価格と利益の計算:需要の式・コストプラス・損益・顧客の移り変わり
価格から需要を1次式で求める問題、コストプラス法の定義、固定費と変動費を使った利益の比較、顧客移行率の表の読み取り、リテンション率の計算を、どれも自力で解けるようにする。
科目Aの経営分野で計算問題が出る定番テーマで、同じ問題がほぼそのまま再出題されています。どれも四則演算だけで解けるので、型を覚えれば確実に得点できます。実務でも料金設計や解約率の議論にそのまま使える考え方です。
このレッスンで稽古する(用語チェック・過去問)結論:5つとも「式を1本立てて代入する」だけ
このレッスンの計算問題は、どれも決まった式を1本立てて数字を入れれば解けます。
| テーマ | 使う式 | 出題の多さ |
|---|---|---|
| 価格と需要 | 需要 = 傾き ×(需要が0になる価格 − 価格) | 多い(計9回) |
| コストプラス法 | 価格 = 原価 + マージン | 多い(計9回) |
| 顧客移行率 | 移る人数 = 元の人数 × 移行率 | 多い(計9回) |
| 利益の比較 | 利益 = 売上 − 変動費 − 固定費 | 免除試験で3回 |
| リテンション率 | (当月末 − 新規)÷ 前月末 | 1回(2026年の新顔) |
※出題回数は公開過去問で観測した数で、CBT 方式の本試験での出題確率ではありません。
価格と需要の1次関数:2点から直線を引く
1次関数は、グラフにすると直線になる式のことです。「価格を1円下げると需要が何個増えるか」(これを傾きと呼びます)が、どの価格帯でも一定です。
たとえるなら、エレベーターのボタンを1階分押すごとに必ず同じ高さだけ上がるのと同じです。そのため、2つの点が分かれば、間のどの価格でも需要を計算できます。
解き方の型
- 2点の価格の差と需要の差から、1円あたりの増減を出す
- 「需要が0になる価格」から何円下げたかを掛ける
過去問は3回とも同じ数字(3,000円で0個、1,000円で60,000個、1,500円では?)で、答えは 45,000個 です。
価格の決め方4種類:コストプラス法を見分ける
コストプラス法は、自社のコスト(製造原価や仕入原価、営業費)に、希望するマージン(上乗せする利益)を足して価格を決める方法です。手作り弁当の材料費に「儲け分」を足して値札を付けるイメージです。
試験では、ほかの価格決定法の説明と並べて「どれがコストプラス法か」を選ばせます。
| 方法 | 何を基準に決めるか | 選択肢の見分け方 |
|---|---|---|
| コストプラス法 | 自社のコスト(原価・営業費)+ マージン | 「原価」「営業費」に「マージンを乗せる」と書いてある |
| 知覚価値価格設定(需要志向) | 買い手がその品質をいくらと感じるか | 「買い手が認める価格をリサーチ」 |
| 実勢価格設定(競争志向) | 競合の価格や業界の水準 | 「競合企業の価格を参考」「市場で競争可能なレベル」 |
| ターゲットリターン価格設定 | 目標販売量で総費用を回収し、目標利益率を確保する | 「目標販売量」「総費用吸収後に一定の利益率」 |
ひっかけ:「値引きを前提にマージンを加える」のように「マージン」という言葉だけ入れた選択肢があります。基準がコストになっているかで判断します。
顧客移行率の表:行と列の意味を最初に決める
顧客移行率は、今の商品の購入者のうち、新しい商品へ乗り換える人の割合です。表の行が旧商品、列が新商品で、各マスの数字は「その行の人数に対する割合」です。
- 旧Aから新Qへ移る人数 = Aの人数 × A行Q列の割合
- 新商品の既存顧客数 = その列を上から順に「人数×割合」して合計したもの
- 新商品の購入者合計 = 既存顧客数 + 新規顧客数
行の割合の合計が1.0にならないときは、その差の分だけ「新商品をどれも買わない人」がいるという意味です(例:B行は0.9なので10%はどれも買わない)。
利益の比較と損益分岐点
固定費は、売れた数に関係なくかかる費用です(広告費、家賃など)。変動費は、1個売るごとにかかる費用です(材料費など)。
利益 = (価格 − 1個あたりの変動費)× 数量 − 固定費
かっこの中の「価格 − 変動費」を限界利益と呼び、1個売るごとに固定費の回収に回せる金額を表します。
損益分岐点は、利益がちょうど0になる売上高で、固定費 ÷(1 − 変動費率) で求めます。損益分岐点が同じ2社を比べると、固定費が大きく変動費率が小さい会社のほうが、売上が分岐点を超えたあとに利益が速く増えます。グラフでは、費用線の傾きが緩やかな会社です。
リテンション率:新規会員を引いてから割る
リテンション率は、前月末にいた会員のうち、当月末まで続けて残った人の割合です。
リテンション率 =(当月末会員数 − 当月新規会員数)÷ 前月末会員数
当月末の会員数には、当月に入った新規会員が含まれています。これを引かずに割ると、新規会員を多く集めたサービスほど高く見えてしまいます。
価格1,500円のときの需要を求める
ア 30,000
イ 35,000
ウ 40,000
エ 45,000
解き方と答えを見る
- 点を2つ書き出す:(3,000円, 0個)と(1,000円, 60,000個)
- 価格の差 = 3,000 − 1,000 = 2,000円。需要の差 = 60,000 − 0 = 60,000個
- 傾き = 60,000 ÷ 2,000 = 30。価格を1円下げるごとに需要が30個増える
- 1,500円は、需要が0になる3,000円より 3,000 − 1,500 = 1,500円安い
- 需要 = 30 × 1,500 = 45,000個
- 検算:1,000円なら 30 × 2,000 = 60,000個で、条件(2)と一致する
答え:エ(45,000個)
4つの施策案のうち利益が最大のものを選ぶ
| 施策案 | 価格 | 広告費 | 販売促進費 | 売上数量 |
|---|---|---|---|---|
| a | 1,600円 | 1,000千円 | 1,000千円 | 12,000個 |
| b | 1,600円 | 1,000千円 | 5,000千円 | 20,000個 |
| c | 2,400円 | 1,000千円 | 1,000千円 | 6,000個 |
| d | 2,400円 | 5,000千円 | 1,000千円 | 8,000個 |
ア a
イ b
ウ c
エ d
出典:基本情報技術者試験 科目A免除 修了試験 20220612 実施分 問68
解き方と答えを見る
- 1個あたりの限界利益を出す:1,600円の案は 1,600 − 1,000 = 600円、2,400円の案は 2,400 − 1,000 = 1,400円
- a:600 × 12,000 = 7,200千円。固定費は 1,000 + 1,000 = 2,000千円。利益 = 5,200千円
- b:600 × 20,000 = 12,000千円。固定費は 1,000 + 5,000 = 6,000千円。利益 = 6,000千円
- c:1,400 × 6,000 = 8,400千円。固定費は 1,000 + 1,000 = 2,000千円。利益 = 6,400千円
- d:1,400 × 8,000 = 11,200千円。固定費は 5,000 + 1,000 = 6,000千円。利益 = 5,200千円
- 比べると c の 6,400千円が最大
答え:ウ(c)
A案とB案の月の利益を比べる
| 案 | 月当たり固定費 | 変動費単価 |
|---|---|---|
| A | 1,500 万円 | 9 万円/個 |
| B | 2,500 万円 | 7 万円/個 |
ア A 案,B 案ともに利益が出ない。
イ A 案と B 案の利益は等しい。
ウ A 案の方が利益が多い。
エ B 案の方が利益が多い。
出典:基本情報技術者試験 科目A免除 修了試験 20131215 実施分 問76
解き方と答えを見る
- 売上 = 14万円 × 500個 = 7,000万円(両案で同じ)
- A案:変動費 = 9万円 × 500個 = 4,500万円。利益 = 7,000 − 4,500 − 1,500 = 1,000万円
- B案:変動費 = 7万円 × 500個 = 3,500万円。利益 = 7,000 − 3,500 − 2,500 = 1,000万円
- どちらも1,000万円で等しい
答え:イ(A案とB案の利益は等しい)
顧客移行率の表から、正しい記述を選ぶ
| 人数 | P | Q | R | S | |
|---|---|---|---|---|---|
| A | 10,000 | 0.5 | 0.3 | 0.1 | 0.1 |
| B | 20,000 | 0.1 | 0.6 | 0.1 | 0.1 |
| C | 80,000 | 0.1 | 0.1 | 0.3 | 0.3 |
| 既存顧客数 | 15,000 | 23,000 | 27,000 | 27,000 | |
| 新規顧客数 | 5,000 | 7,000 | 13,000 | 23,000 |
ア 商品 A の購入者のうち,1,000 人が新商品 Q を購入すると予想している。
イ 商品 B の購入者は,新商品 P,Q,R,S のどれかを購入すると予想している。
ウ 新商品 P の購入見込者の 5 割は,商品 A の購入者であると予想している。
エ 新商品 S の新規顧客数は,商品 C の購入者のうち新商品 S を購入する人数より少ないと予想している。
解き方と答えを見る
- ア:A→Q = 10,000 × 0.3 = 3,000人。1,000人ではないので誤り
- イ:B行の合計 = 0.1 + 0.6 + 0.1 + 0.1 = 0.9。10%(2,000人)は新商品をどれも買わないので誤り
- ウ:Pの購入見込者 = 既存15,000 + 新規5,000 = 20,000人。そのうちA由来は 10,000 × 0.5 = 5,000人で25%。5割ではないので誤り
- エ:C→S = 80,000 × 0.3 = 24,000人。Sの新規顧客23,000人はこれより少ないので正しい
答え:エ
リテンション率が最も高いサービスを選ぶ
| サービス | 前月末会員数 | 当月新規会員数 | 当月末会員数 |
|---|---|---|---|
| A | 1,000 | 500 | 800 |
| B | 1,000 | 200 | 800 |
| C | 1,500 | 500 | 1,100 |
| D | 1,500 | 1,000 | 1,800 |
ア サービス A
イ サービス B
ウ サービス C
エ サービス D
出典:令和8年度 基本情報技術者試験 科目A 公開問題 問17
解き方と答えを見る
- 継続した会員数 = 当月末会員数 − 当月新規会員数
- A:(800 − 500) ÷ 1,000 = 300 ÷ 1,000 = 30%
- B:(800 − 200) ÷ 1,000 = 600 ÷ 1,000 = 60%
- C:(1,100 − 500) ÷ 1,500 = 600 ÷ 1,500 = 40%
- D:(1,800 − 1,000) ÷ 1,500 = 800 ÷ 1,500 ≒ 53.3%
- 最も高いのは B の 60%
答え:イ(サービスB)
要点(試験直前に読む)
- 需要の1次式:傾き=需要の差÷価格の差(30個/円)。需要=30×(3,000−価格)なので、1,500円なら45,000個
- コストプラス法=コスト(原価・営業費)+マージン。基準が買い手なら知覚価値、競合なら実勢価格、目標販売量と利益率ならターゲットリターン
- 利益=(価格−変動費単価)×数量−固定費。広告費などの固定費を引き忘れない
- 損益分岐点が同じなら、変動費率が小さい(固定費が大きい)会社のほうが、分岐点を超えたあとの利益が大きい
- 移行表は行=旧商品、列=新商品。人数=元の人数×割合。行の合計が1未満なら、残りはどれも買わない人
- リテンション率=(当月末−新規)÷前月末
ひっかけ
- 需要の問題:比例や平均で計算すると30,000や40,000が出てしまう。需要が0になる3,000円を起点に、そこから何円下げたかで数える
- 価格決定法:「マージン」という語は他の選択肢にも入っている。「原価・営業費を基準」と書いてあるかで判断する
- 利益の比較:売上数量が多いb案が最大に見えるが、販売促進費5,000千円を引くと逆転する。必ず固定費まで引く
- 損益分岐点:「固定費が少ないほうが利益が大きい」は誤り。分岐点を超えたあとの差は費用線の傾き(変動費率)で決まる
- 移行表とリテンション率:割合を人数として読む、行と列を取り違える、新規会員を引かずに割る、の3つが典型的な誤答パターン。D社の「当月末÷前月末=120%」は新規会員を含めた数字なので選ばない
用語(15)
ある価格で買われると見込まれる数量のこと。
グラフが直線になる関係で、価格が1単位変わるごとに需要が一定量ずつ変わる。
⚠ 比例(価格が0のとき需要も0)と混同しやすい。需要が0になるのは価格3,000円の点なので、比例として計算してはいけない。
製造原価や仕入原価、営業費などのコストに、希望するマージンを足して価格を決める方法。
⚠ ターゲットリターン価格設定も費用から考えるが、こちらは「目標販売量」と「目標利益率」を基準にする。
コストに上乗せする利益の部分。
買い手がその品質をいくらと感じるかを調べて価格を決める、需要志向の方法。
⚠ コストプラス法は自社のコストが基準。「買い手」「リサーチ」と書いてあればこちら。
競合の価格や業界の水準を参考に価格を決める方法。
⚠ 「競合」「市場で競争可能」という語があればこちらで、コストプラス法ではない。
目標販売量で総費用を回収し、目標とする利益率が残るように価格を決める方法。
⚠ 費用から考える点はコストプラス法と同じだが、「目標販売量」「利益率」が出てきたらこちら。
販売数量に関係なく一定額かかる費用(広告費、家賃など)。
⚠ 変動費は数量に比例して増える費用。問題文で「〜は固定費とし」と指定されたら必ずその指定に従う。
1個売るごとにかかり、数量に比例して増える費用。
⚠ 固定費と逆。比較問題では変動費単価×数量を出すのを忘れやすい。
売上高に占める変動費の割合。
⚠ 損益分岐点のグラフでは費用線の傾きにあたる。縦軸の切片(固定費)と取り違えない。
売上から変動費を引いた額で、固定費の回収と利益に回る部分。
⚠ 営業利益は、限界利益からさらに固定費を引いたもの。
利益がちょうど0になる売上高で、固定費÷(1−変動費率)で求める。
⚠ 損益分岐点が同じでも、分岐点を超えたあとの利益の増え方は変動費率によって違う。
今の商品の購入者のうち、別の新商品へ乗り換える人の割合。
⚠ 割合を人数と読み違えない。人数は必ず「元の人数×割合」で出す。
これまで自社の商品を買っていなかった顧客。
⚠ 既存顧客(旧商品から移ってくる人)とは表の中で別の行になっている。
前月末の会員のうち、当月末まで続けて残った人の割合。
⚠ 当月末÷前月末で計算すると新規会員が含まれてしまう。新規会員を引いてから割る。
このレッスンの過去問
- 価格と需要の1次関数計算平成30年度 秋期 基本情報技術者試験 午前 問68
- コストプラス法による価格設定平成30年度 春期 基本情報技術者試験 午前 問69
- 固定費・変動費による利益比較計算基本情報技術者試験 科目A免除 修了試験 20220612 実施分 問68
- 顧客移行率マトリクスの読み取り計算平成30年度 秋期 基本情報技術者試験 午前 問69
- リテンション率の計算令和8年度 基本情報技術者試験 科目A 公開問題 問17