシートの金額が正しいのが完全性、24時間開いているのが可用性です。
可用性の監査項目①:SLAの中断時間(本試験に出ている)
SLA(サービスレベル合意)は、サービスの提供者と利用者が「どの水準で提供するか」を数字で約束した取決めです。その中の中断時間(サービスが止まっていてよい時間の上限)が守られるよう管理されているかは、可用性のチェック項目です。止まっている時間を問題にしているので、可用性に当たります。
問われ方:「情報セキュリティ監査で可用性を確認するチェック項目はどれか」と聞かれ、4つの選択肢が3要素に散らばっています。
- 外部記憶媒体の無断持出し禁止 → 機密性
- データ入力時のエラーチェック → 完全性
- データベースの暗号化 → 機密性
- 中断時間を定めたSLAの水準を保つ管理 → 可用性(正解)
可用性の監査項目②:サーバの二重化(免除試験で頻出)
二重化(冗長化)は、同じ役割の機器を2台用意して、片方が壊れてももう片方で動き続けられるようにする構成です。故障しても止まらない強さを耐障害性といい、これを高める対策は可用性に当たります。
「マスタファイル管理の監査項目のうち可用性はどれか」という形で出題されます。
| 選択肢の内容 | 対応する観点 |
|---|---|
| サーバを二重化して耐障害性を高める | 可用性(正解) |
| メンテナンスは特権アカウントを持つ者だけ | 機密性(権限のない人に触らせない) |
| データ入力のチェック機能がある | 完全性 |
| 複数件をまとめて検索・加工する機能がある | 効率性(処理を効率よく行うための機能)。3要素のどれでもない |
「機能が盛り込まれている」と書かれていても、可用性とは限りません。止まらない仕組みかどうかで判断します。
可用性の監査項目③:再発防止策の効果を確かめる
再発防止策が効いたかどうかは、前期と当期で、障害原因別の発生件数と停止時間を比べて確かめます。報告書に記載があるか、承認されているかを見るのは書類の形式の確認で、効果は分かりません。予測値の比較も実績ではないので、効果の確認にはなりません。
バックアップの保管場所:遠隔地に置く(免除試験で頻出)
自然災害に備えるバックアップは、**稼働しているサーバから離れた場所(遠隔地)**に保管します。サーバのすぐ近くに置くと、地震や火災のときにサーバとバックアップが一緒に失われるからです。家の合鍵を同じ鍵束に付けておくと、鍵束をなくしたときに両方なくすのと同じです。
「監査人が指摘事項(問題点として報告書に書くこと)にすべきものはどれか」という形で出ます。
| 判明した状況 | 判断 |
|---|---|
| 取得手順書を作り、担当者を決めている | 適切 |
| 媒体から復旧する試験を計画どおり実施している | 適切 |
| 機密保持契約を結んだ外部の倉庫会社に保管を委託している | 適切(離れた場所に置き、機密も守っている) |
| 媒体をサーバの近くに保管している | 指摘事項(サーバと一緒に被災する) |
「適切な災害対策はどれか」と聞かれたら、正解は遠隔地にバックアップ用のシステムを作り、プログラムやデータを定期的に送っておくことです。**UPS(無停電電源装置)**は停電や電圧の乱れから機器を守る電源対策で、建物ごと被災する災害には効きません。
媒体の容量を比べる問題も出ます。おおよその容量は次のとおりです。
| 媒体 | 容量の目安 |
|---|---|
| CD-R | 約700MB |
| MO | 最大で約2.3GB |
| DVD-RAM | 約4.7GB(片面) |
| DDS-4(磁気テープ) | 約20GB(圧縮なし) |
バックアップ運用の監査手続:記録を見る
監査手続は、監査人が証拠を集める方法です(閲覧・観察・再実施など)。「日次バックアップが継続的に取れているか」は過去の毎日の実績を問うているので、ジョブの設定内容と実行結果ログを閲覧するのが適切です。再実施は今日の1回分しか確かめられず、リカバリテストは「戻せるか」、装置の観察は「装置があるか」を確かめる手続なので、継続して取れているかは分かりません。
クラウドの情報消失を防ぐチェックポイント
クラウドに預けたデータは、事業者が倒産したりサービスをやめたりすると、データごと失われるおそれがあります。そのため情報消失の予防として確かめるのは、事業者が信頼できるか、事業とサービスが継続して提供されるかです。最大許容停止時間は障害で止まったときの話で、データ消失の予防とは別の論点です。
12GBのバックアップに必要な媒体の数を比べる
解き方と答えを見る
- バックアップする量を求める:120GB × 10% = 12GB
- CD-R(約0.7GB):12 ÷ 0.7 ≒ 17.1 → 切り上げて18枚
- MO(最大約2.3GB):12 ÷ 2.3 ≒ 5.2 → 切り上げて6枚
- DVD-RAM(片面約4.7GB):12 ÷ 4.7 ≒ 2.55 → 切り上げて3枚(両面9.4GBで数えても2枚)
- DDS-4(約20GB):12 ÷ 20 = 0.6 → 切り上げて1本
- いちばん少ないのはDDS-4の1本
答え:イ(DDS-4)
監査報告書に書く指摘事項を選ぶ手順
ア バックアップ取得手順書を作成し,取得担当者を定めていた。
イ バックアップを取得した電子記録媒体からデータベースを復旧する試験を,事前に定めたスケジュールに従って実施していた。
ウ バックアップを取得した電子記録媒体を,機密保持を含む契約を取り交わした外部の倉庫会社に委託保管していた。
エ バックアップを取得した電子記録媒体を,業務システムが稼働しているサーバの近くで保管していた。
解き方と答えを見る
- 目的を確認する:自然災害が起きても事業を続けるためのバックアップ
- 各選択肢を「この目的に照らして足りない点があるか」で判定する
- 手順書と担当者 → 運用の体制は整っている(問題なし)
- 計画どおりの復旧試験 → 実際に戻せることを確認している(問題なし)
- 機密保持契約付きの外部委託保管 → 離れた場所に置き、機密も守っている(問題なし)
- サーバの近くに保管 → 災害時にサーバと同時に失われ、目的を満たさない(指摘事項)
答え:エ
要点(試験直前に読む)
- 可用性は「止まらない・すぐ戻る」。キーワードは中断時間・二重化・停止・復旧。
- 暗号化・持出し禁止・権限の制限は機密性、入力チェックは完全性。
- 災害に備えるバックアップは遠隔地に置く。サーバの近くに置いていれば指摘事項になる。
- 再発防止策の効果は、前期と当期の障害原因別の件数と停止時間を比べて確かめる。
- 日次バックアップが継続して取れているかは、ジョブの設定と実行結果ログを閲覧して確かめる。
- クラウドのデータ消失を防ぐには、事業者の信頼性と事業の継続性を確かめる。
ひっかけ
- 「チェック機能」「権限の限定」が可用性の選択肢に混ぜられる → 止まらない仕組みかどうかで判断する。前者は完全性、後者は機密性。
- 手順書・復旧試験・外部委託など、手間がかかっていそうな適切な対策が並ぶ → 目的(災害時の事業継続)に照らして足りないのは「サーバの近くに保管」だけ。
- UPSが災害対策の選択肢に出る → 停電への対策であり、建物ごと被災すれば効かない。正解は遠隔地のバックアップ。
- 監査人がジョブを再実施する、リカバリテストをする → 「継続的に取れているか」は過去の記録を見ないと分からないので、ログの閲覧を選ぶ。
- クラウドの情報消失予防で「最大許容停止時間」が出る → 止まったときの話。消失を防ぐ観点は事業者の信頼性と継続性。
用語(15)
必要なときにシステムやデータを使える性質。
⚠ 完全性(データが正しいこと)と混同しやすい。止まる・停止・復旧の話なら可用性、正しさ・改ざんの話なら完全性。
許可された人だけが情報にアクセスできる性質。
⚠ 暗号化・持出し禁止・権限の制限は機密性。可用性の選択肢として混ぜられる。
データが正確で、欠けや改ざんがない性質。
⚠ 入力チェック・エラーチェックは完全性。「チェック機能」とあっても可用性ではない。
サービスの提供者と利用者が、提供する水準を数値で取り決めた合意。
⚠ 中断時間を定めたSLAの管理は可用性の項目。SLAという言葉だけで機密性などと結びつけない。
サービスが止まって使えない時間。SLAでは上限を決めておく。
同じ役割の機器を複数用意し、1台が故障しても動き続けられるようにする構成。
⚠ バックアップ(データの写しを取っておくこと)とは別。二重化は止まらないため、バックアップは失ったデータを戻すため。
機器が故障してもシステム全体が止まらずに動き続けられる強さ。
バックアップ媒体を、稼働中のシステムから離れた場所に保管すること。
⚠ サーバの近くに置くのは災害時に一緒に失われるため不適切。外部の倉庫会社への委託は、機密保持契約があれば適切。
停電や電圧の乱れが起きても、しばらく電力を供給して機器を守る装置。
⚠ 電源の対策であり、地震や火災などの災害対策(遠隔地のバックアップ)の代わりにはならない。
監査で見つかった問題点として、監査報告書に記載する事項。
⚠ 一見手間がかかっていそうでも、目的に照らして適切なものは指摘事項にならない。
監査人が証拠を集めるための方法(閲覧・観察・再実施・質問など)。
設定内容や実行結果ログなどの記録を読み、過去の実績を確かめる手続。
⚠ 再実施(監査人が自分でやり直す手続)は今の1回分しか確かめられない。継続して取れているかを見るなら閲覧。
バックアップデータから実際にシステムやデータを戻せるかを試すこと。
⚠ 確かめられるのは「戻せるか」であり、「毎日取れているか」ではない。
対策の前後で、障害原因別の件数と停止時間の実績を比べ、減ったかどうかを確かめること。
⚠ 報告書に記載があるか、承認されているかは形式の確認で、効果の確認ではない。
磁気テープを使うバックアップ媒体。DDS-4は約20GB(圧縮なし)を記録できる。
⚠ CD-R(約700MB)、MO(最大約2.3GB)、DVD-RAM(片面約4.7GB)より容量が大きい。
このレッスンの過去問
- 可用性の監査チェック項目(SLAの中断時間管理)平成30年度 春期 基本情報技術者試験 午前 問60
- マスタファイル管理の可用性監査項目(サーバ二重化)基本情報技術者試験 科目A免除 修了試験 20260125 実施分 問45
- 可用性監査での再発防止策の効果レビュー(障害件数・停止時間の期間比較)基本情報技術者試験 科目A免除 修了試験 201007 実施分 問61
- バックアップ媒体の保管場所(遠隔地保管)平成31年度 春期 基本情報技術者試験 午前 問60
- バックアップ運用の監査手続(設定内容とログの閲覧)基本情報技術者試験 科目A免除 修了試験 20191208 実施分 問59
- システム監査のチェックポイント(クラウド情報消失予防)基本情報技術者試験 科目A免除 修了試験 20171210 実施分 問58