AI・データ活用と業務の自動化
ビッグデータの活用事例を「誰に返すか×いつ返すか」の4マスに分類できるようになる。また、AI(機械学習・ディープラーニング)の事例とAIでない事例(PID制御など)を見分け、RPA・HRテック・デジタルツインの説明を選べるようになる。
科目Aのストラテジ系では、AIやRPAといった新しい技術について「どれがその事例か」を当てる問題がくり返し出ます。定義を一言で言えれば、選択肢の言い回しが変わっても迷わず解けます。
このレッスンで稽古する(用語チェック・過去問)まず結論:4つの物差しで見分ける
このレッスンの問題は、ほぼすべて 「その事例は○○に当たるか」を当てる問題 です。次の4つの物差しを持っていれば解けます。
- 学習するか:データから自分で賢くなるなら機械学習・ディープラーニング(AI)。決まった式やルールで動くだけならAIではない
- 事務か、体のある機械か:パソコン上の定型事務をソフトが代わりにやるならRPA。体のあるロボットならRPAではない
- 誰に・いつ返すか:ビッグデータの活用事例は「顧客全体か個々か」×「一定期間ごとか即時か」の4マスで分ける
- どの分野か:人事ならHRテック、金融ならFinTech、家庭のエネルギーならHEMS、現実を仮想空間に再現するならデジタルツイン
ビッグデータの活用事例を2軸で分類する
ビッグデータとは、POS(レジの販売記録)、位置情報、センサなどから集まる、大量で種類も多いデータのことです。試験では、分析結果を 誰に返すか(フィードバック先) と いつ返すか(反映タイミング) の2軸で、事例を4マスに分けさせます。
| 一定期間ごと | 即時 | |
|---|---|---|
| 顧客全体 | a:月ごとの売れ筋ランキングを店内ディスプレイに表示 | b:走行中の車から集めたデータで、今の道路の混雑をWebに公開 |
| 顧客個々 | c:前月の購買額に応じて翌月のクーポンを発行 | d:今いる場所の近くの売場にある推奨商品を、本人のスマホに表示 |
フィードバック先の見分け方:本人のスマホやその人向けのクーポンのように、一人ずつ中身が違えば「個々」です。店内ディスプレイやWebサイトでの公開のように、誰が見ても同じなら「全体」です。
反映タイミングの見分け方:「即時」と判断してよいのは、データを集めてその場で結果を返している場合だけです。「現在の混雑状況」「近くの売場」は、いま集めたデータからいまの結果を出しているので即時です。
これに対し、「現在の月に該当する商品」の「現在の」は今の時期を指しているだけで、即時の根拠になりません。同じ文に「月ごと」「前月」「翌月」「過去数年分」のような周期や蓄積を表す語があれば、一定期間と判断します。たとえると、即時はカーナビの渋滞情報、一定期間ごとは月に1回届く家計簿アプリのレポートです。
AI・機械学習・ディープラーニングと、AIではないもの
**AI(人工知能)**は、認識・推論・学習といった人の知的な判断をコンピュータに行わせる技術の総称です。その中心が 機械学習(人がルールを書かなくても、データから規則を学んで性能を上げる)で、機械学習の一種が ディープラーニング(何層も重ねたニューラルネットワークで、画像などの特徴を自動で学ぶ)です。三者は「AI ⊃ 機械学習 ⊃ ディープラーニング」という入れ子の関係です。
| 事例 | 学習・推論しているか | 判定 |
|---|---|---|
| 生産ロボットが自分で学んで作業効率を上げる | する | 機械学習 |
| 大量の画像を処理して、歩行者と車を見分けられるようになる | する | ディープラーニング |
| 部屋の形や家具の位置を学習してルートを決める掃除ロボット | する | AI |
| 質問の意味を推測して答えるチャットボット | する(推論) | AI |
| 大量の統計データを処理してプロに勝つボードゲームソフト | する | AI |
| 加速度センサが衝突を検知してエアバッグを膨らませる | しない(固定ルール) | AIではない |
| PID制御のモーターコントローラー | しない(決まった式) | AIではない |
| 携帯電話回線でソフトや地図を更新する | しない(通信) | AIではない |
PID制御は、目標値と今の値の差を、決まった式(比例・積分・微分)で補正し続ける古典的な フィードバック制御 です。自動で賢く動いているように見えますが、データから学んだり推論したりはしないのでAIではありません。エアコンが室温を設定温度に近づける仕組みと同じ仲間、と覚えると区別しやすくなります。
生産現場の問題では、AI以外の手法も選択肢に並びます。不良の原因をツリー状に分解して人が分析するのは 特性要因図 などの分析手法、設備を高速通信でつないでリアルタイムに制御するのは IoT の事例です。累積生産量が倍になるたびに単位コストが一定の比率で下がるのは 学習曲線(習熟曲線) で、「学習」と付いていても人が慣れていく話なので機械学習ではありません。
RPA:事務作業を代わりにやるソフトウェアのロボット
RPA(Robotic Process Automation) は、データ入力・転記・照合のような パソコン上の定型的な事務作業 を、ソフトウェアのロボットが人の代わりに自動で処理する仕組みです。名前に「ロボット」とありますが、体(ハードウェア)はありません。ホワイトカラー(事務職)の単純な間接作業を代わりに行うソフト、と言い換えることもできます。
たとえば、毎朝同じ手順でExcelの数字を業務システムに打ち込んでいる担当者の作業を、画面操作の手順を覚えたソフトに任せるイメージです。人手不足の解消や業務の効率化の手段として出題されます。
| 選択肢の内容 | 正体 | RPAか |
|---|---|---|
| 事務の定型作業(入力・照合)をソフトで自動処理する | RPA | ○ |
| 部品を組み立てる、物をつかんで動かすロボット | 産業用ロボット | × |
| ICタグ・カメラ・電子決済による無人店舗 | 店舗の無人化 | × |
| コンピュータ制御で無人化した倉庫 | 自動倉庫システム | × |
| レーダ・GPS・カメラで自律走行する | 自動運転関連機器 | × |
| 食事・清掃・移動などの生活を支援する | 生活支援ロボット | × |
確かめるのは2点だけです。ソフトウェアか と 事務(ホワイトカラー)の定型作業か を見て、両方当てはまればRPAです。物理的に動く機械が出てきたら、その時点でRPAではありません。
HRテックとデジタルツイン
HRテックは、採用・育成・評価・配属といった 人事の業務 に、AIやビッグデータ解析を使って、業務改善と社員満足度の向上を図る仕組みです。HRはHuman Resources(人的資源、つまり人事)の略です。試験では、ほかの「○○テック」や似た用語の説明と並べて出されます。
| 説明に出てくるキーワード | 用語 |
|---|---|
| 採用・育成・評価・配属(人事) | HRテック |
| 個人の資金管理、新しい金融サービス | FinTech(フィンテック) |
| 住宅内のエネルギー使用の監視、家電の遠隔操作・自動制御 | HEMS |
| 業界の秩序や既得権益を壊すほど影響の大きい新技術・ビジネスモデル | 破壊的イノベーション |
デジタルツインは、センサで集めたデータを使い、現実世界とそっくりな世界をデジタル空間に双子(ツイン)のように作って、現実ではできないシミュレーションを行う技術です。見分けるキーワードは 「仮想空間に再現」+「シミュレーション」 です。3Dプリンタで遠隔地に複製を作る、システムを正副の二重にする、家電を遠隔操作するウェアラブル端末、はどれも別物です。
ビッグデータの活用事例を4マスに振り分ける(dはどれか)
| 分析結果の反映タイミング 一定期間ごと | 分析結果の反映タイミング 即時 | ||
|---|---|---|---|
| 分析結果のフィードバック先 | 顧客全体 | a | b |
| 分析結果のフィードバック先 | 顧客個々 | c | d |
ア 会員カードを用いて収集・蓄積した大量の購買データから,一人一人の嗜好を分析し,その顧客の前月の購買額に応じて,翌月のクーポン券を発行する。
イ 会員登録をした来店客のスマートフォンから得られる位置データと,来店客の購買履歴データを基に,近くの売場にある推奨商品をスマートフォンに表示する。
ウ 系列店の過去数年分の POS データから月ごとに最も売れた商品のランキングを抽出し,現在の月に該当する商品の映像を店内のディスプレイに表示する。
エ 走行中の自動車から,車両の位置,速度などを表すデータをクラウド上に収集し分析することによって,各道路の現在の混雑状況を Web サイトに公開する。
解き方と答えを見る
- まず、dのマスの意味を確認する。dは「フィードバック先=顧客個々」かつ「反映タイミング=即時」のマス。
- ア:「一人一人の嗜好」を分析し、その顧客にクーポンを出すので個々。ただし反映は「前月の購買額」をもとに「翌月」なので一定期間。よって c。
- イ:来店客本人のスマートフォンに表示するので個々。今いる位置のデータを使い、近くの売場の推奨商品をその場で表示するので即時。よって d。
- ウ:店内ディスプレイは来店者の誰が見ても同じなので全体。過去数年分のPOSデータから「月ごと」のランキングを出しているので一定期間。「現在の月」の「現在の」は今の時期を指すだけで、即時の根拠にはならない。よって a。
- エ:Webサイトでの公開は誰が見ても同じなので全体。走行中の車からデータを集め、現在の混雑状況をその場で出しているので即時。よって b。
- dに当たるのはイだけ。
答え:イ(顧客個々 × 即時)
要点(試験直前に読む)
- ビッグデータの2軸:一人ずつ中身が違えば個々、誰が見ても同じなら全体。その場で集めて返すなら即時、月ごと・翌月なら一定期間
- 機械学習・ディープラーニングはデータから学ぶ。大量の画像で見分ける精度が上がる例はディープラーニング
- PID制御やセンサによる自動作動は、決まった式やルールで動くだけなのでAIではない
- RPA=ソフトウェアがホワイトカラーの定型事務を代わりに行う。体のあるロボットはRPAではない
- HRテック=人事×AI・ビッグデータ。FinTechは金融、HEMSは家庭のエネルギー
- デジタルツイン=センサのデータで現実を仮想空間に再現してシミュレーションする
ひっかけ
- 「現在の」という語だけで即時と決めない。「現在の月に該当する商品」は時期を指すだけで、「月ごと」「翌月」などの語があれば一定期間。即時と判断するのは「現在の混雑状況」「近くの売場」のように、データを集めてその場で結果を返す場合だけ
- 「一人一人の嗜好を分析」とあっても、反映が翌月のクーポンなら c(個々×一定期間)でありdではない。2軸を別々に確認する
- 「ロボット」という語に引っ張られない。RPAはソフトウェア。組立ロボット・自動倉庫・無人店舗・自動運転はすべて×
- 自動で賢く動くものがAIとは限らない。PID制御、エアバッグ、通信によるソフト更新は学習しない。学習曲線の「学習」も人の習熟の話
- ○○テックは分野で見分ける。人事ならHRテック、金融ならFinTech、家庭のエネルギーならHEMS、業界秩序の破壊なら破壊的イノベーション
用語(16)
POS・位置情報・センサなどから集まる、大量で種類も多く、次々に発生するデータのこと。
分析結果を返す相手のことで、顧客全体に同じものを返すか、顧客一人ずつに違うものを返すかで分ける。
⚠ 反映タイミングと取り違えやすい。「誰に」がフィードバック先、「いつ」が反映タイミング。
分析結果を返す時期のことで、データを集めてその場で返す即時と、月ごとなど周期的に返す一定期間ごとがある。
⚠ 「現在の月」の「現在の」は時期を指すだけで即時の根拠にならない。月ごと・翌月などの語があれば一定期間。
認識・推論・学習といった人の知的な判断をコンピュータに行わせる技術の総称。
⚠ 自動で動くだけの制御(PID制御、センサでのエアバッグ作動)はAIではない。
人がルールを書かなくても、コンピュータがデータから規則を学んで性能を高める技術。
⚠ 学習曲線(習熟曲線)は人が慣れて生産性が上がる話で、機械学習ではない。
何層も重ねたニューラルネットワークで、大量の画像などから特徴を自動で学ぶ機械学習の一種。
⚠ 大量の画像で見分けられるようになればディープラーニング。センサの検知や通信による更新は学習を伴わない。
目標値と今の値の差を、比例・積分・微分の決まった式で補正し続ける古典的なフィードバック制御。
⚠ 自動で賢く動くのでAIと誤認しやすいが、学習も推論もしないのでAIではない。
結果(制御量)を目標値と比べ、その差がなくなるように修正動作をくり返す制御方式。
⚠ ビッグデータの「フィードバック先」とは別の話。
累積生産量が倍になるたびに作業者の習熟が進み、単位コストが一定の比率で下がるという経験則。
⚠ 「学習」とあるが人の習熟の話で、機械学習の事例ではない。
データ入力や照合のような事務の定型作業を、ソフトウェアのロボットが人の代わりに自動処理する仕組み。
⚠ 産業用ロボット・自動倉庫・無人店舗・自動運転は物理的な自動化でRPAではない。ソフトウェアで事務を代行するものがRPA。
物をつかんで動かしたり移動したりする機能を持ち、プログラムで組立てなどの作業を行う工場のロボット。
⚠ RPAと混同しやすい。体のある機械なら産業用ロボット、事務を代行するソフトならRPA。
採用・育成・評価・配属といった人事業務に、AIやビッグデータ解析を使って業務改善と社員満足度の向上を図る仕組み。
⚠ FinTech(金融)、HEMS(家庭のエネルギー)と取り違えやすい。人事の語があればHRテック。
個人の資金管理やオンライン融資など、ITを使って新しい金融サービスを実現する技術。
⚠ HRテックとの違いは対象分野。金融ならFinTech、人事ならHRテック。
住宅内のエネルギー使用を見える化し、家電の遠隔操作や自動制御で家庭のエネルギー管理を支える仕組み。
⚠ ○○テックの説明と並べて出る。住宅・エネルギーの語があればHEMS。
既存のビジネスモデルによる業界秩序や既得権益を壊してしまうほど影響の大きい、新しい技術やビジネスモデル。
⚠ HRテックなど特定分野の技術ではなく、業界を塗り替える影響の大きさを指す言葉。
センサで集めたデータで現実世界をデジタル空間にそっくり再現し、現実ではできないシミュレーションを行う技術。
⚠ 3Dプリンタでの遠隔複製、システムの二重化(デュアルシステム)、ウェアラブル端末とは別物。キーワードは「仮想空間に再現」と「シミュレーション」。
このレッスンの過去問
- ビッグデータ活用事例の分類(フィードバック先と反映タイミング)平成31年度 春期 基本情報技術者試験 午前 問64
- 機械学習の活用事例(生産現場)令和元年度 秋期 基本情報技術者試験 午前 問73
- ディープラーニングの活用事例の判別平成29年度 秋期 基本情報技術者試験 午前 問74
- AI事例とそうでない事例の切り分け(PID制御等)令和8年度 基本情報技術者試験 科目A 公開問題 問18
- RPAの定義令和元年度 秋期 基本情報技術者試験 午前 問62
- HRテックの定義令和6年度 基本情報技術者試験 科目A 公開問題 問18
- デジタルツインの定義基本情報技術者試験 科目A免除 修了試験 20221211 実施分 問70