外部委託(アウトソーシング)の使い方とリスク
アウトソーシング・BPO・システムインテグレータの違いを見分けられるようになる。外部委託のメリット、品質を守る方法、委託後の「活用工程」で発注者がやることを選べるようになる。
DX の時代は「全部を自社で作る・回す」会社のほうが少なく、何をどこまで外に任せるかの判断が経営課題になっている。試験では似た言葉の定義を入れ替えた選択肢がよく出るので、言葉の区別を覚えた分だけ確実に点になる。
このレッスンで稽古する(用語チェック・過去問)結論:任せる範囲の広さで言葉が変わる
アウトソーシングは、自社の仕事を外部の専門業者に任せること全般を指す。任せる範囲が「業務プロセスまるごと」なら BPO、「情報システムの企画から運用まで一括」なら システムインテグレータ への発注になる。試験は、この3つと IaaS・SaaS などクラウドの説明を入れ替えて出してくる。
たとえるなら、アウトソーシングは「家事を外に頼む」こと全般にあたる。BPO は「経理部門の仕事を、使うシステムごと代行会社に任せる」イメージで、システムインテグレータは「家の設計・建築・メンテナンスを一社にまとめて頼む工務店」に近い。
BPO:いちばん出る。業務プロセス+システム運用を一体で委託
BPO(Business Process Outsourcing)は、管理部門(経理・人事など)やコールセンタといった特定部門の業務プロセス全般を、業務システムの運用と一体で外部の専門業者に任せること。キーワードは「業務プロセス」「部門ごと」「一体として委託」の3つ。
システムだけを借りる話ではなく、人がやる仕事の流れまで外に出す点が特徴。選択肢に「サーバを借りる」「ソフトをネット経由で使う」としか書いていなければ、それは BPO ではない。
| 用語 | 外に出す・借りるもの | 見分けるキーワード |
|---|---|---|
| BPO | 特定部門の業務プロセス全般+システム運用 | 「管理部門・コールセンタ」「業務プロセス」「一体として委託」 |
| IaaS | サーバ・ストレージなど基盤(処理能力・記憶容量) | 「サーバを所有せず」「処理能力や記憶容量の一部を借りる」 |
| SaaS / ASP | アプリケーションの機能 | 「ソフトを所有せず」「ネットワーク経由で機能を利用」「レンタル」 |
| オフショア開発・派遣活用 | 安い人件費の人材 | 「人件費が安い」「開発費用を低減」 |
| システムインテグレータ | システムの企画・構築・運用を一括で請け負う事業者 | 「一括して請け負う」 |
システムインテグレータ:「一括して請け負う」業者
システムインテグレータ(SIer)は、情報システムの企画・構築・運用などを一括して請け負う事業者のこと。ハードやソフトを組み合わせて(インテグレートして)、動くシステムに仕上げるまでを引き受ける。
「業務の一部を得意な外部企業に委託する」はアウトソーシングの説明、「アプリをネットでレンタル」は ASP/SaaS の説明なので、混同しないこと。
アウトソーシングの利点と欠点
運用を外に任せる最大の利点は、自社の情報システム部門を企画や開発など付加価値の高い仕事に専念させられること。
逆に欠点は、ノウハウが社外に出ていくこと。その結果、元の自社運用に戻しにくい、トラブルに自社で対応しにくい、問題点を把握しにくい、といった状態になる。試験ではこの「欠点」を「利点」として並べてひっかける。
品質低下リスクへの対策:品質指標を決めて改善を回す
外に任せると保守・運用の品質が下がるリスクがある。対策は、サービス品質を示す指標(稼働率、障害復旧時間など)と目標レベルを委託先と取り決め、そのうえで改善活動を続けること。この取決めを文書化したものを SLA(Service Level Agreement:サービスレベル合意) と呼ぶ。
「料金体系を明文化」「費用の査定ができる人材を確保」はコスト対策、「自社の人材強化計画」は体制の対策。どれも大事だが、品質低下への直接の対策ではない。
ITアウトソーシングの3工程:活用工程は「使いながら改善」
ITアウトソーシングは 計画工程 → 準備工程 → 活用工程 の順に進む。活用工程はサービスを使い始めた後の段階で、稼働実績の報告や利用者の評価をもとに、改善案を委託先とまとめるのが発注者の仕事。
flowchart LR
A["計画工程: RFP作成・提案を受けて委託先を決める"] --> B["準備工程: 移行計画・連絡体制の決定・テスト"]
B --> C["活用工程: 実績報告・利用者評価から改善案"]
**RFP(提案依頼書)**は委託先候補に提案を出してもらうための文書なので計画工程、移行計画・テストは利用開始前の準備工程になる。
活用工程で発注者が行うことを選ぶ
ア 移行計画やサービス利用におけるコミュニケーションプランを委託先と決定する。
イ 移行ツールのテストやサービス利用テストなど,一連のテストを委託先と行う。
ウ 稼働状況を基にした実績報告や利用者評価を基に,改善案を委託先と取りまとめる。
エ 提案依頼書を作成,提示して委託先候補から提案を受ける。
出典:基本情報技術者試験 科目A免除 修了試験 20251214 実施分 問46
解き方と答えを見る
- 3つの工程の境目を確認する。計画工程は委託先を決めるまで、準備工程は委託先が決まってから利用開始まで、活用工程は利用開始後。
- エ「提案依頼書を作成・提示して提案を受ける」は委託先を決める前の作業なので、計画工程。
- ア「移行計画やコミュニケーションプランを決める」は利用開始に向けた段取りなので、準備工程。
- イ「移行ツールのテストやサービス利用テスト」も利用開始前の確認なので、準備工程。
- ウ「稼働状況にもとづく実績報告や利用者評価から改善案をまとめる」は、サービスを使い始めてからでないとできない。よって活用工程。
答え:ウ(実績報告・利用者評価をもとに改善案を委託先とまとめる)
要点(試験直前に読む)
- BPO=特定部門の業務プロセス全般を、システム運用と一体で外部委託すること(最頻出)。
- システムインテグレータ=情報システムの企画・構築・運用を一括して請け負う事業者。
- 運用委託の利点は、自社の情報システム部門を企画・開発に専念させられること。
- 品質低下リスクへの対策は、品質指標と目標レベルを委託先と取り決めて改善を回すこと(SLA)。
- 活用工程=利用開始後に、実績報告と利用者評価から改善案を委託先とまとめる段階。RFP は計画工程、移行計画・テストは準備工程。
ひっかけ
- BPO の問題に IaaS(サーバを借りる)、SaaS(ソフトの機能を使う)、人件費削減(派遣・オフショア)の説明が混ざる。「業務プロセス」「部門」「一体として委託」の3語がそろうものを選ぶ。
- アウトソーシングの利点として「元に戻しやすい」「自社でトラブル対応しやすい」「問題点を把握しやすい」が出る。どれもノウハウが外に出ることで逆に難しくなる欠点側なので誤り。
- 品質低下リスクの対策として「料金体系の明文化」「費用の査定人材」「自社人材の強化」が出る。品質ではなくコストや体制の対策なので、「品質指標と目標レベルの取決め」を選ぶ。
- 活用工程の問題に、計画工程(RFP)と準備工程(移行計画・テスト)の作業が混ざる。利用開始後にしかできない作業(実績・評価・改善)が活用工程。
- システムインテグレータの問題に、アウトソーシング(業務の一部を委託)や ASP(アプリのレンタル)の説明が混ざる。「一括して請け負う」が正解の目印。
用語(11)
自社の業務の一部または全部を、外部の専門業者に任せること。
⚠ BPO はその中でも「特定部門の業務プロセス全般をシステム運用ごと」任せる形。
管理部門やコールセンタなど特定部門の業務プロセス全般を、業務システムの運用と一体で外部に委託すること。
⚠ IaaS(サーバを借りる)・SaaS(ソフトの機能を使う)は IT 資源だけの利用で、業務プロセスは含まない。
情報システムの企画・構築・運用などを一括して請け負う事業者。
⚠ 「業務の一部を得意な外部に委託する」はアウトソーシング、「アプリをネットでレンタル」は ASP/SaaS。
サーバの処理能力や記憶容量など、システムの基盤をネットワーク経由で借りるサービス。
⚠ SaaS はアプリの機能を借りる。キーワードが「サーバ・処理能力・記憶容量」なら IaaS。
ソフトウェアを自社で持たず、事業者が提供するアプリの機能をネットワーク経由で使うサービス。
⚠ ASP とほぼ同じ意味で出題される。IaaS は基盤、SaaS はアプリ。
業務用アプリケーションをインターネット経由でレンタル提供する事業者やサービス。
⚠ SaaS と同じ系統。システムインテグレータ(一括請負)とは別物。
人件費の安い海外の企業や拠点にソフトウェア開発を委託して、費用を下げる手法。
⚠ 目的が「人件費の削減」なら BPO ではない。BPO は業務プロセスの委託。
サービス品質の指標と目標レベルを、提供者と利用者で取り決めた合意。
⚠ 料金体系の明文化はコストの話で、品質の取決め(SLA)とは違う。
稼働率や障害復旧時間など、サービスの品質を数値で測るための目安。
⚠ 費用の妥当性を測る指標とは違う。品質低下リスクへの対策で使うのはこちら。
発注者が委託先候補に、システムやサービスの提案を出してもらうために示す文書。
⚠ 委託先を決める前に使うので計画工程の作業。活用工程ではない。
ITアウトソーシングを、委託先決定まで/利用開始まで/利用開始後の3段階に分けたもの。
⚠ テストや移行計画は準備工程、実績報告と改善は活用工程。「利用開始の前か後か」で見分ける。
このレッスンの過去問
- アウトソーシングの利点基本情報技術者試験 科目A免除 修了試験 200907 実施分 問65
- BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)の定義平成30年度 秋期 基本情報技術者試験 午前 問62
- システムインテグレータの定義平成22年度 秋期 基本情報技術者試験 午前 問66
- アウトソーシングの品質低下リスク対応(サービス品質指標の取決め)平成29年度 春期 基本情報技術者試験 午前 問62
- ITアウトソーシング活用工程で発注者が行うこと(実績報告と改善)基本情報技術者試験 科目A免除 修了試験 20251214 実施分 問46