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システム戦略・3/7・12分

IT投資の管理と業績評価(BSC)

ゴール

IT投資の管理手法(ITポートフォリオ・事前/中間/事後評価・投資分類とKPI)と、バランススコアカード(BSC)の4つの視点、サービスプロフィットチェーンの順番を見分け、用語と選択肢を正しく対応させられるようになる。

免除試験も含めて繰り返し出ているテーマで、問われるのはほぼ「用語と分類の対応」です。計算はないので、比較表を一度頭に入れておけば取れる得点源になります。

このレッスンで稽古する(用語チェック・過去問)

全体像:IT投資を「選ぶ・測る・評価する」

このレッスンの知識は、**IT投資をどう選び(ITポートフォリオ)、どう測り(KPI・BSC)、いつ評価するか(事前・中間・事後評価)**という1本の流れにまとまります。前のレッスンのEA(エンタープライズアーキテクチャ)が「会社の業務とシステムの設計図」なら、このレッスンは「その設計図にいくら・どこへお金を出すか」の話です。

段階 使う道具 一言で
選ぶ ITポートフォリオ 投資をカテゴリに分けて配分を最適化
測る KPI・BSC 目的に合った指標で成果を見る
評価する 事前・中間・事後評価 計画前・実施中・完了後に振り返る

ITポートフォリオ:投資を「性格」で分けて配分する

ITポートフォリオとは、情報化投資をリスクや投資価値の似たもの同士でカテゴリに分け、カテゴリごとに資源(お金・人)を最適に配分する手法です。資産運用で「株・債券・預金に分けて配分する」のと同じ発想です。

よく出る4カテゴリと、それぞれの投資の直接の目的は次のとおりです。

カテゴリ 直接の目的 イメージ
戦略 市場での競争優位・ポジショニングの獲得 新サービスで攻める
情報 管理品質の向上(マネジメント・レポーティング・分析の支援) 経営ダッシュボード
トランザクション ルーチン業務のコスト削減・処理効率の向上 受発注・経理の自動化
インフラ 複数のアプリが共有する基盤の提供 ネットワーク・共通DB

問われ方:「リスクや投資価値の類似性でカテゴリ分け」と来たら答えはITポートフォリオ。並ぶダミーは3C分析(市場・競合・自社の分析)、EA(業務とシステムの全体設計)、ベンチマーキング(他社の優れたやり方と比べる)です。

IT投資マネジメントは「全社」と「個別プロジェクト」の2階建て

IT投資マネジメントは、企業全体の最適化を担う戦略マネジメントと、プロジェクト単位の最適化を担う個別プロジェクトマネジメントに分けられます。

区分 目的 実施項目の例
戦略マネジメント 企業レベルの最適化 全社のIT投資評価方法の決定、ポートフォリオの選択基準の決定、全社IT投資テーマの起案
個別プロジェクトマネジメント プロジェクト単位の最適化 実施計画の策定・予算配分、進捗評価と計画修正、完了後の効果検証

見分け方:選択肢に「全社規模」「複数のプロジェクト」「ポートフォリオ」があれば戦略マネジメントです。「このプロジェクトの計画・進捗・事後検証」なら個別プロジェクト側です。

IT投資マネジメントの2階建て戦略マネジメント(全社)評価方法・選択基準を決める複数のプロジェクトへ配分するプロジェクトAプロジェクトBプロジェクトC計画〜検証計画〜検証計画〜検証個別プロジェクトマネジメントプロジェクト単位の最適化
上の階の戦略マネジメントが全社を見て配分を決め、下の階の個別プロジェクトがそれぞれ計画から検証までを回す。

IT投資評価:事前・中間・事後で何をするか

個別プロジェクトのIT投資は、計画時・実施中・完了後の3回評価します。事前評価がいちばん問われます。

評価 タイミング やること
事前評価 計画時(実施前) 投資目的にもとづいて効果目標を設定し、実施するかどうかの判断材料を上位マネジメントに渡す
中間評価 実施中 計画と実績の差異と原因を分析し、投資額や効果目標を変えるか判断する
事後評価 完了後 設定した効果目標の達成状況を評価し、必要なら改善策を考える

ひっかけ:「事前に計画し…」のように「事前」という言葉が入っていても、中身が「効果が出る時期に合わせて評価する」なら事前評価の説明ではありません。「目標設定+実施可否の判断材料」がセットなら事前評価と覚えましょう。

計画時実施中完了後事前評価中間評価事後評価効果目標を設定実施可否の判断材料を渡す計画と実績の差異と原因を分析する効果目標の達成状況を評価する事前に決めた目標を事後に確かめる上位マネジメントへ渡すのは事前評価
時間軸の上に3回の評価を置き、事前評価で決めた効果目標を事後評価で確かめる流れを示す。

投資分類とKPI:目的と指標をつなげる

**KPI(重要業績評価指標)**は、目標にどれだけ近づいたかを数字で測る指標です。投資の目的が違えば、測るべきKPIも変わります。

投資分類 投資目的 KPIの例
業務効率化投資 作業プロセスの改善・生産性向上 納期遵守率、決算の所要日数
情報活用投資 ナレッジの可視化・共有 提案事例の登録件数、顧客への提案件数
戦略的投資 ビジネスの創出・競争優位の確立 新規事業のROI、新製品の市場シェア
IT基盤投資 維持管理コスト削減・システム性能向上 障害件数、検索の応答時間

解き方:表の穴埋めでは、KPIの中身から逆算します。「新規事業」「市場シェア」が出たら戦略的投資、「障害件数」「応答時間」ならIT基盤です。ポートフォリオの4カテゴリ(戦略・情報・トランザクション・インフラ)とほぼ対応しているので、まとめて覚えると楽です。

バランススコアカード(BSC):4つの視点

バランススコアカード(BSC)は、戦略を財務・顧客・内部ビジネスプロセス・学習と成長の4つの視点に分け、視点ごとに目標と指標を決めて管理する経営管理手法です。IT投資効果の評価にも使われます。売上だけ見ると近視眼になるので、「お金以外の3つ」も同時に見てバランスを取るのが名前の由来です。

4つの視点は丸暗記必須です。「ガバナンス」「遵法」「自社の強み」のような、それらしいけれど違う言葉で5つ目を作ってきます。

視点 問いかけ 指標の例
財務 株主・お金の面で成果は出たか 売上、利益、受注残、受注金額の比率
顧客 顧客にどう見られているか 顧客満足度、クレーム件数、継続取引
内部ビジネスプロセス 業務のやり方は優れているか 生産性、製造期間の短縮日数、提案数、事例登録数
学習と成長 人と組織は育っているか 研修受講時間、専門人材の育成数、資格取得者数

たとえるなら、BSCは健康診断です。体重(財務)だけでなく、周りからの評判(顧客)、生活習慣(業務プロセス)、筋トレや勉強(学習と成長)も測り、どこが弱いかを見ます。

似た名前に注意:EVM(出来高でプロジェクトの進捗とコストを管理)、PERT(作業の順番と日程を図で管理)、WBS(作業を細かく分解した一覧)は、どれもプロジェクト管理の道具で、4つの視点とは無関係です。

BSCの視点の見分け方(最頻出)

BSCで最も多い出題は「この目標と指標はどの視点か」です。コツは指標が何を数えているかを見ることです。

  • お金・受注を数えている → 財務(例:受注残、受注金額が全体の15%以上)
  • 顧客の反応を数えている → 顧客(例:クレーム件数、満足度の平均点)
  • 業務の速さ・量・質を数えている → 内部ビジネスプロセス(例:製造期間の短縮日数、顧客提案数)
  • 人の能力・育成を数えている → 学習と成長(例:研修受講時間、プロフェッショナル30名の育成)

ひっかけ:同じ4つの選択肢を使い回し、問う視点だけを変えて出題されます。「顧客提案数」は顧客という言葉が入っていても、測っているのは社内の活動量なので内部ビジネスプロセスです。言葉ではなく中身で判断しましょう。

指標が何を数えているかで決めるお金・受注例:受注残財務顧客の反応例:クレーム件数顧客業務の速さ・量・質例:製造期間の短縮日数内部ビジネスプロセス人の能力・育成例:研修受講時間学習と成長ひっかけ:顧客提案数活動量を数える→内部ビジネスプロセス
指標が何を数えているかを左で見て、右の視点に振り分ける。言葉に「顧客」が入っていても中身で決める。

サービスプロフィットチェーン:従業員満足から売上へ

サービスプロフィットチェーンは、ヘスケットらが示した「従業員が満足すると、最後に売上が伸びる」という因果の連鎖です。図の穴埋めで出ます。

flowchart LR
  A["従業員満足度の向上"] --> B["従業員の定着率向上"]
  A --> C["従業員の生産性向上"]
  B --> D["顧客サービスの向上"]
  C --> D
  D --> E["顧客満足度の向上"]
  E --> F["顧客ロイヤルティの向上"]
  F --> G["売上拡大"]

順番の覚え方:「満足(気に入る)」してから「ロイヤルティ(ずっと使い続ける)」になります。満足が先、ロイヤルティが後です。この2つの順序を入れ替えるのが定番のひっかけです。

例題 1

サービスプロフィットチェーンの穴埋め(c はどれか)

ジェームス L.ヘスケットによるサービスプロフィットチェーンを示した図の a ~ d に入るもののうち,c に該当するものはどれか。
フロー図: 「従業員満足度の向上」→ 二つに分岐し「a」と「従業員の生産性向上」→ 合流して「b」→ 「c」(太枠)→「d」→「売上拡大」。

ア 顧客サービスの向上
イ 顧客満足度の向上
ウ 顧客ロイヤルティの向上
エ 従業員の定着率向上

出典:基本情報技術者試験 科目A免除 修了試験 20120122 実施分 問67

解き方と答えを見る
  1. 出発点の「従業員満足度の向上」から2本に分かれる。片方が「従業員の生産性向上」なので、もう片方の a は「従業員の定着率向上」。
  2. 2本が合流する b は、定着して生産性も上がった従業員が生み出すもの=「顧客サービスの向上」。
  3. b の次の c は、良いサービスを受けた顧客の反応=「顧客満足度の向上」。
  4. c の次の d は、満足した顧客が使い続けること=「顧客ロイヤルティの向上」。その先が「売上拡大」で図とつながる。

答え:c は「顧客満足度の向上」(イ)。顧客ロイヤルティ(ウ)は d。

例題 2

BSC「学習と成長」のKPIを選ぶ

IT ベンダにおけるソリューションビジネスの推進で用いるバランススコアカードの,学習と成長の KPI の目標例はどれか。ここで,ソリューションとは“顧客の経営課題の達成に向けて,情報技術と専門家によるプロフェッショナルサービスを通して支援すること”とする。

ア サービスを提供した顧客に対して満足度調査を行い,満足度を 5 段階評価で平均 3.5 以上とする。
イ 再利用環境の整備によってソリューション事例の登録などを増やし,顧客提案数を前年度の 1.5 倍とする。
ウ 情報戦略のコンサルティングサービスに重点を置くために,社内要員 30 名を IT のプロフェッショナルとして育成する。
エ 情報戦略立案やシステム企画立案に対するコンサルティングの受注金額を,全体の 15%以上とする。

出典:平成27年度 春期 基本情報技術者試験 午前 問65

解き方と答えを見る
  1. 各選択肢が何を数えているかを見る。
  2. ア:顧客の満足度の平均点 → 顧客の視点。
  3. イ:事例登録を増やして顧客提案数を1.5倍に → 業務の量を数えているので内部ビジネスプロセスの視点。
  4. エ:コンサルの受注金額の比率 → お金を数えているので財務の視点。
  5. ウ:社内要員30名をITプロフェッショナルに育成 → 人の育成を数えているので学習と成長の視点。

答え:ウ(人材育成の指標が学習と成長)

要点(試験直前に読む)

  • 「リスクや投資価値の類似性でカテゴリ分け→資源配分」はITポートフォリオ。トランザクションの目的はルーチン業務のコスト削減・効率化。
  • 「全社規模・複数プロジェクト・ポートフォリオの選択基準」は戦略マネジメント。
  • 事前評価=効果目標の設定+実施可否の判断材料。中間=差異分析、事後=目標の達成状況。
  • BSCの4視点=財務・顧客・内部ビジネスプロセス・学習と成長。指標が何を数えているかで視点を決める。
  • 戦略的投資のKPIは新規事業のROI・新製品の市場シェア。
  • サービスプロフィットチェーンは「顧客満足→顧客ロイヤルティ→売上拡大」の順。

ひっかけ

  • BSCの5つ目として「ガバナンス」「遵法」「自社の強み」を並べてくる。4視点は財務・顧客・内部ビジネスプロセス・学習と成長だけ。
  • BSCの問題では同じ選択肢を使い回して問う視点だけを変える。お金なら財務、顧客の反応なら顧客、業務の速さ・量なら内部ビジネスプロセス、人の育成なら学習と成長。
  • 「事前に計画し…」という文言があっても、効果の出る時期に評価する話なら事前評価ではない。事前評価は「目標設定+実施可否の判断」。
  • 個別プロジェクトの計画・進捗・事後検証を戦略マネジメントの実施項目に見せかける。「全社」「ポートフォリオ」のキーワードを探す。
  • サービスプロフィットチェーンでは顧客満足と顧客ロイヤルティの順序を入れ替えてくる。満足が先。

用語(15)

ITポートフォリオ アイティーポートフォリオ
情報化投資をリスクや投資価値の似たもの同士でカテゴリに分け、カテゴリごとに資源配分を最適化する手法。
⚠ PPM(製品・事業への資金配分)と混同しやすい。対象が「IT投資」ならITポートフォリオ。
トランザクション(ITポートフォリオのカテゴリ) トランザクション
ルーチン化された業務のコスト削減や処理効率の向上を目的とする投資カテゴリ。
⚠ 情報=管理品質の向上(分析・レポート)、インフラ=共有基盤、戦略=競争優位。
戦略マネジメント(IT投資) せんりゃくマネジメント
全社の評価方法やポートフォリオの選択基準を決め、全社IT投資テーマを起案する、企業レベル最適化のマネジメント。
⚠ 個別プロジェクトマネジメントは、1つのプロジェクトの計画・進捗・事後検証を扱う。
事前評価 じぜんひょうか
投資目的にもとづいて効果目標を設定し、実施するかどうかの判断材料を上位マネジメントに渡す評価。
⚠ 中間評価=計画と実績の差異分析、事後評価=効果目標の達成状況の評価。
中間評価 ちゅうかんひょうか
実施中に計画と実績の差異と原因を分析し、投資額や目標を変えるかどうか判断する評価。
⚠ 事後評価は完了後に目標の達成状況を見る。
事後評価 じごひょうか
プロジェクト完了後に、設定した効果目標が達成されたかを実績で検証する評価。
⚠ 中間評価と混同しやすい。「完了後」「達成状況」なら事後評価。
KPI Key Performance Indicator(重要業績評価指標)
目標の達成に向けた進み具合を数字で測るための指標。
⚠ KGI(最終目標そのものの指標)と区別する。KPIは途中経過を測る。
戦略的投資 せんりゃくてきとうし
ビジネスの創出や競争優位の確立を目的とするIT投資で、新規事業のROIや市場シェアで測る。
⚠ 業務効率化(決算日数など)、情報活用(ナレッジ共有)、IT基盤(障害件数)と目的が違う。
ROI Return On Investment(投資利益率)
投資額に対してどれだけ利益が出たかを示す割合。
バランススコアカード(BSC) Balanced Scorecard
財務・顧客・内部ビジネスプロセス・学習と成長の4つの視点で戦略を目標と指標に落とし込む経営管理手法。
⚠ EVM・PERT・WBSはプロジェクト管理の道具。PPMは製品への資源配分、コアコンピタンスは他社がまねできない中核能力。
内部ビジネスプロセスの視点 ないぶビジネスプロセスのしてん
業務の生産性・速さ・質を高める目標と指標を置くBSCの視点。
⚠ 「顧客提案数」のように顧客という語が入っても、社内活動の量なら内部ビジネスプロセス。
学習と成長の視点 がくしゅうとせいちょうのしてん
人材の育成や組織の能力向上に関する目標と指標を置くBSCの視点。
⚠ 研修時間・人材育成数はここ。製造期間短縮は内部ビジネスプロセス。
サービスプロフィットチェーン サービスプロフィットチェーン
従業員満足→定着・生産性→顧客サービス→顧客満足→顧客ロイヤルティ→売上拡大と続く因果の連鎖。
⚠ 顧客満足(先)と顧客ロイヤルティ(後)の順序を取り違えやすい。
顧客ロイヤルティ こきゃくロイヤルティ
顧客がその企業や商品を信頼し、使い続けたり人に勧めたりする度合い。
⚠ 顧客満足は「気に入った」段階、ロイヤルティは「使い続ける」段階。
ベンチマーキング ベンチマーキング
他社などの優れたやり方を基準にして比べ、自社の改善に生かす手法。
⚠ ITポートフォリオの問題でダミーとして出る。カテゴリ分けや資源配分はしない。

このレッスンの過去問

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