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技術戦略マネジメント・1/3・8分

技術革新の種類と技術が育つ流れ

ゴール

プロダクトイノベーション・プロセスイノベーション・オープンイノベーションの違い、技術のSカーブの形、イノベーションのジレンマの意味を見分けられるようになり、それぞれの定義を選ぶ問題を自力で解ける。

技術戦略マネジメントの最初の論点として、定義を1つ選ばせる問題が繰り返し出ます。似た名前の用語やグラフ(ラーニングカーブ、バスタブ曲線など)を混ぜた選択肢が定番なので、違いを押さえておけば確実に点が取れます。

このレッスンで稽古する(用語チェック・過去問)

結論:イノベーションは「何を」新しくしたかで分ける

イノベーションは、新しい技術や仕組みで価値を生み出す変革のことです。試験ではまず「何を新しくしたか」で分類させます。製品そのものを新しくしたらプロダクト、作り方・業務のやり方を新しくしたらプロセスです。

たとえば、ラーメン屋が新メニューを出すのはプロダクトイノベーション、券売機と自動麺ゆで機で早く安く作れるようにするのはプロセスイノベーションです。

ラーメン屋で何を新しくした?注文麺ゆで盛り付けラーメン作り方(工程)製品そのものプロセスイノベーション券売機・自動麺ゆで機→ 早く安く作れる製造工程・コスト削減プロダクトイノベーション新メニュー差別化
ラーメン屋の作る流れのうち、どこを新しくしたかで呼び名が変わる。

3つのイノベーションの比較

用語 何を新しくする? 見分けるキーワード
プロダクトイノベーション 製品・サービスそのもの 新製品、差別化できる商品、独創的な新製品
プロセスイノベーション 製造工程・業務プロセス 製造工程、生産方法、品質向上、コスト削減、業務改革
オープンイノベーション 知識の出どころ(社外を使う) 社外からアイディア募集、他社・大学・個人と共同開発

オープンイノベーションだけは切り口が違い、「どこの知恵を使うか」で決まります。社内の部署どうしの共同プロジェクトは、どれだけ新しくてもオープンイノベーションではありません。

社外の知恵大学他社個人自社開発部営業部社内どうしの共同→ オープンではない社外の知恵を使う→ オープン
オープンイノベーションは会社の壁の外から知恵が入ってくるかどうかで決まり、社内の部署どうしでは当てはまらない。

技術のSカーブ:ゆっくり→急成長→頭打ち

技術のSカーブは、時間(または投入した努力)に対する技術の性能の伸び方を表す曲線で、形がアルファベットのSに似ています。最初はなかなか伸びず、コツをつかむと急に伸び、限界が近づくと伸びが鈍って停滞します。その後は次の新技術のSカーブへ乗り換えが起こります。

たとえば、スマホのカメラの画素数は、最初は少しずつ増え、ある時期に一気に増え、今は増やしても違いが分かりにくくなっています。これがSカーブの「成熟期」です。

flowchart LR
  A["導入期: 進歩はゆるやか"] --> B["成長期: 急激に進歩"]
  B --> C["成熟期: 限界に近づき停滞"]
  C --> D["衰退期"]
  D --> E["次の技術のSカーブへ移行"]
性能時間・努力ゆるやか急激に進歩停滞次の技術のSカーブへ導入期成長期成熟期
技術の性能は、導入期はゆるやか、成長期に急激に伸び、成熟期に停滞し、次の技術のSカーブへ移る。

Sカーブとまぎらわしい曲線の比較

選択肢には、形や名前が似た曲線が必ず混ざります。縦軸に何をとるかで見分けます。

曲線 何を表す? 形・特徴
技術のSカーブ 技術の進歩(性能) の推移 ゆるやか→急激→停滞のS字
ラーニングカーブ(学習曲線) 経験を重ねるほど習熟して作業が速くなる 繰り返すほど作業時間が減る
経験曲線 累積生産量が増えるほど単位コストが下がる 右下がり
バスタブ曲線 機器の故障率の時間変化 初期故障→偶発故障→摩耗故障の浴槽型
需要曲線 価格と需要量の関係 価格が上がると需要が減る右下がり
イノベーター理論の普及曲線 新製品を採用する人の割合(普及) 採用者を5層に分ける

「普及率」「認知度」「単位コスト」「故障率」という言葉が出たら、Sカーブ(技術の進歩)の説明ではありません。

イノベーションのジレンマ:強い会社ほど乗り遅れる

イノベーションのジレンマは、既存技術の製品で市場の優位を持つ大企業が、その優位を守ろうとして新しい技術(最初は性能が低く儲からないように見える破壊的イノベーション)への対応が遅れ、結果として市場の優位を失う現象です。出題は少ないので「優位があるからこそ遅れて負ける」と覚えれば十分です。

まぎらわしい相手は、普及の途中にある落ち込みのキャズムと、製品化までの困難を表す死の谷です。

性能時間市場が求める性能既存技術(大企業)ここで市場の求める性能に届く破壊的イノベーション最初は性能が低い優位を守ろうとして新技術への対応が遅れる→ 市場の優位を失う
最初は性能が低い破壊的イノベーションが急に伸びて市場の求める性能に届き、既存技術を守る大企業が優位を失う。

要点(試験直前に読む)

  • プロダクト=製品そのものを新しくする(新製品・差別化)。プロセス=作り方・業務を新しくする(製造工程・品質向上・コスト削減)。
  • オープンイノベーション=社外の知恵を使う。社内の部署間協力は該当しない。
  • 技術のSカーブ=技術の進歩が、ゆるやか→急激→停滞の順に進み、次の技術へ移る。
  • 縦軸で見分ける:習熟=ラーニングカーブ、単位コスト=経験曲線、故障率=バスタブ曲線、普及率=イノベーター理論。
  • イノベーションのジレンマ=既存の優位が原因で新技術に出遅れ、優位を失う。

ひっかけ

  • プロセスイノベーションの問題に「独創的な新製品を開発」(プロダクト)や「競争の結果、事実上の標準になる」(デファクトスタンダード)、「製造を他社に委託」(ファウンドリの活用)を混ぜる。製造工程そのものを革新しているかどうかで判断する。
  • プロダクトイノベーションの問題に「技術を核とするビジネスを戦略的にマネジメント」(MOT)や「業務プロセスの革新」(プロセス)を混ぜる。「新しい・差別化できる商品」があるものが正解。
  • オープンイノベーションの問題に「社内の部署どうしの共同プロジェクト」を混ぜる。社外の力を使っていなければ不正解。
  • Sカーブの説明に「普及率」「認知度」「累積生産量と単位コスト」を混ぜる。技術の進歩(性能)の話かどうかを確認する。
  • イノベーションのジレンマの問題に、キャズム(普及途中の需要の落ち込み)と死の谷(製品化までの困難)を混ぜる。「市場優位性を失う」がキーワード。

用語(15)

イノベーション innovation
新しい技術や仕組みを取り入れて、社会的・経済的な価値を生み出す変革。
⚠ これは総称。選択肢で「価値を生み出すこと」とだけ書いてあれば、ジレンマではなくイノベーションそのものの説明。
プロダクトイノベーション product innovation
新しい製品や他社と差別化できる製品を開発する革新。
⚠ プロセスイノベーションは作り方の革新。「新製品・差別化」ならプロダクト。
プロセスイノベーション process innovation
製造工程や業務プロセスを革新して、品質向上やコスト削減を実現すること。
⚠ 「製造工程」「業務プロセス」が出たらプロセス。新製品を作る話ならプロダクト。
オープンイノベーション open innovation
社外のアイディアや技術を取り入れて新製品・新サービスを生み出すこと。
⚠ 社内の部署間協力はクローズド(オープンではない)。「社外」が鍵。
技術のSカーブ ぎじゅつのエスカーブ
技術の進歩が最初はゆるやか、やがて急激、最後は限界に近づき停滞するS字の推移。
⚠ 普及率・単位コスト・故障率の曲線ではない。縦軸は技術の進歩(性能)。
ラーニングカーブ learning curve(学習曲線)
作業を繰り返すほど習熟して、作業時間や効率が改善していく様子を表す曲線。
⚠ Sカーブは技術の進化、ラーニングカーブは人や組織の習熟。
経験曲線 けいけんきょくせん
累積生産量が増えるほど製品1個あたりのコストが下がる関係を表す曲線。
⚠ 「累積生産量と単位コスト」と書かれていたら経験曲線。Sカーブではない。
バスタブ曲線 bathtub curve
機器の故障率が初期は高く、その後低く安定し、末期に再び上がる浴槽型の曲線。
⚠ 故障率の話。技術の進化とは無関係。
イノベーター理論 いのべーたーりろん
新製品を受け入れる消費者を、採用の早い順に5つの層に分けて普及過程を説明する理論。
⚠ 「普及率」「市場への浸透」は普及の話で、Sカーブ(技術の進歩)ではない。
イノベーションのジレンマ innovation dilemma
既存製品で優位な企業が、その優位ゆえに新技術への対応が遅れて優位を失う現象。
⚠ キャズム(普及初期と中期の間の需要の落ち込み)や死の谷(製品化までの困難)と区別。
破壊的イノベーション はかいてきイノベーション
最初は性能が低く見えるが、安さや手軽さで市場を作り替え、既存製品を置き換える革新。
⚠ 持続的イノベーションは既存製品の性能を改良し続けるもの。
キャズム chasm(深い溝)
新製品が初期の採用者から多数派へ広がる間にある、需要の大きな落ち込み。
⚠ イノベーションのジレンマとは別物。「普及の初期と中期の間」ならキャズム。
死の谷 しのたに
研究開発の成果を製品化・事業化するまでの間にある、資金や体制の困難。
⚠ 研究→開発の壁が魔の川、開発→事業化が死の谷、事業化→市場で生き残るまでがダーウィンの海。
デファクトスタンダード de facto standard(事実上の標準)
公的な機関が決めたのではなく、市場競争の結果として広く使われ標準になった規格。
⚠ イノベーションの分類の問題で、ひっかけの選択肢として混ざる。
MOT Management of Technology(技術経営)
技術を核とするビジネスを戦略的にマネジメントし、技術を事業の利益につなげる考え方。
⚠ 「技術を核とするビジネスを戦略的にマネジメント」はMOTの説明で、プロダクトイノベーションではない。

このレッスンの過去問

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