インシデント管理と問題管理
インシデント管理と問題管理の違いを説明でき、「どれがインシデントか」「最初にやる活動は何か」「既知の誤りとは何か」「問題管理の事前予防的な活動はどれか」を問う科目Aの問題を自力で解けるようになる。
「サービスを早く戻す」インシデント管理と「原因を断って再発を防ぐ」問題管理は、選択肢で入れ替えて出題される定番の組み合わせです。実務でも、障害対応の会議で「いまは復旧が先か、原因究明が先か」を整理するときの共通語になります。
このレッスンで稽古する(用語チェック・過去問)結論:インシデント管理は「早く戻す」、問題管理は「原因を断つ」
インシデント管理の目的は、止まったり遅くなったりしたサービスをできるだけ早く元に戻すことです。問題管理の目的は、インシデントの根本原因を突き止めて取り除き、発生や再発を防ぐことです。試験では、この2つの役割をすり替えた選択肢がほぼ必ず出てきます。
たとえば台所の水漏れなら、バケツを置いて床を拭き、台所を使える状態に戻すのがインシデント管理です。配管のどこが傷んでいるかを調べて交換し、二度と漏れないようにするのが問題管理です。
| 観点 | インシデント管理 | 問題管理 |
|---|---|---|
| 目的 | サービスを早く元に戻す | 根本原因を特定し、発生・再発を防ぐ |
| 扱う対象 | インシデント(中断・品質低下など) | 問題(インシデントの根本原因) |
| 代表的な活動 | 記録→分類→優先度付け→段階的取扱い、既知の誤りとの照合 | 根本原因の分析、再発防止策の決定、インシデントの傾向分析 |
| 時間軸 | いま起きていることへの対処 | 起きたことの原因究明と、将来の予防 |
インシデントとは何か:対象の見分け方
インシデントとは、サービスに対する計画外の中断、サービスの品質の低下、またはまだ顧客や利用者へのサービスに影響していない事象のことです。最後のものの例には、二重化したサーバの片方が故障したものの、もう片方が動いていてサービスは止まっていない状態があります。
見分けるコツは「サービスそのものに起きた異常か」です。原因・対応の行為・利用者からのお願いは、インシデントそのものではありません。
| 事象 | 区分 |
|---|---|
| アプリケーションの応答が大幅に遅い | インシデント(品質の低下) |
| 夜間バッチのプログラムが異常終了した | インシデント(中断) |
| 異常終了の原因になったプログラムの誤り | 問題(根本原因) |
| 異常終了の検知、保守担当者の緊急出社 | インシデントへの対応行為 |
| 機能や使い方の問合せ、新人への教育依頼 | サービス要求など(インシデントではない) |
| 新設営業所へのサービス提供の要求 | 要求であって、インシデントではない |
サービス要求とは、情報・助言・サービスへのアクセス・事前に承認されている変更などを求めるもので、異常ではありません。
インシデント管理の進め方:最初は必ず「記録」
インシデント管理は 記録 → 分類 → 優先度付け → 段階的取扱い(必要なとき)→ 解決 → 終了 の順に進めます。最初に記録するのは、記録がないと分類も優先度付けもできず、後で問題管理が傾向を分析する材料も残らないからです。優先度は、影響度(どれだけ広く業務に響くか)と緊急度(どれだけ急ぐか)を考えて付けます。
報告を受けたら、既知の誤り(原因や回避策がすでに分かっている問題)に当てはまるかを照合します。当てはまれば、用意された回避策ですぐに復旧できます。この照合はインシデント管理の活動です。
flowchart TD
A["インシデント発生"] --> B["記録"]
B --> C["分類"]
C --> D["優先度付け(影響度・緊急度)"]
D --> E{"既知の誤りに該当?"}
E -->|"はい"| F["回避策で復旧"]
E -->|"いいえ"| G["段階的取扱いで専門チームへ"]
G --> H["復旧"]
H --> I["問題管理:根本原因を分析"]
I --> J["既知の誤りとして記録"]
段階的取扱い(エスカレーション)とは、自分たちで解決できないインシデントを、より専門的なグループや上位の権限者に引き継ぐことです。窓口となって初期の情報を集め、利用者と連絡を取り続けるのが一次サポートです。専門的な技能と経験を持つのが二次サポートで、一次から二次へ解決を依頼するのがエスカレーションです。
| 用語 | 意味 | 主に関わるもの |
|---|---|---|
| エスカレーション(段階的取扱い) | 解決をより専門的・上位のグループへ引き継ぐ | インシデント管理 |
| 回避策 | 根本的に解決できるまで、影響を減らしたり無くしたりする方法 | インシデント管理・問題管理 |
| 予防処置 | まだ起きていない不具合の原因を取り除く処置 | 問題管理・改善活動 |
| 継続的改善 | サービスやプロセスを繰り返し良くしていく活動 | サービスマネジメント全体 |
問題と既知の誤り:記録はつながっている
問題とは、1つ以上のインシデント(まだ起きていない潜在的なものも含む)の根本原因です。そのうち根本原因が特定されている、または回避策が存在する問題を既知の誤りと呼びます。
| 用語 | 一言でいうと | 例 |
|---|---|---|
| インシデント | 起きた異常(症状) | バッチの異常終了 |
| 問題 | その根本原因 | プログラムの誤り(原因がまだ分からない段階も含む) |
| 既知の誤り | 原因が特定済み、または回避策がある問題 | 誤りの箇所が分かり、再実行の手順で回避できる |
問題の記録には、その発端となったインシデントの記録を相互参照できる情報を含めます。1つの問題が複数のインシデントの原因になることもあるので、記録は1対1とは限りません。既知の誤りが特定されても、インシデントの記録は削除しません。
問題管理の活動:事後対応と事前予防
問題管理の活動は、インシデントが起きてから動く事後対応的なものと、起きる前に手を打つ事前予防的なものに分かれます。事前予防的な活動の代表は、インシデントの発生傾向を分析して、将来のインシデントを予防する方策を提案することです。
| 区分 | 活動の例 |
|---|---|
| 事後対応的 | 起きた問題を分類して優先度を設定する、根本原因を分析する、再発防止の処置を決める、解決策の有効性を評価する、解決後に再発がないか監視する |
| 事前予防的 | インシデントのデータや発生傾向を分析し、将来のインシデントを予防する方策を提案する |
選択肢には、別のプロセスの活動も紛れ込みます。キーワードで見分けましょう。
| 選択肢に出てくる活動 | 正しいプロセス |
|---|---|
| 障害報告が既知の誤りに該当するか照合する | インシデント管理 |
| 影響と緊急度からインシデントに優先度を付ける | インシデント管理 |
| 根本原因の分析、再発防止の処置の決定、傾向分析 | 問題管理 |
| ディスクの空き容量がしきい値に近づいたので対策する | 容量管理 |
| プログラムを変更したときの影響度を調べる | 変更管理 |
| サービスデスクの顧客満足度が目標を満たすか評価する | サービスレベル管理 |
| リリースを稼働環境へ展開する | リリース及び展開管理 |
| 情報・助言・アクセス・事前承認済みの変更の要求を実現する | サービス要求管理 |
障害の現場での初動:利用者とオペレータ
画面にエラーメッセージが出てアプリケーションが止まったら、利用者はまずエラーメッセージをマニュアルで確認し、自分で対応できる障害か、情報システム部門に頼むべき障害かを判断します。いきなり再起動したり同じ操作を繰り返したりすると、データを壊したり、原因の手がかりを消したりするおそれがあります。
オペレータが障害の発生を確実に知るには、システムコンソールへ出るアラームなどのメッセージに連動して、信号表示灯を点灯させたり報知器を鳴らしたりする仕組みが有効です。モニタカメラは人が見ていなければ気づけません。メモリダンプは原因を調べるための情報で、バックアップは復旧のための備えなので、どちらも「気づく」ための手段ではありません。
運用中の事象から「インシデント」を選ぶ
ア 異常終了の検知
イ プログラムの誤り
ウ プログラムの異常終了
エ 保守担当者の緊急出社
出典:基本情報技術者試験 科目A免除 修了試験 20201213 実施分 問57
解き方と答えを見る
- 問題文の出来事を時系列に並べる:①プログラムが異常終了 → ②運用担当者が検知 → ③保守担当者が緊急出社して回復 → ④後日、原因のプログラムの誤りを修正。
- 各選択肢を「サービスに起きた異常」「原因」「対応行為」に仕分ける。
- ア「異常終了の検知」とエ「保守担当者の緊急出社」は、インシデントへの対応行為なのでインシデントではない。
- イ「プログラムの誤り」は、異常終了を引き起こした根本原因なので、問題にあたる。
- ウ「プログラムの異常終了」は、サービス(夜間バッチ)の計画外の中断なのでインシデントにあたる。
答え:ウ(プログラムの異常終了)。原因であるプログラムの誤りは「問題」で、検知や出社は対応行為。
インシデントに対して最初にやる活動を選ぶ
ア 記録
イ 段階的取扱い
ウ 分類
エ 優先度の割当て
解き方と答えを見る
- インシデント管理の順番を思い出す:記録 → 分類 → 優先度の割当て → 段階的取扱い(エスカレーション)。
- 分類も優先度付けも、記録した内容をもとに行うので、記録より先にはできない。
- 段階的取扱いは、自分たちで解決できないと分かってから行うので、さらに後になる。
- したがって、最初に行うのは「記録」。
答え:ア(記録)
問題管理のうち事前予防的な活動を選ぶ
ア インシデントの発生傾向を分析して,将来のインシデントを予防する方策を提案する。
イ 検出して記録した問題を分類して,対応の優先度を設定する。
ウ 重大な問題に対する解決策の有効性を評価する。
エ 問題解決後の一定期間,インシデントの再発の有無を監視する。
解き方と答えを見る
- 各選択肢が「起きたことへの対応」か「これから起きることの予防」かを判定する。
- イ「記録した問題を分類して優先度を設定」は、すでに起きた問題への対応なので事後対応的。
- ウ「重大な問題の解決策の有効性を評価」も、起きた問題の解決後の確認なので事後対応的。
- エ「解決後の一定期間、再発を監視」も、起きた問題の後始末なので事後対応的。
- ア「インシデントの発生傾向を分析し、将来のインシデントを予防する方策を提案」だけが、まだ起きていないインシデントへの手当てで、事前予防的。
答え:ア(発生傾向を分析して、将来のインシデントを予防する方策を提案する)
要点(試験直前に読む)
- インシデント管理=サービスを早く戻す。問題管理=根本原因を特定し、発生・再発を防ぐ。
- インシデント=計画外の中断、品質の低下、またはまだ顧客や利用者へのサービスに影響していない事象。問合せや教育依頼はインシデントではない。
- インシデント管理の順番は「記録→分類→優先度付け→段階的取扱い」。最初は必ず記録。
- 障害報告を既知の誤りと照合するのはインシデント管理。既知の誤り=原因が特定済み、または回避策がある問題。
- 問題の記録には、発端となったインシデントの相互参照情報を入れる。インシデントの記録は削除しない。
- 問題管理の事前予防的な活動=インシデントの発生傾向を分析して、将来のインシデントを予防する方策を提案すること。
ひっかけ
- 「異常終了」と「プログラムの誤り」が並んだら、症状(インシデント)と原因(問題)を区別する。検知や緊急出社は対応行為で、どちらでもない。
- インシデント管理の選択肢に「根本原因の分析」「再発防止の処置を決める」「傾向分析」が出たら、それは問題管理の活動なので外す。
- 「最初に行う活動」は分類や優先度付けではなく記録。記録がないと他の活動ができない、と考えれば迷わない。
- ディスク空き容量(容量管理)、プログラム変更の影響調査(変更管理)、顧客満足度の評価(サービスレベル管理)は、インシデント管理の活動に見せかけたひっかけ。
- 問題管理の「事前予防的」を問われたら、まだ起きていないインシデントを防ぐ活動を選ぶ。問題の分類・解決策の評価・再発の監視は事後対応的。
用語(14)
サービスに対する計画外の中断、サービスの品質の低下、またはまだ顧客や利用者へのサービスに影響していない事象。
⚠ 問題と混同しやすい。インシデントは「起きた異常(症状)」、問題は「その根本原因」。
インシデントを記録・分類・優先度付けし、必要に応じて段階的に取り扱いながら、サービスをできるだけ早く元に戻すプロセス。
⚠ 問題管理と混同しやすい。「早く戻す・既知の誤りとの照合・優先度付け」ならインシデント管理、「根本原因・再発防止・傾向分析」なら問題管理。
情報・助言・サービスへのアクセス・事前に承認されている変更などを利用者が求めるもので、異常ではない。
⚠ インシデントと混同しやすい。使い方の問合せや教育依頼は要求であり、中断や品質低下ではないのでインシデントではない。
1つ以上のインシデント(潜在的なものを含む)の根本原因。
⚠ インシデントと混同しやすい。「プログラムの誤り」のような原因側が問題で、「異常終了」のような症状側がインシデント。
インシデントの根本原因を突き止めて取り除き、インシデントの発生や再発を防ぐプロセス。
⚠ インシデント管理と混同しやすい。中断したサービスを合意した時間内に復旧するのはインシデント管理の目標。
根本原因が特定されている、または回避策が存在する問題。
⚠ 新しいインシデントやプログラムの誤り一般と混同しやすい。「原因特定済み または 回避策あり」の「問題」であることが条件。
根本的な解決ができるまでの間、インシデントや問題の影響を減らしたり無くしたりする方法。
⚠ 恒久的な解決策と混同しやすい。回避策は原因を取り除かず、影響をしのぐだけ。
自分たちで解決できないインシデントの解決を、より専門的なグループや上位の権限者に依頼して引き継ぐこと。
⚠ 回避策・予防処置と混同しやすい。一次サポートから二次サポートへ解決を依頼する、という「引き継ぎ」がエスカレーション。
一次サポートは窓口として初期情報を集め利用者と連絡を取り続けるグループ、二次サポートは専門的な技能と経験で解決にあたるグループ。
インシデントにどの順番で対応するかの度合いで、影響度と緊急度を考えて決める。
⚠ 影響度だけ、緊急度だけで決めると誤解しやすい。両方を考慮する。
それを取り除けば同じインシデントが起きなくなる、おおもとの原因。
インシデントの発生傾向を分析し、将来のインシデントを予防する方策を提案する活動。
⚠ 事後対応的な活動と混同しやすい。問題の分類・優先度設定、解決策の評価、再発の監視は、起きた問題への対応なので事後対応的。
まだ起きていない不具合について、その原因を取り除くための処置。
⚠ エスカレーションと混同しやすい。予防処置は原因への手当てで、解決の引き継ぎではない。
サービスやプロセスを繰り返し見直して良くしていく活動。
このレッスンの過去問
- インシデント管理の対象(サービス中断・品質低下)平成22年度 春期 基本情報技術者試験 午前 問54
- インシデント管理プロセスの活動順序(記録→分類→優先度→段階的取扱い)平成27年度 春期 基本情報技術者試験 午前 問57
- インシデント及びサービス要求管理の活動(既知の誤りとの照合)平成29年度 春期 基本情報技術者試験 午前 問57
- 既知の誤り(Known Error)の定義平成26年度 春期 基本情報技術者試験 午前 問56
- 問題管理の目標(根本原因の特定と再発防止)平成28年度 春期 基本情報技術者試験 午前 問56
- 問題管理の事前予防的活動(傾向分析)平成30年度 春期 基本情報技術者試験 午前 問55
- システム障害時の利用者の初動(エラーメッセージ確認)基本情報技術者試験 科目A免除 修了試験 20170611 実施分 問56
- 障害発生を確実に認知する手段(アラーム連動表示)平成26年度 秋期 基本情報技術者試験 午前 問58