業務プロセスの見直しと改善の進め方
BPR・BPM・ワークフローシステム・EUC・情報リテラシの説明文を読んで、ERP・CRM・SCMなどの紛らわしい用語と取り違えずに正解を選べるようになる。BPMSの4フェーズ(計画・実行・検証・改善)のどれに当たるかも見分けられるようになる。
システム戦略の科目Aでは「〜の説明はどれか」「〜の目的はどれか」と業務改善の手法名を当てる問題が、言い回しを少し変えて何度も出ている。キーワードで見分けるコツさえ覚えれば確実に取れるうえ、実務で業務改善を話し合うときの共通語にもなる。
このレッスンで稽古する(用語チェック・過去問)結論:作り直すのがBPR、回し続けるのがBPM
業務改善の手法は、大きく**「一度ゼロから作り直す」BPRと「改善を回し続ける」BPM**の2つに分かれる。試験はこの2つと、似た名前の経営用語(ERP・CRMなど)を取り違えさせる問題ばかり。まずはこの2つの違いを押さえる。
たとえるなら、BPRは家の建て替え(今の間取りは捨てて、暮らし方から設計し直す)、BPMは住みながら続ける定期メンテナンス(点検して直し、また点検する)。
| 手法 | 何をする | 時間軸 | 試験のキーワード |
|---|---|---|---|
| BPR | 業務プロセスを根本から再設計する | 一度の大改革 | 抜本的・劇的・顧客視点・IT活用・リエンジニアリング |
| BPM | 分析→設計→実行→改善のサイクルを回す | 継続的 | 継続的な改善・マネジメントサイクル |
| 業務改善(現場のカイゼン) | 今のやり方を少しずつ直す | 積み重ね | 現場のニーズ・現行の手続に基づく |
BPR:今のやり方を捨てて「あるべき姿」から作り直す
BPR(ビジネスプロセスリエンジニアリング)は、業務の流れ(ビジネスプロセス)を根本から考え直して抜本的に再設計し、コスト・品質・サービス・スピードを劇的に改善する手法。単にリエンジニアリングとも呼ぶ。キーワードは顧客視点とITの活用で、目指すのは企業の体質や構造そのものを変えること。
BPRで押さえる3つの特徴
- 顧客視点で業務プロセスを見直す(社内の都合を起点にしない)
- IT(情報技術)を十分に活用して再設計する
- 小さな改善ではなく、抜本的・劇的な変革を狙う
進め方の留意点(ここが一番問われる)
- ○ 新しい視点で高い目標を立て、将来必要になる最上位の業務機能・業務組織のモデルから考える
- × 現行の組織や業務手続を前提にして設計する → それは今の延長線上の改善にすぎない
- × 将来像は気にせず、現場レベルのニーズへの対応を積み重ねる → それは業務改善
- × 対象を定型業務(購買・製造・販売など決まった手順の仕事)だけに絞る → BPRは意思決定のような非定型業務も含め、業務全体を見直す
選択肢に「現行の〜に基づいて」「現場の〜を重視して」とあれば、BPRの答えから外すのが基本。
BPM:業務プロセスを継続的に改善し続ける仕組み
BPM(ビジネスプロセスマネジメント)は、業務プロセスに分析→設計→実行→改善のマネジメントサイクル(PDCAのように回し続ける管理の流れ)を組み込み、改善を継続的に続ける手法。**目的は「業務プロセスの継続的な改善」**と覚えれば足りる。目的を問う問題では、ほかの選択肢は経営資源(ERP)・顧客情報(CRM)・情報資源の分析(BIなど)の目的なので、迷わず消せる。
**BPMS(ビジネスプロセスマネジメントシステム)**は、BPMを支えるITツール。業務の流れを設計し、その設計どおりに仕事を流して実績を記録できる。免除試験では、どの作業がどのフェーズに当たるかが問われた。
| フェーズ | やること | 見分けのキーワード |
|---|---|---|
| 計画 | 業務プロセスを設計し、画面や基幹システムとの連携など業務アプリケーションを作る | 設計・構築 |
| 実行 | 業務リストに沿って担当者に仕事を割り振り、実施状況を記録する | 割り振り・記録 |
| 検証 | 業務リストの実績や個人別の実績で業務を分析し、ノウハウを登録するなどやった仕事を振り返る | 実績・振り返り |
| 改善 | 業務ごとの実績の詳細分析や、業務を変えた後のシミュレーションを基に業務を見直す | 見直し・シミュレーション |
検証と改善はどちらも「分析」を含むので紛らわしい。過去を振り返るのが検証、この先どう変えるかを決めるのが改善と区別する。
ひっかけ用語の見分け表
BPR・BPMの問題では、不正解の選択肢にほかの経営用語の説明文が並ぶ。キーワードでどの用語の説明かを当てられれば、消去法で解ける。
| 用語 | ひとことで | 選択肢に出るキーワード |
|---|---|---|
| BPR | 業務プロセスを抜本的に再設計 | 抜本的・劇的・顧客視点・IT活用 |
| BPM | 業務プロセスを継続的に改善 | 分析・設計・実行・改善のサイクル |
| ERP | 基幹業務の情報を一元管理 | 生産・物流・販売・財務・人事/経営資源の全体最適 |
| CRM | 顧客との関係を管理 | 顧客データベース・問合せ・クレーム対応 |
| SCM | 供給から販売までの連鎖を最適化 | 部品供給〜販売・在庫削減・リードタイム短縮 |
| コアコンピタンス | 他社に勝る自社の中核能力 | 他社より優越した独自の技術・経営資源の集中 |
| ベンチマーキング | 優れた他社と比べて学ぶ | 最強の競合・先進企業と比較 |
| アライアンス | 企業どうしの提携 | 提携・協力 |
| ゴーイングコンサーン | 企業が将来も続く前提 | 継続企業の前提 |
| EDI | 企業間の電子データ交換 | 取引先とのデータ交換の標準規約 |
ワークフローシステム:申請から決裁までを電子化して速くする
ワークフローシステムは、稟議や経費精算のような申請→承認→決裁の事務手続を電子化し、処理速度を上げる仕組み。紙の稟議書にハンコを順番にもらって回るリレーを、システム上の回覧に置き換えるイメージ。ひっかけは、購入額に応じた割引(CRM)、取引先とのデータ交換の規約(EDI)、倉庫の搬入出の自動化(物流システム)の効果。
EUCと情報リテラシ:利用者が自分でITを使いこなす
EUC(エンドユーザコンピューティング)は、システムを使う現場の人(エンドユーザ)が自分で表計算ソフトや簡易データベースを使い、必要な情報を参照・加工して業務をこなすこと。情報システム部門に頼まずに済むので、部門の開発待ち案件(バックログ)は減る方向に働く。「情報システム部門が主導して開発する」「開発要員が増える」はEUCの逆。統合開発環境(IDE)やプロトタイピングといった開発者側の用語とも混同させてくる。
情報リテラシは、業務に必要なデータの収集・加工・発信のために、コンピュータやネットワークを有効に使う能力。全社員向けの向上策として正しいのはこれの習熟で、プログラミング能力・簿記の資格・タイピング速度の競争は本質から外れる。
要点(試験直前に読む)
- BPR=顧客視点+IT活用で業務プロセスを抜本的に再設計し、劇的に改善する(リエンジニアリング)。
- BPRは高い目標と将来の最上位モデルから考える。現行の組織・手続や現場ニーズを起点にしたら×。
- BPM=分析・設計・実行・改善のサイクルを回す。目的は「業務プロセスの継続的な改善」。
- BPMSのフェーズ:計画は設計・構築、実行は割り振り・記録、検証は実績の振り返り、改善はシミュレーションを基にした見直し。
- ワークフローシステム=申請〜決裁の電子化で処理を速くする。EUC=利用者自身が表計算などで情報を加工する。
- 情報リテラシ=データの収集・加工・発信にコンピュータとネットワークを使いこなす能力。
ひっかけ
- BPRの留意点で「現行の組織・業務手続に基づいて」「現場のニーズを重視して」とあれば、それは業務改善の説明なので×。
- BPMの説明・目的の問題には、ERP(経営資源の一元管理)、CRM(顧客)、SCM(在庫・リードタイム)の説明が並ぶ。主語のキーワードで消去する。
- BPRの説明・名前の問題には、コアコンピタンス(独自の強み)、ベンチマーキング(他社比較)、アライアンス(提携)、ERPが紛れ込む。「抜本的・劇的」を探す。
- BPMSの検証と改善はどちらも分析を含む。過去の実績を振り返るのが検証、シミュレーションを基に変え方を決めるのが改善。
- EUCの選択肢には、情報システム部門主導の開発やIDE・プロトタイピングが並ぶ。「利用者自身が」を探す。
用語(15)
顧客視点とITの活用で業務プロセスを根本から再設計し、コスト・品質・サービス・スピードを劇的に改善する手法。リエンジニアリングとも呼ぶ。
⚠ BPMは継続的な改善、BPRは一度の抜本的な作り直し。「抜本的・劇的」ならBPR。
業務プロセスについて分析・設計・実行・改善のサイクルを回し、継続的に改善していく管理手法。
⚠ BPRとの違いは「継続的」かどうか。目的を問われたら答えは「業務プロセスの継続的な改善」。
BPMを支えるITツールで、業務の流れを設計・実行・記録・分析できる。
⚠ フェーズを問われたら、振り返りが検証、シミュレーションを基にした見直しが改善。
申請から承認・決裁までの事務手続を電子化し、処理を速くする仕組み。
⚠ 取引先とのデータ交換はEDI、顧客向けのサービスはCRMの話。
利用者自身が表計算ソフトや簡易データベースで情報を参照・加工し、業務をこなすこと。
⚠ IDEやプロトタイピングは開発者側の用語。情報システム部門主導の開発はEUCの逆。
業務に必要なデータを収集・加工・発信するために、コンピュータやネットワークを有効に使う能力。
⚠ プログラミング能力・簿記・タイピング速度は情報リテラシの本質ではない。
生産・物流・販売・財務・人事などの基幹業務の情報を一元管理し、経営資源の全体最適を図る仕組み。
⚠ 「経営資源」「一元管理」ならERP。BPMの目的(継続的な改善)とは別物。
顧客データベースを基に、販売から保守・問合せ対応まで顧客との関係を一貫して管理する手法。
⚠ 「顧客」が主語ならCRM。
部品の調達から製品の販売までの情報を企業間で共有し、在庫削減とリードタイムの短縮を図る手法。
⚠ 「供給〜販売の連鎖」「在庫削減」ならSCM。
企業間の取引データを、標準の規約に沿って電子的に交換すること。
⚠ 社内の申請・決裁ならワークフローシステム、企業間のデータ交換ならEDI。
他社がまねできない、自社独自の中核となる技術や能力。
⚠ 「他社より優越した独自の強み」ならこれ。BPRの説明ではない。
最強の競合や先進企業と自社を比べ、差を把握して改善に生かす手法。
⚠ 「他社と比較」ならベンチマーキング。
企業どうしが目的を共有して提携・協力すること。
⚠ 「劇的な改善」の名前を問う問題で並ぶダミー。提携の意味しかない。
開発の初期に試作品(画面など)を作り、利用者に確認してもらいながら進める開発手法。
⚠ 開発者側の手法。利用者が自分でITを使うEUCとは別物。
エディタ・コンパイラ・デバッガなどの開発ツールを1つの画面にまとめた開発環境。
⚠ EUCの選択肢に紛れ込むダミー。開発者向けの道具。
このレッスンの過去問
- BPRの定義平成27年度 秋期 基本情報技術者試験 午前 問62
- BPM(ビジネスプロセスマネジメント)の定義平成24年度 秋期 基本情報技術者試験 午前 問62
- BPMの目的平成28年度 秋期 基本情報技術者試験 午前 問63
- ワークフローシステムの導入効果平成27年度 春期 基本情報技術者試験 午前 問63
- EUCの定義平成22年度 秋期 基本情報技術者試験 午前 問55
- 情報リテラシ向上施策の定義基本情報技術者試験 科目A免除 修了試験 20171210 実施分 問64