新しい技術が市場と社会に広がるしくみ
新製品を買う人の5分類(特にアーリーアダプタ)、TLOの役割、ハッカソンの意味、WTO加盟国の政府向け製品で採るべき国際規格(ISO/IEC)を見分けて、過去問を自力で解けるようにする。
技術は作っただけでは広がらず、「誰が最初に買うか」「大学の研究をどう企業に渡すか」「どの規格に合わせるか」で普及が決まる。試験ではこの3点が、似た説明の選択肢を並べる用語の見分け問題として出る。
このレッスンで稽古する(用語チェック・過去問)結論:普及は「人」「橋渡し」「ルール」の3つで決まる
新しい技術が社会に広がるには3つの要素がある。買う人の順番(イノベータ理論)、研究を製品につなぐ橋渡し(TLO・ハッカソン)、共通のルール(国際規格)だ。
試験に出るのは用語の定義の見分けだけで、計算はない。各用語について「何をする層・組織か」を一言で言えれば解ける。
イノベータ理論:買う人は5つの層に分かれる
イノベータ理論とは、新製品を買う時期で消費者を5つの層に分ける考え方だ。新しいスマホが出たときの行列を思い浮かべてほしい。発売日に並ぶ人、レビューを見てすぐ買う人、周りが持ち始めてから買う人、最後まで買わない人がいる。
| 層 | 割合の目安 | 特徴(試験で使われる言い回し) |
|---|---|---|
| イノベータ | 約2.5% | リスクを恐れず最も早く飛びつく冒険家 |
| アーリーアダプタ | 約13.5% | 早期に採用し、流行に敏感で自ら情報収集して判断する。周りへの影響力が大きい(オピニオンリーダ) |
| アーリーマジョリティ | 約34% | 慎重だが、平均より少し早く採用する |
| レイトマジョリティ | 約34% | 懐疑的で、周囲の大多数が使い始めてから採用する |
| ラガード | 約16% | 最も保守的。流行が一般化してから採用するか、採用しないこともある |
見分けのコツは2つある。「最も早い・リスクを恐れない」ならイノベータ、「影響力・情報収集」ならアーリーアダプタだ。
補足として、アーリーアダプタとアーリーマジョリティの間には普及が止まりやすい大きな溝がある。これをキャズムと呼ぶ。
TLO:大学の研究成果を企業に渡す仲介役
TLO(技術移転機関)は、大学の研究成果を特許にし、それを企業にライセンス(使用許諾)して技術移転を進める組織だ。たとえるなら、大学の発明を企業に売り込む不動産仲介業者のような存在である。TLO法(大学等技術移転促進法)に基づいて承認・認定される。
| 選択肢に出る説明 | TLOか? | 理由 |
|---|---|---|
| 大学の研究成果を特許化し、企業への技術移転を支援する(産学の仲介) | ○ | これがTLOの定義 |
| 企業からの委託研究・共同研究の窓口、問合せの受付 | × | 大学の産学連携窓口の仕事 |
| 研究者に補助金を支給する | × | 研究助成機関の仕事 |
| 企業の休眠特許を発掘して他社にライセンスする | × | 対象は大学の成果であって企業の特許ではない |
| TLO自ら研究開発して特許を取る | × | TLOは研究しない。研究するのは大学 |
| M&A(合併・買収)を支援する | × | 技術移転とは無関係 |
「大学 → 特許化 → 企業へ移転」の3語がそろった選択肢を選べばよい。免除試験で7回出ている頻出テーマなので、確実に取りたい。
ハッカソン:短期集中で作るイベント
ハッカソンはハック(hack)とマラソン(marathon)を合わせた造語だ。エンジニアやデザイナが集まり、短期間(1〜数日)で新しいサービスや製品を開発するイベントを指す。「ハック」はここでは「手早く作る」という意味で、不正侵入のことではない。
国際規格:政府向け製品はISO/IECに合わせる
標準化とは、製品の形式や手順の共通ルールを決めることだ。WTO(世界貿易機関)のTBT協定(貿易の技術的障害に関する協定)と政府調達協定は、加盟国が国内規格で他国製品を締め出さないように、国際規格を基準にすることを求めている。そのため、加盟国の政府機関向けの製品ではISOやIECの規格を優先する。
| 規格・団体 | 種類 | 主な範囲 |
|---|---|---|
| ISO(国際標準化機構) | 国際規格 | 電気以外の幅広い分野(品質管理、情報セキュリティなど) |
| IEC(国際電気標準会議) | 国際規格 | 電気・電子技術 |
| ITU(国際電気通信連合) | 国際規格 | 電気通信 |
| IEEE(米国電気電子学会) | 学会の規格(国際規格ではない) | LAN(例: IEEE 802.11 の無線LAN)など |
| ANSI(米国国家規格協会) | 米国の国内規格 | 米国内 |
| JIS(日本産業規格) | 日本の国内規格 | 日本国内 |
解き方は単純で、選択肢からISOかIECを探す。過去問では、ISOがある回は正解がISO、ISOがない回は正解がIECだった。IEEEは世界中で使われているので国際規格に見えるが、学会の規格なので不正解になる。
要点(試験直前に読む)
- 5分類は早い順にイノベータ→アーリーアダプタ→アーリーマジョリティ→レイトマジョリティ→ラガード。
- アーリーアダプタの目印は「早期に採用・自ら情報収集・周囲への影響力が大きい」。
- TLOは「大学の研究成果を特許化して企業へ技術移転する」仲介役。
- ハッカソンは、エンジニアやデザイナが短期間で集中して開発するイベント。
- WTO加盟国の政府向け製品ではISO/IEC(国際規格)を優先する。ANSI・JISは国内規格、IEEEは学会の規格。
ひっかけ
- 「最も早い段階でリスクを恐れず」はイノベータ。アーリーアダプタは「影響力・情報収集」で見分ける。
- 「大多数が採用してから」はレイトマジョリティ、「不採用を貫くこともある・最も保守的」はラガード。
- TLOの誤答には共同研究の窓口、補助金、企業の休眠特許、自ら研究開発、M&Aが出る。「大学の成果」と「特許化・移転」がそろった選択肢を選ぶ。
- 「ハック」の語感につられてセキュリティ関連の選択肢を選ばない。正解は短期集中の開発イベント。
- IEEEは国際的に使われていても学会の規格。選択肢にISOが無ければIECが正解になる。
用語(15)
新製品を購入する時期の早い順に、消費者を5つの層に分けて普及の過程を説明する理論。
リスクを恐れず、新製品を最も早い段階で受け入れる層(約2.5%)。
⚠ アーリーアダプタとの違い: イノベータは「最も早い・冒険的」。「影響力・情報収集」が書かれていればアーリーアダプタ。
新製品を早期に採用し、自分で情報を集めて判断する層。周りの消費者への影響力が大きい(約13.5%)。
⚠ イノベータは「最も早い」。アーリーアダプタは「早い+周囲に影響を与えるオピニオンリーダ」。
慎重だが、平均より少し早く新製品を採用する多数派の層(約34%)。
⚠ レイトマジョリティは「懐疑的で、大多数が採用してから」なので、それより遅い。
新製品に懐疑的で、周囲の大多数が使い始めてから採用する層(約34%)。
⚠ ラガードは「最も保守的で、採用しないこともある」層なので、それとは別。
最も保守的な層で、流行が一般化してから採用するか、最後まで採用しない(約16%)。
⚠ レイトマジョリティは最終的には採用する。ラガードは「不採用を貫く」こともある。
アーリーアダプタとアーリーマジョリティの間にあり、普及が止まりやすい大きな溝。
大学の研究成果を特許にし、企業へのライセンスによって技術移転を進める仲介組織。
⚠ 共同研究の受付窓口、補助金の支給、企業の休眠特許の活用、自ら研究開発することはTLOの役割ではない。
大学や研究機関で生まれた技術を、企業が製品化に使えるように受け渡すこと。
エンジニアやデザイナが集まり、短期間で新しいサービスや製品を開発するイベント。
⚠ 「ハック」という語からセキュリティ診断や侵入テストを連想させる選択肢は誤り。
電気以外の幅広い分野について国際規格を定める機関。
⚠ 電気・電子分野の国際規格はIEC。どちらも国際規格なので、WTO関連の問題ではどちらも正解になりうる。
電気・電子技術の分野で国際規格を定める機関。
⚠ ISOは電気以外の分野を担当する。
電気・電子分野の学会で、LANなどの規格を定めている。
⚠ 世界中で使われていても学会の規格であり、ISO/IECのような国際規格ではない。
それぞれ米国と日本の国内規格。
⚠ 国内規格なので、WTO加盟国の政府調達で優先される国際規格には当たらない。
規格が不当な貿易障壁にならないよう、WTO加盟国に国際規格を基準にすることを求める協定。
⚠ 政府調達協定は、政府機関が物を買うときの国際ルール。どちらも「国際規格を優先」という結論は同じ。
このレッスンの過去問
- イノベータ理論の採用者分類令和5年度 基本情報技術者試験 科目A 公開問題 問18
- TLO(技術移転機関)の役割基本情報技術者試験 科目A免除 修了試験 20230122 実施分 問69
- ハッカソンの定義基本情報技術者試験 科目A免除 修了試験 20260614 実施分 問52
- 国際規格と標準化団体(ISO・WTO/TBT協定)平成21年度 秋期 基本情報技術者試験 午前 問71