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サービスマネジメント・1/8・12分

サービスマネジメントの全体像と SLA

ゴール

サービスマネジメント(ITサービスを安定して届ける仕組み)の全体像をつかみ、SLA・サービスデスクの3つの形態・インシデント管理と問題管理の違い・PDCAの各段階・可用性の定義を問う選択問題を、用語の見分けだけで解けるようになる。

科目Aのサービスマネジメント分野は、定義を知っていれば1問30秒で取れる得点源です。過去問では「サービスデスクの形態」と「SLAとは何か」が何度も出ていて、選択肢の言い回しもほぼ毎回同じです。

このレッスンで稽古する(用語チェック・過去問)

結論:この分野は「誰に・何を・どの水準で届けるか」を管理する話

サービスマネジメントとは、ITサービス(例:社内システムやクラウドサービス)を、約束した品質で安定して提供し続けるための管理の仕組みです。作ること(開発)ではなく、**動かし続けて利用者に届けること(運用)**が中心です。

この分野の教科書にあたるのが次の2つです。

  • ITIL(アイティル):ITサービス運用の成功事例(ベストプラクティス)を集めたフレームワーク(考え方と進め方のひな形)
  • JIS Q 20000-1(国際規格 ISO/IEC 20000-1 の日本版):サービスマネジメントの国内規格。満たすべき要求事項(やらなければならないこと)を定める

JIS Q 20000 では、組織がサービスを管理する仕組み全体を SMS(サービスマネジメントシステム)と呼びます。試験の選択肢で「サービスの設計,移行,提供及び改善のために…指揮し,管理する,一連の能力及びプロセス」と出てきたら、それは SMS の説明です。

最頻出:サービスデスクの3つの形態

サービスデスクは、利用者からの問い合わせや障害の報告を一か所で受ける単一窓口(SPOC)です。ITIL ではプロセス(手順)ではなく「機能」(組織・役割)に分類されます。この分野で最も多く出題されている論点が、サービスデスクの置き方の違いです。

たとえるなら、ローカル=各店舗にいる店員、集中=本社のコールセンター、バーチャル=在宅オペレーターが各地にいるのに、電話番号は1つのコールセンターです。

形態 置き方 選択肢に出るキーワード
ローカル 利用者の近く(同じ拠点か物理的に近い場所) 言語や文化の異なる利用者への対応、VIP対応
集中 1拠点または少数の場所に集める 要員を効率的に配置、大量のコールに対応、費用対効果
バーチャル 要員は複数の地域に分散している 通信技術で単一のデスクのように見える

見分け方のコツ

  • 「近く」「言語・文化」「VIP」があればローカル
  • 「集中」「効率的」「大量」があれば集中
  • 「分散しているが単一のように見える」「通信技術」があればバーチャル

ひっかけとして、「分散拠点の要員も含めて全員を中央で統括して管理する」(統制の説明で、どの形態の定義でもない)や、「専任スタッフを置かず他の業務の担当者が兼任する」といった、もっともらしい作文の選択肢が混ざります。この2つは3形態のどれにも当てはまらないので、キーワード表に照らして消します。

ローカル:利用者の近くに置くデスク利用者拠点Aデスク利用者拠点B集中:1か所に集めて大量に受けるデスク(1拠点)バーチャル:通信技術で1つに見せる単一のデスクに見える地域Aの要員地域Bの要員地域Cの要員
サービスデスクの3つの置き方:ローカルは利用者の近く、集中は1か所、バーチャルは要員が分散していても窓口は1つに見える。

SLA:サービス目標についての提供者と顧客の「合意」

SLA(Service Level Agreement、サービスレベル合意書)は、サービスの内容とサービス目標(例:稼働率99.9%、問い合わせへの初回応答は30分以内)について、サービス提供者と顧客が交わす合意です。要件定義でいう「非機能要件の数値目標」を、運用段階の約束として文書にしたもの、と考えると分かりやすいです。

似た文書との区別(ここがひっかけの中心)

用語 何か 誰と誰の間か
SLA サービスとサービス目標についての合意 提供者 ⇔ 顧客
OLA(運用レベル合意書) SLAを守るための組織内部の合意 提供者 ⇔ 内部グループ(サービスデスクなど)
サービスカタログ 提供する全サービスの特徴・構成要素・料金などの一覧 合意ではなく情報の一覧
サービス要件 利用者からの業務要件 合意ではなく要求

SLAの作り方で正しい方針は「顧客と提供者のニーズ、そして費用を考慮して水準を決める」です。次のような極端な選択肢は誤りです。

  • 考えられる全ての項目に水準を設定する(費用が膨らみ、管理しきれない)
  • 全ての項目にペナルティ(補償)を付ける
  • 将来も変更不要な水準にする(SLAは定期的に見直すもの)

**サービスレベル管理(SLM)**は、SLAを作り、守れているか監視し、見直すプロセスです。JIS Q 20000 での要求事項は「サービスカタログとSLAを作成し、顧客と合意する」です。紛らわしい選択肢の正体は、リスク評価=サービス継続・可用性管理、容量・能力の計画=キャパシティ管理、予算と費用の管理=予算業務及び会計業務です。

また、「ITサービスマネジメントの管理プロセスはどれか」と聞かれたら、答えはサービスレベル管理です。スケジュール管理・品質管理・リスク管理はプロジェクトマネジメント側の言葉なので選びません。

顧客SLAサービス目標の合意例:稼働率99.9%組織の内側サービス提供者OLASLAを守るための内部の合意サービスカタログ合意でなく一覧内部グループ(サービスデスクなど)相手が外の顧客ならSLA、内部ならOLA
SLA は提供者と外の顧客との合意、OLA は SLA を守るための組織内部の合意。サービスカタログは合意ではなく一覧。

サービスサポートの5プロセス:インシデント管理と問題管理を分ける

ITIL v2 では、日々の運用をまとめたサービスサポートを「5プロセス+1機能」で整理しています(中長期の計画側はサービスデリバリと呼び、サービスレベル管理・可用性管理・キャパシティ管理・ITサービス継続性管理などが入ります)。

たとえると、天井から水漏れしたとき、バケツを置いてとりあえず生活できるようにするのがインシデント管理、配管のどこが壊れたかを突き止めて再発を防ぐのが問題管理です。

名前 種別 目的 キーワード
インシデント管理 プロセス サービスをできるだけ早く元に戻す 迅速な回復、障害報告と既知のエラーの照合
問題管理 プロセス 根本原因を見つけて再発を防ぐ 根本原因、再発防止
構成管理 プロセス 構成要素(CI)をCMDB(構成管理データベース)で正しく把握する CI、CMDB
変更管理 プロセス 変更要求(RFC)の影響を評価し、認可するか却下するかを決める RFC、影響度、認可
リリース管理 プロセス 承認されたものを、正しい場所に適切な時期に展開する リリース
サービスデスク 機能 利用者の単一窓口 一元的な窓口

ひっかけの典型

  • 「障害報告を既知のエラー(原因と回避策が分かっている既存の不具合)と照合する」はインシデント管理です。早く直すための作業なので、問題管理ではありません。
  • 「ディスクの空き容量がしきい値に近い」はキャパシティ管理、「プログラム変更の影響度を調べる」は変更管理、「顧客満足度がサービスレベルを満たしているか評価する」はサービスレベル管理です。
  • 根本原因を問われているのに、選択肢に可用性管理やサービスレベル管理(どちらもサービスデリバリ側)を置いて迷わせることがあります。
障害発生(水漏れ)インシデント管理問題管理既知のエラーと照合根本原因を見つける早く元に戻す(バケツを置く)再発を防ぐ(配管を直す)目的:迅速な回復目的:再発防止既知のエラーとの照合は早く直すための作業
同じ障害に対して、インシデント管理は早く元に戻し(バケツを置く)、問題管理は根本原因を突き止めて再発を防ぐ(配管を直す)。

PDCA:どの活動がどの段階かを当てる

JIS Q 20000-1 では、SMSのあらゆる場面で PDCA(Plan→Do→Check→Act の改善サイクル)を回すことを求めています。

段階 SMSでの中身 選択肢のキーワード
Plan(計画) SMSを確立し、文書化し、合意する 権限・責任・役割の枠組みの作成、確立、文書化
Do(実行) SMSを導入し、運用する 導入及び運用、資金・予算の割当て
Check(評価) 監視・測定・レビューし、結果を報告する 監視、測定、マネジメントレビュー
Act(改善) パフォーマンスを継続的に改善する処置を実施する 改善、処置
flowchart LR
  P["Plan: 確立・文書化・役割の枠組み"] --> D["Do: 導入・運用"]
  D --> C["Check: 監視・測定・レビュー"]
  C --> A["Act: 改善の処置"]
  A --> P

ひっかけ:「改善についての計画を作成し、改善を実施する」は「計画」という言葉が入っていても Act です。言葉の表面ではなく、何を目的にした活動かで判断します。

可用性の定義:「合意された時点・期間に、要求された機能を実行する能力」

可用性は、JIS Q 20000 の定義では「あらかじめ合意された時点又は期間にわたって、要求された機能を実行するサービスの能力」です。つまり「使いたいときにちゃんと使えるか」です。

用語 選択肢に出る言い回し
可用性 合意された時点・期間に、要求された機能を実行する能力
有効性 計画した活動が実行され、計画した結果が達成された程度
サービス継続 合意したレベルで提供し続けるために、深刻な影響を与えうるリスクと事象を管理する能力
SMS サービス提供者の活動と資源を指揮し、管理する一連の能力及びプロセス

「中断なしに、又は合意した可用性を一貫して提供する能力」も可用性に似ていますが、これは継続性寄りの表現なので誤りです。「要求された機能を実行する」という言葉が入っているかどうかで見分けます。

要点(試験直前に読む)

  • サービスデスクの形態:近くに置いて言語・文化・VIPに対応=ローカル、1か所に集めて効率と大量対応=集中、分散していても通信技術で単一に見える=バーチャル。
  • SLAは「サービスとサービス目標についての、提供者と顧客の合意」。内部グループとの合意はOLA、全サービスの一覧はサービスカタログ。
  • サービスレベル管理の要求事項は「サービスカタログとSLAを作成し、顧客と合意する」。SLAはニーズと費用を考えて決め、定期的に見直す。
  • インシデント管理=早く元に戻す(既知のエラーとの照合を含む)。問題管理=根本原因を見つけて再発を防ぐ。サービスサポートは5プロセス(インシデント・問題・構成・変更・リリース)と1機能(サービスデスク)。
  • PDCA:Plan=確立・文書化・役割の枠組み、Do=導入・運用、Check=監視・測定・レビュー、Act=改善の処置を実施。
  • 可用性=「合意された時点・期間に、要求された機能を実行する能力」。

ひっかけ

  • 「全ての項目に設定」「全ての項目にペナルティ」「将来も変更不要」のような極端なSLAの方針は誤り。「ニーズと費用を考慮」が正解。
  • 障害報告を既知のエラーと照合するのは問題管理ではなくインシデント管理。目的が回復なのか再発防止なのかで判断する。
  • 「改善の計画を作成し、実施する」は「計画」という言葉があってもAct。PDCAは言葉の表面ではなく、活動の目的で当てはめる。
  • ITサービスマネジメントの管理プロセスを問われて、スケジュール・品質・リスク管理(プロジェクトマネジメント側)を選ばない。
  • サービスデスクの選択肢にある「全員を中央で統括管理」「他業務の担当者が兼任」は、3形態のどれの定義でもない作文。キーワード表で消す。

用語(21)

サービスマネジメント さーびすまねじめんと
ITサービスを、合意した品質で利用者に届け続けるための管理活動の全体。
⚠ プロジェクトマネジメントは期限のある開発を管理するもの。サービスマネジメントは運用を継続的に管理するもの。
ITIL Information Technology Infrastructure Library
ITサービス運用のベストプラクティスを集めたフレームワーク。
⚠ SLA(合意)、共通フレーム(ソフトウェアライフサイクルプロセス)、ISO 9001(品質マネジメントの規格)と混同させる選択肢が出る。
JIS Q 20000-1 じすきゅーにまんのいち
サービスマネジメントシステムの要求事項を定めた日本の規格(ISO/IEC 20000-1 に対応)。
⚠ ISO 9001 は品質マネジメントシステムの規格。
SMS Service Management System
サービス提供者の活動と資源を指揮し、管理するための一連の能力とプロセス。
⚠ 可用性や有効性の定義の選択肢に混ぜられる。「指揮し,管理する」とあればSMS。
SLA Service Level Agreement
サービスの内容とサービス目標について、サービス提供者と顧客が交わす合意。
⚠ OLAは組織内部との合意、サービスカタログは全サービスの一覧。「顧客との合意」がSLAの決め手。
OLA Operational Level Agreement
SLAを達成するために、サービス提供者がサービスデスクなどの内部グループと結ぶ合意。
⚠ SLAは対顧客、OLAは対内部グループ。
サービスカタログ さーびすかたろぐ
提供する全サービスの特徴・構成要素・料金などをまとめた一覧。
⚠ SLAは合意で、サービスカタログは情報の一覧。
サービスレベル管理 SLM: Service Level Management
サービスカタログとSLAを作って顧客と合意し、達成できているかを監視・見直すプロセス。
⚠ リスク評価はサービス継続・可用性管理、容量の計画はキャパシティ管理、費用の管理は予算業務及び会計業務。
インシデント管理 いんしでんとかんり
障害などで止まったサービスを、できるだけ早く通常の状態に戻すプロセス。
⚠ 問題管理は根本原因の特定と再発防止。既知のエラーとの照合は「早く直す」ためなのでインシデント管理。
問題管理 もんだいかんり
インシデントの根本原因を突き止め、再発を防ぐプロセス。
⚠ インシデント管理は回復を優先する。「根本原因」「再発防止」なら問題管理。
既知のエラー きちのえらー
根本原因や回避策がすでに分かっている不具合。
構成管理 こうせいかんり
サービスを構成する要素(CI)をCMDBで正しく把握し、他のプロセスに情報を提供するプロセス。
⚠ 変更管理は変更を認可するかどうかを決めるプロセス。
CMDB Configuration Management Database
構成アイテム(CI)とその関係を記録する、構成管理用のデータベース。
変更管理 へんこうかんり
変更要求(RFC)の影響と優先度を評価し、認可するか却下するかを決めるプロセス。
⚠ リリース管理は、認可された変更を実際に展開するプロセス。
リリース管理 りりーすかんり
承認されたものを、正しい場所に適切な時期に展開するプロセス。
⚠ 変更管理は認可を決める段階、リリース管理は展開する段階。
サービスデスク さーびすですく
利用者とサービス提供組織の間に立つ単一窓口で、ITILではプロセスではなく「機能」に分類される。
⚠ インシデント管理などの「プロセス」と種別が違う。
ローカルサービスデスク ろーかるさーびすですく
利用者の近くに置き、言語・文化の違いやVIPへの対応に向くサービスデスク。
⚠ 集中は1か所か少数に集める形、バーチャルは分散した要員が通信技術で単一の窓口に見える形。
集中サービスデスク しゅうちゅうさーびすですく
1拠点または少数の場所に集め、要員を効率的に配置して大量の問い合わせに対応するサービスデスク。
⚠ バーチャルは要員が分散している。集中は要員が物理的に集まっている。
バーチャルサービスデスク ばーちゃるさーびすですく
複数の地域に分散した要員を通信技術で結び、利用者からは単一のデスクに見せるサービスデスク。
⚠ 「分散」とあってもローカルではない。「単一のように見える」ならバーチャル。
可用性 かようせい
あらかじめ合意された時点や期間に、要求された機能を実行できるサービスの能力。
⚠ 有効性は計画した結果を達成した程度、サービス継続はリスクと事象を管理する能力。
有効性 ゆうこうせい
計画した活動が実行され、計画した結果が達成された程度。
⚠ 可用性の選択肢に混ぜられる。「計画した結果」とあれば有効性。

このレッスンの過去問

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