システム調達の流れと RFP・契約
情報システムを外部ベンダから買うときの流れ(RFI→RFP→選定→契約)を順番どおりに言えるようになり、RFP の書き方の良し悪し、総合評価落札方式の点数計算、契約タイプの見分けを問う問題を自力で解けるようになる。
前のレッスンで決めた要件は、ベンダに正しく伝わり、公正に選び、契約で縛らなければ形になりません。科目A では「手順の穴埋め」「RFP で適切な対応はどれか」「落札者はどれか」の3パターンで、ほぼ同じ形のまま繰り返し出ています。
このレッスンで稽古する(用語チェック・過去問)結論:調達は「聞く→頼む→選ぶ→約束する」の4段
システム調達は RFI → RFP → 供給者の選定 → 契約の締結 の順に進みます。試験で最も多いのは、この4つを並べて空欄を埋めさせる問題です。
たとえるなら家のリフォームです。まず業者に「どんな工事ができますか」と情報をもらい(RFI)、次に「この条件で見積と提案をください」と依頼し(RFP)、出てきた提案を比べて1社選び、最後に契約書を交わします。
flowchart TD
A["RFI:情報提供を依頼(目的・業務内容を示す)"] --> B["RFP:提案を依頼(調達対象・調達条件を示す)"]
B --> C["供給者の選定:提案書・能力で決める"]
C --> D["契約の締結:役割・責任分担を文書で確認"]
RFI と RFP の見分け方(ここが一番のひっかけ)
見分けるときは、問題文の動詞を見ます。「情報提供を依頼」なら RFI、「提案書の提出を依頼」なら RFP です。
| RFI | RFP | |
|---|---|---|
| 正式名称 | Request For Information(情報提供依頼書) | Request For Proposal(提案依頼書) |
| 時期 | 最初 | RFI の後 |
| 発注元が示すもの | システム化の目的・業務内容 | 調達対象システム・調達条件・要件 |
| ベンダに求めるもの | 技術動向・製品・事例などの情報 | 提案書(実現方法・費用・体制など) |
| ねらい | 何ができるかを知り、候補を絞る | 比較できる形の提案を集める |
キーワード対応:「情報提供」→ RFI、「提案書」「調達条件」→ RFP、「調達先を決定」→ 選定、「役割や責任分担を文書で確認」→ 契約です。
良い RFP の条件
RFP は「何を実現してほしいか」を、比較できる形で書いた依頼書です。要件定義の結果を機能要件(何ができるか)と非機能要件(性能・信頼性・セキュリティなど、どれくらいの質でできるか)に整理して載せます。
適切な対応(正解になるもの)
- 要件定義を機能要件・非機能要件にまとめて提示する
- 要求が複数あるなら、RFP を作る時点で重要度を決めておく(必須か、あれば望ましいか)
- 要求の実現性は、発注側でも事前に確認しておく
- 「何を実現したいか」を書き、製品名などの実現手段は指定しすぎない
不適切な対応(ひっかけの選択肢)
- 手間を省くため要求の記述を最小限にし、曖昧な点はベンダに都度確認させる
- 実現性の調査をベンダ任せにする
- 具体的な製品名や実現手段を細かく指定する
- 作業の完了時期をはっきりさせない
- 現行システムのプログラム仕様書をそのまま添付する(要件ではなく作り方の資料)
公正な選定:評価基準は「先に」決める
RFP を出したら、提案書が届く前に評価基準や重み付け(どの項目を何点で評価するか)を決めて、選定の手順を固めておきます。後から決めると、好きなベンダに合わせて基準を変えられてしまうからです。
ひっかけになるのは、特定のベンダを有利にする対応です。たとえば「現行システムを知っているベンダの評価を上げておく」「落ちたベンダに再提案の救済措置を用意する」「選定前に全社へ内示書を出して契約書づくりを頼む」といった選択肢は、どれも不公正なので誤りです。
総合評価落札方式:価格+中身の合計点で選ぶ
総合評価落札方式は、価格と提案内容(技術点など)をそれぞれ点数にし、合計点が最も高い提案を選ぶ方式です。主に公共調達で使われます。
| 方式 | 決め手 | 入札 |
|---|---|---|
| 総合評価落札方式 | 価格+提案内容の合計点が最高 | あり |
| 最低価格落札方式 | 予定価格以内で最も安い | あり |
| 随意契約 | 発注者が相手を選ぶ | なし |
計算問題では、予定価格(発注者が上限として決めた価格)を超えた入札は、点数が高くても評価対象から外すことを忘れないでください。
契約タイプ:お金の払い方で3つに分かれる
契約タイプは「何に対してお金を払うか」で区別します。
| 契約タイプ | 支払いの対象 | 試験での言い方 |
|---|---|---|
| 定額(一括請負)契約 | 期日までに作った成果物に、決めた価格で払う | 「指定された期日までに決められた価格で作成された成果物に対して対価」 |
| 実費償還契約 | かかったコストを払い、さらにフィー(報酬)を上乗せする | 「コストが償還され,固定フィー/インセンティブを受け取る」 |
| タイムアンドマテリアル(T&M)契約 | 実際に働いた時間や資材に払う | 「実施された労務に対する対価」 |
たとえるなら、定額は「この料金で家を1軒建てます」、T&M は「職人1人1日いくら」の日当払いです。「償還」が出てきたら実費償還、「労務」が出てきたら T&M、「成果物+決められた価格」が出てきたら一括請負と判断します。
契約が成立する書類:注文書+請書
発注側が注文書(申込み)を出し、受注側が請書(承諾)を返すと契約が成立します。RFI・RFP・提案書は、契約前のやり取りに使う書類なので、契約書類ではありません。
調達手順の空欄 b を埋める
ア RFI
イ RFP
ウ 供給者の選定
エ 契約の締結
解き方と答えを見る
- 各ボックスの動詞を見る。a は「情報提供を依頼」、b は「調達条件を示し提案書の提出を依頼」、c は「調達先を決定」、d は「役割や責任分担を文書で確認」。
- a の「情報提供」は RFI にあたる。
- b の「提案書の提出を依頼」は RFP にあたる。
- c は供給者の選定、d は契約の締結にあたる。
- したがって b は RFP。
答え:イ:RFP
総合評価落札方式で落札者を求める
| 入札価格(万円) | 技術点 | |
|---|---|---|
| A 社 | 700 | 50 |
| B 社 | 800 | 65 |
| C 社 | 900 | 80 |
| D 社 | 1,100 | 100 |
ア A 社
イ B 社
ウ C 社
エ D 社
出典:基本情報技術者試験 科目A免除 修了試験 20181209 実施分 問65
解き方と答えを見る
- まず予定価格を超える入札を外す。D社は 1,100万円で、予定価格の 1,000万円を超えるため評価対象外。
- 価格点 = [1 − (入札価格 ÷ 予定価格)] × 100 で計算する。
- A社:[1 − 700/1,000] × 100 = (1 − 0.7) × 100 = 30点。総合点 = 30 + 50 = 80点。
- B社:[1 − 800/1,000] × 100 = (1 − 0.8) × 100 = 20点。総合点 = 20 + 65 = 85点。
- C社:[1 − 900/1,000] × 100 = (1 − 0.9) × 100 = 10点。総合点 = 10 + 80 = 90点。
- 最高点は C社の 90点。最も安い A社でも、技術点が満点の D社でもない。
答え:ウ:C 社
要点(試験直前に読む)
- 調達の順番は RFI(情報提供依頼)→ RFP(提案依頼)→ 供給者の選定 → 契約の締結。
- 問題文の動詞で判断する。「情報提供」は RFI、「提案書の提出」は RFP、「調達先を決定」は選定、「責任分担を文書で確認」は契約。
- RFP には機能要件と非機能要件をまとめて載せ、複数ある要求には作成時点で重要度を付けておく。
- 公正に選ぶため、評価基準と重み付けは提案を受ける前に決める。
- 総合評価落札方式は、価格点+技術点の合計が最も高い者が落札する。予定価格を超えた入札は評価から外す。
- 一括請負は成果物に定額で払い、実費償還はコストにフィーを上乗せし、T&M は労務に払う。契約は注文書と請書で成立する。
ひっかけ
- RFI と RFP の入れ替え:「提案書の提出を依頼」と書いてあれば RFP。「情報提供」は RFI。
- RFP の不適切な対応:要求の記述を最小限にする、実現性の調査をベンダ任せにする、製品名まで細かく指定する、といった選択肢は誤り。正解は「重要度を設定しておく」「機能要件と非機能要件にまとめる」。
- 選定の公正さ:特定のベンダの評価を上げる、救済措置を用意する、契約前に作業を頼む、といった選択肢は誤り。
- 総合評価の計算:最も安い社や技術点が満点の社を選ばせようとしてくる。まず予定価格を超えた社を外し、価格点と技術点を足して比べる。
- 契約タイプ:「償還」は実費償還、「労務」は T&M、「成果物+決められた価格」は一括請負。RFI・RFP・提案書は契約書類ではない。
用語(16)
調達の最初に、システム化の目的や業務内容を示して、ベンダに技術や製品の情報を出してもらう依頼書。
⚠ RFP と取り違えやすい。「情報提供」なら RFI、「提案書の提出」なら RFP。
調達対象や調達条件、要件を示して、ベンダに提案書を出してもらう依頼書。
⚠ RFI は情報を集める段階で、RFP はその後に提案を求める段階。
RFP に応えてベンダが出す書類で、実現方法・費用・体制などが書かれている。
⚠ RFP は発注側が出し、提案書はベンダが出す。どちらも契約書類ではない。
提案書やベンダの能力を、事前に決めた評価基準で比べて調達先を決める段階。
⚠ 契約の締結は、選んだ後に役割や責任分担を文書で確認する次の段階。
発注元と調達先が、役割や責任分担などを文書で確認し合う、調達の最後の段階。
提案をどの項目で何点として評価するかのルールで、公正さを保つため提案を受ける前に決めておく。
⚠ 選定の後や、特定のベンダに合わせて決めるのは不公正。
システムが「何をできるか」という要件。
⚠ 非機能要件は、性能や信頼性など「どれくらいの質でできるか」という要件。
性能・信頼性・セキュリティ・運用性など、機能以外の品質に関する要件。
⚠ 機能要件は「何をするか」。RFP には両方を載せる。
価格と提案内容を点数にして、合計点が最も高い提案を落札者にする調達方式。
⚠ 最低価格落札方式は価格だけで決める。随意契約は入札をしない。
予定価格以内で、最も安い価格を出した者を落札者にする方式。
⚠ 「最高得点」なら総合評価落札方式、「最低価格」ならこちら。
入札をせず、発注者が契約相手を選んで決める契約方法。
⚠ 「入札を経ずに」と書いてあれば随意契約で、総合評価落札方式ではない。
発注者があらかじめ決めておく落札価格の上限で、これを超えた入札は評価対象から外れる。
決めた価格で、期日までに作った成果物に対して代金を払う契約。
⚠ T&M は労務(時間)に払い、実費償還はかかったコストにフィーを上乗せして払う。
作業にかかったコストを払い戻し、さらに固定フィーやインセンティブを上乗せして払う契約。
⚠ 「償還」という言葉があれば実費償還。一括請負は成果物に定額で払う。
実際に働いた時間や使った資材に応じて代金を払う契約。
⚠ 「労務に対する対価」と書いてあれば T&M。「成果物」なら一括請負。
発注側の注文書(申込み)に対して、受注側が請書(承諾)を返すと契約が成立する。
⚠ RFI・RFP・提案書は契約前のやり取りに使う書類で、請書を返しても契約は成立しない。
このレッスンの過去問
- システム調達プロセス(RFI→RFP→選定→契約)平成30年度 秋期 基本情報技術者試験 午前 問66
- RFPに記載すべき内容(機能要件・非機能要件)基本情報技術者試験 科目A免除 修了試験 20121216 実施分 問66
- RFP作成時の留意点(要求の重要度設定)基本情報技術者試験 科目A免除 修了試験 20220123 実施分 問65
- 総合評価落札方式の定義基本情報技術者試験 科目A免除 修了試験 20181209 実施分 問65
- 契約タイプの分類(定額・実費償還・タイムアンドマテリアル)平成21年度 春期 基本情報技術者試験 午前 問67
- 請書を渡すと契約が成立する書類(注文書)基本情報技術者試験 科目A免除 修了試験 201012 実施分 問66