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経営戦略マネジメント・4/7・9分

作る仕組みを外に頼る・速める:ファブレス・EMS・M&A

ゴール

ファブレス・ファウンドリ・EMS・M&A・コンカレントエンジニアリングを、選択肢の説明文だけで見分けて選べるようになる。製品開発のスピードアップ手法を2×2の表に分類する問題も解けるようになる。

「製造を誰が受け持つか」「足りない力をどこから持ってくるか」は、企業がスピードとコストを両立させるための基本の打ち手です。試験では似た業態の説明を4つ並べて1つを選ばせる形が定番なので、役割の違いを表で整理すれば確実に得点できます。

このレッスンで稽古する(用語チェック・過去問)

結論:このレッスンの全体像

このレッスンの用語は、**「作る仕組みを外に頼る」「足りない力を外から買う」「開発を速める」**の3グループに分かれます。

グループ 用語 ひとことで
外に頼る(頼む側) ファブレス 工場を持たず、企画・設計・販売に集中する
外に頼る(請ける側) ファウンドリ / EMS 他社から製造を請け負う
外から買う M&A 他社を買収・合併し、技術や人材を一気に手に入れる
開発を速める コンカレントエンジニアリング 設計と生産準備などを同時並行で進める

たとえば出版社は本の企画と編集はしますが、印刷工場は持たず印刷会社に任せます。出版社がファブレスの立場で、印刷会社は製造を請け負う側にあたります。同じ「製造を請け負う側」でも、半導体の製造受託ならファウンドリ、電子機器の製造受託ならEMSと呼びます。

ファブレスとファウンドリ:頼む側と請ける側

ファブレス(fab=工場 + less=無い)は、自社で工場を持たず製造を外部に委託し、企画・設計・開発・販売に経営資源を集中する企業です。工場への巨額の設備投資が要らないぶん、得意分野を強化できます。

ファウンドリは、その逆側で、複数の企業から半導体の生産だけを専門に請け負う企業です。多くの会社の注文をまとめて受けるので、設備を無駄なく動かし低コストで大量生産できます。

業態 設計 製造(工場) 売るブランド
ファブレス 自社 持たない(委託) 自社
ファウンドリ 委託元 自社工場で受託生産 委託元
垂直統合型(IDM) 自社 自社 自社
OEM 委託元(場合により受託側) 受託側 相手先

ファブレスは免除試験で7回出ています。「ファブレスに移行してビジネスモデルを変えた事例」を選ぶ問題では、工場を手放して企画・販売を強化した話が正解です。物流やコールセンターの外部委託は「業務の外部委託(BPO)」で、製造ではないので不正解です。

工場を持たない側と、まとめて請ける側ファブレスA社企画・設計・販売ファブレスB社企画・設計・販売ファブレスC社企画・設計・販売製造を委託ファウンドリ複数社の注文をまとめて受託設備を無駄なく動かし低コスト完成品は委託元のブランドで販売
工場を持たない複数のファブレス企業が、ファウンドリ1社にまとめて製造を委託する関係。

EMS:電子機器の製造を請け負う

EMS(Electronics Manufacturing Service)は、他メーカから委託を受けて電子機器を製造するサービス・業態です。設計まで含めて複数メーカから受託することもあります。半導体のファウンドリと役割は似ていますが、対象が「電子機器」である点で区別します。

用語 何を請け負うか 見分けのキーワード
EMS 電子機器の製造(設計を含むこともある) 受託生産・電子機器・生産設備をもつ
ODM 製品の設計と製造を受託し、相手先ブランドで供給 設計から受託・相手先ブランド
ファブレス 請け負わない(頼む側) 製造設備をもたない・企画設計
3PL 物流業務の一括受託 物流・配送
ASP アプリケーションをネット経由で提供 ソフトの提供
SCM 調達〜販売の供給連鎖全体の管理手法 供給連鎖・在庫最適化

EMSの問題は「受託生産を行う」「生産設備をもつ企業が他社の委託で製造する」が正解の決まり文句です。「製造設備をもたず企画・設計を行う」はファブレスの説明なので、正反対だと覚えましょう。

M&A:時間を買う戦略

M&A(Mergers and Acquisitions:合併と買収)は、新規分野への進出や事業の拡大・再編のために、他社の経営資源(技術・ノウハウ・人材・顧客)を獲得して活用することです。自社でゼロから育てるより、新規事業を短期間で実現できるのが最大の利点です。出題は免除試験を中心に13回と、このレッスンで最多です。

M&Aは、買う相手との関係で次のように分類されます。

種類 相手 例
垂直統合 同じ製品の流れの**上流(原材料)や下流(販売)**の会社 製鉄メーカ+鉄鉱石の採掘会社
水平統合 同業・同じ段階の会社 自動車メーカ+軽自動車メーカ
多角化(関連が薄い分野) 別業界の会社 電機メーカ+不動産会社

垂直統合は「川の上流と下流をつなぐ」イメージです。原材料→製造→販売の一本の流れの中で、前後の会社を取り込むものだけが該当します。

M&Aの説明問題では、他の経営手法の説明がひっかけとして並びます。

選択肢の説明 正体
他社の経営資源を獲得し活用する/他社の技術を得て新規事業を短期で実現 M&A
強みのある分野に資金と人材を集中投入する コアコンピタンス経営
他社のベストプラクティスと比較分析する ベンチマーキング
市場成長率と市場占有率のマトリックスで資源配分 PPM
製品別・市場別に区分し独立採算で利益責任を明確に 事業部制組織
自律感を活かし既存事業の影響を受けにくい 社内ベンチャ
垂直統合:流れの前後をつなぐ原材料(上流)鉄鉱石の採掘会社製造製鉄メーカ販売(下流)この2社が一緒になる水平統合:同じ段階の同業と組む原材料製造販売自動車メーカ軽自動車メーカ同じ段階どうしで一緒になる
垂直統合は流れの前後(上流・下流)の会社と、水平統合は同じ段階の同業と一緒になる。

コンカレントエンジニアリング:同時並行で開発を速める

コンカレントエンジニアリングは、製品開発で設計・生産計画などの工程を同時並行で進め、開発期間を短縮する手法です。設計が全部終わってから生産部門に渡す「順番待ち」をやめ、早い段階から両部門が一緒に動きます。

料理でたとえると、ご飯を炊き終えてから野菜を切り始めるのが従来型、炊いている間に切るのがコンカレントです。

flowchart LR
  A["従来型: 設計"] --> B["生産準備"] --> C["製造"]
  D["コンカレント: 設計"] -.同時に.- E["生産準備"]
選択肢の説明 正体
設計・生産計画などを同時並行で行う コンカレントエンジニアリング
設計・製造・販売を順に行う 逐次型の開発(従来型)
機能とコストの最適な組合せで価値を高める VE(バリューエンジニアリング)
既存のシステムや製品を解析して仕様を明らかにする リバースエンジニアリング

もう一つの定番が「製品開発のスピードアップ手法を2×2表に分類する」問題です。コンカレントエンジニアリングは社内の部門同士の動き方(組織)を変える手法なので、「組織内から × 組織的アプローチ」に入ります。解き方は下の例題で確認しましょう。

同じ仕事でも、並べ方で終わる時期が変わる従来型:終わってから次へ設計生産準備製造コンカレント:同時並行で進める設計生産準備製造期間短縮時間
従来型は前の工程が終わるまで次を始めないが、コンカレントは設計と生産準備を重ねて進めるので早く終わる。
例題 1

スピードアップ手法を2×2表に分類する(bはどれ?)

製品開発のスピードアップ手法を次の a〜d に分類した場合,b に相当するものはどれか。ここで,ア〜エは,a〜d のいずれかに該当する。
2×2 のマトリックス。縦軸=経営資源の確保(上段=組織内から,下段=組織外から),横軸=実現方法(左=技術的アプローチ,右=組織的アプローチ)。左上=a,右上=b,左下=c,右下=d。

ア CAD,CAM,CAE など既に一部利用しているツールの積極的な活用
イ 消費者ニーズを調査し,製品開発につなげるための市場調査会社の活用
ウ 設計部門と生産部門の作業を並列に進めるコンカレントエンジニアリング
エ 大学との共同研究開発や,同業他社からの技術導入

出典:基本情報技術者試験 科目A免除 修了試験 20240728 実施分 問54

解き方と答えを見る
  1. 表の軸を確認する。縦軸は経営資源をどこから確保するか(上=組織内から、下=組織外から)、横軸は実現方法(左=技術的アプローチ、右=組織的アプローチ)。bは右上なので「組織内から × 組織的アプローチ」。
  2. ア(CAD・CAM・CAEなど既に使っているツールの活用)を判定する。自社の道具なので組織内から、ツールを使うので技術的 → 左上のa。
  3. イ(市場調査会社の活用)を判定する。外部の会社に頼るので組織外から、調査業務という人や組織の協力なので組織的 → 右下のd。
  4. エ(大学との共同研究や同業他社からの技術導入)を判定する。外部の技術を取り入れるので組織外から × 技術的 → 左下のc。
  5. ウ(設計部門と生産部門の作業を並列に進めるコンカレントエンジニアリング)を判定する。社内の部門同士なので組織内から、仕事の進め方(組織の動かし方)を変えるので組織的 → 右上のb。
  6. 4つがa〜dに1つずつ収まることを確かめる(a=ア、b=ウ、c=エ、d=イ)。

答え:ウ(コンカレントエンジニアリングは「組織内から × 組織的アプローチ」のb)

要点(試験直前に読む)

  • ファブレス=工場を持たず製造を委託し、企画・設計・販売に集中する(頼む側)。
  • ファウンドリ=半導体の生産だけを複数社から請け負う。EMS=電子機器の製造を他社から請け負う(どちらも請ける側)。
  • M&A=他社の経営資源を獲得して、新規事業や事業拡大を短期間で実現する。
  • 垂直統合=上流・下流の会社と統合(製鉄+鉄鉱石採掘)。水平統合=同業と統合。
  • コンカレントエンジニアリング=設計と生産準備などを同時並行で進めて開発期間を短縮。2×2表では「組織内から × 組織的アプローチ」。

ひっかけ

  • ファブレスの事例問題で、物流やコールセンターの外部委託(BPO)が並ぶ。委託しているのが「製造」で、工場を手放しているかを確認する。
  • ファウンドリを問う問題で、「生産をアウトソースして設備投資を抑える」「設計・マーケティングに注力」というファブレスの特徴が並ぶ。請け負う側か頼む側かで判断する。
  • EMSの説明に「製造設備をもたず企画・設計を行う」(ファブレス)や3PL・ASP・SCMが混ざる。「受託生産」「生産設備をもつ」が正解の決まり文句。
  • M&Aの説明に、コアコンピタンス・ベンチマーキング・PPM・事業部制・社内ベンチャの説明が並ぶ。「他社の経営資源を獲得」「新規事業を短期間で」を探す。
  • 垂直統合の問題で、同業の買収(水平統合)や無関係な業種の買収が並ぶ。同じ製品の流れの上流か下流かを確かめる。

用語(16)

ファブレス ふぁぶれす(fabless)
自社で工場を持たず製造を外部に委託し、企画・設計・開発・販売に集中する企業形態。
⚠ ファウンドリ・EMSは製造を請け負う側。ファブレスは頼む側で「製造設備をもたない」が目印。
ファウンドリ ふぁうんどり(foundry)
複数の企業から半導体の生産だけを専門に請け負う製造企業。
⚠ ファブレスと逆の立場。「生産をアウトソースして設備投資を抑える」はファブレスの特徴なので注意。
垂直統合型(IDM) Integrated Device Manufacturer
設計から製造・販売まで全工程を自社内で持つ半導体企業の形態。
⚠ ファブレス(工場なし)・ファウンドリ(製造だけ)と違い、全部自社で行う。
EMS Electronics Manufacturing Service
他メーカから委託を受けて、電子機器の製造(設計を含むこともある)を専門に行うサービス。
⚠ ファブレス(製造設備をもたず企画・設計)と正反対。対象が半導体ならファウンドリ。
OEM Original Equipment Manufacturing
他社のブランド名で販売される製品を製造して供給すること。
⚠ EMSは電子機器の受託製造という業態名、OEMは「相手先ブランドで供給する」取引形態に着目した言葉。
ODM Original Design Manufacturing
製品の設計から製造までを受託し、相手先ブランドで供給すること。
⚠ OEMより受託範囲が広く設計も担う。「設計だけ受託し製造は相手先」はODMでもEMSでもない。
BPO Business Process Outsourcing
コールセンターや経理など、自社の業務プロセスの一部を外部の専門業者に委託すること。
⚠ ファブレスは「製造」の委託。物流やコールセンターの委託はファブレスではない。
3PL 3rd Party Logistics
荷主企業の物流業務を第三者が一括して請け負うこと。
⚠ EMSは製造の受託、3PLは物流の受託。
ASP Application Service Provider
アプリケーションをネットワーク経由で利用者に提供する事業者・サービス。
⚠ 製造とは無関係。EMSの選択肢に並ぶダミー。
SCM Supply Chain Management
調達・製造・物流・販売までの供給の流れ全体を最適に管理する手法。
⚠ 受託ビジネスではなく管理手法。
M&A Mergers and Acquisitions
他社を合併・買収して、その技術・ノウハウ・人材などの経営資源を獲得し活用すること。
⚠ コアコンピタンス(自社の強みに集中)、ベンチマーキング(他社と比較)、PPM(資源配分の分析)と区別。キーワードは「他社の経営資源を獲得」「短期間で新規事業」。
垂直統合 すいちょくとうごう
原材料から製造・販売までの流れの上流や下流にある企業を統合すること。
⚠ 水平統合は同業・同じ段階の企業との統合。製鉄メーカ+鉄鉱石採掘会社は垂直、自動車メーカ+軽自動車メーカは水平。
水平統合 すいへいとうごう
同じ業界で同じ段階にある企業同士を統合し、規模やシェアを拡大すること。
⚠ 垂直統合(上流・下流との統合)と取り違えやすい。
コンカレントエンジニアリング Concurrent Engineering
製品開発で設計・生産計画などの工程を同時並行で進め、開発期間を短縮する手法。
⚠ 「順に行う」は逐次型の開発。VE(機能とコストの最適化)やリバースエンジニアリング(解析して仕様を明らかにする)とも区別。
VE Value Engineering
製品やサービスの機能とコストの最適な組合せを考え、価値を高める手法。
⚠ コンカレントエンジニアリングの説明問題のダミー。「機能とコスト」が目印。
リバースエンジニアリング Reverse Engineering
既存の製品やシステムを分解・解析して、その仕組みや仕様を明らかにすること。
⚠ 「解析して仕様を明らかにする」が目印。開発を速める手法ではない。

このレッスンの過去問

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