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システム企画・5/5・13分

情報化投資のコストと採算の計算

ゴール

情報化費用をイニシャルコストとランニングコストに分けられるようになる。そのうえで、開発方法別の総コスト、リース料、採算、投資回収、業務時間の配分を、式を立てて計算できるようになる。

システム企画の計算問題は、四則演算さえ正しい順に組めば確実に取れる得点源です。実務で稟議書や見積もりを読むときにも、同じ考え方を使います。

このレッスンで稽古する(用語チェック・過去問)

結論:この分野は「何を足して、何で割るか」を決めれば解ける

このレッスンで扱う計算は、すべて足し算・掛け算・割り算で解けます。難しいのは計算ではなく、どの費用を入れるか、どれを入れ忘れるかの判断です。

どの問題でも、次の3つを順に確かめます。

  • 費用の種類:一度きりか、毎月・毎年出るか
  • 掛ける数:人数 × 期間 × 単価、金額 × 料率、年額 × 年数
  • 比べる相手:利益と費用、旧と新、方式Aと方式B

イニシャルコストとランニングコスト(最頻出)

イニシャルコストは導入時に一度だけ払う費用、ランニングコストは使い続ける間ずっと払う費用です。車でたとえると、車両の購入代がイニシャルコスト、ガソリン代・保険・定期点検がランニングコストです。

観点 イニシャルコスト(初期費用) ランニングコスト(運用費用)
いつ発生するか 導入・開発の時点で一度 稼働後に継続して発生
例 戦略立案のコンサルティング費用、要件定義をするSEの費用、開発費、ソフトウェアパッケージの購入・導入費、機器の購入費 機器の保守費用、リース料、通信回線費、電気代、運用担当者の人件費、ソフトウェアの保守料
見分ける質問 「導入が終われば、もう払わない?」→はい 「使っている限り、毎月・毎年払う?」→はい

判定のコツ:「保守」「運用」「回線」「リース」「月額」という言葉があればランニングコストです。「立案」「要件定義」「導入」「開発」「購入」があればイニシャルコストです。両方を合計した、システムを持つことの総費用を TCO(総保有コスト)と呼びます。

費用が出るタイミングイニシャル一度だけランニング使っている限りずっと導入時稼働後(毎月・毎年)全部の合計 = TCO(総保有コスト)
イニシャルコストは導入時に一度だけ大きく出て、ランニングコストは稼働後に毎月・毎年くり返し出る。両方を合計したものが TCO になる。

開発方法別の総コスト:人数 × 期間 × 単価を工程ごとに

「人月」は、1人が1か月働く作業量の単位です。人件費は 人数 × 月数 × 1人月当たりの単価 で求めます。

総コスト = 購入費 + 委託費 + Σ(工程ごとの人数 × 工期 × 単価)

工程ごとに単価と工期が違う点が肝心です。表の行(方式)ごとに、全工程を漏れなく足してください。人数が0の工程は0円になるので、そこで計算を飛ばしてかまいません。

リース料:月額の計算と、費用推移のグラフ

リースは、機器を買わずに借りて、毎月決まった料金を払う契約です。月額リース料は 購入価格 × 月額リース料率 で出します(例:300万円 × 2% = 6万円/月・1台)。

グラフ問題では、料金が切り替わる時点で段差(階段)になることを押さえます。リース料も保守料も「固定の月額」なので、期間中のグラフは水平線です。リース契約の期間が終わって再リース(安い料金での継続)に入ると、その時点で垂直に下がり、以後はまた水平になります。曲線や斜めの直線にはなりません。

月額 = 購入価格 × 月額リース料率月額リース料(固定)再リース料(安い)垂直に下がるリース期間再リース曲線や斜めの直線にはならない
リース料は期間中ずっと水平線で、再リースに入る時点で垂直に下がり、以後また水平になる階段の形になる。

採算評価:期間の利益合計 > 取得費用+保守費用の合計

採算がとれるとは、評価期間中に得る利益の合計が、費用の合計を上回ることです。費用には取得費用(購入価格)だけでなく、期間中ずっと払う保守費用も含めます。

保守費用が「取得費用の○%」で与えられたら、取得費用を C と置いて式を立てます。設問が「何万円未満」と聞いているのは、利益と費用がちょうど等しい場合は採算がとれたと見なさない、という意味です。

採算がとれる条件利益の合計保守費用取得費用 C>評価期間の利益費用の合計等しいだけでは採算とは見なさない(未満)
評価期間の利益の合計が、取得費用 C と保守費用を足した費用の合計を上回ったときだけ採算がとれる。

投資回収期間と、最低限必要な年間利益

投資回収期間は、投資した金額を利益で取り戻すまでにかかる年数です。利率を考えない場合、必要な年間利益 = 投資額 ÷ 回収期間 の1式で求まります。

投資額の比や年数の比をそのまま答えにしないことが大事です。必ず1年当たりの額を出してから比べます。

発展形として「投資額 = 回収期間 ×(年平均利益 + 減価償却費)」という式が出ます。減価償却費は帳簿上の費用ですが、実際にはお金が出ていきません。そのため、手元に残るお金(キャッシュフロー)は、利益に減価償却費を足し戻した額になります。

営業支援システムで浮いた時間の配分(最頻出)

総業務時間が一定のまま訪問件数を増やすと、増えた訪問時間の分をどこかから削る必要があります。考え方は家計簿と同じで、総枠 = 各項目の合計 を崩さずに中身を組み替えます。

手順は決まっています。

  1. 現状から1件当たりの時間を出す(訪問時間 ÷ 件数、準備時間 ÷ 件数)
  2. システム導入後の1件当たり時間に直す(短縮分を引く)
  3. 新しい件数を掛けて、訪問時間と準備時間の合計を出す
  4. 総業務時間から引いた残りが、新しい「その他業務時間」
  5. 現状のその他業務時間との差が、削減すべき時間

落とし穴は、件数が増えると準備時間の合計も増えることです。1件当たりの準備時間が短くなっても、件数を掛け直すのを忘れないでください。

総業務時間(一定)現状訪問準備その他削減すべき時間導入後訪問準備その他訪問 = 1件当たりの時間 × 新しい件数準備 = 短縮後の1件当たり × 新しい件数件数が増えると準備時間の合計も増えるその他 = 総業務時間 − 訪問 − 準備
総業務時間は一定のまま、訪問と準備が件数の増加で伸びるので、その他業務時間が押し縮められ、その差が削減すべき時間になる。

試験での問われ方

出題パターン よくある誤答の作り方
ランニングコストはどれか 導入時の一時費用(コンサル・要件定義・パッケージ導入費)を並べる
開発方法の比較 工程ごとに違う単価や、評価工程の人数・期間を見落とさせる
ネットワーク更改の削減額 リース料を足し忘れた値を選択肢に入れる
リース費用のグラフ なだらかに減る曲線や直線を混ぜる
採算がとれる取得費用 保守費用を足さない値(利益の合計そのもの)を入れる
回収に必要な年間利益 投資額の比や年数の比をそのまま倍率として見せる
業務時間の削減 件数を増やしたときの準備時間の増加を無視させる
例題 1

開発方法別の総コストを比べる

電化製品に搭載する部品を試作するとき,全体のコストが最も安くなる開発方法はどれか。ここで,各工程の工期は,作成工程が 6 か月,改造工程が 3 か月,評価工程が 2 か月とする。また,1 人月当たりのコストは,作成工程が 60 万円,改造工程及び評価工程がそれぞれ 100 万円とする。ただし,人月コスト,購入費及び委託費の三つ以外のコストは考慮しない。
表: 開発方法ごとの購入費(万円),委託費(万円),月当たりの人数(人)[作成工程,改造工程,評価工程]
開発方法購入費(万円)委託費(万円)作成工程改造工程評価工程
アサンプルを購入して社内で改造2,0000041
イ社外に一括委託03,500000
ウ社内資産を改造000103
エ社内で新規作成001002

ア サンプルを購入して社内で改造
イ 社外に一括委託
ウ 社内資産を改造
エ 社内で新規作成

出典:平成29年度 秋期 基本情報技術者試験 午前 問66

解き方と答えを見る
  1. 式:総コスト = 購入費 + 委託費 + Σ(人数 × 工期 × 単価)。工期は作成6か月・改造3か月・評価2か月、単価は作成60万円・改造100万円・評価100万円。
  2. ア:購入費 2,000 + 改造 4人 × 3か月 × 100万円 = 1,200 + 評価 1人 × 2か月 × 100万円 = 200 → 2,000 + 1,200 + 200 = 3,400万円
  3. イ:委託費 3,500万円のみ → 3,500万円
  4. ウ:改造 10人 × 3か月 × 100万円 = 3,000 + 評価 3人 × 2か月 × 100万円 = 600 → 3,600万円
  5. エ:作成 10人 × 6か月 × 60万円 = 3,600 + 評価 2人 × 2か月 × 100万円 = 400 → 4,000万円
  6. 3,400 < 3,500 < 3,600 < 4,000 なので、アが最も安い。

答え:ア(サンプルを購入して社内で改造・3,400万円)

例題 2

回線多重化装置の導入による月当たり削減額

東京本社と各支店間を直接接続している通信ネットワークに,回線多重化装置(図の●印)を導入し,通信ネットワークに関する費用削減を図った。このときの月当たりの削減額は何万円か。ここで,新旧ネットワークの各支店間の月額回線費用(万円)は図に示すとおりである。また,回線多重化装置は1台300万円の装置を月額料率2%のリース契約で2台導入することとし,モデムなどの通信装置の金額は無視することにする。
旧ネットワーク: 東京本社から名古屋支店へ26,京都支店へ30,大阪支店へ30(各直接接続,数値は月額回線費用・万円)。 新ネットワーク: 東京本社 ●—37—● 京都支店(両端に回線多重化装置●)。京都支店から名古屋支店へ15,京都支店から大阪支店へ9。

ア 13
イ 16
ウ 19
エ 25

出典:基本情報技術者試験 科目A免除 修了試験 20220612 実施分 問56

解き方と答えを見る
  1. 旧ネットワークの月額:26 + 30 + 30 = 86万円
  2. 新ネットワークの回線費:37 + 15 + 9 = 61万円
  3. リース料:300万円 × 2% = 6万円/台、2台なので 6 × 2 = 12万円
  4. 新ネットワークの合計:61 + 12 = 73万円
  5. 削減額:86 − 73 = 13万円(リース料を忘れると 86 − 61 = 25万円の誤答になる)

答え:ア(13万円)

例題 3

採算がとれる取得費用の上限

導入を検討している機械について採算性の評価を行う。評価には予想される費用と,期待される利益を対比する方法を用いる。採算評価の期間は 10 年間であり,導入によって,毎年 110 万円の利益を得られる。また,保守費用として毎年取得費用の 1%が発生する。この機械の取得費用が何万円未満であれば,採算がとれるか。

ア 1,000
イ 1,100
ウ 1,111
エ 1,222

出典:基本情報技術者試験 科目A免除 修了試験 20110724 実施分 問66

解き方と答えを見る
  1. 10年間の利益合計:110万円 × 10年 = 1,100万円
  2. 取得費用を C 万円と置く。保守費用は毎年 0.01C、10年で 0.01C × 10 = 0.1C
  3. 費用合計:C + 0.1C = 1.1C
  4. 採算条件(利益 > 費用):1,100 > 1.1C
  5. 両辺を 1.1 で割る:C < 1,000

答え:ア(1,000万円未満)

例題 4

回収期間から必要な年間利益を比べる

2 種類の IT 機器 a,b の購入を検討している。それぞれの耐用年数を考慮して投資の回収期間を設定し,この投資で得られる利益の全額を投資額の回収に充てることにした。a,b それぞれにおいて,設定した回収期間で投資額を回収するために最低限必要となる年間利益に関する記述のうち,適切なものはどれか。ここで,年間利益は毎年均等に上げられ,利率は考慮しないものとする。
ab
投資額(万円)90300
回収期間(年)35

ア a と b は同額の年間利益を上げる必要がある。
イ a は b の 2 倍の年間利益を上げる必要がある。
ウ b は a の 1.5 倍の年間利益を上げる必要がある。
エ b は a の 2 倍の年間利益を上げる必要がある。

出典:平成28年度 秋期 基本情報技術者試験 午前 問62

解き方と答えを見る
  1. 式:必要年間利益 = 投資額 ÷ 回収期間
  2. a:90万円 ÷ 3年 = 30万円/年
  3. b:300万円 ÷ 5年 = 60万円/年
  4. 比:60 ÷ 30 = 2 → b は a の2倍

答え:エ(b は a の2倍の年間利益が必要)

例題 5

訪問件数を6件にするために削るその他業務時間

ある営業部員の 1 日の業務活動を分析した結果は,表のとおりである。営業支援システムの導入によって訪問準備時間が 1 件当たり 0.1 時間短縮できる。総業務時間と 1 件当たりの顧客訪問時間を変えずに,1 日の顧客訪問件数を 6 件にするには,“その他業務時間”を何時間削減する必要があるか。
1 日の業務活動の時間分析表 総業務時間 = 8.0。内訳: 顧客訪問時間 = 5.0,社内業務時間 = 3.0(社内業務時間の内訳: 訪問準備時間 = 1.5,その他業務時間 = 1.5)。 別枠: 1 日の顧客訪問件数 = 5 件。
総業務時間顧客訪問時間社内業務時間訪問準備時間その他業務時間1 日の顧客訪問件数
8.05.03.01.51.55 件

ア 0.3
イ 0.5
ウ 0.7
エ 1.0

出典:平成29年度 秋期 基本情報技術者試験 午前 問61

解き方と答えを見る
  1. 現状の1件当たり:訪問 5.0時間 ÷ 5件 = 1.0時間、準備 1.5時間 ÷ 5件 = 0.3時間
  2. 導入後の準備:0.3 − 0.1 = 0.2時間/件
  3. 6件の場合:訪問 1.0 × 6 = 6.0時間、準備 0.2 × 6 = 1.2時間、合計 7.2時間
  4. 新しいその他業務時間:総業務時間 8.0 − 7.2 = 0.8時間
  5. 削減する時間:現状 1.5 − 0.8 = 0.7時間

答え:ウ(0.7時間)

要点(試験直前に読む)

  • 保守費・リース料・回線費=ランニングコスト。コンサル・要件定義・導入・購入=イニシャルコスト。
  • 開発コスト=購入費+委託費+Σ(人数 × 工期 × 単価)。単価は工程ごとに違う。
  • リース料=購入価格 × 料率。固定の月額なのでグラフは水平で、切り替わる時点だけ階段状に下がる。
  • 採算条件は「期間の利益合計 > 取得費用+保守費用の合計」。取得費用を C と置いて解く。
  • 必要年間利益=投資額 ÷ 回収期間。回収額=利益+減価償却費。
  • 業務時間の問題は、1件当たりに直す → 新しい件数を掛ける → 総枠から引く、の順で解く。

ひっかけ

  • 「ソフトウェアパッケージの導入費用」はランニングコストではない。「導入」は一度きりの費用。
  • 削減額の問題で、新しい構成のリース料を足し忘れると、大きい誤答(例:25万円)を選んでしまう。
  • 採算の問題で保守費用を入れ忘れると、利益の合計(1,100)をそのまま答えてしまう。
  • 回収期間の問題で、投資額の比(約3.3倍)や年数の比を倍率と見なさない。必ず年額を出して比べる。
  • 業務時間の問題で、件数が増えると準備時間の合計も増えることを忘れない(0.2 × 6 = 1.2時間)。

用語(14)

イニシャルコスト いにしゃるこすと(initial cost)
システムの企画・開発・導入の時点で一度だけ発生する費用。
⚠ ランニングコストと取り違えやすい。導入が終わればもう払わないなら、イニシャルコスト。
ランニングコスト らんにんぐこすと(running cost)
システムを使い続ける間、継続して発生する費用(保守費・回線費・リース料など)。
⚠ イニシャルコストと取り違えやすい。「保守」「運用」「月額」はこちら。
TCO Total Cost of Ownership(総保有コスト)
導入から廃棄まで、システムを持つことでかかる費用の総額(イニシャル+ランニング)。
⚠ 導入費だけを指す言葉ではない。
人月 にんげつ
1人が1か月働く作業量を1とする単位で、人数 × 月数で求める。
⚠ 人数そのものと混同しない。4人で3か月なら12人月。
委託費 いたくひ
作業を社外に任せるときに支払う費用。
リース りーす(lease)
機器を購入せず、リース会社から長期で借りて月額料金を払う契約。
⚠ 購入(資産になり、イニシャルコスト)とは違い、リース料は毎月のランニングコスト。
リース料率 りーすりょうりつ
購入価格に掛けて月額リース料を出すための率。
⚠ 年率か月率かを確かめる。月額料率2%なら、300万円の機器は月6万円。
再リース さいりーす
当初のリース期間が終わった後、ずっと安い料金で借り続ける契約。
⚠ 料金が切り替わるのは契約の節目なので、グラフは階段状になり、なだらかには減らない。
保守費用 ほしゅひよう
機器やソフトウェアを正常に保つために、継続して支払う費用。
⚠ 取得費用の一部ではなく、毎年かかるランニングコスト。
採算 さいさん
得られる利益が、かかる費用を上回り、投資が割に合うこと。
⚠ 利益と費用が等しい場合は「採算がとれる」に含まないことが多い(「未満」で問われる)。
投資回収期間 とうしかいしゅうきかん(payback period)
投資した金額を、毎年の利益(回収額)で取り戻すまでにかかる年数。
⚠ 必要年間利益は投資額 ÷ 回収期間。投資額の比だけで判断しない。
減価償却費 げんかしょうきゃくひ
設備の購入費を、使用する年数にわたって分割して計上する費用で、実際にはお金が出ていかない。
⚠ 維持費・支払利息・製造原価と違い、回収額を求めるときに利益へ足し戻す項目。
キャッシュフロー きゃっしゅふろー(cash flow)
実際に手元に出入りするお金の流れ。投資の回収額は、利益に減価償却費を足した額になる。
⚠ 会計上の利益とは一致しない。
営業支援システム SFA(Sales Force Automation)
顧客情報や商談の記録を共有し、営業活動を効率化するシステム。
⚠ 顧客との関係全体を管理する CRM と混同しやすい。SFA は営業部門の活動の効率化が中心。

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