企業全体をつなぐ業務システム(ERP・SCM・SFA)
ERP・SCM・SFA・グリーン調達(CSR調達)・オムニチャネルの定義を、選択肢の説明文から見分けて正解を選べるようになる。特に「どこからどこまでをつなぐ仕組みか」で即答できる状態をめざす。
何度も出題されている分野です。97回のうち、SCMとグリーン調達は本試験系でそれぞれ5回、免除試験を含めるとさらに多く出ています。範囲が狭く、「何と何をつなぐか」で見分けられるので、覚えれば取りやすい問題です。
このレッスンで稽古する(用語チェック・過去問)結論:用語は「何をつなぐか」で見分ける
このレッスンの用語は、どの範囲の情報をつなぐかで見分けられます。社内の基幹業務ならERP、会社をまたぐ供給の流れならSCM、営業活動ならSFAです。選択肢の文に出てくるキーワードを拾えば、ほとんどの問題が解けます。
| 用語 | つなぐ範囲 | 目的 | 選択肢に出るキーワード |
|---|---|---|---|
| ERP | 社内の基幹業務(生産・販売・在庫・会計・人事) | 経営資源の有効活用・経営効率の向上 | 企業全体の経営資源/統合管理 |
| SCM | 調達から販売まで、複数の企業にまたがる流れ | 納期短縮・在庫削減・コスト低減 | 購買・生産・販売・物流/企業間/全体最適 |
| SFA | 営業部門の活動 | 営業の効率と品質を上げる | 営業活動にIT/商談/訪問履歴 |
| CRM | 顧客との接点 | 顧客との関係を良くする | 顧客情報の一元化/きめ細かな対応 |
| オムニチャネル | 店舗・ネット・電話など全ての販売窓口 | どこからでも同じ便利さで買える | 複数の顧客接点/一元管理/同質の利便性 |
| グリーン調達 | 自社と仕入先 | 環境負荷の小さいものを優先して買う | 環境負荷が小さい/優先して購入 |
SCM:会社の外まで見渡して在庫を減らす
SCM(サプライチェーンマネジメント)は、原材料の調達から製造・物流・販売までの流れ(供給の鎖=サプライチェーン)を、企業の枠を越えて全体最適で管理する考え方です。目的は納期短縮・在庫削減・コスト低減です。
リレー競走にたとえると分かりやすいです。走者(会社)がそれぞれ自分の区間だけ速く走っても、バトンの受け渡しでもたつけばチームは勝てません。SCMは、走者全員の情報を共有して受け渡しのムダ(=在庫の積み上がり)を減らす取り組みです。
flowchart LR
A["仕入先(調達)"] --> B["自社(生産・在庫・会計=ERPの範囲)"]
B --> C["物流業者(配送)"]
C --> D["小売店(販売)"]
上の矢印全体を最適化するのがSCM、真ん中の自社の中を統合するのがERPです。
試験での問われ方
- 定義・目的:「購買,生産,販売及び物流」「複数の企業や組織にまたがる」「納期短縮や在庫削減」があればSCM
- 改善指標:不良在庫の減少率が正解。残業時間・販売単価・顧客数はSCMと関係が薄い
ERP:社内の基幹業務を1つにまとめる
**ERP(統合基幹業務システム)**は、生産・販売・在庫・会計・人事など、会社の根幹となる業務(基幹業務)の情報を1つのシステムで統合管理し、企業全体の経営資源(人・物・金・情報)を有効に活用する考え方です。部署ごとに別々につけていた家計簿を、家族全員で1冊にまとめるイメージです。
「ERPパッケージを導入すると効果が出るケース」も問われます。正解は「グループ各社の生産・販売・在庫・会計などの情報が連携されていない」状態です。営業の進捗共有ができていないのはSFA、設計図面の版管理ができていないのはPDM(製品データ管理)の出番です。
| 比べる点 | ERP | SCM |
|---|---|---|
| 範囲 | 主に1社(企業グループ)の中 | 複数の企業にまたがる |
| 対象 | 基幹業務すべて(会計・人事も含む) | 調達→生産→物流→販売の流れ |
| 目的 | 経営効率の向上 | 納期短縮・在庫削減 |
ERPとSFAの定義問題は、ほぼ同じ選択肢で出る
「ERPを説明したものはどれか」と「SFAを説明したものはどれか」は、ほぼ同じ4つの選択肢で出題されています(ア=SFA、イ=リテールサポート、ウ=ERP、エ=EC。エは語尾が少し違います)。4つの文の持ち主を覚えておけば、どちらを聞かれても答えられます。
| 選択肢の文のキーワード | 正体 |
|---|---|
| 営業活動にIT/営業の効率と品質 | SFA |
| 卸売業・メーカが小売店の経営を支援 | リテールサポート |
| 企業全体の経営資源を総合的に計画・管理 | ERP |
| 商取引にインターネットなどの電子的ネットワーク | EC(電子商取引) |
SFAとコンタクト管理:営業部隊の道具
SFA(営業支援システム)は、営業活動にITを使って営業の効率と品質を上げ、売上や顧客満足度を高める仕組みです。顧客との関係全体を扱うCRMとよく比べられます。
SFAの基本機能の1つコンタクト管理は、顧客訪問日や営業結果などの履歴を管理し、見込客・既存客への営業に活かす機能です。ほぼ同じ問題が繰り返し出ているので、「履歴」が答えと覚えれば足ります。
| 用語 | 中心にあるもの | 見分けのキーワード |
|---|---|---|
| SFA | 営業担当者の活動・商談 | 商談の進捗/営業効率 |
| コンタクト管理(SFAの機能) | 顧客との接触の履歴 | 訪問日・営業結果の履歴 |
| CRM | 顧客との関係 | 顧客情報・購買履歴・クレームを一元管理/良好な関係 |
| ナレッジマネジメント | 個人のノウハウ | 知識を組織で共有 |
グリーン調達とCSR調達:「買う側」が環境や人権に配慮する
グリーン調達は、品質や価格の条件を満たしたうえで、環境負荷が小さい製品・サービスを、環境負荷の低減に努める事業者から優先して買うことです。「安いから買う」に「環境にやさしいか」という基準を足すイメージです。
CSR調達はそれを広げたもので、環境だけでなく人権・労働環境なども調達基準に示し、調達先に守ってもらうことです。CSRは企業の社会的責任のことです。どちらも「買う側」が仕入先に基準を求める点がポイントです。
| 選択肢の説明 | 正体 |
|---|---|
| 環境負荷の小さい製品を、環境に配慮する事業者から優先購入 | グリーン調達 |
| 環境・人権への配慮を調達基準にし、調達先に遵守を求める | CSR調達 |
| 環境活動をアピールして投資家から資金を募る | グリーンボンド(環境債) |
| エコマークなど環境表示の国際規格 | 環境ラベル |
| 自然エネルギーの電力を取引可能にする証書 | グリーン電力証書 |
| 最も安い製品を選ぶ | 単なるコスト重視(CSR調達ではない) |
| 災害に備え調達先を複数化 | リスク分散(事業継続の対策) |
| EDIで迅速・正確に調達 | 調達の効率化 |
オムニチャネル:どの窓口からでも同じように買える
オムニチャネルは、実店舗・オンライン店舗・コールセンタなど全ての顧客接点(チャネル)で、顧客情報や在庫情報を一元管理し、どこからでも同じ便利さで買えるようにする戦略です。「オムニ」は「すべての」という意味です。
| 選択肢の事例 | 正体 |
|---|---|
| 店舗・ネット・コールセンタで顧客・在庫情報を共有して接客 | オムニチャネル |
| 取引情報を企業間で電子的に交換 | EDI(電子データ交換) |
| POSデータで売れ筋分析 | POS分析 |
| 店舗とネットの商品を分けて独立させる | チャネルの分離(オムニチャネルの逆) |
要点(試験直前に読む)
- ERP=社内の基幹業務(生産・販売・在庫・会計)を統合し、企業全体の経営資源を有効活用する
- SCM=調達から販売までを複数企業で全体最適化。目的は納期短縮・在庫削減、改善指標は不良在庫の減少率
- SFA=営業活動にIT。コンタクト管理=訪問日・営業結果の「履歴」管理
- グリーン調達=環境負荷の小さい製品を優先購入。CSR調達=環境・人権の基準を調達先に守らせる
- オムニチャネル=全ての顧客接点で顧客・在庫情報を一元管理し、どこでも同じ便利さで買える
- ERP・SFAの定義問題はほぼ同じ選択肢(ア=SFA、イ=リテールサポート、ウ=ERP、エ=EC)
ひっかけ
- 「基幹業務の統合」はERP、「複数の企業にまたがる」「物流」はSCM。範囲の広さで見分ける
- SCMの改善指標で、残業時間・販売単価・顧客数を選ばせる。供給の流れの最適化なので「在庫」の指標を選ぶ
- ERP導入効果の問題で、営業の進捗共有(SFA)や図面の版管理(PDM)の課題を混ぜてくる。「生産・販売・在庫・会計の情報が連携されていない」を選ぶ
- グリーン調達の問題で、グリーンボンド・環境ラベル・グリーン電力証書を並べてくる。「買う」話かどうかで見分ける
- オムニチャネルの事例問題で、複数店舗のPOS分析・監視カメラ・EDIを並べてくる。「店舗とネットなど異なる顧客接点を統合しているか」で見分ける
用語(15)
生産・販売・在庫・会計・人事などの基幹業務を統合管理し、企業全体の経営資源を有効活用する仕組み。
⚠ SCMは複数企業にまたがる供給の流れ。ERPは主に1社(グループ)の中の基幹業務。
調達から販売までの流れを企業の枠を越えて全体最適で管理し、納期短縮や在庫削減を図る考え方。
⚠ ERPは社内の基幹業務の統合。「企業間」「物流」「在庫削減」があればSCM。
営業活動にITを使って営業の効率と品質を高め、売上や顧客満足度の向上をめざす仕組み。
⚠ CRMは顧客との関係づくりが中心。SFAは営業担当者の活動・商談が中心。
SFAの機能の1つで、顧客訪問日や営業結果などの履歴を管理して営業に活かすもの。
⚠ 問合せへの回答やノウハウの共有ではない。キーワードは「履歴」。
顧客情報・購買履歴・クレームなどを一元管理し、顧客との良好な関係を築く仕組み。
⚠ SFAは営業活動の効率化。CRMは顧客との関係が目的。
卸売業やメーカが小売店の経営を支援し、自社との取引拡大につなげる取り組み。
⚠ ERP・SFAの定義問題で誤りの選択肢として出る。「小売店を支援」ならこれ。
インターネットなどの電子的なネットワークを使って商取引を行うこと。
⚠ ERP・SFAの定義問題で誤りの選択肢として出る。
品質・価格を満たしたうえで、環境負荷の小さい製品を環境に配慮する事業者から優先して購入すること。
⚠ グリーンボンドは資金集め、環境ラベルは表示の規格、グリーン電力証書は電力の証書。いずれも「購入」ではない。
環境や人権などへの配慮を調達基準として示し、調達先に守るよう求めること。
⚠ 最安値の購入、調達先の複数化、EDIによる効率化はCSR調達ではない。
環境保全の事業に使う資金を投資家から集めるための債券。
⚠ グリーン調達と名前が似ているが、資金を集める側の話。
店舗・ネット・コールセンタなど全ての顧客接点で情報を一元管理し、どこからでも同じ便利さで買えるようにする戦略。
⚠ チャネルを分けて独立させるのは逆の考え方。複数店舗のPOS分析やEDIはチャネル統合ではない。
受発注・出荷・請求などの取引データを、企業間で決まった形式で電子的にやり取りすること。
⚠ オムニチャネルやCSR調達の誤りの選択肢として出る。
設計図面や関連ドキュメントなど製品の設計情報を一元管理する仕組み。
⚠ ERP導入効果の問題で、「図面の最新版が分からない」はERPではなくPDMの課題。
個人が持つノウハウや経験を組織全体で共有し、創造的な仕事につなげる取り組み。
⚠ SCMの定義問題の誤りの選択肢。「知的資産の共有」ならこれ。
社員のスキルや行動特性を把握し、適切な配置や評価に活かす人事の取り組み。
⚠ SCMの定義問題の誤りの選択肢。「人員配置・評価」ならこれ。
このレッスンの過去問
- ERP(統合基幹業務システム)の定義令和5年度 基本情報技術者試験 科目A 公開問題 問17
- SCM(サプライチェーンマネジメント)の定義平成29年度 秋期 基本情報技術者試験 午前 問69
- グリーン調達の定義平成29年度 秋期 基本情報技術者試験 午前 問64
- SFA(営業支援システム)の定義平成23年度 特別試験 基本情報技術者試験 午前 問68
- オムニチャネル戦略の定義と事例令和8年度 基本情報技術者試験 科目A 公開問題 問16