作業範囲・体制・リスク対応を計画する
プロジェクトの範囲(スコープ)、WBS、ステークホルダ、責任分担(RACI)、コミュニケーションの種類、リスク対応の4分類を見分けられるようにする。打合せ回数のような組合せ計算(nC2)を、迷わず解けるようにする。
計画の段階で「何をやるか」「誰が責任を持つか」「何かあったらどうするか」を決めておかないと、プロジェクトは必ず迷走する。科目Aでは、ここの用語の取り違えと組合せの計算が毎回のように出る。
このレッスンで稽古する(用語チェック・過去問)結論:計画で決める4つのこと
プロジェクトの計画では、次の4つを決める。
- 範囲:何を作り、何を作らないか(スコープマネジメント・WBS)
- 体制:誰が関わり、誰が責任を持つか(ステークホルダ・RACIチャート)
- 連絡:情報をどう届けるか(プッシュ型・プル型)
- リスク:起きたら困ることにどう備えるか(回避・低減・移転・保有、コンティンジェンシ計画)
出題が多いのは WBS と リスク対応の分類 の2つ。この2つを厚めに解説する。
スコープマネジメント:目的と範囲をはっきりさせる
スコープとは、プロジェクトが作る成果物と、そのための作業の範囲のこと。スコープマネジメントは、プロジェクトの目標・成果物・要求事項・境界(どこまでやるか)を明確にし、その範囲を管理し続ける活動を指す。要件定義で「今回のスコープ外」と線を引くのと同じ考え方。
JIS Q 21500(プロジェクトマネジメントの手引)のスコープ群には、範囲を定める「スコープの定義」に加え、変更を管理する「スコープのコントロール」も含まれる。スコープのコントロールの目的は、範囲の変更によって生じる影響のうち、機会となるものを最大化し、脅威となるものを最小化すること。
試験での問われ方:「機会を最大化・脅威を最小化」という言い回しに引っ張られて、リスク群を選ばせる。ただし文に「目標や成果物などの変更によって生じる」とあれば、それはスコープの変更管理の話。コスト(費用)・タイム(日程)・リスクのマネジメントと混同させる選択肢も定番。
WBS:作業を階層的に分解する(最頻出)
WBS(Work Breakdown Structure)は、プロジェクトの成果物と作業を階層的に細かく分解し、管理できる大きさにしたもの。最下層の単位をワークパッケージと呼び、ここで担当・工数・費用を見積もれるようになる。
たとえば引っ越しなら「引っ越し」→「荷造り」→「キッチン」→「食器の箱詰め」と分解していく。この木の図そのものが WBS で、「食器の箱詰め」がワークパッケージにあたる。
flowchart TD
A["販売管理システム開発"] --> B["要件定義"]
A --> C["設計"]
A --> D["テスト"]
C --> C1["画面設計(ワークパッケージ)"]
C --> C2["DB設計(ワークパッケージ)"]
試験では、WBS とほかの道具・プロセスの区別が問われる。
| 道具・プロセス | 何をするか | WBSとの違い |
|---|---|---|
| WBS | 作業を階層的に分解し、ワークパッケージまで細分化する | (これが正解の定番) |
| PERT(アローダイアグラム) | 作業の順序関係を矢印で表し、クリティカルパス(全体の日程を決める最長経路)を見つける | 順序と日程の話 |
| ガントチャート | 作業の日程を**横棒(バー)**で表し、開始・終了と進捗を見せる | 見た目が横棒 |
| アクティビティ定義 | ワークパッケージを完了するために必要な具体的な作業を洗い出す | WBS の下で行う次の工程 |
| アクティビティの順序付け | 作業を並べてスケジュールを組む | 日程計画の工程 |
| コスト見積り | 工数を算定して費用を見積もる | お金の工程 |
| スコープ記述書 | 成果物・除外事項・制約条件を文章で書く | 範囲を文章にしたもの(WBS は分解した構造) |
試験での問われ方:「バー」「順序」「クリティカルパス」「費用の最適化」「工数・コスト」という語が入った選択肢はすべて WBS ではない。「階層的」「細分化」「要素分解」が入った選択肢を選ぶ。
ステークホルダ:利害関係者は社外や不利益を受ける人も含む
ステークホルダとは、プロジェクトに影響を与える、または成果から影響を受ける利害関係者全般のこと。組織の内部か外部かは問わない。直接参加しているかどうかも、個人か団体かも問わない。成果で利益を得る人だけでなく、不利益を受ける人も含む。
試験での問われ方:「内部に限る」「直接参加に限る」「個人として特定できる必要がある」のように範囲を狭める限定をつけた選択肢は誤り。
RACIチャート:責任の分担表
RACIチャートは、作業(アクティビティ)ごとに、各メンバの役割を4文字で示した表。
| 記号 | 意味 | 人数のルール(よく出る条件) |
|---|---|---|
| R(Responsible) | 実行責任:実際に作業をする | 1人以上 |
| A(Accountable) | 説明責任:最終的な承認と結果に責任を持つ | ちょうど1人 |
| C(Consulted) | 相談を受ける | 何人でも |
| I(Informed) | 結果の報告を受ける | 何人でも |
解くときは、まず各行の R と A の人数を数え、条件に合わない行を探す。次に、その行を直す変更で、ほかの行を壊さないものを選ぶ(例題で手順を示す)。
プッシュ型・プル型コミュニケーション
コミュニケーションの手段は、情報が「どちらから動くか」で3種類に分かれる。
| 種類 | 情報の流れ | 例 |
|---|---|---|
| プッシュ型 | 送り手が特定の相手に送り届ける | 電子メール、FAX、手紙、ボイスメール |
| プル型 | 受け手が必要なときに自分で取りに行く | イントラネットサイト、社内ポータル、ナレッジベース、eラーニング |
| インタラクティブ型 | 複数人がリアルタイムに双方向でやり取りする | 会議、テレビ会議、電話 |
試験での問われ方:メールや FAX(プッシュ型)を選ばせるのが定番のひっかけ。テレビ会議はプッシュ型でもプル型でもなく、インタラクティブ型である。
組合せ nC2:打合せ・顔合わせの回数
n 人が1対1で全員と1回ずつ会うときの回数は、n 人から2人を選ぶ組合せになる。
nC2 = n ×(n − 1)÷ 2
A さんと B さんの打合せは、B さんと A さんの打合せと同じ1回なので、2で割る。割り忘れると順列(並び順まで区別した数)になり、答えが2倍になる。
- 16人の総当たり:16 × 15 ÷ 2 = 120回。1回0.5時間なら 120 × 0.5 = 60時間(120 を時間として答えるのはひっかけ)
- 「何回増えるか」と聞かれたら、増員後 − 増員前を計算する(例題1)
同じ組合せの考え方は、格子状の道の最短経路を数える問題にも使える。道の途中に通過点がある場合は、区間ごとに数えて掛け算する(例題3)。
リスク対応の4分類(最頻出)
リスク対応は回避・低減・移転・保有の4つに分かれる。PMBOK(米国 PMI のプロジェクトマネジメント知識体系)では呼び名が変わるので、対応表で覚える。
| 一般的な呼び名 | PMBOK(脅威) | 何をするか | 例 |
|---|---|---|---|
| 回避 | 回避 | リスクの原因そのものをなくす。活動をやめる | 危ないシステムを廃止して作り直す |
| 低減 | 軽減 | 発生する確率か、起きたときの被害を小さくする | 二重化、被害を抑える設備への投資 |
| 移転 | 転嫁 | 損失の負担を他者に移す・分け合う | 保険加入、外部委託 |
| 保有 | 受容 | 対策を取らず受け入れる(備えとして予備費を確保することもある) | 影響が小さいので様子を見る |
自動車保険にたとえると、事故の損害を保険会社に肩代わりしてもらうのが「移転」。運転をやめるのが「回避」、安全運転支援装置をつけるのが「低減」、少額のこすり傷なら自腹で済ませるのが「保有」にあたる。
PMBOK には、良いリスク(好機)への戦略も別にある。
| 対象 | 戦略 |
|---|---|
| 脅威(悪いリスク) | 回避・転嫁・軽減・受容 |
| 好機(良いリスク) | 活用(確実に起こす)・強化(確率や効果を上げる)・共有(第三者と組む)・受容 |
リスクコントロールとリスクファイナンシングの区別も問われる。
| 区分 | 考え方 | 該当する対応 |
|---|---|---|
| リスクコントロール | リスクの発生や被害そのものを抑える | 回避・低減(設備や新システムへの投資を含む) |
| リスクファイナンシング | 損失が出たときに資金面で備える | 保険による移転、準備金の積立てによる保有など |
コンティンジェンシ計画
コンティンジェンシ計画は、「この条件が起きたら、この対応をとる」とあらかじめ決めておき、その条件になったときだけ実行する対応策の計画。資源・品質・コミュニケーションの計画と取り違えさせる選択肢が出る。
10人のチームに2人増員すると、1対1の打合せは何回増えるか
ア 12
イ 21
ウ 22
エ 42
解き方と答えを見る
- 条件は「全員が他の全員と1回ずつ・1対1」なので、回数は nC2 で求める
- 増員前(10人):10C2 = 10 × 9 ÷ 2 = 90 ÷ 2 = 45回
- 増員後(12人):12C2 = 12 × 11 ÷ 2 = 132 ÷ 2 = 66回
- 増えた回数 = 66 − 45 = 21回
- 検算:新しい2人がそれぞれ既存の10人と会うと 2 × 10 = 20回、新しい2人どうしが会うのが1回で、20 + 1 = 21回。一致する
答え:イ:21回(12 や 22 は単純な掛け算からくるひっかけ。42 は2で割り忘れ)
RACIチャートを条件(R は1人以上・A は1人)に合わせて直す
| アクティビティ | 菊池 | 佐藤 | 鈴木 | 田中 | 山下 |
|---|---|---|---|---|---|
| ① | R | C | A | C | C |
| ② | R | R | I | A | C |
| ③ | R | I | A | I | I |
| ④ | R | A | C | A | I |
ア アクティビティ ① の菊池の責任を I に変更
イ アクティビティ ② の佐藤の責任を A に変更
ウ アクティビティ ③ の鈴木の責任を C に変更
エ アクティビティ ④ の田中の責任を R に変更
出典:基本情報技術者試験 科目A免除 修了試験 20250727 実施分 問41
解き方と答えを見る
- 各行の R と A を数える。①:R=菊池、A=鈴木で条件を満たす
- ②:R=菊池・佐藤、A=田中で条件を満たす
- ③:R=菊池、A=鈴木で条件を満たす
- ④:R=菊池、A=**佐藤・田中の2人**。A が1人の条件に違反しているので、直すべきなのは④
- ア(①の菊池を I に):①の R がいなくなり違反。④も直らない
- イ(②の佐藤を A に):②の A が2人になり違反。④も直らない
- ウ(③の鈴木を C に):③の A がいなくなり違反。④も直らない
- エ(④の田中を R に):④は A=佐藤の1人、R=菊池・田中の2人になり、すべての行が条件を満たす
答え:エ:アクティビティ④の田中の責任を R に変更
格子状の道で、P から R を通って Q へ行く最短経路の数
ア 16
イ 24
ウ 32
エ 60
解き方と答えを見る
- P を (0,0) とすると、R = (2,2)、Q = (5,4)
- P→R:右に2回・上に2回、計4回の移動のうち、どの2回を「右」にするかを選ぶ。4C2 = 4 × 3 ÷ 2 = 6通り
- R→Q:右に3回・上に2回、計5回の移動のうち、どの2回を「上」にするかを選ぶ。5C2 = 5 × 4 ÷ 2 = 10通り
- R を必ず通るので、前半と後半を掛け合わせる(積の法則):6 × 10 = 60通り
答え:エ:60通り(6 + 10 = 16 のように足すのはひっかけ)
要点(試験直前に読む)
- WBS は「作業を階層的に細分化」したもので、最下層がワークパッケージ。順序や横棒の日程表は WBS ではない
- 目的・範囲・境界の明確化と、成果物の変更による影響の管理は、どちらもスコープマネジメントの役割
- RACI は R が1人以上、A がちょうど1人。各行の R と A を数えて、違反している行を直す選択肢を選ぶ
- メールはプッシュ型、イントラネットサイトはプル型、テレビ会議はインタラクティブ型
- 総当たりの回数は n ×(n − 1)÷ 2。増えた回数は「増員後 − 増員前」、経由点がある経路の数は区間ごとの掛け算
- 保険はリスクの移転(PMBOK では転嫁)で、リスクファイナンシングに入る。PMBOK の脅威への戦略は回避・転嫁・軽減・受容、好機への戦略は活用・強化・共有・受容
ひっかけ
- WBS の問題では、PERT(順序・クリティカルパス)、ガントチャート(横棒)、コスト見積りの説明が並ぶ。「階層的」「細分化」の語がある選択肢だけを選ぶ
- 「機会を最大化し脅威を最小化する」という文でリスク群を選ばせる。「成果物などの変更によって生じる影響」の話ならスコープ群
- 「資金を投入」と書かれた対策を、ファイナンシングだと思わせる。損失が出たときの資金面の備え(保険による移転など)がファイナンシングで、設備や新システムへの投資は低減・回避(コントロール)
- PMBOK の脅威への戦略を問う問題で、好機用の活用・強化・共有を並べてくる。脅威にも使えるのは受容
- 打合せ回数の計算で2で割り忘れる(順列になる)、増加分を聞かれているのに増員後の総数を答える、0.5時間を掛け忘れる
用語(17)
プロジェクトが作る成果物と、そのために行う作業の範囲。
プロジェクトの目的・成果物・境界を明確にし、範囲の変更を管理し続ける活動。
⚠ リスクマネジメントと混同しやすい。「目標や成果物の変更による影響」の管理はスコープ側(スコープのコントロール)に入る
成果物と作業を階層的に分解し、管理できる大きさまで細分化したもの。
⚠ PERT は作業の順序とクリティカルパス、ガントチャートは横棒の日程表。「階層」「細分化」とあれば WBS
WBS の最下層にある作業の単位で、担当・工数・費用を見積もれる大きさのもの。
⚠ アクティビティは、ワークパッケージを完了するために必要な具体的作業で、ワークパッケージをさらに分解したもの
プロジェクトに影響を与える、または成果から利益や不利益を受ける、組織内外の利害関係者全般。
⚠ 「内部だけ」「直接参加者だけ」「個人だけ」と限定したら誤り
作業ごとに各メンバの役割を R・A・C・I で示す責任分担表。
実際にその作業を行う役割で、1つの作業に1人以上置く。
⚠ A(説明責任)は結果に責任を持つ承認者で、1つの作業にちょうど1人
作業の結果に最終的な責任を持ち、承認する役割で、1つの作業に1人だけ置く。
⚠ R(実行責任)は手を動かす人で、複数人いてもよい
送り手が特定の相手に情報を送り届ける方式(メール・FAX など)。
⚠ プル型は受け手が取りに行く方式。テレビ会議や電話はインタラクティブ型
受け手が必要なときに自分で情報を取りに行く方式(イントラネットサイト・ポータルなど)。
⚠ 電子メールはプッシュ型。「置いておいて見に来てもらう」ならプル型
n 人から順序を区別せずに2人を選ぶ数で、n ×(n − 1)÷ 2 で求める。
⚠ 順列は並び順も区別するので2で割らない。総当たりの回数は組合せを使う
リスクの原因そのものをなくすため、活動や対象をやめたり変えたりする対応。
⚠ 低減は続けたまま確率や被害を下げる対応。「廃止」「中止」なら回避
リスクが起きる確率か、起きたときの被害を小さくする対応。
⚠ 資金を投入する対策でも、被害を抑える設備への投資なら低減(コントロール)であり、ファイナンシングではない
保険や外部委託によって、損失の負担を第三者へ移したり分け合ったりする対応。
⚠ PMBOK では「転嫁」と呼ぶ。好機の戦略の「共有」とは別物
特別な対策を取らず、リスクを受け入れる対応。
⚠ PMBOK では脅威にも好機にも使える戦略(本試験の選択肢では、受容だけが両方に当てはまる)。活用・強化・共有は好機専用
損失が出たときに資金面で備える対応で、保険による移転や、準備金の積立てによる保有などがある。
⚠ リスクコントロール(回避・低減)は発生や被害そのものを抑える対応。設備や新システムへの投資はこちら
あらかじめ定めた条件が起きたときにだけ実行する対応策を、事前に決めておく計画。
⚠ 資源計画・品質計画・コミュニケーション計画の決定事項と取り違えさせる選択肢が出る
このレッスンの過去問
- スコープマネジメントの定義平成31年度 春期 基本情報技術者試験 午前 問51
- WBSの目的(作業の階層分解)平成30年度 秋期 基本情報技術者試験 午前 問51
- ステークホルダの定義平成27年度 春期 基本情報技術者試験 午前 問52
- RACIチャートによる責任分担の判定基本情報技術者試験 科目A免除 修了試験 20250727 実施分 問41
- プッシュ型・プル型コミュニケーション平成25年度 春期 基本情報技術者試験 午前 問54
- 組合せ(nC2)による打合せ回数計算令和元年度 秋期 基本情報技術者試験 午前 問54
- リスク対応の分類(回避・低減・移転・保有)平成31年度 春期 基本情報技術者試験 午前 問40
- コンティンジェンシ計画の定義基本情報技術者試験 科目A免除 修了試験 20241208 実施分 問41