IoT・CPS と組込み機器のしくみ
シングルチップマイコンの特徴と、内蔵メモリにフラッシュメモリを使う理由を選べるようになる。IoT と CPS の定義を使って、実用例として正しい選択肢と正しくない選択肢を見分けられるようになる。
家電・車・電力メータなど、身の回りの機械にはほぼすべて小さなコンピュータが入っています。そのしくみと、それをネットにつなぐ IoT・CPS は、DX の話題として毎年のように選択肢に出てきます。
このレッスンで稽古する(用語チェック・過去問)結論:3つの知識の判定ポイント
- シングルチップマイコン:CPU・メモリ(ROM と RAM)・入出力機能を 1チップにまとめた、組込み機器向けの小さなコンピュータ。
- 内蔵メモリがフラッシュメモリである理由:出荷後もソフトウェアを書き換えられるから。
- IoT:モノがネットにつながってデータをやり取りするしくみ。つながらない機器は IoT ではない。
- CPS:現実のデータを仮想世界に取り込んで分析・シミュレーションし、結果を現実に生かすしくみ。
シングルチップマイコン=「全部入りの小さな頭脳」
組込みシステムとは、炊飯器やエアコンのように、特定の機能のために機器の中に組み込まれたコンピュータのことです。その頭脳として使われるのがシングルチップマイコン(ワンチップマイコンとも呼ぶ)です。CPU・ROM・RAM・入出力機能が1つのチップに収まっているので、小さく、安く、消費電力も少なくできます。
たとえるなら、PC は「台所・冷蔵庫・食器棚を別々にそろえた広い家」です。シングルチップマイコンは「全部が1部屋に収まったワンルーム」です。狭いけれど、決まった仕事をこなすには十分です。
| 比較 | シングルチップマイコン | PC のメイン CPU |
|---|---|---|
| 中身 | CPU+ROM+RAM+入出力機能を1チップに内蔵 | CPU が中心。メモリや入出力は別の部品 |
| 向いている用途 | 家電・車載機器などの組込み機器 | 汎用で、高速・大規模な処理 |
| 性能 | 決まった処理に必要な分だけ | 高性能 |
試験では「入出力機能が内蔵されている」が正解の決め手です。「RAM は内蔵されていない」「PC のメイン CPU に向く」「大規模システムに向く」はいずれも誤りです。
なぜ内蔵メモリにフラッシュメモリを使うのか
プログラムを置く ROM には何種類かあり、試験ではマスク ROM と比べて問われます。マスク ROM は製造時に中身を焼き付けるため、あとから書き換えられません。フラッシュメモリは電気的に書き換えられるので、マイコンを出荷した後でもソフトウェアの不具合修正や機能追加ができます。
| メモリ | 電源を切ると | 書換え | ひとこと |
|---|---|---|---|
| マスク ROM | 消えない(不揮発性) | できない(製造時に固定) | 大量生産品向け。中身は変えられない |
| フラッシュメモリ | 消えない(不揮発性) | できる(電気的に) | 出荷後のアップデートが可能 |
| RAM | 消える(揮発性) | できる | 作業中のデータを一時的に置く場所 |
フラッシュメモリを採用しても、コードサイズが小さくなったり、処理性能や信頼性が上がったりするわけではありません。この問題で問われる採用理由は「出荷後も書き換えられること」だけ、と覚えておけば迷いません。
IoT:「ネットにつながっているか」で判定する
IoT(Internet of Things)は、機械や家電などのモノにセンサ(温度・位置・振動などを測る部品)と通信機能を持たせ、インターネット経由でデータをやり取りするしくみです。判定基準は「ネットワークにつながって情報を送受信しているか」の1点です。
| 例 | IoT か | 理由 |
|---|---|---|
| 大型機械の稼働状況や故障箇所を、製造元がネット経由でリアルタイムに把握する | ○ | センサ+通信で情報を送る |
| 電力使用量を電力会社へ自動送信する電力メータ(スマートメータ) | ○ | 検針員の代わりに通信で送る |
| 車同士や車と路側機が通信し、渋滞情報を配信する | ○ | 位置情報をやり取りする |
| セキュリティを理由にサーバへ接続せず、単独で作業するコンピュータ | × | ネットにつながっていない |
「適切でないものはどれか」の形で出たら、つながっていない機器を探せば正解できます。
CPS:現実→仮想→現実のループ
CPS(サイバーフィジカルシステム)は、現実世界(フィジカル)のデータをセンサなどで集めます。そのデータで仮想世界(サイバー)に現実を再現し、分析やシミュレーションを行い、結果を現実の改善に返します。仮想世界に現実をそっくり再現したものをデジタルツインと呼びます。デジタルツインは CPS を実現する手段の一つで、CPS そのものとは区別してください。
flowchart LR
A["現実世界(都市・工場など)"] -->|"センサでデータ収集"| B["仮想世界で再現・分析・シミュレーション"]
B -->|"結果を現実の改善に生かす"| A
試験では、CPS と別の概念の事例が選択肢に並びます。
| 選択肢の内容 | 概念 | CPS か |
|---|---|---|
| 都市のデータで仮想世界を作り、災害や時間軸を操作して、現実では試せないシミュレーションを行う | CPS(仮想世界側の再現がデジタルツイン) | ○ |
| 標準的なシステム資源を用意しておき、ソフトウェアで規模や構成を設定する | 仮想化・クラウド | × |
| 機器を貸し出し、センサで検知した使用状況に応じて料金を取る | IoT を使ったサービス化(モノ売りからコト売りへ) | × |
| 処理とデータはサーバに持たせ、端末には最小限の機能だけを持たせる | シンクライアント(デスクトップ仮想化) | × |
見分け方は「現実のデータで仮想世界を作り、シミュレーションしているか」です。
試験での問われ方
- マイコン:「最も適切な特徴」として入出力機能の内蔵を選ばせます。PC 向け・大規模向け・RAM 非内蔵は誤りです。
- フラッシュメモリ:採用理由として出荷後の書換えを選ばせます。性能・サイズ・信頼性はひっかけです。
- IoT:「適切でないもの」としてネットにつながらない単独のコンピュータを選ばせます。
- CPS:クラウド・サービス化・シンクライアントの事例と並べ、仮想世界でシミュレーションする事例を選ばせます。
要点(試験直前に読む)
- シングルチップマイコン=CPU+ROM+RAM+入出力機能を1チップに収めたもの。用途は組込み機器で、PC や大規模システム向けではない。
- マイコンにフラッシュメモリを使う理由は「出荷後もソフトを書き換えられる」こと。マスク ROM は書換え不可。
- IoT の判定基準は「ネットにつながってデータをやり取りしているか」。単独で動く機器は IoT ではない。
- CPS=現実のデータ→仮想世界で分析・シミュレーション→現実に生かす。仮想世界側の再現がデジタルツイン。
ひっかけ
- 「RAM は内蔵されていない」「PC のメイン CPU に適する」→ 誤り。シングルチップマイコンは RAM も入出力機能も内蔵し、組込み機器向け。
- フラッシュメモリの採用理由に「処理性能が向上」「コードサイズが小さくなる」「マスク ROM より信頼性が高い」→ どれも誤り。正解は「出荷後も書換え可能」。
- IoT の「適切でないもの」は、セキュリティなどを理由にサーバに接続しない単独のコンピュータ。もっともらしい理由が付いていても、つながらなければ IoT ではない。
- CPS の選択肢にはクラウド(資源の仮想化)、センサで使用量を測って課金するサービス化、シンクライアントが並ぶ。「現実のデータで仮想世界を作り、シミュレーションする」ものだけが CPS。
用語(14)
家電や車などの機器に組み込まれ、特定の機能だけを担うコンピュータシステム。
⚠ PC のような汎用コンピュータとは違い、用途が決まっている。
CPU・ROM・RAM・入出力機能を1つのチップに集積した、組込み機器向けの小型コンピュータ。
⚠ PC のメイン CPU は高性能・大規模向けで、メモリや入出力は別部品。RAM も内蔵している点に注意。
センサやボタン、モータなど外部の機器と信号をやり取りする機能。
⚠ シングルチップマイコンには内蔵されている。ここが正解の決め手になる。
電源を切っても内容が消えない、主にプログラムを格納するメモリ。
⚠ RAM は電源を切ると内容が消える作業用メモリ。
読み書きでき、電源を切ると内容が消える(揮発性の)作業用メモリ。
⚠ ROM は不揮発。シングルチップマイコンは RAM も内蔵している。
製造時に内容を焼き付けるため、あとから書き換えられない ROM。
⚠ フラッシュメモリは電気的に書き換えられる。
電源を切っても内容が消えず、電気的に書き換えられるメモリ。
⚠ マスク ROM は書換え不可。マイコンへの採用理由は「出荷後もソフトを書き換えられる」で、性能や信頼性の向上ではない。
電源を切ってもデータが消えない性質。
⚠ 揮発性は電源を切るとデータが消える性質(RAM)。
モノにセンサと通信機能を持たせ、インターネット経由でデータをやり取りするしくみ。
⚠ ネットにつながらず単独で動くコンピュータは IoT ではない。
温度・位置・振動などの物理的な状態を測って信号に変える部品。
電力使用量を測り、通信で電力会社へ自動送信する電力メータ。
⚠ IoT の代表例。
現実世界のデータを仮想世界に取り込んで分析・シミュレーションし、結果を現実に生かすしくみ。
⚠ クラウド(資源の仮想化)、シンクライアント、センサ課金のサービス化とは別物。デジタルツインは CPS の構成要素で、同じ概念ではない。
現実の都市や設備を、データをもとに仮想空間にそっくり再現したもの。
⚠ CPS は、デジタルツインで分析した結果を現実に返すところまで含む仕組み全体。
処理とデータをサーバに持たせ、端末にはネット接続と最小限の入出力機能だけを持たせる方式。
⚠ CPS の選択肢に混ぜられるひっかけ。
このレッスンの過去問
- シングルチップマイコンの特徴平成24年度 春期 基本情報技術者試験 午前 問70
- IoTの実用例の判別平成30年度 春期 基本情報技術者試験 午前 問71
- CPS(サイバーフィジカルシステム)の活用事例基本情報技術者試験 科目A免除 修了試験 20220612 実施分 問70