減価償却と投資の評価
定額法の減価償却費・帳簿価額・固定資産売却損を計算できるようになる。ROI・NPV・IRR・回収期間の違いを説明でき、ROIで投資案を比べる問題が解けるようになる。
減価償却は「買ったPCやサーバの費用を何年に分けて計上するか」というルールです。ROIなどの投資評価は「そのIT投資に見合うもうけがあるか」を判断する道具で、どちらも計算問題として繰り返し出題されます。
このレッスンで稽古する(用語チェック・過去問)結論:減価償却は「代金を使う年数に振り分ける」処理
減価償却とは、長く使う資産(建物・PC・サーバなど)の購入代金を、使う年数に分けて毎年の費用にする会計処理です。お金は買ったときに全額出ていきますが、費用の計上だけを年数で分けます。
たとえば30万円のPCを4年使うなら、先に払った30万円を4で割って「毎年7.5万円ずつ使った」と考え、毎年の費用に振り分けます。払う時期を分ける分割払いとは別物で、分けるのは費用の計上だけです。
試験で使う言葉は次のとおりです。
| 用語 | 意味 | 例(30万円のPC) |
|---|---|---|
| 取得価額 | 買ったときの値段 | 30万円 |
| 耐用年数 | 使える年数として決められた年数 | 4年 |
| 残存価額 | 使い終わったときに残る価値(試験ではほぼ0円) | 0円 |
| 減価償却費 | その年に費用にする額 | 7.5万円/年 |
| 減価償却累計額 | これまでの償却費の合計 | 3年後なら22.5万円 |
| 帳簿価額 | 取得価額−減価償却累計額。帳簿上の今の価値 | 3年後なら7.5万円 |
前のレッスンとのつながりでいうと、減価償却費は損益計算書の費用、帳簿価額は貸借対照表の資産の金額です。
定額法と定率法
減価償却の方法として試験に出るのは定額法と定率法の2つです。計算問題はほぼ定額法なので、まず定額法を確実にします。
| 定額法 | 定率法 | |
|---|---|---|
| 毎年の償却費 | 毎年同じ額 | 最初が大きく、だんだん減る |
| 計算式 | 取得価額÷耐用年数(または 取得価額×償却率) | 帳簿価額(未償却の残り)×償却率 |
| 掛ける相手 | いつも取得価額 | 毎年減っていく帳簿価額 |
| イメージ | 毎年同じ額を費用にする | 新しいうちに多く費用にする |
定額法の「取得価額÷耐用年数」と「取得価額×償却率」はほぼ同じ計算です。ただし償却率は丸めた値なので端数がずれます(6年なら 1,000,000÷6≒166,667円、償却率0.167だと167,000円)。償却率が与えられた問題では、その償却率を掛けて計算します。
「減価償却の方法はどれか」と問われたら、定額法か定率法を選びます。移動平均法・最終取得原価法は在庫(棚卸資産)の評価方法、持分法は関連会社への投資の会計処理で、減価償却ではありません。
帳簿価額と固定資産売却損の求め方
帳簿価額は「取得価額−(年間償却費×経過年数)」で出します。経過年数は問題文の日付や「○年後」から数えます。期首(年度の初日)に買って期末(年度の最後の日)まで使えば1年分です。
使い終わる前に売ったときは、売った値段と帳簿価額を比べます。帳簿価額より安く売れば固定資産売却損、高く売れば売却益です。比べる相手は取得価額でも償却累計額でもなく、帳簿価額です。
flowchart LR
A["取得価額"] --> B["年間償却費 × 経過年数 = 累計額"]
B --> C["帳簿価額 = 取得価額 − 累計額"]
C --> D["売却損 = 帳簿価額 − 売却額"]
この3段階(年間償却費→帳簿価額→売却損)を順に書けば、どの数字の問題でも解けます。
投資評価の4指標(ROI・NPV・IRR・回収期間)
投資評価は繰り返し出題されるテーマです(本試験系5回・免除16回)。「4つの指標の説明文からROIを選ぶ」問題と、「表からROIを計算して一番よい案件を選ぶ」問題の2種類が出ます。
| 指標 | 何を求めるか | 計算・考え方 | 説明文の見分けキーワード |
|---|---|---|---|
| ROI(投資利益率) | 投資額に対する純粋なもうけの比率 | (利益合計−投資額)÷投資額 | 利益額が分子、投資額が分母 |
| NPV(正味現在価値) | もうけを今の価値に直した合計 | 将来のキャッシュフローの現在価値の合計−投資額 | 現在価値でのキャッシュフローの合計 |
| IRR(内部収益率) | NPVがちょうど0になる割引率 | 「何%で割り引くと損得ゼロか」を求める | 合計がゼロとなる割引率 |
| 回収期間 | 投資額を取り戻すまでの期間 | 毎年のもうけを足して投資額に届く年数 | どれだけの期間で回収可能か |
NPVとIRRの土台にあるのは割引(将来のお金を今の価値に直すこと)です。今日の1万円は預ければ利息がつくので、1年後にもらう1万円より価値が高い、という考え方です。
ROIの比較問題では「割引率は考慮しない」などと書かれ、利益をそのまま足してよい設定になっています。利益の総額ではなく、投資額に対する比率で比べるのが要点です。
試験での問われ方
- 定額法の償却費:前期までの累計額や帳簿価額が書いてあっても、定額法なら使いません。取得価額÷耐用年数だけで決まります。
- 帳簿価額・売却損:選択肢には「1年分しか引いていない値」「3年分引いた値」「償却額そのもの」「帳簿価額そのもの」が並びます。経過年数を数え直してから選びます。
- 方法を選ぶ問題:棚卸資産の評価方法(移動平均法・最終取得原価法)や持分法がダミーとして並びます。
- ROIの説明:NPV・IRR・回収期間の説明文と並べて出ます。キーワード(利益÷投資額、現在価値の合計、ゼロになる割引率、回収の期間)で見分けます。
- ROIの計算:利益の総額が一番大きい案件をダミーにします。必ず投資額で割った比率で比べます。
定額法の当期の償却費(累計額はダミー)
ア 150
イ 350
ウ 500
エ 650
解き方と答えを見る
- 定額法なので、毎年の償却費は取得価額÷耐用年数で決まる
- 取得価額10,000千円、耐用年数20年、残存価額0円
- 10,000÷20=500千円
- 前期までの累計額3,000千円は、定額法の毎年の償却費には関係しない(帳簿価額7,000÷20=350などはひっかけ)
答え:500千円(ウ)
定額法で2年後の帳簿価額を求める
ア 332,000
イ 499,000
ウ 666,000
エ 833,000
解き方と答えを見る
- 償却率0.167が与えられているので、年間償却費=1,000,000×0.167=167,000円
- 経過年数を数える:平成21年4月1日〜平成23年3月31日で2年分
- 2年分の累計額=167,000×2=334,000円
- 帳簿価額=1,000,000−334,000=666,000円
答え:666,000円(ウ)
3年後に売ったときの固定資産売却損
ア 6.0
イ 6.5
ウ 7.0
エ 7.5
解き方と答えを見る
- 年間償却費=30万円×0.250=7.5万円
- 3年分の累計額=7.5×3=22.5万円
- 3年後の帳簿価額=30−22.5=7.5万円
- 売却額1万円と帳簿価額を比べる:7.5−1=6.5万円
- 帳簿価額より安く売ったので、6.5万円の売却損
答え:6.5万円(イ)
償却率が無いときの売却損
ア 205
イ 229
ウ 253
エ 320
出典:基本情報技術者試験 科目A免除 修了試験 20250727 実施分 問59
解き方と答えを見る
- 償却率が無いので、年間償却費=800÷5=160千円
- 3年分の累計額=160×3=480千円
- 帳簿価額=800−480=320千円
- 売却損=320−115=205千円(320千円そのものは帳簿価額で、売却損ではない)
答え:205千円(ア)
ROIで4案件を比べる
ア a
イ b
ウ c
エ d
解き方と答えを見る
- ROI=(利益合計−投資額)÷投資額。割引率は考えなくてよい
- a:利益合計15+30+45+30+15=135 → (135−100)÷100=0.35
- b:利益合計105+75+45+15+0=240 → (240−200)÷200=0.20
- c:利益合計60+75+90+75+60=360 → (360−300)÷300=0.20
- d:利益合計105×5=525 → (525−400)÷400=0.3125
- 比率が最大なのはa(利益総額が最大のdはひっかけ)
答え:a(ア)
要点(試験直前に読む)
- 定額法の償却費=取得価額÷耐用年数(償却率が与えられたら取得価額×償却率)。前期までの累計額は使わない
- 帳簿価額=取得価額−年間償却費×経過年数
- 売却損=帳簿価額−売却額。比べる相手は帳簿価額
- 減価償却の方法は定額法・定率法。移動平均法・最終取得原価法は在庫の評価、持分法は投資の会計処理
- ROI=(利益合計−投資額)÷投資額。投資額に対する純粋なもうけの比率で比べる
- NPV=現在価値の合計(金額)、IRR=NPVが0になる割引率、回収期間=取り戻すまでの期間
ひっかけ
- 定額法の償却費の問題に前期までの累計額が書いてある → ダミー。取得価額÷耐用年数だけで計算する
- 帳簿価額の選択肢に1年分・3年分の値が並ぶ → 購入日と基準日から経過年数を数え直す
- 売却損で帳簿価額そのものや償却累計額が選択肢にある → 売却損は帳簿価額−売却額
- ROIの比較で利益総額が一番大きい案件がある → 総額ではなく(利益合計−投資額)÷投資額の比率で比べる
- ROIの説明に「現在価値の合計」「ゼロになる割引率」「回収できる期間」が並ぶ → それぞれNPV・IRR・回収期間。ROIは利益÷投資額
用語(15)
長く使う資産の購入代金を、使う年数に分けて毎年の費用にする会計処理。
⚠ 分割払いとは違う。お金は購入時に全額出ていき、分けるのは費用の計上だけ。
資産を買ったときの値段で、減価償却の計算の出発点になる金額。
⚠ 帳簿価額は取得価額から償却累計額を引いた残り。定額法の償却費は取得価額を基準にする。
資産を使える年数として決められた、償却費を分ける年数。
⚠ 「残りの年数」ではない。定額法では最初に決めた耐用年数で割る。
耐用年数を使い終わった時点で残ると見込む価値。試験ではほぼ0円。
⚠ 帳簿価額(途中時点の帳簿上の価値)と取り違えない。
毎年の償却費を求めるときに掛ける率で、耐用年数ごとに決められた丸めた値。
⚠ 定額法では取得価額に掛け、定率法では帳簿価額に掛ける。÷耐用年数とは端数がずれるので、与えられたら償却率を使う。
これまでに計上した減価償却費の合計。
⚠ 定額法の当期の償却費には使わない。帳簿価額を出すときに取得価額から引く。
取得価額から減価償却累計額を引いた、帳簿上の今の資産の価値。
⚠ 売却損益は売却額と帳簿価額を比べて出す。取得価額と比べない。
毎年同じ額(取得価額÷耐用年数)を償却費にする方法。
⚠ 定率法は毎年の償却費が減っていく。
毎年、帳簿価額に一定の償却率を掛けて償却費を出す方法で、最初の年ほど償却費が大きい。
⚠ 移動平均法・最終取得原価法は在庫の評価方法、持分法は関連会社への投資の会計処理で、減価償却の方法ではない。
固定資産を帳簿価額より安く売ったときの差額の損失。
⚠ 帳簿価額より高く売れば売却益。帳簿価額そのものを売却損と取り違えない。
投資額に対してどれだけ純粋にもうかったかを、(利益合計−投資額)÷投資額で表す指標。
⚠ NPVは現在価値の合計(金額)、IRRは割引率、回収期間は期間。ROIは利益が分子・投資額が分母の比率。
将来のキャッシュフローを今の価値に直して合計し、投資額を引いた金額。
⚠ IRRはNPVが0になる割引率。NPVは金額、IRRは率。
投資のNPVがちょうど0になる割引率。
⚠ 「合計がゼロとなる割引率」はIRR、「現在価値の合計」はNPV。
投資で得たもうけの合計が投資額に届くまでの期間。
⚠ 「どれだけの期間で回収できるか」という説明は回収期間。ROIの説明と混同しない。
将来受け取るお金を、割引率を使って今の時点の価値に直した金額。
⚠ NPV・IRRの土台になる考え方。ROIの比較問題では割引しない設定が多い。
このレッスンの過去問
- 減価償却の方法(定額法・定率法)平成29年度 春期 基本情報技術者試験 午前 問78
- 定額法による減価償却と帳簿価額の計算平成23年度 秋期 基本情報技術者試験 午前 問76
- 定額法による減価償却と固定資産売却損益の計算平成27年度 秋期 基本情報技術者試験 午前 問77
- 投資評価指標の定義(ROI・NPV・IRR・回収期間)平成31年度 春期 基本情報技術者試験 午前 問65