事業と製品の位置づけ:PPM・ライフサイクル・成長マトリクス
PPM・プロダクトライフサイクル・アンゾフの成長マトリクスを、説明文や事例を読んで区別できるようになる。あわせて、コストの表からスケールメリットとシナジー効果があるかを計算で判定できるようになる。
この分野でいちばん多いのは、PPM・PLC・アンゾフ・SWOT の説明文を4つ並べて「どれが〇〇か」を選ばせる問題です。軸と目的を1行で言えるようにしておけば、ほぼ確実に取れる得点源になります。
このレッスンで稽古する(用語チェック・過去問)結論:4つのフレームワークは「何と何で見るか」で見分ける
このレッスンで扱うフレームワークは、何を軸に見るかで区別できます。選択肢の説明文に出てくるキーワードを拾うだけで、ほとんどの問題は解けます。
| フレームワーク | 軸・キーワード | 何に使うか |
|---|---|---|
| PPM | 市場成長率 × 市場占有率(シェア) | 複数の事業に経営資源をどう配分するかを決める |
| プロダクトライフサイクル(PLC) | 導入期→成長期→成熟期→衰退期 | 製品の時期に応じた打ち手(改良・品種追加・廃棄)を計画する |
| アンゾフの成長マトリクス | 製品(既存/新規)× 市場(既存/新規) | 事業拡大の方向を4つの戦略から選ぶ |
| SWOT(前回のレッスン) | 強み・弱み・機会・脅威 | 自社の環境分析 |
「シェアと成長率」とあれば PPM、「導入期・成熟期」とあれば PLC、「市場浸透・多角化」とあればアンゾフ、「強み・弱み・機会・脅威」とあれば SWOT です。実際に、この4つの説明文をそのまま並べた問題が本試験と免除試験の両方で出ています。
PPM:4つの象限と「お金の流れ」
**PPM(プロダクトポートフォリオマネジメント)**は、自社の事業を「市場がどれだけ伸びているか(市場成長率)」と「その市場でどれだけ強いか(市場占有率)」の2つの軸で4つのマスに分ける手法です。目的は、どの事業にお金や人を回すか(資源配分)の優先順位を決めることです。過去問では「目標を設定し、資源配分の優先順位を設定するための基礎として、自社の事業のポジションを評価する」が正解になっています。
| 象限 | 市場成長率 | シェア | お金の状態 | 基本方針 |
|---|---|---|---|---|
| 花形 | 高 | 高 | 稼ぐが、競争に勝ち続けるための投資も大きい | シェアを維持して、将来の金のなる木に育てる |
| 金のなる木 | 低 | 高 | 投資が少なくて済み、資金を生む | 稼いだ資金を他の事業に回す |
| 問題児 | 高 | 低 | 伸びる市場で戦うため投資が要るが、稼ぎは少ない | 投資して花形に育てるか、撤退するかを選ぶ |
| 負け犬 | 低 | 低 | 稼ぎも将来性も小さい | 撤退や縮小を検討する |
たとえるなら、家計のやりくりに近い考え方です。安定した給料(金のなる木)で、伸び盛りの子どもの教育費(問題児・花形)をまかないます。続ける価値の薄い出費(負け犬)は削ります。
図の向きに注意:過去問の図では、横軸のシェアが左ほど強くなっています(左が強、右が弱)。グラフの見慣れた向きと逆なので、図だけでマスの位置を判断しないでください。軸のラベルを読んで判断します。
プロダクトライフサイクル:4つの期の特徴
**プロダクトライフサイクル(PLC)**は、製品が市場に出てから消えるまでを、人の一生のように4つの期に分ける考え方です。期ごとに「売上」「競争」「やるべきこと」が変わります。試験では、各期の説明文を入れ替えて出題されます。
| 期 | 売上・需要 | 競争 | やること(試験のキーワード) |
|---|---|---|---|
| 導入期 | 小さい。一部の先進的な客だけが買う | ほとんどない | 認知度を高める・新しい需要を開拓する・特定の客層を説得する |
| 成長期 | 急に伸びる。市場が価値を理解し始める | 新しい会社が参入してくる | 製品ラインとチャネル(販売経路)を広げる・売上は伸びるが投資も必要 |
| 成熟期 | 大きいが、伸びが鈍る | 最も激しい | 差別化・市場の細分化・新品種の追加・コストダウン・品質改良でシェアを守る |
| 衰退期 | 減る | 撤退する会社が出てくる | 追加投資を控えて撤退を検討する・代替市場への進出を考える |
見分けるコツは、「投資して広げる」なら成長期、「競争が激しく、差別化やコストダウン」なら成熟期と覚えることです。成長期と成熟期のひっかけが最も多く出ます。
アンゾフの成長マトリクス:製品×市場の4つの戦略
アンゾフの成長マトリクスは、事業を大きくする方向を「製品は今のものか新しいものか」「市場(売る相手)は今のところか新しいところか」の組み合わせで4つに分けます。
| 既存製品 | 新製品 | |
|---|---|---|
| 既存市場 | 市場浸透:今の客に今の製品をもっと売る(広告を強めて購入回数を増やす) | 製品開発:今の客に新しい製品を出す(新しい機能を付けた製品を投入する) |
| 新市場 | 市場開拓(市場開発とも書く):今の製品を新しい客に売る(海外進出・新しい客層) | 多角化:新しい製品で新しい市場に出る(技術開発・業務提携・M&A など) |
「既存×既存=市場浸透」「新×新=多角化」の2つをまず固めてください。残りの2つは、新しくなったほうの名前が付くと覚えます。市場が新しくなれば「市場開拓」、製品が新しくなれば「製品開発」です。
コモディティ化とカニバリゼーション
コモディティ化とは、技術が成熟して他社製品と性能の差がなくなり、価格以外で差別化できなくなることです。その結果、価格競争になります。PLC の成熟期以降で起こりやすい現象です。
カニバリゼーション(共食い)とは、自社の新製品が自社の既存製品の売上を奪うことです。過去問では、自社雑誌の電子版を出したら自社の紙の雑誌が売れなくなった事例が正解でした。
| 用語 | 誰の売上が減るか | 見分け方 |
|---|---|---|
| カニバリゼーション | 自社の既存製品 | 奪う側も奪われる側も同じ会社 |
| 競合に顧客を奪われる | 自社(奪うのは他社) | 他社が絡めばカニバリゼーションではない |
| コモディティ化 | 業界全体の利益が下がる | キーワードは「差別化が価格以外で困難」 |
スケールメリットとシナジー効果:比べ方
どちらもコストが下がる効果ですが、何と何を比べるかが違います。
| 用語 | 意味 | 判定のしかた |
|---|---|---|
| スケールメリット(規模の経済) | 同じものをたくさん作るほど1個あたりのコストが下がる | 生産量を2倍にしたとき、コストが2倍未満ならあり |
| シナジー効果(相乗効果) | 別々のものを一緒に作ると、別々に作るより安くなる | 同時に作ったときのコストが、別々に作ったコストの合計より小さければあり |
たとえば、カレーとシチューを同じ鍋と同じ材料の下ごしらえで作ると、別々に作るより手間が減ります。これがシナジー効果です。計算の手順は、例題で確認してください。
コスト表からスケールメリットとシナジー効果があるかを判定する
| ケース | ビール(万本) | 清涼飲料水(万本) | コスト(万円) |
|---|---|---|---|
| A | 20 | 0 | 1,500 |
| B | 40 | 0 | 3,300 |
| C | 0 | 10 | 500 |
| D | 0 | 20 | 1,100 |
| E | 20 | 10 | 1,900 |
| F | 40 | 20 | 4,200 |
ア スケールメリットはあるが,シナジー効果はない。
イ スケールメリットはないが,シナジー効果はある。
ウ スケールメリットとシナジー効果がともにある。
エ スケールメリットとシナジー効果がともにない。
解き方と答えを見る
- 表を読む:A=ビール20万本で1,500万円、B=ビール40万本で3,300万円、C=清涼飲料水10万本で500万円、D=清涼飲料水20万本で1,100万円、E=ビール20万本と清涼飲料水10万本を同時に作って1,900万円、F=ビール40万本と清涼飲料水20万本を同時に作って4,200万円。
- スケールメリット(ビール):生産量を20万本から40万本の2倍にすると、比例ならコストは1,500×2=3,000万円になるはず。実際は3,300万円で、3,300>3,000。2倍を超えているので、スケールメリットはない。
- スケールメリット(清涼飲料水):10万本から20万本の2倍で、比例なら500×2=1,000万円。実際は1,100万円で、1,100>1,000。こちらもスケールメリットはない。
- シナジー効果(少ない量):別々に作ると A+C=1,500+500=2,000万円。同時に作るEは1,900万円で、1,900<2,000。同時に作るほうが安いので、シナジー効果がある。
- シナジー効果(多い量):別々に作ると B+D=3,300+1,100=4,400万円。同時に作るFは4,200万円で、4,200<4,400。こちらもシナジー効果がある。
- まとめ:スケールメリットはなく、シナジー効果はある。答えはイ。
答え:イ(スケールメリットはないが、シナジー効果はある)
要点(試験直前に読む)
- PPM=市場成長率×市場占有率。目的は資源配分の優先順位を決めること。金のなる木(成長率は低くシェアは高い)が資金を生み、問題児や花形に回す。
- PLC:導入期=認知度を高める/成長期=拡大するが投資も必要/成熟期=競争が激しく、差別化・コストダウン/衰退期=撤退を検討する。
- アンゾフ:既存×既存=市場浸透、新×新=多角化。新しくなったほうの名前が付く(市場開拓・製品開発)。
- カニバリゼーション=自社の製品同士の共食い。コモディティ化=価格以外で差別化できなくなること。
- スケールメリットは「2倍作ってコストが2倍未満か」、シナジー効果は「同時に作ったコスト<別々に作ったコストの合計か」で判定する。
ひっかけ
- SWOT・アンゾフ・PPM・PLC の説明文が並ぶ問題 → 軸のキーワードで見分ける(シェアと成長率=PPM、浸透と多角化=アンゾフ、導入期と成熟期=PLC、強みと機会=SWOT)。
- PPM の目的に「プロモーション効果の測定」「品質の向上」「季節変動の評価」が混ざる → PPM の目的は資源配分だけ。
- PLC の成長期と成熟期の入れ替え → 「製品ラインやチャネルの拡大・投資が必要」は成長期、「競争の激化・新品種の追加・コストダウン」は成熟期。
- カニバリゼーションの選択肢に「競合他社に客を奪われた」が混ざる → 奪い合う相手が自社の製品でなければ違う。
- スケールメリットの計算でコストが増えたことに惑わされる → コストの金額ではなく、2倍した値と比べる(3,300>1,500×2 なので、スケールメリットはない)。
用語(21)
市場成長率と市場占有率の2つの軸で事業を4つに分け、経営資源の配分の優先順位を決める手法。
⚠ SWOT(強み・弱み・機会・脅威で環境を分析する)、アンゾフ(製品×市場で成長の方向を決める)、PLC(時期ごとの打ち手を決める)。軸に「シェア・成長率」があれば PPM。
その製品の市場全体が、どれだけの速さで大きくなっているかを表す割合。PPM の縦軸。
⚠ 市場占有率(自社の取り分)と取り違えやすい。成長率は市場全体の話。
市場全体の売上のうち、自社が占める割合。PPM の横軸で、事業の強さを表す。
⚠ 過去問の図では、シェアは左ほど高い。向きに注意。
成長率もシェアも高い事業。稼ぐ力は大きいが、シェアを守るための投資も大きい。
⚠ 金のなる木と違い、成長率が高いので投資が多く、手元に資金が残りにくい。
成長率は低いがシェアが高い事業。少ない投資で資金を生み出し、他の事業の資金源になる。
⚠ 花形と取り違えやすい。成長率が低い(追加の投資が要らない)ほうが金のなる木。
成長率は高いがシェアが低い事業。投資して花形に育てるか、撤退するかを判断する。
⚠ 負け犬は成長率も低い。成長率が高く、まだ見込みがあるのが問題児。
成長率もシェアも低い事業。撤退や縮小を検討する。
⚠ 問題児との違いは成長率。
製品が市場に出てから消えるまでを、導入期・成長期・成熟期・衰退期に分けて、時期ごとの戦略を考える枠組み。
⚠ PPM(事業の位置づけ)と混同しない。PLC は時間の流れで見る。
一部の先進的な客にだけ売れる時期で、認知度を高めて新しい需要を開拓する。
⚠ 成長期は売上が急に伸びる。導入期のキーワードは「認知度」「特定の客層への説得」。
市場が製品の価値を理解して売上が急に伸び、製品ラインや販売経路を広げる投資が必要な時期。
⚠ 成熟期と取り違えやすい。「拡大・投資」なら成長期、「差別化・コストダウン・競争の激化」なら成熟期。
需要は大きいが伸びが鈍り、競争が最も激しくなって、差別化・新品種の追加・コストダウンが重要になる時期。
⚠ 成長期との区別は上のとおり。
需要と利益が減り、追加の投資を控えて撤退や代替市場への進出を検討する時期。
製品(既存/新規)と市場(既存/新規)の組み合わせで、事業拡大の方向を市場浸透・製品開発・市場開拓・多角化の4つに分ける枠組み。
⚠ PPM と同じく2×2の表だが、軸が「製品×市場」ならアンゾフ。
既存の市場で既存の製品の売上をさらに伸ばす戦略。広告を強めて購入回数を増やすなど。
⚠ 市場開拓(新しい市場へ出る)と取り違えやすい。「浸透」は今いる市場の話。
既存の製品を新しい市場(海外・新しい客層)に売る戦略。
⚠ 製品開発(今の市場に新しい製品を出す)。新しくなったほうの名前が付く。
既存の市場に新しい製品や機能を足した製品を投入する戦略。
⚠ 多角化は市場も新しくなる。
新しい製品で新しい市場に出る戦略。技術開発・業務提携・M&A などで成長の機会を求める。
⚠ 製品開発(市場は既存のまま)との違いは、市場も新しいかどうか。
技術が成熟して製品の差がなくなり、価格以外で差別化できなくなること。
⚠ 差別化戦略(他社と違う機能で価格競争を避ける)や破壊的イノベーション(後発の製品が先発の市場を衰退させる)と取り違えない。
自社の製品やブランド同士が、売上や利益を奪い合うこと。
⚠ 競合他社に売上を奪われるのは別の話。両方とも同じ会社かどうかで見分ける。
同じものを多く作るほど1個あたりのコストが下がる効果。生産量が2倍のときにコストが2倍未満ならある。
⚠ シナジー効果(別の製品を一緒に作ると安くなる)。コストが増えたかどうかではなく、2倍との比較で判定する。
複数の事業や製品を組み合わせることで、別々に行うより大きな成果や低いコストが得られる効果。
⚠ スケールメリットとの違いは比べる相手。「同時に作ったコスト」と「別々に作ったコストの合計」を比べる。
このレッスンの過去問
- PPMの軸と4象限(花形・問題児・金のなる木・負け犬)平成28年度 春期 基本情報技術者試験 午前 問69
- プロダクトライフサイクルの各期の特徴平成30年度 秋期 基本情報技術者試験 午前 問67
- アンゾフの成長マトリクス平成29年度 春期 基本情報技術者試験 午前 問69
- コモディティ化の定義基本情報技術者試験 科目A免除 修了試験 20250126 実施分 問50
- カニバリゼーションの定義基本情報技術者試験 科目A免除 修了試験 20260614 実施分 問50
- スケールメリットとシナジー効果の判定平成30年度 春期 基本情報技術者試験 午前 問67